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動物にも個性がありそれが科学者を惑わせる。その解決方法とは?

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 あなたはワンコが大好きだ。好きで好きで仕方がない。あなたがこれだけ好きなのだから、きっと人類全体が犬派だと言ったら、それは正しい話だろうか?

 そんなはずはない。それはあなたの特性であり個性なのだ。人類全体の話ではない。

 じつは動物の研究者たちもこれと似たような問題に直面している。彼らが日々観察している動物は、思っている以上に個性豊かなのかもしれないのだ。

 だとしたら、特定の動物を用いた研究結果は正しいといえるのだろうか?

 これを解決するためにとある学者はもっと動物の個性に注目しようと、STRANGE(ストレンジ)と呼ばれる解決策を提唱している。

それは動物全体の実力なのか?その個体だけのものなのか?

 数年前、英セント・アンドルーズ大学の生物学者クリスチャン・ルッツ氏は、当時研究対象だったカレドニアカラスをきちんと評価できているのか、疑問に思うようになった。

 彼がやっていたのは、丸太にクチバシが届かない深さの穴を開け、そこにエサを隠すという実験だ。

 もしも野生で捕獲したカラスが道具を使って見事それを手に入れられたら、課題クリアということになる。

 このとき各カラスにつき90分ほど観察し、時間内にできない場合はデータセットから外した。

 そしてルッツ氏は、ふとこう思ったのだ。「もしや自分が評価しているのは、見慣れぬ丸太に物おじしない勇敢なカラスだけなのではなかろうか?」と。

 そこで実験のやり方を変え、今度はカラスに1~2日ほど余裕を与えて観察してみることにした。すると、これまで躊躇してたカラスも普通に課題をクリアできることがわかったのだ。

Complete manufacture sequence by an immature crow

 もっと極端な事例として、とある有名な研究がある。それは1950年代に心理学者のハリー・ハーロウが行ったアカゲザルの実験だ。

 この実験ではアカゲザルの赤ちゃんを母親から引き離し、かわりに針金で作った無骨な母親もどきを与えている。アカゲザルの赤ちゃんは母親もどきに愛着をしめした。

 その結果からは、人間などの赤ちゃんにとって愛着がいかに大切か判明したとされている。

 だが母親から無理やり引き離されるというひどい経験をしたサルの赤ちゃんの行動は、本当に赤ちゃん一般について正しいことを語っているのだろうか?

  この実験から言えるのは、せいぜい心に傷を負ったサルの赤ちゃんについてだけなのではないだろうか?

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photo by iStock

動物の個性問題に対応する解決策「STRANGE(ストレンジ)」

 人間と同じく、動物にだってそれぞれの個性や人生(動生)経験というものがある。カラスの事例からもわかるように、それらは実験の結果にも影響する。

 だとすれば、これまで発表されてきた動物の行動に関する研究は、種全体については何も述べておらず、かなり偏ったことを指摘しているだけなのかもしれない。

 これは、動物の本当の姿を知りたいと願う研究者にとっては大きな問題だ。

 そこでルッツ氏と同僚のマイケル・ウェブスター氏が、この問題の解決法として2020年から提唱しているのが「STRANGE(ストレンジ)」だ。

 STRANGEは和訳すると「変」という意味で、これまた変な名前だが、「社会的背景(Social background)」「捕まえやすさと自己選択(Trappability and self-selection)」「飼育歴(Rearing history)」「順化と慣れ(Acclimation and habituation)」「反応性の自然変化(Natural changes in responsiveness)」「遺伝的構成(Genetic makeup)」「経験(Experience)」の頭文字をとったものだ。

 たとえば、実験用の魚をつかまえるのに罠を使った場合、かかるのは怖いもの知らずだったり、経験が少なかったりする個体かもしれない。これが「捕まえやすさ」だ。

 あるいはキジの場合、大きな群れで暮らしているほど学習課題(どの穴に餌があるのか当てるなど)が得意であるという報告がある。

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キジは大きな群れで暮らしているほど、学習タスクが得意な傾向がある / pixabay

