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地下に埋もれていた2000年前の古代ギリシャ時代の埋葬室を発見。宇宙線技術を使用

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(著) (編集)

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 宇宙線とレーザー技術によって、イタリア、ナポリの街路の地下深くに、この地域に最初に住み着いたギリシャ人の遺跡と、およそ2000年以上前のローマ時代にここに住んでいたキリスト教徒の地下墓地(カタコンベ)の埋葬室があることが明らかになった。

 この町の地下に、古代ギリシャの埋葬地があることは長い間知られていたが、なかなかそこにたどり着くことはできなかった。

 現代の最先端技術によって初めて、実際に地面を掘ることなく、地中深くをのぞきこむことができたのだ。

最新技術で地下に隠された古代の遺跡を探る

 もともとは、イタリア初の植民地クーマエとして設立され、紀元前650年頃にネアポリス(新都市の意)と改名され、現在はナポリとして知られているこの地域には、神殿、広場、多数の地下墓地があった。

 人口が密集し、絵のように美しい近代的なリオネ・サニータ地区では、ギリシャのヘレニズム時代(紀元前6世紀から3世紀)の裕福な人たちの地下埋葬室や、ローマ時代後期(紀元2世紀から4世紀)の初期キリスト教のカタコンベなど、さまざまな段階の墓の形が残っていることが知られている。

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(a) ギリシャ時代の埋葬室の断片、(b) イポゲオ・デイ・メログラーニ:壁面に描かれた果物のフレスコ画 (c) トガティ:葬送の場面を描いた高浮彫の断片 (d) 1888年にナポリの考古学者ミケール・ルギエロが描いた北壁のフレスコの遺跡 / image credit:Tioukov, V, et al. (2023); (CC-BY 4.0)

 しかし、当時の建造物の層が幾重にも重なっているため、通りの地下10メートルのところにある古代の排水溝、貯水槽、墓などを掘り起こすのは至難の業だ。

 そこで、イタリアと日本の研究者グループが、21世紀の最新技術を使って、これまで知られていなかったヘレニズム時代の埋もれた地下墓室を特定できるのではないかと考えた。

 この研究は『Scientific Reports誌』(4月3日付)に発表され、宇宙線を使ったミューオグラフィー技術を使って、未知の地下空間を見つけたその様子を詳しく説明している。

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深さ10メートルのところにある地下空間の略図。古代ギリシャの埋葬室は、1~11まで番号がつけられている。2室と3室は不明だったが、3D測量で再現された統合サイトトポロジーによって、その存在が初めてわかった / image credit:Tioukov, V, et al. (2023); (CC-BY 4.0)

古代の遺跡を照らす宇宙線、ミューオングラフィー技術

 ミューオンは、電子に似た亜原子粒子だが、より大きな質量をもっている。1936年、ミューオンが地球の大気中を通る宇宙線によって作られ、これらの小さな粒子が壁や岩を簡単に通り抜けて、広い空間で散乱することがわかった。

 この研究では、荷電粒子の経路をとらえて視覚化するために、高感度の写真フィルムを使う、核乳剤技術を利用してミューオンの飛跡を記録した。

 ゆっくりと特定の領域に到達するミューオンの数や、その方向を測定するミューオグラフィーのおかげで、人間が足を踏み入れることのできない火山の火口内や、地下空洞、エジプトのピラミッドの中までのぞくことができるようになった。

 ただし、粒子検出器を配置するには、ミューオンの動きをとらえるための戦略を入念に練らなくてはならない。

 現在の地表から10メートル下にあるヘレニズム時代のネクロポリスをスキャンすることに最大の関心が寄せられた。

 つまり、対象物がある所よりもさらに深く安定した場所を見つけて、平台型のスキャナーを設置しなくてはならないのだ。

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地下18メートルの場所に設置された核乳剤検知器 / image credit:Tioukov, V, et al. (2023); (CC-BY 4.0)

「ミューオグラフィーの最大の限界は、ミューオンは空または上半球からやってくるため、検出器を対象物があるレベルよりも下に設置しなくてはならないことです」と言うのは、イタリア、国立核物理研究所(INFN)の物理学者で研究の筆頭著者でもあるヴァレリ・ティオウコフ氏だ。

