この画像を大きなサイズで見るカナダ・オンタリオ州にあった、海洋テーマパーク「マリンランド」。2024年を最後に閉園したこの施設には、30頭ものシロイルカ(ベルーガ)が取り残されていた。
2026年7月20日、彼らの大規模な救出作戦が開始され、第1陣となる6頭がマリンランドを出発。翌21日には、国境を越えたアメリカの飼育施設に到着した。
残りの24頭もすでに移送先が決まっているほか、飼育されていた他の生き物たちも順次別の施設へと移送が始まっているという。
飼育方法に批判のあった海洋テーマパーク
マリンランドは1961年、ジョン・ホーラー氏がナイアガラの滝近くに開業した、水族館や動物園、遊園地を組み合わせたテーマパークである。
ホーラー氏は施設を大規模な観光地へと育て、2018年に亡くなるまで半世紀以上にわたって経営を率いてきた。
その後は妻のマリーさんが引き継いだが、鯨類の飼育をめぐる法規制や動物福祉問題、新型コロナ禍などが重なり、2023年には施設を売りに出した。
2024年には営業期間を短縮し、遊園地の乗り物など園内の大部分を閉鎖した状態で営業。この年を最後に一般客の受け入れを停止した。
そのマリーさんもこの年の9月に死去。マリンランド側の資金が尽き、設備や遊具などを処分するとともに、残された動物たちの移送先を探していた。
実はマリンランドでは、飼育環境をめぐる批判が絶えなかった。2019年以降だけでも、20頭の海洋哺乳類が死亡したと報じられている。
カナダを拠点に、飼育下の海洋哺乳類の福祉の改善や救出・移送に取り組む保護団体「TideBreakers」は、10年近くにわたってマリンランドの状況を調べてきた。
潜入調査や空撮によって個体数を確認するうち、姿を消したシロイルカがいることに気づき、その死亡について報道機関に伝えたという
下は今から約1年前に撮影されたシロイルカの水槽である。水は濁り、コンクリート製のプールは老朽化が進んでいた。
この画像を大きなサイズで見る水槽は非常に老朽化しています。1960年代に建設され、開業当時から使われてきた施設です。
その後、水槽には大きな改修がほとんど行われないまま、ここでは繁殖が続けられていました。
私たちがマリンランドの実態を明らかにし始めたころには、とても狭い水槽に50頭以上のシロイルカがいました。汚れや糞が絶えずたまっている状態も確認していました
TideBreakersの共同創設者で、海洋保護活動家のマルケタ・シュステロヴァさんはこう語る。
アメリカとスペインへのシロイルカの移送が決まる
カナダでは2019年、鯨類の飼育を原則禁止する法律が成立した。すでに飼育されていた個体などには例外が設けられているものの、新たに鯨類を繁殖させることなどは禁止された
これを受けて、マリンランドは2025年、残っていた30頭のシロイルカと4頭のイルカを中国の施設へ移す計画を進めたが、カナダ政府はこれを承認しなかった。
事態が切迫していたことは、2026年1月27日付のカナダ政府の資料からもわかる。マリンランドは同月21日、シロイルカとイルカについて、「移送できなければ安楽死させざるを得ない」と漁業相に伝えていた。
漁業相は1月26日、アメリカへの移送を条件付きで承認した。資料には当時の状況について、「現時点でほかの選択肢はない。輸出か死か」と記されている。
この移送の条件として、事前にカナダで資格を持つ獣医師が1頭ずつ健康状態を評価し、輸送可能であることを確認することなどが決められた。
その後、彼らの移送先や方法を検討するため、動物園水族館協会(AZA)の認定を受けた複数の水族館に協力が求められた。
そして最終的に、30頭のシロイルカのうち28頭をアメリカ、2頭をスペインの施設で受け入れる計画がまとまった。
アメリカではシェッド水族館、ジョージア水族館、シーワールドのサンアントニオとサンディエゴの施設が受け入れ先となり、スペインではオセアノグラフィック・バレンシアが2頭を受け入れる予定である。
これらの施設が選ばれたのは、シロイルカについての豊富な知識と高度な飼育技術を備えていることに加え、過去にも救出作戦に携わった経験があるためだ。
アメリカ側でも7月、米国海洋大気庁(NOAA)の海洋漁業局が、海洋哺乳類保護法に基づく緊急措置として、28頭の輸入を承認した。
NOAAは今回の移送を、マリンランドでは受けられない医療をシロイルカたちに提供するために必要な「救助活動」であると、明確に位置づけている。
