
家屋やビルの屋上に設置するのならそれでもいいが、植物を育てるのに必要な太陽光を奪われてしまうのはもったいない。
そこで新たに開発されたのが、透明なタイプの太陽光発電パネルだ。これをグリーンハウス(ビニールハウス)などの上に設置すれば、電気が得られる上に、農作物も育てられるという一石二鳥な優れものとなる。
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透明なパネルを実現する有機太陽電池
アメリカ、ノースカロライナ州立大学のブレンダン・オコナー氏らの研究グループが扱っているのは、従来のシリコン太陽電池ではなく、有機太陽電池だ(なお太陽電池を並べてパネルにしたものがソーラーパネルである)。有機太陽電池は、光の特定の波長だけをキャッチして、それ以外の波長は透過させるという柔軟な使い方ができる。早い話が、透明・半透明なソーラーパネルを作れるということだ。

一部の波長がない光でも作物は育つか?
一部の波長が失われた光で、作物がきちんと育ってくれるのか未知数だった。そこでオコナー氏らは、各種フィルターを取り付けたグリーンハウスで30日間レタスを育て、実際に美味しい野菜が収穫できるものか試してみることにした。気温・水・肥料・二酸化炭素といった成長に影響を与える条件はすべて同じだ。ただし、作物に与えられる光の波長だけは、有機太陽電池を通過したものに相当するよう青と赤の割合が調整されている。

グリーンハウスに設置された実験装置 credit:North Carolina State University
レタスで実験したところすくすく育つことが判明
その結果、レタスはどの光でもしっかり育ってくれたとのこと。葉の大きさと枚数・重さ・二酸化炭素の吸収量・含有する抗酸化物質の量で、各種光ごとのレタスの育ち具合を比べてみたが、特に違いは見受けられなかったそうだ。「対照群と実験群とで意味のある違いがなかったばかりか、フィルターの違いによる差異も見受けられませんでした」と、オコナー氏はその少々意外な結果を話している。
オコナー氏らは現在トマトなど、別の作物でもフィルターの影響が出ないのか調査中であるとのことだ。
この研究は『Cell Reports Physical Science』(3月17日付)に掲載された。
尚、日光が苦手な農作物であれば従来型の太陽光発電パネルが日陰を作ってくれるので、こちらも一石二鳥であることが過去の研究で明らかとなっている。
References:newatlas/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
そのパネルを作るための電力は原発と火発に頼ります
2. 匿名処理班
一部の波長が無くてもLEDで補えるんやないのかな?
ビルとか施設とかでLEDライトで水耕栽培してるやろ?
3. 匿名処理班
透明な太陽光パネルって99年にはできてた記憶
もう20年前以上も前
それと何か違うのかな
4. 匿名処理班
これは素晴らしいね、いろいろなアイデアが浮かんでくる。
問題は砂塵や埃などでパネルが汚れて、発電効率と光の透過度の両方が下がることかな。
簡単に清掃が出来たら嬉しいなあ。
5. 匿名処理班
2018年に筑波大などが、照射する照明によりレタスの味に違いがでるという研究結果を発表している。すくすく育ちはするだろうけど、何も違いがないというのはどーかなって思う。
6. 匿名処理班
一部の波長を透過させる事によって発電効率に違いは出るんやろか。
7. 匿名処理班
LED使うならそれこそ普通の太陽電池でいいし透過の意味がない気がする
8. 匿名処理班
これの維持費、撤去料等とかのコストはどれくらいだろう
9. 匿名処理班
ビニールハウスの問題の1つに『風にめちゃめちゃ弱い』と言う点。
ほぼ毎年のようにビニールは掛け直し、数年に一度は掛け替えをしているんだから、太陽光パネルをその頻度で手直し、買い直ししてたんじゃ、全く利点が無い。
大雨でハウスそのものも流される。
なので、日本には向かない。
条件が良い海外でやってください。
10. 匿名処理班
ぶどうハウスのビニールはずっと張ってると劣化するので、毎年開けたり締めたりしないといけない
簡単そうに見えるけど大人3〜5人は必要な作業で高所なこともあって事故が怖い
農業の高齢化もあってビニールハウスに登る人の平均年齢は60↑で危険すぎるので辞める人が多い
