メインコンテンツにスキップ

イタリアでロボットの彫刻家がデビュー、彫刻にかかる時間や廃棄物問題を解決

記事の本文にスキップ

31件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:robotor
Advertisement

 AI(人工知能)が描いた裸婦画が世界的な芸術賞を獲得するなど、高度なテクノロジーによる創作分野の進出はここ数年注目の的だ。

 そんな中、芸術の国イタリアでまさかのロボット彫刻家がデビューした。

 かつて彫刻家ミケランジェロがダビデ像をコツコツ彫ってたその町で、今度は仕事が早いロボットが活躍するのだ。

 本来なら匠が手ずから仕上げる工程もロボットまかせで即完成?第二のルネッサンスを巻き起すかもしれない彫刻ロボット「1L」のお仕事ぶりにせまってみよう。

HSD & Robotor

人間の彫刻家の問題を解決、彫刻家ロボット「1L 」

 かつて彫刻家ミケランジェロがダビデ像を完成させたことで知られるイタリアの都市カッラーラで前例のない異色の彫刻家がデビューした。

 その 彫刻家は人間ではない。スタートアップ企業 Robotor 社が開発した「1L」というロボットだ。

 1L が採用された背景には彫刻にかかる時間や廃棄物など、人間の彫刻家が抱えるいくつかの問題があった。このロボットはその解決策として導入されたのだ。

アームのドリルで大理石も楽勝。爆速で芸術作品を彫刻

 1L は亜鉛合金製のロボットで高さは約4メートル。そのフォルムに人間らしさはほとんどなくアームしかないが、大理石の板から像を彫り出すには充分だ。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:robotor_official/ instagram

 アームの先のドリルのような道具一つで、かの有名なカッラーラ産の大理石に挑む。そのドリルには合成ダイヤモンドの粉末がまぶしてあり、硬い大理石をたやすく削っていく。

 そのスピードはすさまじく、人間なら完成まで数百時間かかる作品をわずか4日で完成させるほど。人間よりも爆速で仕事をこなしてしまう。

 しかもたかが機械とあなどってはいけない。見た目に味気ない 1L も腕のほうは確かで、ミケランジェロをはじめとするイタリアを代表する彫刻家のドナテッロ、カノーヴァに匹敵する素晴らしい芸術作品を生み出す。

 以下はメディアが報じた作業風景。Robotor 社でヴィーナス像を仕上げる 1L 。

 人間だと数か月かかる削り出しの作業を1Lは飲まず食わずで進めるのだ。

1L はアシスタント。完成には人間の手が不可欠

 芸術の国イタリアを訪れる人々は、バチカン市国の宮殿にあるシスティーナ礼拝堂やおごそかなピエタなど歴史的なアートシーンも自らの目で堪能できる。

 そうした作品の一番の魅力はすべてが手作業であることだ。そのために芸術家が費やした途方もない時間や妥協のないこだわりに畏敬の念を抱かずにいられない。

 その対極にありそうな1L の登場は、彫刻分野にどう影響するのか?このロボットがイタリアの美術界を変貌させ、長年かけて培われた熟練の技も失われてしまうのか。

 Robotor 社の創設者 ジャコモ・ マッサーリ氏はそうした危惧を否定する。

ロボットは99%ぐらい 完璧ですが、あと1%の違いを生むのはやはり人の手です。彫刻の完成やアートとして評価されるような作品には人間の手が重要なのです。

1L はいわばアシスタント。いつでも戻ってプロジェクトをやり直せるので、無駄を省けるし失敗も減らすことができます。

彫刻家が技術を忘れる?現代美術家は 1L を利用

 こうした冒険的なアイデアは美術界で多少なりとも物議をかもすだろう。

  メディアによると、フィレンツェ大聖堂でワークショップを開催する彫刻家のロレンツォ・カルチナイ氏 は従来のやりかたを支持しており、人間の芸術家に特定のノウハウが継承されることを望んでいる。

ロボットに引き継がれてしまうと、私たちが自分の手に覚え込ませた技術を忘れてしまう恐れがある。

 一方で、イタリアの現代美術家のマウリツィオ・カテラン氏やアメリカの現代美術家ジェフ・クーンズ氏は協力的だ。

 彼らはアイデアのイメージを3Dに変換し、それと寸分たがわぬ彫刻を1L のロボットハンドで再現してはヒット作を生み出している。

無駄を省いて思考を巡らせる。想像自体がすでにアート?

