
普段、私たちの脳内では、実在する人物と架空のキャラクターがはっきりと区別されている。ところが、新たな研究によると、孤独な人はその区別が曖昧になってくるのだという。
つまり、強い孤独を抱えている場合、現実には存在しない架空の登場人物がまるで実在するかのように思えてくるらしいのだ。
孤独は人をどう変えるのか?
この研究が行われたきっかけは、新型コロナによって、それまで当たり前だった人との付き合いが非常に難しくなったことによる。世界の多くの人々は、人と接触できない孤独を埋めるために、ドラマや本などの架空の世界に没頭するようになった。
例えば、アメリカでは、新型コロナが流行していた時期、テレビや読書の時間が1日30分ほど増加。イギリスでは、ストリーミングサービスの利用率が71%も増えたという。
これまでの研究では、孤独や社会からの疎外感を感じている人は、フィクションの登場人物に親しむことで、社会とのつながりを感じようとすることが示唆されている。
ではそのような時、脳では何が起きているのだろうか?
オハイオ州立大学の心理学者ディラン・D・ワグナー准教授らによる今回の研究では、脳が現実の友人と架空の人物をどのように感じているのか、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって探られた。

「ゲーム・オブ・スローンズ」を熱心に見ていた人の脳をスキャン
この研究の調査対象となったのは、中世ヨーロッパに似た架空の世界を舞台とした人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のファンを自認する19人だ(あなたもそうなら、こんなホテルはどうだろう?)。このドラマのファンが選ばれたのは、個性豊かな登場人物がたくさん登場するため、さまざまなタイプの推しキャラがいるだろうからだ。
実験では、参加者に対して、自分自身や現実の友人の名前のほか、ゲーム・オブ・スローンズに登場する特に人気のある人物の名前が見せられた。
各登場人物の名前の横には、「悲しい」「信頼できる」「頭がいい」といった説明が書かれており、参加者はそれが正しいと思うかどうか、「はい」か「いいえ」で回答。そしてこのときの脳の様子がfMRIでスキャンされた。
またこの実験の後、参加者は、現在の孤独感や性格などについての質問にも答えている。
孤独が強い人は現実と架空の境界が曖昧になる
その結果わかったのは、脳内の「内側前頭前皮質(MPFC)」と「楔前部/後帯状皮質(PC/PCC)」において、現実の友人と架空の登場人物とが、神経活動的にはっきりと区別されていたことだ。これらの部位は、社会的な認知と自己処理に関係するところだ。自分自身や他人についての情報をどのように認知し、処理するかに大切な役割を果たしている。
現実の友人もドラマの登場人物も、どちらも人間で、参加者は親しみを感じている。それでも、現実は現実、作り話は作り話ときちんと分けて認識されていたのだ。
さらに、これらの部位が自分自身と他人(現実と架空の両方)をどのように区別しているのかも調べられた。
すると、架空の登場人物に比べて、現実の友人は自分自身と似たように認識されていることもわかった。
だが、とりわけ興味深かったのは、強い孤独を感じている人の脳が、ドラマの登場人物をどう感じているのかという点だ。
孤独感が強い人ほど、内側前頭前皮質における現実と物語の区別が曖昧だったのだ。
つまり孤独な人ほど、架空の人物を実在の人物であるかのように感じているらしいということだ。
さらに特に孤独でない人でも、好きな登場人物の場合は、実在の友人のように脳内で処理していることもわかった。
このことから、好きなキャラに対しては、人は孤独とは関係なく、本当に実在するかのような親しみを感じるらしいことがうかがえる。
一つ重要なのは、こうした脳の性質が、その人の性格とあまり関係がないということだ。
つまり、架空の人物と現実の人物との境界が曖昧になるのは孤独の影響であって、人それぞれの他人の認識の仕方が違うからではないのだ。
たとえ物語の世界や登場人物にどっぷりハマっていたとしても、脳は現実の他人と架空の他人を完全に違うものとして区別します。
しかし孤独な人では、その境界線が崩れ、好きな登場人物が実在の知り合いのように思えてくるのです(ワグナー准教授)

あるいは現実の人が架空の人に見えている可能性も?
興味深い研究結果だが、いくつか注意するべきこともある。一つは、ゲーム・オブ・スローンズの登場人物にはそれぞれ非常に個性的な設定がされており、それが今回の結果に影響したかもしれないことだ。
また可能性としては、架空の人物が実在の人物に思えてきたのではなく、それと逆のことが起きていたとも考えられる。
つまり孤独な人は、親しい友人があまりいない。そのため現実の人たちが架空の人物に思えてくるのかもしれないのだ。
ちなみに孤独になると、脳は想像上の友達(イマジナリーフレンド)を作り出すことも知られている。
こうしたことは、人間にとって他人との絆がどれほどの大切なのか、孤独に耐える脳がどれほどクリエイティブになれるのかといったことを示しているのかもしれない。
この研究は『Cerebral Cortex』(2023年7月3日付)に掲載された。
References:Loneliness blurs brain's line between real friends and fictional characters, study finds / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
嫁が画面から出てこなくても自分が孤独なら嫁は現実に実在する(ように感じる)ってこと?
2.
3. 匿名処理班
このニュース他でも見たけどやっぱり、普通の人と孤独な人とで
架空の人物の受け取り方がどう違うのか、というのがピンと来ない。
思い入れや愛着が深いとか、はたまた脳内妄想とかとはまた違う次元の話なのか?
4. 匿名処理班
職場の人間関係とか限りなく架空に近い
たまに100%上の空であぁ…とかそうですねーとか自然と口にしてるのが自分でもわかる
5. 匿名処理班
無人島で暮らすトム・ハンクスの映画で顔を描いたボールをめちゃくちゃ大事にしてたやつがこれかな。無くした時泣いてたもんな
6. 匿名処理班
ウィルソーン!
