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宇宙に複数の世界線が存在するのなら、タイムトラベルは可能

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 あの時に戻ってやり直したい。そう思ったことはないだろうか?SFの世界ではおなじみとなっている、時間の中を移動するタイムトラベル。これはただの夢物語などではなく、物理理論上も実現できる可能性があるとされている。

 しかし、そのためには「親殺しのパラドックス」として知られる厄介な矛盾を解消しなければならない。

 カナダの物理学者によれば、もしもこの宇宙に複数の世界線(パラレルワールド)が存在するならば、その矛盾を克服できるそうだ。

タイムトラベルは可能なのか?

 私たちの時間や因果関係についての理解は、「一般相対性理論」に基づいている。

 アインシュタインは時間と空間を時空という1つの概念にまとめ、その振る舞いについて驚くほど緻密に説明した。

 発表から100年、この理論の正しさは何度も証明され、宇宙の因果構造についての理論として不動の地位を築いている。

 何十年もの間、この一般相対性理論の枠組みの中でタイムトラベルを可能にする方法はないものかと、研究者は頭を捻らせてきた。

 その結果、タイムトラベルが相対性と矛盾しておらず、それを等式として書き表せることが理論上は明らとなった。だが物理学は数学ではない。どんな等式も現実に即していなければ意味がない。

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photo by Pixabay

タイムトラベルの矛盾

 タイムトラベル等式が非現実的とされる理由は2つある。1つは実行する上での問題だ。タイムマシンを作るには負のエネルギーを持つ「エキゾチック物質」が必要と考えられている。

 エキゾチック物質は、既知の物理法則を破りうる風変わりで奇妙な物性を持つ仮説上の物質を意味する。

 通常の物質は正のエネルギーを帯びており、負のエネルギーを持つ物質はそのあたりに転がっている代物ではない。量子理論上はそれを作り出せるとされているが、ごく少量をほんの束の間だけだ。

 それでも十分な量のエキゾチック物質を作れないと証明されたわけではない。

 また、エキゾチック物質なしでもタイムトラベルを可能にする等式が見つからないとも限らない。ゆえに、この問題は今の技術や知識レベルでの問題と言えるかもしれない。

 だがもう1つの問題はより深刻だ。

 それはタイムトラベルが理論的に矛盾しているように見えるということだ。タイムトラベルを行うといくつかのパラドックスが生じてしまうのだ。とりわけ厄介なのは「親殺しのパラドックス」と知られる矛盾だ。

 これは過去に行ったことで過去が変わり、それが最初の出来事を不可能にしてしまうというパラドックスで、SFでも人気のテーマだ。

 たとえば、あなたがタイムマシンで5分前に戻って、そのタイムマシンを破壊したとしよう。すると5分後のあなたはタイムマシンを利用できなくなる。ならば、そもそも過去に戻ってタイムマシンを破壊できたはずがない。

 つまりタイムマシンを破壊するには、タイムマシンを破壊してはいけないのだ。つまり矛盾した2つの条件を同時に満たさねばならないのである。そんなことは不可能に思える。

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物理学から見る「親殺しのパラドックス」

 SFのよくある誤解として、パラドックス(ある命題とその否定命題が、ともに論理的に同等と思われる論拠をもって主張されている)は作り出せるというものがある。

 タイムトラベルをする人物は大抵、過去の出来事を大きく変えてはいけない、過去の自分にも会ってはならないと警告される。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが有名だろう。

 だが物理学におけるパラドックスは、そもそも起こり得ない出来事を指す。理論の矛盾を突くための概念でしかない。

 つまり親殺しのパラドックスは、タイムトラベルの危険性を示唆しているわけではなく、それが不可能であるという意味なのだ。

 イギリスの天才理論物理学者、スティーブン・ホーキングなどは、タイムトラベルが不可能であることを示すために「時間順序保護仮説」まで唱えた。

 ただし、この仮説はまだ証明されていない。それどころか宇宙は想像以上にユニークな場所である可能性もある。パラドックス自体を消し去ってしまうかもしれないのだ。

 たとえば親殺しのパラドックスを解消する試みの1つに、イゴール・ノヴィコフの「首尾一貫の原則」がある。彼の考えでは、あなたは過去に行くことはできるが、過去を変えることはできない。

 ノヴィコフによれば、あなたが5分前に戻ってタイムマシンを破壊しようとしても、絶対にできない。物理法則が矛盾が生じないように一貫性を保とうとするからだ。

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Photo by Louie Martinez on Unsplash

複数の世界線があれば矛盾が解消されタイムトラベルが可能に

 しかし過去を変えられないのであれば、過去に戻ることに何の意味があるだろうか? こう問うブロック大学のバラク・シューシャニーらは、ノヴィコフの首尾一貫の原則では解消できないパラドックスがあると指摘する。

 パラドックスがたった1つ残っただけでも、タイムトラベルは理論的に不可能だ。話は振り出しに戻ったことになる。

 ではやはりタイムトラベルは不可能なのか?

