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生きた粘菌で動くスマートウォッチ。充電の代わりにお世話をすることで愛着がわく「生体たまごっち」

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(著) (編集)

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  シカゴ大学の研究チームは、すぐに電子機器を捨ててしまう人がいるのは、愛着がないからだと考えた。だったらもっと愛情を注げるデバイスを開発すればいい。

 そこで誕生したのが、この「粘菌スマートウォッチ」だ。

 人間は多かれ少なかれ、命に共感する生き物だ。一度愛着がわけば、そう簡単に捨てることはできないはず。

 このスマートウォッチは生きた粘菌たちががんばって動かしてくれているのだ!電池のいらない生きた「たまごっち」のようなものだ。

 実際にこれを使ったユーザーは、粘菌スマートウォッチのお世話を通じて、ペットと同じような絆を育むことができたそうだ。

使い捨てのライフスタイルを変えるには?

 新しいデバイスが発売されると、何百万という旧式が捨てられる。

 シカゴ大学の研究チームによれば、2019年の電子廃棄物は過去最高の5360万トンで、わずか5年間で21%も増加したのだそうだ。

 こうした状況を憂いて、さまざまな識者や為政者たちが、使い捨てのライフスタイルを変えて、今までとは違うデバイスとの関係を築かねばならないと主張している。

 だが具体的にどうすればいいのだろうか?

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photo by iStock

餌やりを通じて絆を育む、生きた粘菌が動力のスマートウォッチ

ペドロ・ロペス助教らがたどり着いた答えは、もっと愛着のわくデバイスを開発することだ。

 無機質な機械であっても、人間とペットの絆のような結びつきを育むことができれば、そう簡単には捨てられないはずだ。

 「関係を変えることで、これまでとは違う関係を作る方法を模索してきました。ユーザーがデバイスとより責任あるつながりを持てれば、デバイスの寿命を延ばせるのではないでしょうか」

Integrating Living Organisms in Devices to Implement Care-based Interactions

 ロペス助教らが開発した粘菌スマートウォッチは、バンドの根元あたりに透明なケースが取り付けられている。

 このケースの中は細いトンネルのような構造になっており、その両端に小さな部屋が1つずつある。この部屋の片方に「モジホコリ」という粘菌を入れるのだ。

自分の命で動く「たまごっち」のようなもの

 スマートウォッチを機能させるには、まずは粘菌に水とオート麦を与えて育てる。

 栄養をもらった粘菌は、スクスクと育ち、部屋からトンネルに伸びて、もう1つの部屋にまでたどり着く。

 すると粘菌の体内を電気が流れる。つまり粘菌が生きた電子回路として機能するのだ。スマートウォッチに内蔵された心拍モニターは、この生きた電子回路があってはじめて機能する。

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 生きた粘菌回路によって、あなたの生きている証がモニターされるということだ。命が伝えてくれるあなたの命の証を目にした瞬間の喜びは、きっと大きなものだろう。

 もちろん粘菌は生き物なのだから、これで終わりではない。

 ペットのように定期的にお世話をしてやらねばならない。長いことエサや水を忘れてしまうと、粘菌はカラカラに干上がって、休眠状態になる。すると心拍モニターは消えてしまう。

 電池のいらない、粘菌の命で動かす「たまごっち」のようなものだ。

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ペットと同じような絆が芽生えたことが判明

 ユニークなアイデアだが、生きたスマートウォッチは本当に意味があるのだろうか?