この画像を大きなサイズで見る第一陣の6頭が無事も好適地に到着
2026年7月20日、第一陣として6頭のシロイルカが、アメリカ・シカゴのシェッド水族館と、テキサス州のシーワールド・サンアントニオに向かって出発した。
彼らは担架で水槽から慎重に引き上げられ、輸送用の容器に収容された後、トラックでトロント・ピアソン国際空港へ向かった。
マリンランドから空港までの車列による移動には約2時間を要したが、大きな問題はなかったという。
その後6頭は、貨物機でトロントからシカゴへ空輸された。ここから4頭と2頭に別れ、それぞれ別の新天地へ向かうことになる。
シカゴに残ったのは、27歳のアーケイディア、26歳のオサイリス、26歳のシエラ、21歳のリルエットのメス4頭である。
4頭はすでにお互いに関係を築いていたため、そのつながりを維持できるよう、一緒に同じシェッド水族館へ移されたのだそうだ。
シェッド水族館では、彼らをすぐに一般公開するのではなく、まず新しい環境への順応を優先するとのこと。
獣医師や飼育スタッフは、餌を食べているか、水槽を探索しているか、互いにどのように交流しているかなどを観察しながら、4頭の健康状態を見守っている。
この画像を大きなサイズで見る保護団体にとって水族館への移送は理想的とは言えない
長年マリンランドを調査してきたTideBreakersとしては、4頭が以前より良い環境へ移されたことは評価できる。
一方で、海洋哺乳類の飼育そのものに反対する立場からすれば、保護施設ではない水族館への移送は、理想的な結末とは言えない。
マルケタさんは、複雑な思いをこう吐露している。
残念ながら、ここは保護施設ではありません。飼育そのものに反対する団体としては、彼女たちに暮らしてほしいと望む環境ではないのです。それでも、シェッド水族館の環境の方がはるかに良いことは認めています
TideBreakersによると、現時点ではシロイルカたちを受け入れられる、実際に稼働中の保護施設は世界に存在せず、そうした施設が利用できるようになるまでにはまだ何年もかかるとみられている。
残る2頭のバーティー・ボットとフランキーも、同じ7月20日にマリンランドを出発。シカゴからさらにテキサスへと向かい、7月21日に「シーワールド・サンアントニオ」へ到着した。
残りの24頭に関しても、今後も健康状態を確認しながら、順次それぞれの受け入れ先へ移す計画だそうだ。
この画像を大きなサイズで見る他の動物たちの移送も進む
現在、マリンランドでは、動物たちの移送計画が着々と進められている。シロイルカについては、残っている24頭全員の受け入れ先が既に決まっているそうだ。
4頭のイルカについても行き先は確保されているとのこと。アザラシやアシカ、ペンギン、アメリカグマやバイソンなどは、すでに移送が完了している。
その一方で、約700頭いたシカの仲間のうち、2026年7月時点ではまだ300頭以上が残っているという。
実は一部のシカが、必要な許可や予防措置を取らずに移送されたとの申し立てを受け、カナダ食品検査庁(CFIA)が、移動に関する規則が適切に守られていたか調査しているのだそうだ。
その後の移送はCFIAの許可を受けて行われているが、残されたシカ類の最終的な移送先は明らかになっていない。
なお、世界各地には「マリンランド」を名乗る海洋公園が複数存在するが、今回のマリンランド・カナダはそれらの系列施設というわけではない。
カラパイアでも取り上げたフランスの海洋テーマパーク、「マリンランド・アンティーブ」とも、名前が同じ「マリンランド」なだけで関係はないそうだ。
マリンランド・アンティーブに取り残されたシャチやイルカのことを考えると、今回移送先がほぼ無事に決まったことは、幸いだったと言えるかもしれない。
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References: Canada arrive at Chicago's Shedd Aquarium after rescue / 4 Beluga Whales from Shuttered Canadian Park Arrive at Chicago's Shedd Aquarium After Rescue (LOOK)

















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