 また、人間が飼育するハエトリグモは、野生の個体に比べてエモノへの関心が低いことも知られている(飼育歴)。

 さらにミツバチは朝と夜だと、朝の方がよく学んでくれる(反応性の自然変化)。

 つまりSTRANGEとは、こうした動物の行動に影響を与えそうなそれぞれの個性を考慮しようというフレームワークなのだ。

 動物の研究からあらゆるバイアスをなくすことは無理かもしれない。

 それでも研究結果に影響を与えそうな要因をきちんと説明するべきだというのが、STRANGEフレームワークのポイントだ。

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人間の心理学の分野でも動物行動学と同じような問題がある / unsplash

動物の個性に考慮した「STRANGE」は広まりつつある

 実際、STRANGEは徐々に広まりを見せつつある。

 たとえば動物行動学の専門誌『Ethology』では、2021年にこのフレームワークを正式に採用している。

 また最近では、人間心理学の分野でも注目されているという。というのも、そこでも動物行動学と同じような問題に直面しているからだ。

 これについて心理学者のブライアン・ノセック氏は、「人間のサーフィンに対する関心を調べるために、カリフォルニアのビーチで調査を行ったとしても、その結果から人類全体について言うことはできないでしょう」と語っている。

 理想的を言えば、きちんと人類全体を代表するようなサンプルを集めるべきなのだが、それは難しいのが現実だ。だから次善策として、具体的にどのようなバイアスがあるのか考察しておくのだ。

 そのためにSTRANGEがピッタリなのだ。

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ヤドカリですらそれぞれの行動パターンは独特だ。これまで科学者たちはそうした”個性”を無視してきた / pixabay

 このアプローチは研究者だけでなく、動物にもメリットがある。

 たとえば、ルッツ氏のカラス実験では、内気な鳥に余裕を与えてやることで、それだけ多くの鳥からデータを取れるようになった。

 それはうまく実験をデザインしてやれば、捕獲せねばならない野生動物の数を減らせるということだ。

 そもそもSTRANGEは、動物をロボットではなく、個性のある存在として見ようということだ。ヘテンコであっても、科学者も動物もシアワセになれるアプローチなのだ。

References:Animal personalities can trip up science, but there’s a solution | Ars Technica / written by hiroching / edited by / parumo

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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この記事へのコメント 30件

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  1. 何書いてるのかわからんな
    平均を無視して、個々の評価なんて意味はない

    STRANGEという単語を連呼しているだけの記事

    結局STRANGEって具体的にどうやるの?

    1. >>1
      ちゃんと書いてありますよ。記事を読んで分からないならここで説明しても分からないでしょう。読んでないなら読んでからコメントしましょう。

    2. >>1
      >研究結果に影響を与えそうな要因をきちんと説明するべき

      って簡潔に説明してるじゃないか

    3. >>1
      読解力がないってことをこんなふてぶてしくアピールすることある?笑っちゃったじゃん

      1. >>16
        ああいう人のレスバを観察してると「俺に分かりやすく説明できなかった向こうが悪い」っていうロジックで
        頻繁に見かけるものの個体差は特にない

    4. >>1
      >>平均を無視して、個々の評価なんて意味はない
      逆だ。
      その種を代表する標準的な個体なんて存在しないんだから実際のデータは個々の個体から得るしかないが、動物において平均を得るのに十分なサンプル(量的サイズにも質的偏りの無さにも)を得るのは事実上不可能だから、データの基となった個体が標準からどのようにズレている可能性が高いかを考慮に入れるべきだというのがこの主張だ。

    5. >>1
      簡単に例えると、特定政党支持者だけが集まる集会で
      支持政党のアンケートを取って、その結果が国民全体
      の支持政党の平均値だと結論づける愚を犯してないか
      って話じゃないの

    6. >>1
      とは言え難しいのもわかる

      今までは個体差はノイズとしてランダム化するだけだったが個体差にも傾向があるとすれば、それを頑健な変数として統計モデルに組み込むことが可能になる

      そうすればモデルの予測する世界がもう少し真に近づくだろう

  2. 人間の物差しだけで他の動物の理解なんて無理だと思う。
    こういう視点で研究するのはいいことだ。

  3. そりゃ個性くらいあるだろうけど、人間の場合はどうやってんだろう
    単にサンプル数とか増やしているのかな?
    それとも同様にSTRANGEとやらを考慮してるのか?
    それと同じような考え方でできないのかね

