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人間の肘と肩は類人猿の祖先が木から降りるときのブレーキとして発達した

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(著) (編集)

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 我々がボールを投げたり、高い棚に手を伸ばしたりできるのは、類人猿の祖先のおかげかもしれない。

 人類の柔軟な肩や肘は、彼らが樹木から降りる際の自然なブレーキ機能として、進化した可能性があることが、新たな研究により明らかとなった。

チンパンジーとマンガベイの木の登り降りの映像を比較

 米ダートマス大学の研究者たちは、チンパンジーとスーティーマンガベイが、木に登ったり降りたりする数多くの動画を比較することでこの発見をした。

 スーティーマンガベイ(sooty mangabey)は、アフリカ西部に生息するチンパンジーと人間両方の遠い親戚だが、マンガベイはチンパンジーよりもかなり早く類人猿から枝分かれした。

 どちらの種も、木に登るときは肩と肘を体に近づけて曲げ、枝から枝へと素早く動いていたが、降りるときのテクニックは違っていた。

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photo by iStock

チンパンジーと人間は重力の影響を打ち消すため肩と肘を進化させた

 この発見は、チンパンジーと人間が、重い下半身にかかる重力の影響を”打ち消す”方法として、柔軟な肩関節と肘関節を備えた可能性を示している。

 その結果、細かく調整されたブレーキシステムが、高い木の上から降りるときに落下の危険を減少させることがあきらかとなった。

 スーティーマンガベイには、それほど柔軟性はなかったが、チンパンジーは腕を頭の上に伸ばして、人間が梯子を降りるように木から降りることができるという。

 こうした行動は、霊長類が重力によって下へ引っ張られるのに対して、落下を遅らせるための作戦だったのだという。

「チンパンジーもスーティーマンガベイも、関節を完全には伸ばすことなく、素早く木に登りますが、マンガベイは降りるときも同じような動きなのに対して、チンパンジーは違う動きをすることに気づきました」論文の共著者であるメアリー・ジョイ氏は語る。

「この二者の動きの稼働域が、まったく異なっていたのです」

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マンガベイ photo by Pixabay

肘と肩が発達したのは類人猿とサルが枝分かれした後

 ヒトとチンパンジーの祖先は、およそ600万年~700万年前に分かれ、マンガベイの先祖は約3000万年前に類人猿から分かれた。

 しかし、本研究は、チンパンジーとヒトの最後の共通祖先の時代には、柔軟な外肢が進化していたものの、発達したのは類人猿とサルが枝分かれした後だったことを示している。

 こうした柔軟性は、食べ物の収集、獲物を狩る、身を守るなど、特定の動きのために有利だったことが証明されている。

 これは、大型類人猿がどのように体を使って木を降りていたのかを、研究者が初めて本格的に研究したことになる。これまでは、ほとんどが登るほうが中心の研究だった。

「チンパンジーは、肩と肘の可動域が広いのに対し、マンガベイはそうではないことがわかっていました」ジョイ氏は言う。

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photo by Pixabay

 これは、マンガベイやほかのサルが、犬や猫と同じように四つ足歩行をし、洋ナシ型の深い肩ソケットをもつという体の構造をしているためだという。

また、肘の内側湾曲部が突き出ているため、関節がアルファベットのL字のようになっていて、安定性はあるが、可動域が狭い。

 博物館に所蔵されている、現存するチンパンジーの骨格の関節を分析してみると、類人猿の肩の角度が、登るときに比べて降りるときのほうが14度大きいことに気がついた。

 チンパンジーが木から降りるときは、腕は肘のところでさらに34度外側に開くことができる。

 こうした動きの変化は、チンパンジーが重力に引っ張られるのに逆らうのに役立つだけでなく、安全に木から降りるのを可能にした。

「チンパンジーは、肩や肘の筋肉を過度に緊張させることなく、木を登り降りすることができます。その結果、大きなエネルギーを発揮することができるのです」ジョイ氏は言う。

人間にとってみれば、この稼働域拡大という進化により、腕を頭の上に伸ばしたり、ボールを投げたりすることができるようになるなど、多くの利点を得ることができました。

こうした動きは、私たちの先祖が体験した進化の圧力の遺産であり、それによって、現代の私たちに多様なことができる能力を与えてくれたのです

 この研究は『Royal Society Open Science』誌(9月6日付)に発表された。

追記(2023/09/21)本文、タイトルを一部修正して再送します。

References:Downclimbing and the evolution of ape forelimb morphologies | Royal Society Open Science / Human elbows and shoulders evolved as ‘brakes’ for climbing ape ancestors | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 8件

コメントを書く

  1. 肩を骨折したときに、理学療法士に向かって「人間がヒトとして発達できたのは肩を自由に動かせたからである」などとエラソーに講釈垂れたんだけど、あながち間違っていなかったのかもしれん!
    それに対する理学療法士の返答「ヒトの指の筋肉はもっとすごいですよ」

    • +3
  2. これが最大の幸運だったよな
    この得た投擲力使って槍を放てることが出来たお陰で、人類はマンモスやサーベルタイガーやホラアナグマとかを狩ることが出来るようになって平原の王者になった

    • +7
  3. ほかの人も書いてるけど、この後投擲能力も上がるから、また進化してる
    ほかの動物はオーバースローができないんだ
    あと人の強みは長時間歩行と拳の固さ

    • +6
    1. >>3
      あ~オーバースロー、確かに。
      いくらかパッと思いつく動物で考えてみたけど、オーバースロー出来そうな動物いないもんな。
      目の付け所がシャープだ。

      • +1
  4. 登り方ばっかり研究しちゃってたってのはなんか分かる

    • +6
  5. 猫が高い木に登って降りられなくなるのは肩がないせいなのかな。
    猫が自力で降りてくる時には、腕で縋り付くようにしてずり落ちてくるのが精一杯な感じ。

    • +5
  6. それでもチンパンジーやゴリラは人間ほど肩の可動域が広くないため人間のようにボールを投げることができないんだよな
    何かもうワンクッション進化の段階がありそう

    • +1

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