
このアフリカ単一起源説は、約15万年前にアフリカで誕生した現生人類の先祖が、その後世界中に広がっていったというものである。
だが『Nature』(2023年5月17日付)で掲載された最新の研究は、このアフリカ単一起源説と相反する発見を伝えている。
現代人のゲノムを過去へたどったこの研究によると、かつてアフリカには少なくとも2つの人類グループが存在しており、数万年かけて交配を繰り返した後、現生人類(ホモ・サピエンス)となった可能性が高いのだという。
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現在主流となっている人類の起源「アフリカ単一起源説」
現生人類、すなわちホモ・サピエンスがアフリカで誕生したことは、多くの専門家が同意するところだ。だが、それがいつ、どこで、どのように誕生したのかについては、いくつもの不確定要素があり、はっきりしたことはわかっていない。
有力とされているのは、約15万年前、アフリカにある単一の集団がおり、ここからさまざまな集団へと枝分かれしていったというものだ。これは「アフリカ単一起源説」と呼ばれている。

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現生人類は単一の集団ではない可能性
ところが今回の研究は、この説に異を唱えている。カリフォルニア大学デービス校の集団遺伝学者ブレナ・ヘン氏によると、アフリカ各地で見つかっている考古学的・化石学的証拠は、アフリカ単一起源説に一致しないのだという。
「モロッコ、エチオピア、南アフリカなど、遠方の遺跡で見つかった化石や、人類の暮らしを伝える考古学的な痕跡は、限られたものではありますが、単一起源説にうまく馴染んでくれません」
そうした証拠によるならば、ホモ・サピエンスは30万年前にはすでにアフリカ大陸各地で暮らしていたようなのだ。

少なくとも2つの集団が交配したことで誕生した説が新たに浮上
本当のところ、私たちはどのように誕生したのか?それを探るべく、今回の研究では、アフリカの南部・東部・西部ならびにユーラシア大陸で集めた現代人290人分のゲノムを解析している。
この遺伝子データは、アフリカ全域の多様な集団が対象となっており、これまでの研究よりもずっと遺伝的に多様なものだ。
そして分析の結果、現代のアフリカ人には、少なくとも2つの系統があることがわかった。それによると、私たちの祖先は単一のグループではなく、複数のグループが時折交わってきた可能性があるという。
アフリカで現生人類が複数のグループに分かれたことを示すもっとも初期の痕跡は、約12万〜13万5000年前のものだ。
この時、とある集団が分かれて現代のナマ人(南アフリカ、ナミビア、ボツワナで暮らす民族)の祖先となった。
だが遺伝子の変異からは、それ以前からホモ・サピエンスには遺伝的に異なるグループが2つ以上存在しており、何十万年も交配を繰り返していただろうことがうかがえるという。