 それを調べるために興味深い実験が行われている。

 被験者5人に2週間ほど粘菌スマートウォッチのお世話をしてもらい、それで彼らの行動が変わるかどうか確かめてみたのだ。

 この実験にはハートフルな映画のような別れが待っている。被験者は最初の1週間はきちんとエサを与え、粘菌の世話をするよう指示される。

 だが次の2週目になると、世話を止めるよう言われるのだ。

 すると参加者の多くが、心の苦しさを感じることがわかったという。相手は粘菌だが、それでも絆が芽生えたことをみんなが認めたのだ。

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 この実験のことをロペス助教は、プレスリリースで次のように語っている。

 「みんなショックを受けていました。ほとんど全員が、『本当にやめなくちゃいけない?』と、とても人間的な反応を示しました。悲しむ人もいれば、絆が切られたように感じる人もいました」

 被験者の回答によれば、その絆はデジタルペットよりもずっと強く、むしろ普通のペットと人間の関係に近いものだったそうだ。

 普通、人がデバイスを使うのは、何か明確な目的があるからだろう。だが、粘菌スマートウォッチの場合、きちんと世話をしなければならないので、より双方向の関係を感じられる。

 「生きているので愛着もわいて、捨てたり、押し入れにしまっておくのは無理とも感じていました」とロペス助教は言う。

UChicago’s Human Computer Integration Lab at UIST2022 (Introduction by Pedro Lopes)

 こんな風に、命という要素が加わると、人間のテクノロジーとの関わり方も変わってくるようだ。

 研究チームは、この粘菌スマートウォッチが、使い捨ての機械ではなく、思いやりを育むデバイス開発をうながすことになればと期待している。

 この研究は『ACM Symposium 2022』で発表された。

References:Scientists create living smartwatch powered by slime mold | University of Chicago News / This slime mold smartwatch is a living gadget — and it serves an important purpose / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 36件

コメントを書く

  1. 賛否両論になりそうなデバイスですが人間は古来より自分たちのために菌の命を利用して来たので「命を使うなんて」系の批判は即的外れ。他にどんな「否」が出るか興味深いところ。

    個人的に気になるのは衛生面や漏電の危険性。そこがクリアできれば菌や命について考えを深めるよいアイテムだと思います。

    • +2
  2. 人間の奴隷に棒をグルグル回させるのは可哀そうだけど
    粘菌ならセーフというガバガバ理論ほんと好き。

    • +1
  3. こんなのを手首に常時付けてたら鬱陶しいしいらない
    俺なら3日以内に使わなくなる自信がある

    • -4
  4. 5年前に買った軽自動車でさえ家族以上に愛着持って接ししてるのにこんなガジェット入手してしまったら一生手離せないじゃん…

    • +3
  5. 粘菌だったら特殊容器に入れてて小売りしても良いっていう驕りが見える。
    愛着をどうこう言った所で大半の購入者は世話を放棄して飢え死にさせたり過酷な環境や誤った仕様で殺してしまうことになるんだろうさ。

    • -6
  6. 揺り籠から墓場まで、あなたの傍に。
    ねんきん機構

    • +9
  7. 本物の命をオモチャ同然に扱う輩はどうしたって変わらないし、思いやり溢れる人は物言わぬ機械だって大切にするよ

    • +3
  8. 使い捨てしない思いやりを育むために生き物を機械に組み込む、って発想は本末転倒なブラックジョークだと思ったんだけど大真面目なのか…。

    • +5
  9. 興味が湧いたけど批判的意見が多いんだな

    • +4
    1. >>11
      面白いけど、褒められたもんじゃない趣味の領域じゃねぇかな。フィクションならいいさ。

      • -1
  10. 粘菌以外の部分が壊れた場合、廃棄する時の心の痛み方すごそう

    • +2
  11. これはイマイチかなープランクトンとか古代生物育てる自由研究キットって感じ
    まあ色んな角度から取り組むのはいいと思うけど
    この手の生物発光とか生物発電利用するやつは一発ネタ感ある

    • +1
  12. その内、機能とデザインが改善された粘菌っち2.0が発売されて1.0はゴミ箱へ…

    • +9
  13. 普通にたまごっちとか育成ゲーム組み込むのじゃあかんかな

    • -1
  14. >電池のいらない、粘菌の命で動かす「たまごっち」のようなものだ。

    電池+粘菌で動いてるんじゃなくて粘菌が発電してるの?

