
この混雑した道路の下り線と上り線のど真ん中に、ぽつんと佇む農場がある。ストット・ホール・ファームだ。
高速道路を走行するドライバーたちから注目を集め、SNSでシェアされるうちに、メディアでも取り上げられるようになったこの奇妙な農場は、まるで立ち退きを拒否した“ネイルハウス”のようだが、背景にはどうやら別の理由があるようだ。
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高速道路に挟まれたぽつんと農場
ストット・ホール・ファームは、イングランド北部の都市リバプールとハルを結ぶM62の高速道路の真ん中に建てられた、世界で最も奇妙な農場だ。農場の周りの6車線におよぶ高速道路は、1 日あたり 10 万人以上のドライバーが利用すると推定されているだけに、昼夜問わず車やトラックで混雑している。

image credit:Wikimedia.org
農場は、家畜が道路に飛び出すのを防ぐためと、制御不能な車両の侵入を防ぐために柵とフェンスで周囲を囲んでいる。騒音やスピードを出して走行する車やトラックに、家畜たちは慣れている様子だ。
なぜ高速道路に挟まれて農場が?
このユニークな農場は、イギリスの高速道路網で最もよく知られた10の観光スポットの1つで、その存在については様々な仮説が伝えられてきた。なかでも、もっともらしく語られているのは、当時高速道路建設のために、開発業者から立ち退きを求められたにもかかわらず、農場所有者のケン・ワイルドさんとベスさん夫妻が拒否したために、高速道路を分割する必要があったというものだ。
立ち退きを拒否し、1軒だけ取り残された農場は、まるで「釘の家(ネイルハイス)」のようではないか?と思ってしまう。
だが高速道路のど真ん中に農場がある理由は、別にあるようだ。
農場の敷地内に地質断層があるため
農場は、昔からここにあったが、実はこれまで一度も、所有者は土地の売却を求められたことはないそうだ。1960 年代の M62 高速道路の建設中、技術者たちは当時の所有者ワイルドさんの敷地に地質断層があるため、農場の上よりも周囲に道路を建設する方が現実的だと判断。ワイルドさんに、そのまま滞在を許可した。
つまり、立ち退きを迫られることなく、農場を続けることができたワイルドさんは、「立ち退きを拒否した頑固者」ではなかったのだ。
現在、祖父の後を継いでいる孫娘のジルさんは、羊飼いのポールさんと結婚し、2人の間には一緒に農場を手伝う息子がいる。
ジルさんは、メディアの取材にこのように語っている。
私の祖父は、立ち退きを拒否した頑固なヨークシャーの老人だったと語られていますが、実はランカシャー出身なのです!
ここに長く住んでいたため、単にヨークシャー訛りで話すようになっただけなんです(笑)

image credit: Peter McDermott/ Creative Commons Licence
高速道路に囲まれる農場での生活ってどんなもの?
地域のランドマーク的存在にもなっているスット・ホール・ファームでは、900頭以上の羊と20頭以上のアンガス牛が飼われている。交通状況から判断すると、この場所は道路騒音と公害の点で悪夢のような場所のように見えるが、ジルさんは「そうではない」と否定する。
三重ガラスの窓のおかげで、家の中は夜中に時折クラクションが鳴っているのが聞こえる以外は、ほとんど騒音がありません。では、空気の汚染率はどうだろうか。
実は、高速道路の真ん中に位置する場所としては、驚くほど汚染レベルが低く、空気がきれいだという。
そのため、ジルさん一家は風変わりな農場での生活を、特に気にはしていないようだ。ただ、親しい友人たちは車で30分ほど離れた場所に住んでいるので、時に孤独になることもあるようだ。
22歳で初めて農場を始めたジルさんの夫ポールさんは、次のように語っている。
実際、他の農場と同じです。自分の土地を知り、自分の仕事を知り、経営には計画を立てなければなりません。ポールさんは、動物を囲いの中で世話するための伝統的な方法として、乾いた石積みを使用している。
祖父が教えてくれように、ここにコンクリートの壁を建てても、すぐに侵食されてしまいます。ただ問題なのは、この地域が高台にあるために、うなるような強風や霧が多く発生することだそうだが、これもイギリス人なら、天気の移り変わりの早さには慣れっこかもしれない。
ヨークシャーの石は積み上げて使うのに最適です。他に長持ちするものはありません。
References:This UK Farm Is Located in the Middle of a Motorway/ written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
一方新潟にある間瀬サーキットの内側には農家の畑がある模様
2. 匿名処理班
位置的に氾濫時の遊水地だからかと思った。イギリスでも断層がずれるほどの地震が起こるのかな? wikiの年表だと大きなのは1000年以上前に一度あったみたいだが…
3. 匿名処理班
動画の音楽がなんか壮大過ぎない?笑
4. 匿名処理班
空気がそこまで悪くないならいいのかもしれないな
野生動物がどの程度いるのかはわからないけど、肉食動物に襲われることもない
5. 匿名処理班
世の中をざわつかせたR-TYPEで登場する伝説のボスを彷彿とさせる
6. 匿名処理班
某街づくりゲームで適当にエリア設定した時みたいだぁ…
立ち退かないにしても流石に迷惑被ってそうだし柵や防音改築の補償とかされてるのかな?
7. 匿名処理班
東側は中学校のグラウンド、南側は校門、西側は道路、という一軒家があってそこの住人の息子と同級生だった。近くて良いね、とさんざん言われてた
8. 匿名処理班
この道の作り方に悪意が無いか??囲わなくてもいいだろうに
大体、先に住んでたのは住民で、後から高速道路を作りたいって来たわけだろ?
拒否する権利は在る
地下鉄なんて、住宅を避けてわざわざ遠回りして穴を掘るんだ
住民を配慮しない道路公団がおかしい
9. 匿名処理班
>>8
自分の土地でもないのに拒否する権利など無い
あるのは騒音などに対する保証だけだ
10. 匿名処理班
成田空港のアレ
とは全然違った
11. 匿名処理班
これはこれで ありじゃない?
12. 匿名処理班
> そのまま滞在を許可した。
って随分上からな感じだな
13. 匿名処理班
高速道路じゃないけど、オグリキャップを輩出した、岐阜の笠松競馬場もコースの真ん中たち畑や墓地があるんだよなぁ
あれも相当変わってると思うけど取り上げられてるのあんまり見たことない
14. 匿名処理班
千葉のJR沿線にも線路にギュッと挟まれた家がある(場所は差し控える)
振動の影響か明らかに家が捻れていて心配だったので建て直された時はホッとした
線路の盛り土約1.5mに囲まれた低い土地だったから工事は大変だっただろうなー
15. 匿名処理班
>>13
姫路競馬場もコースの真ん中にテニスコートがあったりしますな。
16. 匿名処理班
意外と快適そうでよかったけど
どこから出入りするんだろ
17. 匿名処理班
>>6
記事ではまるでいい話みたいに書いてるけど、絶対揉めに揉めた末にこうなってるよね。こんな騒音と排気ガスの罰ゲームみたいな環境で酪農したくないわ。
18. 匿名処理班
>>6 すごく可哀想だと思った
お前の土地断層あるからいらないわw
周りに高速建てるねwって普通に酷い...
だから保証あったらいいね
排気ガスに囲まれた牛乳とか売れなそうだし可哀想