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廃坑を「重力バッテリー」として利用することで、世界の電気をまかなえる可能性

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(著) (編集)

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 鉱山の資源が枯渇すると地下に掘った穴や坑道は使用されなくなり「廃坑」となる。目的の資源はとれなくなってしまったが、また別の使い道があるという。

 風力や太陽光のような再生可能エネルギーの課題の1つは、余分に作られた電気をどうやって溜めておくのかということだ。

 その解決法として、利用されなくなった廃坑を「重力蓄電システム」として再利用することができるという。

 国際応用システム分析研究所が提唱するアイデアでは、まず余った電気で砂などの重りを廃坑のリフトで持ち上げる。そしてエネルギーが必要になったら、リフトごと重りを落下させてタービンを回し、これによって発電する。

 つまりは余剰電気を位置エネルギーとして蓄えておき、重力によって発電するのである。

古くて新しい「重力蓄電システム」

 じつは重力蓄電システムは、古くて新しい技術だ。たとえば昔からある代表的なものとして、ダムの「揚水発電」がある。

 ダムでは夜間など電力需要の低い時間帯に、余った電力で水を上に組み上げておく。昼になったら水を下に流し、それによって回転するタービンで発電する。今回の廃坑を転用したシステムも基本的にはこれと同じだ。

 こうした重力蓄電の優れている点は、普通の電池のように自己放電しないところだ。

 普通の電池ならば、使わなくても放置しておくだけで、少しずつ電気が減ってしまう。

 だが重力蓄電の場合、エネルギーは物体の位置エネルギーとして蓄えられるので、放置したからといって減ってしまうことはない。

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photo by Unsplash

廃坑を重力蓄電システムに転用

 一方、廃坑を重力蓄電システムに転用しようというアイデアには、それならではの魅力がある。

 1つは、安価に利用できる廃坑がすでに世界中に無数に存在することだ。

 廃坑とはいえ、ほとんどの場合、基本的なインフラは整っており、電力網にも接続されているので転用も楽だ。

 もう1つの魅力は、地域社会に大きなメリットがあることだ。

 一般に、鉱山が閉鎖されれば、大勢の失業者が出る。もしその地域が社会経済を鉱山に大きく依存していた場合、それは壊滅的な打撃になるだろう。

 だが閉山してからも、蓄電システムとして利用されるのなら、そうした悪影響をずっと小さくできる。

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photo by Pixabay

世界の電力をまかなえる大きな可能性

 今回、提案されている「地下重力蓄電(UGES)」では、まず電力需要が少ない時間帯に、廃坑のリフトとコンテナで大量の砂を上部まで運んでおく。

 そして電力が必要になったら、砂入りコンテナをリフトで下降させる。このとき回生ブレーキを使って発電し、電気が必要な各地へと送電するのだ。

 研究チームの試算によると、地下重力蓄電のコストを1キロワット時に換算すると、1~10ドル(130~1300円)であるという。

 ほとんどの廃坑は中国、インド、ロシア、米国に集中しているとのことだが、その効果は絶大。世界全体で7~70テラワット時を発電できる可能性がある。

 ちなみに、2021年の世界のエネルギー消費量は約25テラワット時。まさに世界の電力需要をカバーできるほど、電気を蓄えておけるのだ。

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脱炭素社会へ向けての革新的なアイデア

 まだ初期段階のアイデアだが、再生可能エネルギーをどう貯めるのかという課題に、大きな影響を与える可能性がある。

 研究チームの次のステップは、より大きな規模で実現可能性を検証することであるそうだ。

 研究チームのベヘナム・ザケリ氏は、廃坑を蓄電システムに転換するというアイデアについてこう述べている。

脱炭素社会を実現するには、既存のリソースを活用した革新的な解決策に基づき、エネルギーシステムを見直す必要があります。

廃坑を電池に転換するというアイデアは、身の周りにたくさんある解決法の一例です。使い方をただ変えるだけでいいのです

 この研究は学術誌『Energies』(2023年1月11日付)に掲載された。

References:Abandoned mines could be turned into gravity ‘batteries ‘that could power the entire planet / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 54件

