
粒子と波の性質をあわせ持つ光は、板に開けられた2つのスリットを通過すると、波のように進路を変えて、互いにぶつかり合うという。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、この有名な「二重スリット実験」を時間で区切られた「二重タイムスリット」にアレンジし、光の振る舞いを観察してみた。
すると光は過去の光と干渉し、周波数が変わることが確認されたのである。
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二重スリット実験とは?
1801年、イギリスの科学者トーマス・ヤングは、物理学史にその名を刻むあの有名な「二重スリット実験」を行った。2つのスリットが開けられた板に光を照射すると、光はスリットを通過してから進行方向を変えて互いにぶつかり合い、スリット板の向こうのスクリーンに干渉が起きたことを示す模様を残す。

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これによって、光には「粒子としての性質」があると同時に、「波としての性質」があることが判明した。つまり、光は坂道を転がるビー玉のようでありながら、池に石を投げたときに広がる波紋のようでもあることがわかったのだ。
その後、同様の実験によって、この奇妙な光子の性質は、電子・中性子・原子にもあることが確認されている。
つまり二重スリット実験は、量子物理学の核心である「確率に基づく理論」の礎となったのである。

時間で隔てた二重タイムスリット実験
今回、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、それを現代風にアレンジしている。二重スリット実験の場合、板に並んで開けられた1対のスリットは、いわば”空間”で隔てられている。
それを”時間”で隔てられた1対の「タイムスリット」に変えてみるのだ。もしこれで干渉が起きるのなら、光は「過去と自分自身」と干渉していることになる。
そのために利用されたのが、スマホの画面に使われている「酸化インジウムスズ」だ。この物質は、自然界ではあり得ない性能を発揮するために「メタマテリアル」と呼ばれている。
具体的には、フェムト秒(1000兆分の1秒)単位という一瞬にも満たない超短時間で、反射率を変化させることができるのだ。

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今回の実験では、レーザーを酸化インジウムスズに照射して、その反射を電光石火でオン・オフさせた。オンのとき、それはちょうど鏡のようで、光が波のように曲がったり広がったりする様子(回析)を観察することができる。
この光を反射する一瞬の状態が、時間で隔てられたいわばタイムスリットとして機能するのだ。
そしてこの二重タイムスリット実験では、「光の周波数が変わり、ある色は強調され、また別のある色は打ち消される」という特徴的なパターンが確認されている。
これは光の波が干渉しあって、強まったり弱まったりする従来の二重スリット実験と同じような結果だ。

