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東アジア人はヨーロッパ人より多くネアンデルタール人のDNAを持っている。その理由が明らかに

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(著) (編集)

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 現代の東アジア人は、ヨーロッパ人よりも多くのネアンデルタール人のDNAを持っていることはこれまでの研究で明らかになっていたが、その謎がついに解明されたそうだ。

 『Science Advances』(2023年10月18日付)に掲載された研究によると、その理由は約1万年前に中東からヨーロッパに移住した農民たちに隠されていたという。

 農民たちはホモ・サピエンスでほとんどネアンデルタール人の遺伝子を持っていなかった。そのため、ヨーロッパ人の体に残されていたネアンデルタール人の遺伝子が薄められたというのだ。

 これが東アジア人とヨーロッパ人の遺伝子の違いをもたらしたという。

なぜ東アジア人にはネアンデルタール人のDNAが多いのか?

 アフリカ出身ではない祖先を持つ人なら、誰にでもネアンデルタール人の遺伝子が残されている。

 だが、その割合は地域によって差がある。東アジアの人々は、ヨーロッパ系の人々よりも8~24%ほどネアンデルタール人の遺伝子が多い。

 これはどこか矛盾しているようにも思える。なぜなら化石の記録は、ネアンデルタール人がヨーロッパに住んでいたことを伝えているからだ。

 だから直感的には、ヨーロッパ人の方にネアンデルタール人の面影が色濃く残っていると考えられる。ところが現実には逆だ。

 これは10年以上前にネアンデルタール人のゲノムが解読されて以来の謎だった。

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トンヘレンのガロ・ローマン博物館にあるネアンデルタール人の狩猟者の模型 / image credit:Trougnouf (Benoit Brummer) / WIKI commons

中東からヨーロッパへホモ・サピエンスの移住

 今回の研究によれば、その理由は「古代中東から農民がやってきたかどうか」の違いであるという。

 4万年以上前、狩猟採集生活を営んでいた私たちの祖先、ホモ・サピエンスがアフリカから外の世界に移動したことでネアンデルタール人と出会い、両者の子供が生まれた

 こうして、ホモ・サピエンスの体にはネアンデルタール人の遺伝子が残されることになった。

 だが1万年ほど前、再びホモ・サピエンスの移住があった。現在の中東や南西アジアで農業を行っていたホモ・サピエンスがヨーロッパに移り住んだのだ。

 この初期の農民は、ネアンデルタール人の遺伝子をほとんど持たなかった。そんな彼らが、ヨーロッパで狩猟採集生活をしていたホモ・サピエンスと交わり、子供を残した。

 こうしてヨーロッパ人の体にあったネアンデルタール人の遺伝子は薄まることになる。

 一方、東アジアに定住したホモ・サピエンスは、後からやってきた新参者のホモ・サピエンスによって遺伝子が薄められたりはしなかった。

 オックスフォード大学の生態・進化学者クラウディオ・キロドラン氏は、「シンプルに説明できます。ただの移住です」と語っている。

 これは、現代人の体に残るネアンデルタール人の遺伝子に地域差がある理由が、自然淘汰とは無関係ということでもある。

 研究チームによるなら、ネアンデルタール人の遺伝子による有利・不利はそもそもないのだという。

 また東アジア人が、インドやイランといった地域でネアンデルタール人と出会い、混血したという仮説もあるが、これは今のところただの憶測でしかない。

 いずれにせよ、今回の説なら、そのような可能性を考慮しなくても、1度の移住ですべてを説明することができる。

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ウィーン自然史博物館で復元されたネアンデルタール人の老人と子供の復元 / image credit:Wolfgang Sauber / WIKI commons

1万年前の移住ビフォア・アフター

 人類とネアンデルタール人の歴史を解き明かすため、今回の研究では、これまでに解析された4万年前から今日までのホモ・サピエンスのゲノムを元に、緯度・経度・時間・地域ごとにネアンデルタール人遺伝子の割合が調べられている。