 またマッサーリ氏はこうもコメント。

この技術が素晴らしいのは、無駄を省くことで時間の制限に縛られていたアーティストが思考を巡らせるようになることです。ロボット技術は人の仕事を奪うのではなく、それを改善するだけのものです。

私はアートは思考と関係すると考えます。何かを想像できれば、それはすでにユニークなアート作品なのです。私のような人間が現代の職人です。

海外メディアも注目する彫刻ロボ

Robots to produce marble sculptures as it cuts down time to make it | English News | WION

 ロボットもツールといえばツールだし、表現したい何かのために単調な作業を機械に任せるようなことは私たちもやっている。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:robotor

 ただ、今まで手彫りがデフォの彫刻がほぼロボットのドリルでできたと聞けば、大量生産の既製品と変わらない感じで微妙な気持ちになる人も多そう。

 人間らしさの神髄ともいわれる創作分野をざわつかせるテクノロジーの波。一方で人間が磨いてきた熟練の技はどうなるのだろう。ロボットやAIの進化が目覚ましいだけにこうしたテーマは今後もヒートアップしそうだな。

References:designtaxi / cbsnews / instagramなど /written by D/ edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 31件

コメントを書く

  1. 最後に人間の手が入るなら芸術性は担保されるんじゃないの?と思う。「芸術性」というものがよくわかってないけど

    ただ機械が手がける部分が99%までOKなのか、80%や50%までならOKなのか、どこまでなら許容されるかはわからん

    • +3
    1. ※1
      「ミケランジェロが全ての作品を己だけで作ったなら、彼は今でも未完成の作品を作り続けていることだろう」と言われてるくらい、弟子の存在は必要不可欠だったそうな。
      このロボットも「人間の芸術家が監修した作品」を作っているだけじゃないかね。

      • +4
    1. ※2 現時点では大理石みたいな石をインクや樹脂を噴射するようにして3Dプリント出来る機械って多分なくて、この機械が当面は3Dプリンタの石バージョンなんでは。アームの大きさからしても内側に細かい構造作ったりは出来ないでしょうが、AIアートと違ってあくまで元のデザインは人間が考えてるみたいだし。でもタイトルにある廃棄物問題を従来の彫刻家に比べどう有利に解決できるのかは日本語で文字に起こされている解説だけだと?です。英語楽に聞き取れる方がいらしたら教えて下さい。

      • +1
    2. >>2
      3Dプリンタじゃ大理石プリント出来ないだろ…

      • +2
    3. ※2
      3D プリンタは積み上げていくので、どちらかというと粘土をつかった紐づくりでの制作に近いです。この装置は削っていく装置(一般名称は NC 工作機の切削用かな)なので、作られたものは自動車のシリンダブロック(たいていはアルミ製)などとあまりかわりません。材質が金属か、石かみたいな違いかな。たぶん切削部を交換すると木材を含むほかの材質の塊を削って彫像を作ることができると思います。まぁ、ノミややすりなのか機械なのかの違いくらいに思いますがね。

      • +1
  2. カメラが出来ても絵は価値を保った
    おそらくこの機械は芸術家とそれに値段をつける富裕層には受け入れられないので流行らない

    • +3
    1. >>3
      名画を後世に残すような芸術家でなく
      富裕層に需要のあった肖像画描きの職人(そこから若手も育つ)
      みたいな純然たる技術職はほぼ絶滅したし、
      レコードやCDが普及してから
      それで生計を立てられる常雇の生バンドを置くバーや
      各村の祭で踊りの歌を謡っていた喉自慢の人気者ポジション
      というのも激減した。

      • +3
  3. ジョルジョ・ツォカロス「ギリシア時代の壮麗な彫刻の数々は果たしてギリシア人の手によって掘られたのでしょうか? 古代に訪れた宇宙人のテクノロジーによって彫られたものかもしれません」

    • 評価
  4. なんか彫刻ではなく立体創作物、という感じ
    人が柔らかいもので作った立体物の形をコピーして彫ってるわけだし

    • -4
  5. 人の手で製作してるから
    その課程想像してすげぇなぁと思う付加価値がつくんであってな
    3Dモデリングも凄いけどやっぱアナログとは別ジャンルの凄さや

    • +1
  6. 日本人的かもしれないが、人の手で彫ることによって「不完全である」ことに意味あるような気がする。

    • +5
  7. 彫刻は何も考えない単純作業が続く時もあるからそれを省けるならありがたいね

    • +2
  8. AIもこなれて来てデフォルメすら生み出せる様になってるが、けど矢っ張りそれもオリジナルじゃない感じがする
    絵もそうだがどれだけ技術的に向上しても「どこかから拾った何かを集積した物」なんだよな
    人間一人一人が其々持つバイアスとは方向性が違う

    この先は判らんが今の所はそんな感じ
    仕上がった物は何かっぽい何か

    • -1
  9. 芸術分野でも早晩超えてくるんでしょうね
    個人的には早くAIにあらゆる面で人類を超えて欲しいですね
    そして人類には解決不可能な問題を解決してくれるといいんですがね・・・