ネアンデルタール人やデニソワ人の血は混じっているのか?
今回の研究ではもう1つ、私たちの親戚との関係についても興味深いことがわかっている。私たちの祖先はアフリカ大陸からほかの大陸へと進出した後で、それより先に世界各地へと広まっていたネアンデルタール人やデニソワ人のような親戚や、ホモ・ナレディのような解剖学的に大きく異なる原人と交配することもあったとされている。
だが今回の研究では、ホモ・サピエンスがホモ・ナレディのような解剖学的に著しく異なるヒト族とは子供を作っていない可能性が高いことが明らかになっている。
References:A weakly structured stem for human origins in Africa | Nature / A new understanding of human origins in Africa - McGill University / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
今生きている全ての人類は彼らの後輩というわけですな
2. 匿名処理班
単一起源だったらむしろ怖いわ 世界中に広まるなんてどんだけ無敵艦隊なんだ
3. 匿名処理班
他のすべての人類を駆逐して生き延びたのが私達ホモサピ
そして同じ人類でもまだ他者を駆逐しようとしている。
どこまで業が深いのか
4. 匿名処理班
> 現代人のゲノムを過去へたどったこの研究によると、かつてアフリカには少なくとも2つの人類グループが存在しており、数万年かけて交配を繰り返した後、現生人類(ホモ・サピエンス)となった可能性が高いのだという。
これも意味が分からないな
2つの人類グループのもとが単一起源ということじゃないの?
5.
6. 匿名処理班
チンパンジーって大人になると
筋肉モリモリの狂暴になるの
なぜなんだろう。
そっちからの亜種じゃないの?
7. 匿名処理班
当時の集団が現在で言う国単位であるならば未来では惑星間で起こり得るだろう
8. 匿名処理班
ここで疑問になるのが祖先が黒人として日本人含めた黄色のアジア人ならまだわかるとして
白人が生まれたのはどういう理由なんだろう?
アルビノみたいな突然変異が原因なんだろうか?
9. 匿名処理班
>>4
一度たもとが分かれて、その後にまた交配したのだろうけど、それを言い出すと堂々巡りになる気がします
例えばいまでも遠距離に生息してた生物(このありふれた例が現生人類。黒人・白人・黄色人種など外見が大きく違う場合でも交配可能)や、人間が手を加えていたとしても同型種は交配可能(犬や猫など、あまりの対格差以外は交配可能。あるいは馬など)です
なので一度たもとがわかれた種をどういう視線で、どこまで同一か同一ではないかと言い出すのはなかなか難しい
ただ、特定の一か所で進化したまとまった一グループのみが、人類の全ての起源ではないというだけの話ですね
>>6
チンパンジーを「人間の亜種」とみるか。人間を「チンパンジーの亜種」とみるかは観測する人類側の心情問題だけなので、
貴方が自分を「チンパンジーの亜種」とみているならば、それはそれで問題ないと思います
10. 匿名処理班
たぶん、人類は近縁者たちを融合あるいは駆逐して広まっただろうけど
気になるのは「移動した先に異なる人類がいること」だ
つまりかなり前の時期に「人類の祖先が世界中に広まっていた」から、そこでの生活に合わせた親類が居たわけで
そのあたりが不思議
ネアンデルタールとかアフリカを出た年代がわかっているが
そんなに都合よく先に出たグループが待っていてくれるわけがない
最初から異種交配がホモの戦略(いわば性倒錯)なのか
それとも「マンホールのふたに塗られたチョコレートについてきみには何が言えるか? 」なのかも
11. 匿名処理班
>>8
そりゃヨーロッパの特に北部は日照時間少なくて
太陽光吸収しやすい金髪と白い肌に変化したほうが生存しやすかったからな
反対に南欧みたいな比較的温暖なところは白人言っても別にそんな肌透き通るほど白くないしくろかみのひりつも高い
12.
13. 匿名処理班
>>11
北部インド系もいわゆる「白人」と言われる人たちと同じ系統なのは忘れられがち
南部インド系はモンゴロイド系が強いけどね
混血の割合も大きいかもだが、環境によって獲得できる性質は結構あると思う
14. 匿名処理班
>>11
日傘がそうであるように、白色は太陽光を反射しやすく、黒色は太陽光を吸収しやすいのでは?
15. 匿名処理班
>>9
チンパンジーと交配できないから
亜種ではない
ちなみににわとりといたした話はきいたことあるけどメスのチンパンジーといたした話はない
16. 匿名処理班
>>8
もともと裸のサルになる前は皮膚は白かったので環境に適応もしくはネアンデルタール人と交配して元に戻っただけかと
詳しくないけど褐色の肌は優性遺伝かな。
で、ネアンデルタール人との交配で初めて劣性遺伝子×2 で発露、と思う
一万年前のヨーロッパ人は黒人でトルコから白人が移動してきたという話も。
ナショジオに顔の復元付きの記事があった
17. 匿名処理班
>>13
南部インドの主流(ドラヴィダ系)は、
オーストラロイドではないの?
18. 匿名処理班
短期間でここまで白くなるもんなのかな人の肌って
19. 匿名処理班
>>15
亜種=交配できるではない。ただ「亜種」の用法が広かったり狭かったりすることはある
オランウータンもヒトもヒト科を構成している生物であることに間違えではない
系統的には、ゴリラやチンパンジーの方が人には近いけど
20. 匿名処理班
>>8
黒人のアルビノの子供の写真を見ると白人にそっくり
21. 匿名処理班
>>20
私が見た写真だと顔や髪の毛はアフリカ系そのものだったな。個人差なんだろうか