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新技術開発や物理学の発展に期待
研究チームによると、今回の二重タイムスリット実験は、光パルスの時間構造を解明するまったく新しい方法として応用できる可能性があるという。また意外なことに、タイムスリットが想像以上に速く開くことも判明している。つまり酸化インジウムスズは、これまで考えられていより10〜100倍速くその性質を変化させられるということだ。
このような超高速で光に反応するメタマテリアルは、新しい技術の開発につながるだけでなく、量子物理学やブラックホールのような巨大な現象の謎の解明にも役立つと期待されるそうだ。
この研究は『Nature Physics』(2023年4月3日付)に掲載された。
References:New Spin on Famous Physics Experiment Shows Light Interfering With Its Own Past / Physicists Created 'Slits in Time' and Discovered 'Unexpected Physics' in Experiment / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
スリット大好き♥️
2. 匿名処理班
ん〜?これって「干渉させた」事よりも「周波数が変わった」ことが大発見なんじゃね?光の周波数は定数として時間の定義に利用されてた数値だぞ?それが「変わった」!?信じられんな。あとで原著論文に当たりたいな。
3.
4. 匿名処理班
この技術が進むと未来から過去へと通信できる・・・ってコト!?
5. 匿名処理班
フラッシュバック?
6. 匿名処理班
何考えてんだろ?
光とは光子なんだから、それ自体の過去なんぞ存在しない
7. 匿名処理班
観測者の見ている世界しか存在しないとして、私が見ている部分以外がすべて虚構だったら面白い。
8. 匿名処理班
1つの光源をスプリッターで2分割し、分割した一つをドラムに
100辧(適当w)ほど巻いた光ファイバーに入力し、その出力を
分割したもう一方の光と干渉させたらいかんの?よう知らんけど。
9. 匿名処理班
なんかもう読んでて訳が分からなくなる…
完全にSFの世界だ(@@
10. 匿名処理班
タイムマシーンが出来る未来がくるのかな。
11. 匿名処理班
シュタインズゲートくるのか
12. 匿名処理班
なるほどな完全に理解したわ
13. 匿名処理班
実験の環境が凄いね
機材まみれで何がなんだか
14. 匿名処理班
「過去の光に干渉」という言葉が説明として悪すぎる
15. 匿名処理班
>>2
カラパイアのいいところの一つに原文へのリンクがあることですね。私は原文を読んでもよくわかりませんでした。で、日本の法律による一秒の定義「セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍に等しい時間」の放射の周期が今回変化したとされる光の周波数ってことでしょうかね。
>>8
その方法もありですけど、今回は高速スイッチングできるスリットで実験してみたら従来の物理からは予想外のことが観測された(スイッチングが早い、光の周波数が変化した)ということだと思います。追試に期待かな。
16.
17. 匿名処理班
この記事が気になった人は、
「未来からのホットライン(ジェイムズ・P・ホーガン著)」を読んで欲しいんだな
18. 匿名処理班
こういう話が理解できる人は本当に頭良いんだろうなぁと感心する 馬鹿なので目に見えない事や身近でない事はなかなか理解できないw
19.
20. 匿名処理班
>>6
そうじゃないのが判明したのが二重スリット実験です
21. 匿名処理班
>>7
哲学論でよくある奴。「世界5分前仮説」もその類型ですね
22. 匿名処理班
>>20
と勝手に第三者が思い込んで広めるパターン
23. 匿名処理班
幽霊や異次元人が見えるようになるかも
24. 匿名処理班
四次元では当たり前のこと
25. 匿名処理班
>>20
嘘を信じて嘘を広めないようにね
ちょっとは自分で考えような
考えても理解できないってかw
26. 匿名処理班
>>22
そういうこともあるんか。その詳しい解説か資料を教えてくれると嬉しいんだが
27. 匿名処理班
>>26
光とは光子なんだから物体である
物体に過去なんぞ存在しない
これで分からなきゃどんな資料読んでも無駄
28. アユラ
時空の歪み?が本当に出来るんですか?
29. 匿名処理班
>>22
>>25
>>27
光子は粒子と波の両方の性質を持つととっくに確定されています
知識の更新を行ったほうがいいですよ
30. 匿名処理班
>>26
その人は光が粒子と波の両方の性質を持つということを知らないあるいは認められないで適当なことを言ってるだけの人です。
さらに言うとおそらく光の粒子である光子をPM2.5みたいなサイズのものと勘違いしている。
まあどちらも「粒子」って言葉使ってるのも勘違いの原因なんでしょうけど。
そもそも光子は素粒子の一つであって、微細物体である粒子つまり分子レベル以上のものとは全然大きさが違う、量子力学の世界なんですよね…
つまりID:LRyxAFm90氏はそこから理解しないと、光が通常の物体の「いわゆる粒子」とは異なる挙動や性質をするってことが判らないと思う。
ていうかここまでの説明である程度わからないと、彼はどんな資料読んでも無駄な人だと思います。(はからずも>>27で自分が言ってることが跳ね返ってきている)
31. 匿名処理班
これって光源を100〜1000テラヘルツでスイッチング(変調)したって
ことじゃないの?変調された光源はその固有周波数の上下にサイドバンドを
持つようになるから、固有周波数をfo,スイッチング周波数をfsとすると
3つの周波数fo-fs,fo,fo+fsが存在するんじゃね?
32.
33. 匿名処理班
つまり過去からのフラッシュ攻撃を食らうんだな?
34.
35. 匿名処理班
正直分からんかった(^^ゞ
36. 匿名処理班
たーねぇい・・・がんどぅむ!
37. 匿名処理班
>>26
シロート解説なので、若干怪しいですけど……
仕組みは、発光部→スリット→観測部と三つに分かれて、間は真空です。スリットは平行に二本あります。
まず粒子の性質ですけど、チョロく簡単に言えば発光部からスリットを抜けて直線状の観測部に光が届くし、スリットの隙間でないところでは跳ね返ることで粒子の性質が説明できますね。
光の波の性質のほうは、回折を理解してください。仮に上記の装置を水面に浮かべて発光部を波発生装置とし、スリットに波が当たるとどうなるでしょう?たぶん反対側ではスリットを中心に波紋が生まれるんですね。このスリットで波が曲がることを回折といって、光の二重スリット実験はスリットの直線状の先だけじゃなくてその周りにも光が届いたことがわかり、しかもスリットが二本あることで両方からの波が大きく当たるところと小さく当たるところが出てこれを干渉縞というのですが、それが観測されたので光には波の性質もあるということが確定したのです。コレ、日本の浜松フォトニクスというカミオカンデとかの光電子倍増管をつくったところが実験してます。
今回の記事の実験はさらに発展形でちょっと様子が違うぜという結果の報告です。新しい発見なのか、実はなんかミスっているのか、新しい発見ならなぜそうなるのかなどなど今後に期待ってことです。
38. 匿名処理班
鏡にぶつかった拍子に偽物がヌッって分裂して出てきて、入れ替わりに自分は鏡の中に閉じ込められてる表現あるじゃん(偽物は振り返ってニヤリ)
あれのリアル版って事でいい?
ふつうの鏡じゃ反射するのみで向こう側に抜けられないけど、メタ何とかを使うと反射する瞬間に透過モードに切り替える事で、透過したやつと反射したやつに分裂させられると
これでなぜ干渉が起こるのか詳しい人教えて
分裂してもそれぞれ通る経路は別のように思えるのだが