    • +2
  10. アートの間口を広げるには良いと思うよ。

    貴重な古代の彫刻をレプリカを作って身近に見てもらうとか、創作意欲に制作が追いつかない新進気鋭の彫刻家を補助するとか、あえてやわらか素材で作って幼児にペタペタ触ってもらうとか…

    間口が広がれば今までの彫刻も見直されるし、完全な手作業の彫刻の価値も上がるかもしれない。

    • +6
  11. 芸術までAIに任せると、人の大切な部分もAIに手渡して最後には何も残らなくなりそう。
    とは言えこの動きは止められない。ので対抗策を考えないと。
    よし、AI評論家とAI鑑賞者を導入だ。

    • 評価
  12. 版画なんかは、『本物』が複数枚製作される芸術作品なんだから、このようにAIを使った技術によって、彫刻でも同じように複数の本物が製作されるのが普通になってもいいんじゃないのかな。

    • +3
  13. リアルな二次元美少女像だったら価値が出ますよ

    • 評価
  14. AIにとられない仕事に画家とかあったけど、芸術関係は一部の天才以外は真っ先に取られそう

    • 評価
  15. 技術が失われるっていうけど、彫刻家はいずれ死ぬから、機械化AI化はむしろ技術の保存になると思う

    • 評価
    1. ※19
      こういう技術の集積による大安売りで儲かるのは最大手だけ
      個人の業者は概ね食いっぱぐれる
      迎合するとチキン店orDIEみたいな国になる

      • -2
    2. ※19
      手彫りとは全く別の手法(ノミなんかを使ってるわけじゃない)だから技術の保存にはならんぞ
      まあ、手彫りの技術自体を継承することにどれだけ意味があるのかは専門家じゃないんでよく分からんけど

      • +2
  16. 彫刻の分野のことは詳しくないけど、これがアーティストの意思を無視して既存のアートから製作者の許可なくデータを収集した結果物じゃなけれないいんじゃない
    もしそうならこれは冒涜で侮辱だ

    • +1
  17. 出来たら本物のミケランジェロが欲しいけど、とても買えない、でもクオリティの高いのが欲しい、という人にはいいんじゃない?
    浮世絵も昔の手法で再現したのとかあるし。
    需要はあるんじゃないかな?

    • +4
  18. 大理石ってこういう切削ロボットにも扱えるくらい一様なの?
    微妙に硬軟があるとロボット自動化が失敗しそうな気がする。

    • 評価
  19. 芸術は唯一無二だから価値があるんじゃないかな。
    ロボで量産出来たら絵画ならポスターと同じだし…。
    芸術家が、その面倒で難しい作業を超えて産み出すから、作品が輝くんだと思ったり。だから観る人が「すげぇなぁ」って感じるんじゃないかな。
    プログラムして99%仕上がっちゃったら、私個人は「芸術」というより「商品」に見えちゃうかも。
    田舎にいくと大きな家の門柱に大理石の登り竜があるのと同じに見えちゃうかも。

    • 評価
    1. ※27
      う~ん、複製がいくつもあるロダンの「考える人」は芸術価値がない?
      リトグラフとか版画はどう思います?
      所詮は便利な道具であって残り1%に芸術性が認められるかどうかじゃないのかな
      蛇足だけど、門柱の飾りが芸術じゃないなら日光東照宮の眠り猫とかも芸術じゃないってことになる
      芸術か単なる商品かは究極質(出来映え)の差じゃないかと私個人は思うなあ

      • +1
      1. ※29
        複製を見てもやはり「本物をみたい!」と思ったり。
        門柱の登り龍はステキですが商品だし、石屋のディスプレイに大理石のドラ○もんと一緒に並んでいたら…やはり芸術とはちょっと違うような…
        どちらかというと私は作る側だったので、ちょっと思いが偏っているかもしれません(苦笑)

        • 評価
    2. ※27
      「芸術か?商品か?」みたいな論は筋が悪いと思うな。
      大抵の伝統芸能、例えばガラス造形や博多人形は技術や手法を変えない事や商品として合格かどうかと徹底的に向き合ってるから、芸術であり商品が成り立っちゃう。
      それにぶっちゃけ、作り手は自分の作品が売れさえすれば関係無いのよ。「芸術か?商品か?」なんてお題は。
      売れれば認められたって事なんだから。売らない芸術家もいるけど。
      それに、作り手は道具に何使おうが自由じゃんって思ってるよ。
      芸術家の持論は、買い手以外にどう言われようが知らんみたいな無責任な態度を生むから、作り手の話は芸術と商品の違いのヒントにはならない事に注意して欲しい。
      「芸術か?商品か?」なんて、「個人個人の感性で決めれば?」と思うけどね。

      • +1
  20. 大理石を材料に出力できる3Dプリンター

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

サブカル・アート

サブカル・アートについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。