 すると、初期においてはアジア人よりもヨーロッパ人の方がネアンデルタール人遺伝子が多いことが判明した。

 このことは、初期のホモ・サピエンスがアフリカから放射状に広がり、近東やヨーロッパでネアンデルタール人と出会ったと考えれば納得できる。

 だがその後、ヨーロッパ人のネアンデルタール人遺伝子は少なくなる。

 研究チームが注目したのは、ヨーロッパで狩猟採集生活をしていたホモ・サピエンスと、1万年前にヨーロッパに定住した農耕ホモ・サピエンスとの違いだ。狩猟採集民は農民よりもネアンデルタール人の遺伝子が多かったのだ。

 このことから、後からヨーロッパにやってきたホモ・サピエンスが、先住者のネアンデルタール人遺伝子を薄めただろうと推測される。

 一方、東アジアにはそのような流入がなく、ネアンデルタール人の遺伝子が薄まることはなかったというのが今回の研究の結論だ。

References:Past human expansions shaped the spatial pattern of Neanderthal ancestry | Science Advances / Scientists finally solve mystery of why Europeans have less Neanderthal DNA than East Asians | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 27件

コメントを書く

  1. 中東や南西アジアからの人々って事は、印欧祖語と関係あるのかね?

    • +6
  2. ネアンデルタールの方が個体能力は高かったけど、それによりあまり群れを作る必要がなく、そのせいで絶滅したらしい。みたいなことをやや昔聞いたが、それもまた覆されそうだな。

    • +4
    1. >>2
      身体能力の方に関してはネアンデルタール人は、
      ホモ・サピエンスに比べてがっしりして力持ちで足は遅かったらしい。
      逆にホモ・サピエンスは走るのは得意で力はそこまでではないという。

      • +3
      1. >>7
        ギャートルズのドテチンみたいに一緒に住んでいたかもね。ネアンデルタール人と意思の疎通とかどれくらいできたとか興味が尽きない

        • 評価
        1. ああ、ドテチンのことはゴリラだとおもってたけど
          ネアンデルタール人と考えた方が自然だね、力はすごく強いし
          知能はゴンと同じぐらい高い、(ただ会話能力はほぼなかった)
          にしてもあの漫画が描かれた70年以上前には
          ネアンデルタールはサピエンスの先行型としか思われていなかったのに
          園山先生の先見の明はすごいよ

          • +2
  3. 子供の頃に初めて知ったネアンデルタール人という絶滅し今はいない過去の種族の血が、世界中で一番濃く自分の中に流れている可能性があるっていうのがすごく驚くとともに感慨深い

    • +10
  4. ネアンデルタール人の再現図や像が
    混血が確定した途端猿寄りから人寄りに変わったのが
    バイアスってすげぇなぁ〜と思ったw

    • +21
    1. >>4
      それはバイアスと言うより新たな知見を
      復元に反映させただけじゃないかな。
      恐竜の復元も羽毛の痕跡一つでがらりと変わるし。

      • +7
  5. パンデミックで欧州の死者が続出していた時期は、ネアンデルタールの血がコロナの重症化を招いてるとか言っていたような。
    でも東アジア諸国の方が圧倒的に死者重症者が少なくネアンデルタールは濃い
    教えて偉い人…

    • +10
    1. >>6
      正規の企業が流してるニュースも普通に単なる主観にソース無し・不明・明かせずなんていっぱいあるからね……

      • +4
    2. >>6
      仮に重症化にネアンデルタールの血が関係するなら逆に防いでいたことになるね

      • +3
  6. ネアンデルタール人は一体何処から発生したんだ?

    • 評価
    1. >>9
      自分もそれが気になった。コロナで遺伝子研究したチームによると、ネアンデルタール人由来の遺伝子を持ってる人は中央アジアに多いみたい。そう考えると、イメージ的にインドとか…?