コメントを書く

  1. 例えが悪いがハムスターの回し車を有効利用するという考えか
    時々回し過ぎてハムスターが吹っ飛ぶけど、今回の場合も
    事故って落下するなどのトラブルは大丈夫なのかな

    • +4
  2. 重力発電はあくまで蓄電であって発電ではないからな
    そこを踏まえれば既にある廃坑使うのは良いと思う。
    あとは持ち上げるときのエネルギーなんとかなんないかな

    • +10
    1. >>2
      そだね、電気安いときに、じゃなくて廃食用油をバイオジェット燃料に最近してるみたいだし、その辺?
      不安定な太陽光よりはよっぽど。

      • -3
      1. >>7
        いやその太陽光みたいな不安定だったり変動する電気をためておくことこそ蓄電の意義なんだよ
        昼間や晴れの間に発電しといて夜や曇の日に使うの
        風力や潮汐でも同じ

        • +12
      2. >>7
        いやその太陽光みたいな不安定だったり変動する電気をためておくことこそ蓄電の意義なんだよ
        昼間や晴れの間に発電しといて夜や曇の日に使うの
        風力や潮汐でも同じ

        • 評価
    2. >>2
      記事読んだのか? コレ元々蓄電装置として使うってアイデアであって発電装置として使うって話じゃないぞ?

      >>10
      いやコレ既にある孔を利用するって話であって新しく孔掘るってわけじゃないぞ。
      新しく孔掘るんだったら別に廃坑がある場所にこだわらんでもいいやん。

      • +1
    3. >>2
      モヒカンに監視された奴隷が回すのはどうだろう?

      • 評価
    1. >>3
      なので、検討したのは4百万から4千万トンの砂の重りと、断面積が0.15から1.5平方キロメートルで深さ200 メートルの縦坑って、日本じゃ無理っぽいわ。

      • +2
      1. >>27
        思ったんだけど海でやれば良くね?浮力の分とか水の抵抗とかで数値変わるけど、何千メートルでもいけるし。

        • 評価
        1. >>39
          海でやるとなると陸地の逆で、浮きを海中に沈めると言う事ですかね
          ただ、海水に浸かりっぱなしだとメンテナンスコストがかかりそうですね

          • 評価
  3. この手の蓄電機って最近よく聞くし実用化もされてるみたいだけど、可動部のメンテが大変だったりしないのかな。

    • +4
  4. 一枚目の画像でくれりっくさんが囚われてるのかとか一瞬思ったワイ。

    • 評価
  5. 廃坑って縦に深く掘ってるイメージがあんまし無かったが・・

    • +8
    1. >>8
      だよね?
      露天堀りの採石場なら縦に深いだろうけどさ

      • +1
  6. 昔の時計みたいに、オモリを持ち上げてゆっくり落ちる力でとか考えたことあるある。

    • +2
  7. これって実用になるエネルギーを蓄電するには、複数の縦穴を開ける必要があるだろ
    窄掘で地盤がもろくなっている廃校で、そんなキケンな事出来るの?

    • -7
  8. 揚水式も限度があるしメンテに金がめちゃかかるし決壊でもしたら大変だから、規模は小さいけどこっちの方がリーズナブルではあるんだろか。
    あと、カミナリが落ちる度に重りが上がったら面白いけど制御できる技術がないんだよな。

    • +4
  9. 小規模な蓄電で重りを持ち上げるのは聞いた事があるけど、
    塔を作るより今ある穴を使った方がいいというのは納得ですね。天候の影響も無いし。

    • +7
  10. 上手く行かないだろうなぁとは思う
    ただアイデアは面白い

    • +5
    1. >>13
      実際に使える廃鉱は少なそうよね。崩れてたり、水が貯まってたり、有毒物質が飛散してたり、うまく使える縦穴が少かったりで。そこに大規模な手入れしたら採算乗らないだろうし。

      ど田舎山の急斜面に廃線から引っ剥がした中古レールでも引いて、同じく中古客車や貨車にコンクリか土砂でも詰めて同じことしたほうがよほど管理楽そう。ケーブルカーあたりのノウハウも転用できるだろうし、採算合わすのも楽そう。

