
NASAが小惑星の試料回収に成功したのは初のこと。世界的に見ても、日本の探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」に続く3例目となる歴史的な快挙となる。
NASAとしては初、世界では3度目となる小惑星のサンプル回収
それは7年間の壮大な旅を締めくくるミッションだった。NASAの探査機「オシリス・レックス(オサイリス・レックス)」は、地球をフライバイしてから、10万キロ離れたところから手土産となるカプセルを放出。
カプセルの回収を担当するスタッフから「タッチダウンしました!」と報告があったのは、その4時間後のこと。カプセルは広大な砂漠のど真ん中にある軍用地に落下した。
パラシュートは想定より4倍高い、高度6100メートルで開き、予定より3分早く落下した。だがカプセルは無事で、小惑星ベンヌから持ち帰られた45億年前の試料が汚染されることもなかった。

その後カプセルはヘリコプターで回収され、落下から2時間しないうちに、アメリカ国防総省のユタ試験訓練場に仮設されたクリーンルームへ運び込まれた。
予定ではカプセルは月曜日(現地時間)に、テキサス州ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターへ移送され、特別に作られた研究室で開封されることになる。
Watch: NASA Osiris-REx Mission Brings Home Samples From Asteroid Bennu
持ち帰られた小惑星ベンヌのサンプルの確認はこれから
カプセルにはコップ一杯ほど(250グラム前後)のベンヌの地表の瓦礫が入っていると期待されている。この量は過去に日本のはやぶさ、はやぶさ2が持ち帰ったサンプルよりも大きいとされるが、実際のところは開けてみるまでわからない。
3年前のサンプル回収では、試料を詰め込みすぎて蓋が引っかかり、一部がこぼれてしまったからだ。
その正確な測定には数週間かかり、結果報告は10月ごろが予定されている。
これまでに小惑星のサンプルリターンに成功しているのは、唯一の日本のみだ。JAXAの「はやぶさ」「はやぶさ2」は、それぞれ小惑星「イトカワ」と「リュウグウ」から、スプーン1杯程度のサンプルを地球に持ち帰っている。Your package has been delivered.
— NASA (@NASA) September 24, 2023
The #OSIRISREx sample return capsule containing rock and dust collected in space from asteroid Bennu has arrived at temporary clean room in Utah. The 4.5-billion-year-old sample will soon head to @NASA_Johnson for curation and analysis. pic.twitter.com/Ke0PcDAKt0
今回の成功は、それらに続く3度目のもので、NASAにとっては初の快挙となる。
TOUCHDOWN! The #OSIRISREx sample capsule landed at the Utah Test and Training Range at 10:52am ET (1452 UTC) after a 3.86-billion mile journey. This marks the US's first sample return mission of its kind and will open a time capsule to the beginnings of our solar system. pic.twitter.com/N8fun14Plt
— NASA (@NASA) September 24, 2023
小惑星ベンヌ、来世紀には危険な存在となる?
地球から8100万km離れた軌道で太陽を周っている小惑星ベンヌは、直径およそ480mで、その姿は回転するコマのようだ。もともとはもっと大きな小惑星の一部だったと考えられている。ベンヌはいわば”タイムカプセル”のようなもので、太陽系が誕生した当時の痕跡が残されている。
そこから回収された試料は、地球がどう形成され、そこにどう生命が宿ったのかといった数々の疑問を解き明かす貴重な手掛かりになると期待されている。

そのサンプル回収に挑んだオシリス・レックスは、2016年に地球から出発し、2年後にベンヌに到達。それから2年ほどベンヌを観察しつつ、試料を回収しやすい場所を見定め、ついに実行に移されたのは2020年のことだ。
慎重にベンヌに接近したオシリス・レックスは、細長い吸引装置をグッと地表に差し込んで瓦礫を回収。それから帰路につき、じつに62億kmもの旅路を経て、つい先日地球に帰還した。
OSIRIS-REx Asteroid Sample Return Post-Landing Update (Official NASA News Briefing)
なお、2年の調査では、ベンヌが大きな石が積もったクレーターだらけの瓦礫の山であることが判明している。
カプセルに試料を詰め込みすぎてしまったのは、ベンヌの表面がかなり柔らかく、吸引アームが地中に入りすぎてしまったことが原因だった。
こうしたオシリス・レックスによる観察データは、来世紀には人類にとって欠かせない情報になるかもしれない。
というのも、ベンヌは2182年前後に地球に危険なほど接近すると予想されているからだ。そのとき、ベンヌの軌道をそらすためのミッションの成否は、もしかしたら今回の観測データが鍵になるかもしれない。
なおベンヌのサンプルを地球に送り届けたオシリス・レックスは、地球に帰還することなく、オシリス・アペックス(OSIRIS-APEX)と名を変え、次なるターゲットである小惑星アポフィスへ向けて新たな旅に出た。到着は2029年を予定している。
References:NASA’s First Asteroid Sample Has Landed, Now Secure in Clean Room | NASA / NASA's first asteroid samples land on Earth after release from spacecraft / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ハヤブサの頃はけなげなキャラに擬人化されたものだけど…お土産だけ投げて次の任務に立ち去ったオシリス君かっこよすぎん???!