      • +1
    2. >>9
      ホモサピより前にアフリカを出たものの中央アジアより遠くに広がるまでは繁栄しなかったのでは?
      アフリカを出てからネアンデルタール人になったのか、出る前に進化していたけどまだ存在した痕跡が見つかっていないだけなのか

      • +1
  7. 意外。うちらが一番血が濃いのか。
    狩猟生活、ガッシリしてて力が強く、長く走るのは苦手、顔が濃い、っていうネアンデルタール人のイメージからすると
    東アジアが一番遠そうなのに。

    • +8
    1. >>11
      わいもそうおもってた、
      コーカソイドにその遺伝子が深くのこってるとばかり
      東アジア人に濃く残ってるてのは初耳だったよ

      • +3
    2. >>11
      不安遺伝子が強いのが日本人って言われているから可能性としてはあるのかね?

      ネアンデルタール人は鬱の遺伝子を現生人類に残したと言われているから。

      • +3
    3. 東アジアの薄い顔系は
      なにかもう一つの血も合流してそうだよね。

      • +1
  8. 人類の最新?最果て?は
    ユーラシアからアメリカ大陸南米へ渡ったモンゴロイドだと思うんだけど
    彼らのネアンデルタール人遺伝子はどれくらいなんだろ?

    • +3
  9. フィジカルが頑強なネアンデルタール人は地球環境が厳しくなっても狩猟採取生活を続けることが出来たが、ホモ・サピエンスは弱かったからそれでは生きられなくなり、農耕技術を発展させたとも考えられるね。
    北アフリカから中東にかけて砂漠地帯が広がっている理由は、初期のホモ・サピエンスが農耕のために闇雲に開拓しまくって土が痩せた結果だろうか?
    そしてその後ヨーロッパに移住した後は、その反省を踏まえてサステナブルな新型農耕技術を発明した?

    • -1
    1. >>14
      農耕が始まったのはむしろ氷期が終わって
      温暖な気候になってきた頃とされてるよ。
      また今に至るまで狩猟採集生活を続けてる民族もいるから
      ホモサピが弱くて狩猟採集できなかった、てことはないかと。

      あとサハラ砂漠が最大になったのは
      農耕が始まるより前の2万年前~1万2千年前頃と言われてる。
      その後数千年スパンで湿潤化・乾燥化が繰り返され
      その都度縮小と拡大を繰り返していると見られてる。

      • +3
  10. 東アジアにホモサピエンス(ネアンデルタール人の遺伝子持ち?)が到達したのは5~6万年前、南米最南端に到達したのは1万5000年前だそうだから、1万年前のニューカマー純ホモサピエンスと出会うことなく、西洋人よりネアンデルタール分を多く残しているということかな

    • +3
  11. ネアンデルタール人のDNA解析結果による復元図は、金髪碧眼だったと思うけどね?w

    • +3
  12. 東アジアの中でも日本人は最もネアンデルタール人の遺伝子を残してるって記事も読んだ

    この分野でノーベル賞を受賞した方の講演も聞いたけど、日本人はネアンデルタール人だけでなく、2種類のデニソワ人の遺伝子も多いらということだった

    であれば結局、この記事では現生人類の中東からヨーロッパへの移動によってネアンデルタール人の遺伝子が薄まったと書いてるけど、でも日本には多様な人々が大陸から後から後から列島に移動してきたのに、ネアンデルタール人より後に来たデニソワ人1、デニソワ人2、現生人類、ネアンデルタール人、これらの遺伝子が全て残ってるってことは、ヨーロッパでは駆逐してしまったけど、日本列島ではみんな絶滅せずに共存したってことになる

    日本人は人種的にはではなく人類の種類的に結構多様な人類の遺伝子を持ってるってことだよね

    • +5
  13. それは少し前にネアンデルタール人の遺伝子が色素決定遺伝子に多く残されていることが判明したので、長らく黒目黒髪だと考えられてきたネアンデルタール人にも金髪碧眼がいたのでは?という想像図だと思う
    うちにあった古い子供向け図鑑のネアンデルタール人は、黒目黒髪に浅黒い肌だけどラオコーン像みたいな顔で描かれていたよ
    恐竜が緑色でティラノサウルスがゴジラ立ちしてたと思われていた時代だけど

    • +1

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