      • +4
  11. マクロスのグランドキャノンは重力エネルギーだったよな。

    • 評価
  12. 結構な質量を落として回生ブレーキだから負担も大きいだろうしメンテ費用もかかるんじゃね?
    めぼしい鉱石が取れなくなったところでもガスだまりは発生するだろうし
    考えて楽しむもので実用化は二の次って感じなんだろうか

    • -3
  13. 水力発電で似たような事してる例があったような

    • -2
    1. >>16
      揚水発電設備は、たいていの水力発電ダムに付いてるよ

      • +1
  14. 今年実地でのテストを始めるらしいオーストラリアの会社の場合だと、そのテストサイトでは深さ300~400mにある坑道への換気シャフトを使うんだとか
    都市部では高層ビルのエレベーターを使用するアイデアもあるんですね

    • +4
  15. あーなるほど廃鉱をインフラ施設として生まれ変わらせるって発想か いいね

    • +7
  16. ジムで運動するぐらいなら重り担いで10階ぐらいまで登れば発電できるのに
    発電ジムなんて作って運動による発電量競えばやる気出そう

    • +5
  17. 鉱山って、よく探検してるような洞窟みたいな横穴のイメージだけど、コレを効率的にやるなら縦穴じゃないと出来ないんじゃ…

    横穴でもイケるのかな?
    だとすれば、原発や太陽光パネルみたいに新しい何かを作ったはいいけど処分に困るみたいな事にはならなそうでいいな。

    • +1
  18. 研究チームの試算によると、地下重力蓄電のコストを1キロワット時に換算すると、1~10ドル(130~1300円)であるという。

    高すぎだろ。
    普通に発電したほうが安い。

    • -4
    1. >>26
      「余剰電力で」とあるのをどうして読まないんですか?
      上の方の「穴を掘る危険性」とかもそうだけど何か言う前に記事を理解しようね…

      >>29
      「水素」でもいいけど水素はそういった手法で造られてるところも多い
      あとその水素を使う発電施設がなければ、施設を新規につくるのが手間だろうし
      なにより水素を貯蔵・維持する手間暇や費用を考えたら
      すでにある廃坑を利用できるこの発想の何が悪いかがわからない

      • +1
      1. >>35
        廃坑は水没するんだなぁ。落盤もするし。メンテ費用考えたらそうそうペイせんよ。

        • +2
  19. 入力より出力が大きくなることはないから、どのみちコスパは悪いよね
    非常時にちょっと使うくらいだと思う

    • 評価
  20. 余剰電力で水素を製造すればいいじゃん。
    水素なら車に使えるし都市部に水素発電所を作ればいい。

    廃坑から都市部まで送電網を作らないといけないし
    送電ロスも馬鹿にならない。

    • 評価
    1. ※29
      電気エネルギー→水素の変換効率は70%程度
      製造した水素から発電を行う場合、現在最も効率の良い発電方法を使用しても変換効率60%程度、総合の蓄電効率は0.7×0.6×100=42%程度である。
      記事の様な力学的蓄電装置の場合、電気エネルギー→位置エネルギーで効率90%
      放電する場合、位置エネルギー→電気エネルギーで効率90%、総合効率は0.9×0.9×100
      =81%なので水素エネルギーよりずっと効率は良い。

      ※39
      海を使う力学的蓄電方法も考案されてはいるが、水中で力学的装置を利用する場合は腐食が大きな問題になる。腐食問題は海流発電や波力発電が実用化されない原因にもなっている。

      • -1
      1. >>44
        送電ロスがマルっと抜け落ちてるんだが、どうよ。
        序に言うなら使いやすさ、限定される機会、用途、費用を考えたら一方的に良いとばかりもいかんぞ。

        • +3
  21. 逆に昼間の日中にソーラー発電で揚水する
    というパターンも有りやで

    • +1
  22. 大概可動部分があるシステムはそこのメンテが大変。
    風力発電のでかい風車なんかいい例。ましてや環境の厳しい地下ではね。

    • +2
    1. >>31
      発電なんて風力だけでなく火力も原子力も水力も可動部が必須だろ、タービン回さなきゃならないんだから。

      それにしても>>37やら>>38やらといい、何でこんなに記事本文どころかタイトルすらまとめに読んでないヤツばっかりなんだ?