7.
8. 匿名処理班
俺の悪口を言うな(´;ω;`)
9. 匿名処理班
突然マンガやアニメ基準で話始めるような奴かな
リアルの会話にいきなりぶっこんでくるから周りは「??」状態
とりあえず「へー、そうなん」と反応せざるを得ない
有名キャラのセリフとか言いたがる人も多かった。キョドキョドして目も全然合わせないから自然と人が離れていく
10. 匿名処理班
>>3
インターネット見れば一目瞭然な気も
11.
12. 匿名処理班
本当に孤独だからなんだろうか
共感性が高いからとかそんな理由じゃないのかな
13. 匿名処理班
自分の心の拠り所との繋がりが強くなるってことは生きる力が増大するってことだから良いことだよ。
自然が人間に与えた力だと解釈しておけば良い。
14. 匿名処理班
>>1
逆転の発想だな
嫁が話しかけて来ないやつは孤立が足りない
15. 匿名処理班
いや見てる間にソレなら何も問題ないのでは?
単にエンタメを満喫出来てるってだけに思えるんだが
戻って来れないならヤバいが切り替え出来てれば良いんじゃないかな
エンタメ受容中はガッツリのめり込んで楽しんだ方がお得だと思う
16. 匿名処理班
自分も何も問題無く思う。
物語を上手に楽しんでいるだけ。
ただ脳科学分野での各部位に対する反応データ、として面白いと思う。
17. 匿名処理班
荒野での修行というのは神を近くに感じさせるための合理的なプロセスだったわけか
18. 匿名処理班
結局、人は強がっても脳が孤独に耐えられないので、
架空の人物と仲良くなってしまうということでは。
19. 匿名処理班
虫や鳥と意思疎通できる話したら同僚にドン引きされたんだけど、友達が少ない状態でないと無理なのかなやっぱ
20. 匿名処理班
架空とはちょっと違うが、一人ボケ突っ込みみたいな感じに、亡くなった嫁と脳内会話する時がたまにある。
一人で飯作ってる時、こう言うの作ってたらこう言う事言いそうだなというセリフに脳内で返したりとか。
21. 匿名処理班
>>9
いや、それはコミュスキルが足りてないだけで「結果的に孤独になる」という事態でしかないな。
これは孤独な状態に置かれた脳がどんな反応を示しているかの研究だから、社会心理学と脳神経学くらい違う。両者は密接に関係してるけど。
この研究を深掘りしていくと記事にもあるように「孤独な芸術家・発明家が発揮する大胆な発想」の秘密が探れるかもしれない。
22. 匿名処理班
アイドルに彼氏が居たからって裏切られた‼️って思うのは
対象に夢中になる事で淋しい現実から
目を逸らしたかったんかなぁ…と気の毒になる
23. 匿名処理班
好きな漫画のキャラクターが結婚すると
「キィイイイイイ💢」ってなる人は
常軌を逸していると思う 架空の人物やん…
24.
25.
26.
27.
28. 匿名処理班
>>23
それはあなたが冷めた性格なだけでは。。。
29.
30.
31. 匿名処理班
実在する人物が実在していて
架空のキャラクターが架空であることが明確に理解できているなら
何の問題もない
孤独を寂しいとは思わないし
そういうのは一種の内省でもある
32.
33. 匿名処理班
架空の存在も、現実の存在も他者は情報とみれば、情報量が違うだけとも言える気もするけども。
34. 匿名処理班
>>12
性格とは関連がなかったって記事に書いてあるでしょ
35. 匿名処理班
自己弁護してる人たちの言い回しが鉄オタみたいでなんかおもろいw
無駄に堅苦しい言い方したがるんだよね
36. 匿名処理班
孤独が好きな人もいる。
架空の世界のほうが居心地がいい場合もある。
架空の世界は、実社会と繋がりたいけど繋がれない人が渋々使う代用品ってだけじゃないよ。
37.
38. 匿名処理班
力石徹の葬式しちゃう人達とかはどういう心理なんだろう…
39. 匿名処理班
>>20
俺も同じことやるわ
俺が思ったことに対して相槌とか打ってくれるんだよな
俺の嫁は亡くなってはいないけど
ていうかそもそも嫁いたことなかったわ
40. 匿名処理班
なるほど、絵の嫁(旦那)をより身近に感じたかったら孤独になればいいって事ね!
41. 匿名処理班
「神の発見」ってこういうメカニズムだったんだ
現代人はネガティブに捉えるかもだけど「フィクション」ってすっごい大事だからね、「抽象的思考」へのステップアップになるから
例えば「国民」というフィクションは「国家」(これまたイマジナリーな存在)を成り立たせるのに必要
「国民」が成立しなかったアフリカとかは植民地にされた上に、独立後も激しい内戦が起きたりした
国に限らず「お金」や「法律」、「平和だってそう
今我々が拠って立つ世界は、フィクションによって支えられてる
それらのフィクションって、どういう所から産まれたんだろう?この記事の内容は有意義なものだ
42. 匿名処理班
>>5
>>6
それを思い出した。
43. 匿名処理班
>>28
俺もちょっとその手の感情はわからんわ
キイーーーってなっちゃう人は感情移入しすぎじゃない?
所詮マンガアニメ作者のお人形遊びだぞ
44. 匿名処理班
ウィル・スミスの「アイ・アム・レジェンド」でマネキンを街中に配置して名前つけて話しかけるの思い出した。異常行動に見えるけどそのおかげで異変に気付くんだよな。