
その2匹が生きていた1億700万年前の白亜紀、発掘地であるビクトリア州は極圏に位置しており、今とはまるで違う環境が広がっていた。
世界的に見ても、南極圏のような高緯度で翼竜の化石はほとんど見つかっていない。
だが今回の化石は、彼らが冬になれば長きにわたり暗闇に包まれる厳しい環境で、どうにか生きる術を見つけていたことを伝えている。
そんな翼竜のライフスタイルはどのようなものだったのだろうか? 確かな証拠は何もないが、渡り鳥のように暖かい地域に移動していた可能性も考えられるようだ。
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白亜紀の地層で珍しい翼竜の化石を発見
その翼竜の化石は、1980年代にビクトリア州メルボルンから西に車で数時間のところにある「ダイナソーコーブ(恐竜の入江)」と呼ばる白亜紀の地層で発見された。発見された化石は大きさに違いがあるため、2つの個体のものだと考えられている。
うち1つは仙骨(骨盤の中央で背骨と融合している骨)の一部だ。そしてもう1つは、第4中手骨(翼指の一部)。後者は小さいことから、オーストラリアでは初となる子供の翼竜のものだと考えられている。
2匹の具体的な種までははっきりしない。だが仙骨の持ち主は翼を広げると2メートルを超え、子供なら1メートル強だったと推定されている。

南極のような極地の厳しい環境で暮らしていた翼竜
白亜紀初期(約1億1000万年〜1億700万年前)のビクトリア州は、今とはまるで様子が違っていた。現在はオーストラリアとタスマニア島を隔てるバス海峡だが、当時は海水などなく狭い谷間だった。
そこに生えていたのはユーカリの木ではなく針葉樹やイチョウで、泣くほどユーカリが大好きなコアラではなく恐竜が君臨していた。
その空を、翼竜が飛び回っていたことは30年以上前から知られていたが、詳しいことはほとんど謎に包まれていた。
じつは白亜紀当時、オーストラリアは今よりもずっと南にあった。ビクトリア州などは極圏に位置しており、冬になれば数週間から数ヶ月の間、暗闇が続くような環境だったのだ。
そのような高緯度で翼竜の化石は世界的にも珍しい。南極で見つかった翼竜の化石は3つのみ、北半球の高緯度では足跡が報告されているだけだ。
またオーストラリアでこれまでに発見された翼竜のほとんどは、極圏にあったビクトリア州ではなく、クイーンズランド州中西部で発掘されたものだ。
だが今回の2匹の翼竜の化石は、極地の厳しい環境でも彼らがどうにか生きる術を見出していたことを伝えている。

翼竜は渡り鳥のように移住した?
翼竜がどうやってサバイバルしていたのかはよくわからない。もしかしたら定住することなく、暖かい夏の間は南下し、寒い冬になれば北へと移動していた可能性も考えられないではない。
翼竜は子供のころから空を飛ぶのが上手で、その骨は離陸と飛行によって受ける負荷に耐えることができたようだ。
だが大人とは骨の形が微妙に違っており、スピードや操縦性の点では同じではなかったと考えられる。
いずれにせよ、かつて高緯度にあった場所で翼竜の卵やその中の子供が発見されない限り、1年を通して彼らがどのように暮らしていたのか断言することできない。
それでも、謎が多いオーストラリアの翼竜の正体はいずれ明らかになるだろうと期待できる。
今の時点で、この地域で翼竜の化石は珍しいが、もっと化石が見つかるのは時間の問題であると、カーティン大学の研究者は説明している。
この研究は『Historical Biology』(2023年5月30日付)に掲載された。
References:These magnificent 107-million-year-old pterosaur bones are the oldest ever found in Australia / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
現生のコウモリも大型種は低緯度地方にしかいない。大型種で皮膜の翼は寒冷地では不利だろうから夏の渡り鳥ならぬ渡り翼竜と考えるのが妥当か。
2. 匿名処理班
もう世界中どこにでもいたと言ってもおかしくない生息範囲。それを今は恐竜の子孫である鳥類が引き継いでいるんだね。