      • +1
      1. >>40
        >>31が言ってるのはデカい可動部あるからただでさえメンテが大変なのに、さらに環境が悪くてメンテにコストがかかりそうな地下でそれやるのは長期的コスト踏まえた採算が取れるのか?という懸念だろ
        ちゃんと読んでないのはお前の方

        • +1
  23. 廃坑に圧縮空気として貯めるやり方ならあちこちで研究されてますね(CAES)

    • +1
  24. スポーツジム発電とかの方がコストは低そう

    • -1
  25. スプリガンのボーマン教官が出てくる話で、似たような原理でエネルギーを蓄えてる遺跡が出てきたな。

    • 評価
  26. 稼働率のことが全く考慮されていない

    電力需給のピーク時間帯は?
    冬季は、暖房の使用量が多くなる午前(8~11時頃)と照明や家庭用需要の多くなる点灯帯 (17~20時頃)に需要のピークが発生

    稼働したら即充電できないのだから、需要が下がるまで待たなくてはいけない
    よって1日に2回しか稼働できない

    つまり全く役に立たない

    • -3
  27. 放棄された廃鉱山をメンテして何千トンって砂をホッパーに入れて吊り下げて、いざって時に落としてその重さで回生ブレーキ回して発電。
    一回落として発電できる量なんて知れてるんじゃね?
    1キロワットあたりのコストも出してあるけどいざ実際に運用始めたら絶対想定の何倍もコストかかりましたとかやるだろ。
    まさか落とした砂を再び持ち上げるための余剰電力コストしか考えてませんとかじゃあねえだろうな。
    最悪発電所が火事になったとか緊急事態用の蓄電池ってレベルなんだろうけどそれにしても信頼できるかというとな。

    • 評価
  28. オーストラリアの論文なのであちらでの休止石炭鉱山再利用の実用性や投資に値するかがまずくる話なのでしょう。すでに動いている各会社の記事読むと可能性としての候補地も3桁なりあるようですし将来性はあるのだろうか。
    日本の石炭はオーストラリアにたよってきてますしね。炭鉱再活用・開発が始まる事での現地住民や環境への影響がないってこともないでしょうから負担のほども気になるところ。

    • 評価
  29. 中学理科を思い出しての演習問題。
    1世帯、1時間に1kWh=3.6MJ使うとして、
    竪坑が500mなら、その分の蓄電に必要な重りの質量mは何kg?
    ただし摩擦その他のロスはないものとする。

    mgh=9.8×500×m=3600000
    ∴m=約735kg
    これでやっと1時間分。

    一家庭に一つ大型ダンプサイズの竪坑が必要じゃない?
    位置エネルギーでエネルギーを蓄えるのは効率悪そう。
    普通に化学エネルギーに集中投資しようよ。

    • 評価
    1. ※47
      充電媒体のコストを考える。但し媒体のみの価格を考え、付属装置のコストは考えないとする。
      ・リチウムイオン電池の価格は1.5Wh/100円、1kWhでは66,600円となる。
      ・500mの位置エネルギーで鉄スクラップを錘とする場合、鉄スクラップは50円/1kg。
       1kWh充電で735kg必要なので、735×50=36,750円となる。
      因みにリチウムイオン電池のエネルギー密度は500Wh/Lなので2Lで1kWhを蓄えることができ、圧倒的に小型である。これを先ほどの位置エネルギー、鉄スクラップで考えると鉄の比重は7.85なので735kgでは94Lの鉄が必要になる。

      • +2
  30. そもそも風力とか太陽光とかそんな余るほど発電できてんの?

    • 評価
  31. 効率の良い蓄電方法って難しい課題なんだな。

    • 評価
  32. 位置エネルギーへの変換は舞台装置がでかくなりすぎる。
    ゼンマイを巻かせたら?

    • 評価

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