なのでビニールの代わりとなるなら検討の余地は十分にあるんだよね
11. 匿名処理班
後は寿命だな
12. 匿名処理班
※9
日本でやるなら潮流発電なんかが期待できる
いずれにせよ化石燃料がとことん不足してる国だからそれ以外のエネルギー源が将来的に必要不可欠なんだよね
太陽光パネルも耐風性の高いものが研究されているから実用化されれば日本でも普及できるだろうけど
13. 匿名処理班
※2
※7
同じ面積当たりの太陽光のエネルギーをどう配分するかってことじゃないかな。従来のシリコン太陽電池+LEDは、太陽から回収したエネルギーを全部一度電気にしてからLEDで光に戻しているのに対して、波長を選択して透過する方式は、太陽のエネルギーを発電に回す部分と栽培に回す部分を最初から分けていると考えればいい。シリコン+LEDでも余剰電力は出るだろうけど、この記事の方式の方がより大きな電力を生む可能性があるから研究を進めてるんだと思うよ。最終的に効率のいい方が普及するんじゃないかな。
14. 匿名処理班
>>2
LEDで電気使うなら太陽光発電の意味ないじゃん
15. 匿名処理班
※4
難しく考えなくても、ホースで水を撒けば洗えそう
16. 匿名処理班
なんだかんだ風車小屋と水車が1番エコなんだろうね。
メンテフリーと高効率を求めすぎなんだよね。
メンテの仕事を灯台守みたいに誇らしい仕事に
すれば良いのに。欲張りが環境破壊をしてるのに
エコまで欲張りすぎてエコと言えなくなってる。
17. 匿名処理班
植物の葉が緑色をしているということは緑色の光を反射しているという事
つまり植物が成長するのに必要な光は白ではなく赤と青(を合わせたらピンク)の光で、緑色の光は不要
発電できるのだから汚れは散水装置を設ければよいし、味の違いは日照を計測管理してLEDで加減してやればいい
あとは価格と耐久性によるけど革命的だと思う
18. 匿名処理班
将来的に、ソーラーパネル置くのに
ハゲ山化させてる今の状況は、
なんとかなるんかな?
19. 匿名処理班
いいゾ〜コレ
(皆さんのコメントが専門的すぎて涙)
20. 匿名処理班
これはエコとかそういう話ではなくて(繋がるかもしれないけど)、ビニールに付加価値をつける、ってところがポイントだよね。
クロロフィルの吸収波長は短波長と長波長に偏っていて中波長は反射しちゃう(だから緑色に見える)から、光合成には必要ない。その分を発電にまわせば記事のとおりに一石二鳥、と。
秋〜冬のハウス栽培は温度調節だけではなく花芽形成促進の長日条件を維持するために夜間照明が必要。昼間中波長で蓄電して夜間照明に回せればそれだけで随分と光熱費が浮く皮算用。しかも日長感知には中波長いらないからLEDで必要な色だけ照射すればよい。
あとは発電効率がどこまで高くなるか、それと価格、が実用化に向けて必要って段階なのかな?
21. 匿名処理班
※2
昼間日光、夜はLEDでさらによく育つんじゃない?
22. 匿名処理班
これ住宅やビル、自動車の窓ガラスに埋め込んでも良いのでは?
23. 匿名処理班
植物が利用しない波長だけを発電に利用するのか、良いアイディアだと思う。
※22
色合いが変になる事が許容できる環境ではいろいろ有効そうな予感がする。
24. 匿名処理班
これはビニールハウスじゃなくて、植物園などの温室向けな気がする
25. 匿名処理班
これはビニールハウスじゃなくて、植物園などのしっかりした温室向けな気がする
26. 匿名処理班
全面ソーラパネル張りビルが作れるって事か?
27. 匿名処理班
ガラス張りのビルが発電機になるのか
28. 匿名処理班
>>27
福島駅のガラスに貼り付けて、少々ながら発電をしています。まだ試験的な意味合いかな。
29. 匿名処理班
※1
太陽電池の、原料採掘から廃棄までにかかるエネルギーを発電で回収できる時間(EPT)は1〜2年。火力発電の0.6年とかよりはかかるけど、全体でみるとエネルギーはかなり黒字になるよ。
30. 匿名処理班
>>1
そんなこと言ってたら何にもできない
31. 匿名処理班
※3
シースルータイプの太陽電池、カネカソーラーテックが2003年から作ってるよね。
32. 匿名処理班
>>21
植物にも睡眠は必要です。
33. 匿名処理班
>>1
停電した原発と火力は、水力発電所に頼ってます。
34. 匿名処理班
例えば赤外線だけをキャッチ出来るような素材があれば、理論上は熱を通さず、中は涼しいんだけどね