「対象物よりも下に検出器を配置するスペースがあれば、使うことができます」

 ティオウコフらは、ミューオン追跡装置を、19世紀にハムの熟成に使われていた地下18メートルにある地下室に配置し、ミューオンの流れを28日間記録し、およそ1000万個のミューオンをとらえた。

 すでに地下に存在することは知られていた、未知の構造物を特定するためには、3Dモデルが必要だった。アクセス可能な構造物を3Dレーザースキャンしたものは、測定されたミューオンの流れと比較することができる。

 3Dモデルでは見ることができないミューオンの流れの画像の変則部分は、隠れている未知の空間だと確信をもって想定することができる。

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ミューオグラフィーで3D撮影した地下墓地の3D図 / image credit:Tioukov, V, et al. (2023); (CC-BY 4.0)

ミュオングラフィーによる新たな地下墓室の発見

 ミューオグラフィーによるデータから、過剰な量のミューオンが通過したことが明らかになった。つまり、これは新たな埋葬室が存在するとしか説明できないということだ。

 その部屋の面積は、およそ2メートル×3.5メートルの長方形で、それは自然にできたものではなく、明らかに人為的に作られた空間であることを示している。

 部屋がある深さを考えると、これは紀元前6世紀から3世紀のヘレニズム時代のネクロポリスの一部だと研究者は考えている。

 裕福な者の墓と思われ、この地下墓室は19世紀後半に初めて発見された墓に似ているようだ。「トーガ(古代ローマ人の普段着)を着る者の地下墓地」や、「ザクロの地下墓地」は、両方とも、現在ナポリの地下ツアーで見学することができるようだ。

「対象物を破壊することなく、新たな墓室が存在することを特定し、発掘する見通しをたてることは、非常に魅力的です」テキサス大学オースティン校のローマ考古学者、ラブン・テイラー氏は語る。

「1世紀前に、町の北側にあるこれらヘレニズム時代の墓が発見されたとき、粘土、青銅、鉄で作られた遺物が出てきました。現代の技術を駆使して、新たな墓室を発掘するのは、興奮以外のなにものでもありません」

 だが、この地域は人口が密集していることもあって、費用や労力がさらに必要となるため、難しい考古学作業になるだろう。

 残念ながら、ミューオグラフィーでは、墓室の中までは明らかにすることはできない。「この構造では、10センチ未満の物体を解像することはできません。だから、墓室のおおよその形状はわかるかもしれませんが、遺骨などの小さなものの詳細はわからないのです」

References:Hidden chamber discovery in the underground Hellenistic necropolis of Neapolis by muography | Scientific Reports / Cosmic rays reveal 2,500-year-old subterranean burial in ancient Greek necropolis | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 8件

コメントを書く

  1. 2300年前の墓室とか国宝物の発見ありそう

    • +4
  2. 日本も地中にいろいろあると思うんだよなぁ…

    • +7
    1. >>2
      あるんだけど、工事でぶっ壊したり、工事止めて調査できてもそのあとにぶっ壊したりしてるんだよなあ…

      最後の聖域は天皇陵。さて、掘るべきや、掘らざるべきや。

      • +3
      1. >>3
        文化財保護法の適用されない宮内庁が管轄する土地なので
        「静謐(せいひつ)を犯すべからず」という宮内庁の考え方により
        何人たりとも立ち入る事は許されていません

        • +4
        1. 最近ニュースになったピラミッドの空間調べるにも使われてた技術だね。

          >>4
          宮内庁の許可が出てるとこは普通に調査してるので、そこまで厳密なものでもないよ。

          • +4
    2. 「発掘行為は破壊行為である」という格言めいたものが考古学にはあってね。
      掘る前に・掘らずに遺跡を調べることは考古学では渇望されている。
      この非破壊検査関連はもっともっと発展してほしいなあ。

      >>2
      >>3
      自分は大阪城の下が知りたいね。石山本願寺の更に下。
      難波宮との位置関係から何らかの祭場があったと思うんだよね。古墳があったとも言われているし…

      • +5
  3. ピラミッドにも取り入れてみて、全容が明らかにならないかなあ

    • +1
    1. >>7
      実際にやっている。ちょっと前の記事でも新しい空間が見つかった話があったでしょ?

      • +3

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