    1. >>3
      サンプル数を増やすでしょ? そうすれば個性があっても平均値が導き出される
      人間での標本誤差を小さくするのには「100人 vs 400人」問題みたいなのがあるけど
      動物の場合。例えばワンコの実験で100匹 or 400匹という数をサンプリングできるかといったら難しい
      しかも種によって違う可能性もあるから、特定犬種についてその数を調べないといけない…

    2. >>3
      母集団の属性が偏らない方法を考慮した上で無作為抽出したり、
      擬似相関として影響を与えやすい属性(人種・年齢・所得水準など)は補正かけて加重平均を出したり、一定の配慮はしてあるかと。

  4. 個性は種の存続にあたって、凄く重要だから生物全てに備わっているはず。種全てが同じ方向向いてたら何かあった時簡単に絶滅しちゃうもんね。
    なのでここに気づくのは「今更」感はある

    1. >>5
      そういうのは非科学的だからって長らくタブー視されてたんよな
      ダーウィンが、動物は人間と量的には異なるが質的に同じ思考を持ってると指摘してたんたがなぁ

    2. >>5
      個性の存在自体は昔から知られてたけど
      それが今まで考えられていた以上に大きい、って話では。

      個体差の程度も種によっても違うだろうし
      定量的に評価する仕組みを作るのは容易ではないだろう。

  5. 研究って端からそう言う物なのでは
    動物だろうが何だろうが数検証してから結論出すのが研究と言う物だと思ってるぞ
    同じ条件下も違う条件下もどっちも大量に必要

    1. >>8
      動物の場合、その複数条件下からデータを得るってのが難しいからそれに起因するバイアスを最初から考慮に入れましょう、って話。
      例えば野生動物の行動や反応は、捕まえたり設置カメラ等で撮影されたりされた個体のそれから調べるしかないが、その時点で警戒心の薄い個体だけしか対象に出来ていないというバイアスがかかっている可能性がある。

      ※9
      >>「個性がある」事を前提として研究を組み上げていけば、より実像に近づけるんじゃないかな?
      それがこの人の主張だな。

  6. 「犬が賢いのは人間が犬が賢い事を前提にテストを組んでいるから」みたいな話が昔あった気がする
    何らかの思い込みが全体の方向性を歪ませるのはどんな分野でもあると思うけど、それを排除するのはなかなか難しいと思う
    ならば「個性がある」事を前提として研究を組み上げていけば、より実像に近づけるんじゃないかな?

  7. ニホンザルの生態研究で
    日本の学者が、個体に名前を付けるところから始めたのを
    それまで個体性を軽視していた欧米学者らも追随したという話があったような気がする

  8. 人間も大まかには左翼思想と右翼思想という相反する思想の人々が混在する社会でかたち作られているわけで、
    程度の差こそあれ、人間以外の生き物にも、人間と似たような相反する思考・行動する個体が広く混在して形成されていると考えるのは妥当な捉え方だと思う。

  9. そんなに小難しく考える必要あるのか
    ポメラニアンを2頭飼ってるけど性格が全く違う

  10. 猫の多頭飼いを経験した人なら分かる
    個々で性格が全く違うw

  11. ま、ここまでやっても研究者自身が変わり者なので意味ないんですけどね

  12. 私の人生では 半ダースの犬と1ダースの猫との付き合いがあったが 1匹として同じような子とか似た子はいなかった。動物でもそうなら人間はもっとそれぞれ違うはずだと思う。

  13. ヨーロッパ人って結構雑いよね。

    そんな事、日本の霊長類学者なんてずっと前に知ってただろう。
    心理学の分野でもそうだが、白人って個人個体差もそうだが、自分達の文化差すら範囲に入れないで断定している結論とか多い気がする。
    誰でも意識のフィルターバブルと言うか、自分の認知を客観・相対化して理解をする事が苦手だが、それがキリスト教圏って特に顕著な気がする。

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