小惑星りゅうぐうの粒子から生命の構成要素、核酸塩基「ウラシル」を発見
 日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球からはるか遠くの小惑星「リュウグウ」で回収したサンプルから、命の不思議なかけらが発見されたそうだ。

 それは私たちが生きるには欠かすことができない「RNA(リボ核酸)」の重要な部品の1つで、核酸塩基「ウラシル」だ。

 この地球の生命のはじまりは、宇宙からやってきた”命の素”なのではないか? という仮説がある。これが本当かどうかは今のところわからない。

 だが今回の発見によって、宇宙には生命の基本材料がたくさん散りばめられているだろうことが明らかになった。

そもそも地球上の生命はどのように誕生したのか?その謎を探れ!

 私たち生命は、いったいどうやって誕生したのか? それは今のところ謎のままだ。

 だが一部の学者たちは、宇宙には生命の基本となる材料、つまり”命の素”が散りばめられており、それが隕石などに乗って地球に運ばれたことで生命が誕生したのではないかと考えている。これを「パンスペルミア説」という。

 これを裏付ける証拠はちゃんとある。たとえば、地球に落下してきた隕石から、そうした命の素が見つかっているのだ。

 ただ、こうした証拠には気をつけねばならない。もしかしたら、もともと地球にあったものがどうしたわけか宇宙まで舞い上がり、そこで隕石に出会ってまた地球に戻ってきたとも考えられるからだ。

 ところが今回、そのようなことが絶対にあり得ない遠くの小惑星で命の素が発見されたのだ。
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リュウグウのサンプル。それぞれはリュウグウの別の場所で採取されたもの / image credit:NASA Goddard/JAXA/Dan Gallagher

小惑星「リュウグウ」の粒子に生命に必要な物質を発見

 2020年12月、日本の宇宙航空研究開発機構「JAXA」が打ち上げた探査機「はやぶさ2」は、地球から3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」で手に入れたおみやげを持って地球に帰還した。

 おみやげとはリュウグウ表面の石や砂ボコリのことだ。

 北海道大学の研究チームがこうしたホコリを調べてみたところ、そこから「RNA(リボ核酸)」の部品である「ウラシル」が見つかったのだ。さらに私たちの体が代謝をするのに大切な「ビタミンB3(ナイアシン)」まで発見された。

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リュウグウのサンプルで発見された「ウラシル」と「ビタミンB3」の分子構造 / image credit:NASA Goddard/JAXA/Dan Gallagher

 RNAは、いわば遺伝子のメッセンジャーのようなもので、遺伝子に記された情報を読んで、それを体に伝える大切な役割がある。

 それを構成しているのは、「リボース」「リン酸」「塩基」の3つのパーツだ。そしてウラシルは塩基を作る材料の1つである。つまり生き物に欠かせないRNAの素材が、遠く離れたリュウグウで見つかったのだ。
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JAXAのはやぶさ2ミッションの画像で作った小惑星リュウグウのアニメーション / image credit:JAXA

やはり地球の生命体は宇宙からやってきたのか?

 リュウグウと地球は、地球7500周分も遠く離れている。だから地球の物質が宇宙に広まって、やがてリュウグウにたどり着いたとは考えにくい。

 そんな小惑星で命の素が発見されたということは、やはり宇宙には生命を作り上げる基本的な材料が散りばめられている可能性が高いということだ。

 今回の発見によって、何十億年も昔、小惑星や彗星が地球に衝突し、命の材料を運ばれたというパンスペルミア説の信憑性がグッと高まったことになる。

 リュウグウでウラシルが見つかったことは、地球の生命の起源を解明するうえで大きな突破口になるだろう。

 この驚きの発見は、地球の生命の始まりに光を当てるだけでなく、宇宙のどこかに生命が存在する可能性についても想像力をかき立ててくれる。

 さあ、生命と宇宙の謎に迫る冒険はまだまだこれからだ。

 この研究は『Nature Communications』(2023年3月21日付)に掲載された。

References:Scientists Discover RNA Component Buried in The Dust of an Asteroid : ScienceAlert / Key building block for life discovered on distant asteroid Ryugu — and it could explain how life on Earth began | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2023年03月24日 22:32
  • ID:S0D6Bdgs0 #

地球の生命の材料とか生命そのものが宇宙由来だったとして
結局その宇宙から来たやつはいつどこで誕生したのか問題が解決する日はくるのだろうか

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2. 匿名処理班

  • 2023年03月24日 22:36
  • ID:HcMUZnD50 #

これは良いリュウグウの使いですね

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3. 匿名処理班

  • 2023年03月24日 22:57
  • ID:waPLV3cy0 #

地球外から来たと言うか、他の星にも素材だけは割と普通に存在するって事かもよ?
その素材に働き掛ける物とか条件の方が重要なのでは

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4. 匿名処理班

  • 2023年03月24日 23:15
  • ID:SCAA9JgD0 #

構成元素の一部が宇宙で生成された可能性は、宇宙では生命発生の可能性に満ち溢れているって事よね

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5.

  • 2023年03月25日 02:38
  • ID:9qtvOUQA0 #
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6. 匿名処理班

  • 2023年03月25日 04:59
  • ID:EzGSnoq70 #

リボ核酸の素材は初期地球の条件下では生成されなかったのかな
宇宙でも生成されるなら地球でも生成されそうだけど条件が違うのか?

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7. 匿名処理班

  • 2023年03月25日 08:40
  • ID:4W7UMXbx0 #

命の母A

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8. 匿名処理班

  • 2023年03月25日 09:11
  • ID:Ivc.OSyf0 #

これは、生命体に含まれるような有機化合物は宇宙由来か地球由来かどっちなのか?!という観点で見るよりは、地球より遥かに有機物の合成が難しそうな宇宙でも意外にも簡単に見つかる、という部分が大事だと思う。

そういう過酷な環境でも合成されるような物質なら、液体の水で満たされた地球では更に合成されやすかったはずだし、そういう手に入りやすい物が元となって生命体が生まれたのなら、とても理に適っていると思う。

要するに生命体は特定の条件が満たされれば勝手に生成される、結晶のようにありふれた物なのかもしれない。

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9. 匿名処理班

  • 2023年03月25日 10:35
  • ID:T6Co.jok0 #

>>1
炭素や酸素のような必要な元素があって必要な条件がそろえば生命に必要な構造が自然に出来上がるみたいな感じだとかってに思ってる
この宇宙の物理法則がそういう風に出来てるような

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10. 匿名処理班

  • 2023年03月25日 20:40
  • ID:HKTQoaNH0 #

>>8
「自然の斉一性原理」という考え方ですね。自然科学においては普遍的と言える概念です。
これに基づけば、「地球だけが唯一奇跡的に生命が誕生した天体だ」などと言う一見科学的に思える説が、実際はオカルト一歩手前の非常に危うい考えだという事が分かるはずなんですよね。

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11. 匿名処理班

  • 2023年03月26日 12:41
  • ID:dWo2Rtz60 #

>> さあ、生命と宇宙の謎に迫る冒険はまだまだこれからだ。

これすき!!

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