    • -2
    1. >>18
      動画内の回路図で、コイン型電池が書かれているね
      生き物自体にはたまごっちのような電池が不要だけど、時計部分は電池が要るよということだろう

      • +3
  15. ほんとにソ〇ーはハードをコロコロ変えやがるから…、平成の小学生のころからむかついていたんですよ!
    ソフトウェアだけ変えて、ハード面は丈夫で維持できる昭和品質なもの作るってのが令和の電化製品の形になってくれんかね?

    • 評価
  16. 仮にこのアイデアが一般化されたら、「粘菌の世話を怠って画面が消えたら人間側の心拍も…」みたいな寓話的な読み切り漫画が出そうですね

    • +2
  17. 棄てる奴は、粘菌だろうがペットだろうが人だろうが捨てるんじゃないかな。

    • +3
  18. 電池のいらないってことは生体電流で動くスマートウォッチなのか
    餌は砂糖水だろうか?

    • +1
  19. そもそもなんで使い捨てるかっていったら、ほとんどは壊れるか新しいのが出るからじゃない?
    壊れずに、新しくするところだけを上手にカスタマイズするみたいな事が出来たらどうかな。
    戸建てみたいに、何個も買わなくても家具を変えたりリフォームしたりして住み続けるみたいに。
    いや、私にだってわかってるよ。そんな上手いこといかないことくらい…。

    • +3
  20. ユーザーは使い続けたい人も多いよ
    新しいものを買わせないと立ち行かないビジネスモデルが良くない

    • +5
  21. メーカーに新商品の発売を数年に一回とかに制限すりゃあ解決する話だろ。
    安全性の欠陥を是正する以外のモデルチェンジの禁止とかな。
    アイフォンも西暦で一桁が0年の時以外は現行モデルで売れとかすりゃあいい。

    • -2
  22. どこかの国で発光生物使って街灯にして節電とかやってたけど、感情論だがすげー人間のエゴ感じて嫌な気がした

    • 評価
  23. 粘菌に働いてもらうというよりか、
    単純に増えて伸びた粘菌たちに電気が流れるから
    回路が繋がるってだけみたいな気がするけどもね。

    • +2
  24. なんか否定的な意見が多いみたいだけど”生物利用に使う種”の線引きをどこに据えるかによって意見が分かれると思う。
    個人的な意見だが菌類なら全然OK。
    ダメになったぬか床捨てるとき、酵母菌、乳酸菌、酪酸菌に『すまないことをした』って感情は湧かないかな。

    • +1
  25. 正直時計としての機能がどれくらいなのかとか次第で世話する面倒臭さのせいで結局普通の時計使いそうな気もするけれど、そもそもこれ菌は時計に接続されてなければ生きていけないのか?
    もし外して世話出きるなら、愛着がわいて捨てられない!よりもとりあえず外して世話しながら新しい時計買おうとかになりそうな気もする。

    まぁそもそも自分は壊れるまで使うタイプだからそんなにすぐに交換するわけでもなし、あまり関係ないといえば無いのだけど。

    • 評価
  26. 自分のモノと認識したら無機物でも生物でも価値を減ずる行動はしたくなくなる。
    それを愛着と呼ぶのかわからんけど。
    面倒に感じたり他の何かに執着してる間に駄目になったりもする。
    そして粘菌なら気軽に駄目にするだろう。

    つまるとこ対照実験しろ。
    高級なスマートウォッチを与えて2週間目に汚れ・傷つく可能性のある作業を着けたままさせる。
    結婚指輪をはめて2週間目から仕事中も外すことを禁止・傷上等で生活させる。
    同じ反応すると思うよ。

    • 評価
  27. つまりドールのマニュ―バってことね(違います)

    • 評価
  28. ずっと使ってると慣れてきて命を軽く扱うように

    • -1

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