2. 匿名処理班
やっぱ先進国はレベルが違うぜ(^o^)v
3. 匿名処理班
>>2
予算の違いの方がデカい気がするよ
どこに金をかけるかが先進国の証と言うならその通りだと思う
4. 匿名処理班
はやぶさ「待てよ!話し相手が仕事に行きやがった」
5. 匿名処理班
人類が星々を眺めて幾星霜、ようやく手を伸ばして届くようになったのだなあ
6. 匿名処理班
小惑星ベンヌにピラミッドがあるとかいう嘘ニュースに騙されたこと思い出した
たしかここにも掲載されてなかったっけ
7. 匿名処理班
JAXAも予算があったらなぁ
8. 匿名処理班
こういうの毎回思うんだけど
民家にサンプル落ちたらどうなるんかな
9. 匿名処理班
砂ボコリ持って帰ってくるのが精一杯のうちは
惑星移住なんかまだまだじゃね
10. 匿名処理班
>>1
はやぶさも余裕があれば次のミッションに移る予定だったが、度重なるトラブルで帰還するのがやっとだったから、地球の重力を振り切って別の軌道に移る事が出来なかった。
はやぶさ2はカプセルを地上に送り届けた後でも機能に余裕があるので、今は別の小惑星の探査に向かている。
11. 匿名処理班
>>1
はやぶさも計画的にはサンプル入りのカプセルだけ地球に投下して他の任務に就くはずだったけどね。はやぶさ2はかプセル投下後に小惑星1998 KY26へ向かってる
12. 匿名処理班
はやぶさ2とオサイリス・レックスの計画は協力関係にあるので
お互い持ち帰ったサンプルの一部を交換します。JAXAも楽しみにしてるでしょうね
13. 匿名処理班
サムネの帰還ポッドのマークが菊花紋に見えて不思議な親近感
14. 匿名処理班
一番最初の写真みて虚舟(うつろぶね)を思い出したw
15. 匿名処理班
はやぶさはサンプル抱えて燃え尽きたけど
はやぶさ2は現役ですよ
16. 匿名処理班
はやぶさの試料と物々交換で一部は日本にも供与されることになってるから、どんな結果が出るか楽しみ。
17. 匿名処理班
画像を見て「なんで茶釜が放置されているんだ?」と思ってしまったw
それにしても7年の歳月をかけたプロジェクトか……人生でも決して短くない時間を費やしてきた人たちは本当にすごいな。
18. 匿名処理班
ここのコメントを見て思った事だけど
はやぶさ2は知名度が無いのか?
ほぼパーフェクトにミッションをこなし
小惑星リュウグウからサンプルを持ち帰り
現在、他の小惑星に向かってる素晴らしい宇宙機やぞ
19. 匿名処理班
初代"はやぶさ"はメインミッションの途中からトラブル続きで、
予定されていた追加ミッションが不可能だったけど
メインミッションのほぼすべてをこなし、成功させている
>>15
サンプルは燃え尽きてないよ。ちゃんとリターンさせている
サンプルリターンに失敗していたら「世界初」なんて書かれません
20. 匿名処理班
はやぶさ先輩「ワシの若い頃は」
21. 匿名処理班
>>14
同じく!
22. 匿名処理班
>>8
不測の事態があっても良い様に、つまりは落着予測地点から数キロ程度ならズレても良い様に海や砂漠に落とすんやで。
23. 匿名処理班
そもそもNASAは日本に先手を取られてたのか
日本よりも予算かけてそうだけどなんでだろう?
はやぶさが実施したミッションのほうが比較的簡単だったから?
24.
25. 匿名処理班
こっちも対象が想定外の岩質でサンプル回収には手間取っていたね。
250グラムも大量のサンプル回収は大したもの。
はやぶさ2みてたらこんだけの資料を格納するのが大変なことは分かるだろ?
26. 匿名処理班
>>23
NASAとJAXAで予算格差はあっても技術格差が凄いあるわけではないし、どちらのミッションが簡単というわけでもない
ただJAXAは少ない予算の中でミッションの選択と集中をした結果、小惑星着陸が世界初だっただけの話
ちなみに日本は少ない予算でも「世界初のミッション」はわりと多い
少し前の金星観測結果の記事で出ていた"あかつき"と同じロケットで投入された"IKAROS"みたいな
ソーラーセイルを主推進装置とした世界初の惑星間探査機みたいな面白いミッションも結構ある
あと金が無いからの苦肉の策として「民生品を使った探査装置」みたいなのも世界に先駆けてやっている
27.
28.
29. 匿名処理班
>>26
なるほどありがとう
30. 匿名処理班
世界初を狙うとかISAS(JAXAの中の組織、宇宙研)に割とそんな気風的なものがあるかな。今回H-IIA47号機で打ち上げられたSLIMも今までやった国は無かった世界初の月へのピンポイント着陸を目指すという攻めた事をします。お楽しみに(勝手に宣伝)
31. 匿名処理班
日本が次に計画しているサンプルリターンは火星の衛星フォボスから
NSASはESA(ヨーロッパ宇宙機関)と共同で火星の地表からサンプルを回収する予定
32. 匿名処理班
>>13
同感、最初見た時に、おや?と思った。
33. 匿名処理班
>>11 >>12
次に出かける分のお弁当は持ってたんだよね、はやぶさくん
地球突入の時、JAXAの人の思ってた以上に燃料残ってたから
散り際が殊更明るかったっていうね
34. 匿名処理班
>>26
世界初、金星の近郊で自撮りしたソーラーセイルだね
あかつきくんがセラミックスラスタ故障で周回軌道入り失敗したから
お供のイカロスくんがいないと本当にお通夜状態だったっていう
なお、あかつきくんは6年後に無事周回軌道入りを果たして
金星データ採取中
35.
36. 匿名処理班
>>23
最も難度の高い彗星への向こうの探査機を忘れたのか
37. 匿名処理班
>>34
ソ連みたいに直接着陸してデータ送る事は出来ないが、本来と違う楕円軌道でも現代のセンサで得られるデータも有るからな…因みに初音ミクのプレートが付いてるぞ!