2億年前の謎の化石の正体がYoutube動画で判明
image credit:van de Schootbrugge et al (2024), CC BY 4.0
 YouTube動画が決め手となって、問題だらけだった2億年前の微小な化石の正体がついに特定されたそうだ。

 その正体は単細胞真核藻類のグループの「ユーグレナ藻」で、植物と動物の特徴をあわせ持つ奇妙な生き物だ。

 田んぼのミドリムシなど、運動性のある藻類としてユーグレナ藻は身近なところにもいる生物だが、「真核生物」の系統のもっとも根本の部分に位置付けられる生物でもある。

 つまり今回の発見は、私たちを含む多くの生き物の起源に迫り、大昔の地球の環境を紐解く重要な手がかりを与えてくれるということだ。

植物? 動物? いいえ、ユーグレナ藻です

 「ユーグレナ藻」は、植物のように光合成をし、動物のように運動するが、それでいてそのどちらでもない生物だ。水の中を長い鞭毛で泳ぎながら有機物のエサを食べつつ、葉緑体で光合成を行う。

 そのような植物とも動物ともとれる特徴から、「真核生物(動物、植物、菌類、原生生物など、身体を構成する細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物)」の系統ではもっとも古い生き物として位置づけられている。

 このように書くととても珍しい生き物に思えるが、そうでもない。たとえばユーグレナ藻の代表的な仲間である「ミドリムシ」は、田んぼなどに普通に存在する身近な生き物だ。
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ユーグレナ藻に属するミドリムシphoto by iStock

2億年前の指紋のような謎の化石に問題が発生

 2012年、ゲーテ大学フランクフルト・アム・マイン(当時)のバス・ファン・デ・スホートブルッヘ氏とボストン・カレッジのポール・ストローザー氏は、およそ2億年前の微小な化石を調べていた。それは三畳紀とジュラ紀の境界付近の堆積物から発掘されたものだ。

 その中に奇妙な化石があったのだ。その表面には肋骨のような構造があり、そのおかげでなんだか指紋のようにも見えた。

 それは現代のユーグレナ藻によく似ており、シスト化したユーグレナ藻の化石ではないかと両氏は直感した。「シスト」とは、被嚢や包嚢ともいい、小さな生きものが分厚い膜を作って休眠状態になったものだ。
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2億年前の指紋のような小さな化石 / image credit:Bas van de Schootbrugge

 ところが、この化石には問題があったのだ。

 同じ化石を扱った過去の文献を調べてみたところ、それぞれがこれをまったく違う名前で呼んでいたのである。淡水の藻類とする意見もあったが、植物の胞子といった意見もあった。

 そこで研究チームは、指紋のような化石の本当の正体を特定するため、高性能な電子顕微鏡で調べてみることにした。

 そして目にしたのが、見たこともない構造だった。まるで肋骨のようなパターンは、花粉や胞子で見られるような飾りではなく、壁と一体化していた。

 それは、他の多くの淡水緑藻類とは明らかに異なっており、ますますシスト化したユーグレナ藻である線が濃厚になっていった。
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電子顕微鏡で調べたところ骨格のようなパターンを発見 / image credit: Wilson Taylor.

Youtubeの動画でこの化石がユーグレナ藻であることが判明

 だが決め手にかけていた。ユーグレナ藻がシスト化する瞬間を誰も見たことがなかったからだ。ところがだ、その世紀の瞬間が、知らず知らずのうちにYouTubeで公開されていたのだ。

 動画の投稿主は、オーストラリア在住の顕微鏡マニア、ファビアン・ウェストン氏だ。

 彼は近所の池から水を採取し、それを顕微鏡で観察し、その様子を撮影した。

 その動画に、ユーグレナ藻が丸まり、例の化石のような指紋模様のシストを形成する瞬間がとらえられていたのだ。
 ストローザー氏は、「ファビアンさんは、知らず知らずのうちに重要な証拠を提供していたわけです。顕微鏡でユーグレナ藻のシスト化を目撃したのは、おそらく地球上で彼だけでしょう」とプレスリリースで説明する。

真核生物の起源に迫るヒント

 この発見はもっと古い化石、すなわち真核生物の起源にまでさかのぼる先カンブリア時代の化石などを理解する大切な手がかりにもなる。

 たとえば、ユーグレナ藻がシストを作るという事実からは、大昔の環境がどのようなものだったのか想像ができるという。

 過去6億年では、地球史上最大の大量絶滅が2度ほど起きているが、なぜだかその頃の大量のシストが見つかっている。

 それは極端な温室効果が作り出した気候によって降水量が増え、大きな動乱が起きていただろうことを物語っているという。

 だがユーグレナ藻はそうした破滅的な環境を何度も生き延びてきた。それはもしかしたらシストを作れたからかもしれない。

 ゲーテ大学フランクフルト・アム・マインのバス・ファン・デ・スホートブルッヘ氏は、「おそらくシスト能力によって、この生物は地球上のあらゆる大絶滅を生き延びてきたのでしょう」と説明した。

 この研究は『Review of Palaeobotany and Palynology』(2023年12月21日付)に掲載された。

References:Microfossils shed light on the long fossil record of euglenoids - News - Utrecht University / 200-Million-Year-Old “Problematic” Microfossils Finally Identified, And They’re Super Weird | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2024年01月27日 20:02
  • ID:03LvuYUu0 #

くそっ、どうやって倒せばいいんだ・・・

2

2. 匿名処理班

  • 2024年01月27日 20:42
  • ID:W3S1Xn840 #

>>1
バイオ燃料にするか、健康食品にするか…

3

3. 匿名処理班

  • 2024年01月27日 23:23
  • ID:D7q8O3.G0 #

>>1
どこかの国みたく油で揚げるとか?

4

4. 匿名処理班

  • 2024年01月28日 05:41
  • ID:CVVTVl9H0 #

すげぇ
マニアだからこそ撮れた気がする
シスト化が始まるまでどれくらいかかるか知らんけど
普通そんな長い時間顕微鏡に張り付いてらんないよ…

5

5. 匿名処理班

  • 2024年01月28日 07:43
  • ID:bQwqbb6t0 #

発見されたのも夕暮れな

6

6. 匿名処理班

  • 2024年01月28日 11:47
  • ID:eJaY9zzA0 #

ストローザー氏
「ほほう、顕微鏡マニアの撮影したユーグレナ藻の動画か。見といたろ」
「ああ!ユーグレナ藻がシスト化しよったやないか!」
「ほなあの化石もユーグレナ藻のがシスト化したものやんけ!」

7

7. 匿名処理班

  • 2024年01月28日 14:37
  • ID:v6efS9WJ0 #

こっちが進化の頂点に立ったらナメック星人的なのが出来そう

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