 いいや、だから彼らは複数の歴史、すなわち複数の世界線(パラレルワールド)があるならば、首尾一貫の原則では消えないパラドックスを乗り越えられると論じている。

 それどころか、タイムトラベルにまつわるあらゆるパラドックスを解消できるのだという。

 考え方はシンプルだ。あなたがタイムマシンを降りると、別の世界線に移る。あなたはその世界線でなんでも好きなことをできる。

 タイムマシンを破壊してもいい。だが、たとえタイムマシンを破壊したとしても、あなたがやってきた元の世界線が変わることはない。よって矛盾は生じない。

 もしこれが正しければ、タイムトラベルは可能ということなる。はたして、この宇宙は複数の世界線を受け入れてくれるのだろうか?

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photo by iStock

 量子力学は確かにその可能性を示唆している。少なくともエヴェレットの「多世界解釈」では、あり得る観測結果に応じて、1つの歴史が複数の歴史に分裂するとされている。

 エヴェレットの多世界解釈は、量子力学の観測問題における解釈の一つである。この解釈では宇宙の波動関数を実在のものとみなし波束の収縮が生じない。そのかわり重ね合わせ状態が干渉性を失うことで、異なる世界に分岐していくと考える。

 たとえば、かの有名なシュレーディンガーの猫が生きていたか、死んでいたかで歴史は2つに分裂する。あなたが過去にたどり着けたかどうかでも然りだ。

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photo by Pixabay

複数の世界線し一般相対性理論と矛盾しないタイムトラベル理論

 これはただの推測に過ぎない。だがシューシャニーらは今、それをもっと具体的な理論にしようと取り組んでいる。

 複数の世界線が存在し、かつ一般相対性理論と矛盾することのないタイムトラベルの理論だ。もちろん、この理論が完成したとしても、タイムトラベルが完全に可能であるという証明になるわけではない。

 だが少なくとも、親殺しのパラドックスがあるからタイムトラベルは不可能と切り捨てる必要はなくなる。

 SFにおいて、タイムトラベルと並行世界は切り離すことができないコインの両面のようなものだが、それは現実の科学にとっても同様である。

 一般相対性理論と量子力学は、タイムトラベルが可能かもしれないと告げている。ならば複数の世界線もあり得るに違いない。

References:Time travel could be possible, but only with parallel timelines / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 37件

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  1. ぶっちゃけ難し過ぎてあんま内容が理解出来ないんだけど
    夢が広がったと言うのだけは感覚で理解出来た気がする

    • 評価
  2. まあ究極的には元世界と判別不可能の世界を用意できればどうとでもなる話ですものね 

    • 評価
    1. ♾️(♾️)分の一で同じ世界は存在するで

      • 評価
  3. 「因果律は意外に柔軟性が高い」って言う話しをどこかで聞いたな・・・。
    映画かドラマだった気がする。

    • 評価
  4. 世界線とは運動する物体が時空間で描く軌跡、と相対性理論で定義されている。
    平行世界=世界線という用法は間違って広がった物なので注意しましょう。

    • +1
  5. 複雑で無限大な世界が存在するわけない
    それを認めたら、なんだってあり得る
    俺が首相や殺人犯になる未来だってあり得る
    どこにあるんだ?

    この世界はバーチャルなんです
    光を超えたスピードは無い、つまり通信が届かない
    光より早く動いたら、ダウンロードできない
    地球外生命体も居ません、それを認めたらソフトは膨大になる

    この世界は驚くほど狭いのです、生存者はもしかしたら自分だけかもしれません
    そして、今の科学ではバーチャルな世界を否定できません

    • -6
  6. 勘違いしちゃいかんのは、映像的に巻き戻せると考えてしまう事。

    • 評価
  7. もしタイムトラベルが実現するなら、過去へタイムトラベルしてきた未来人が過去の記録や現代に山ほど存在しなければならなず、タイムトラベラーが存在しないのならタイムトラベルは未来永劫不可能ということになるが
    タイムトラベラー達がタイムトラベルの実現した並行世界へ行っちゃったと仮定すれば、タイムトラベルは可能かもしれないのか
    でもタイムトラベルが不可能な我々の世界線では確かめようがないな…なにしろトラベルする先が次々と新しい並行世界になってしまう片道切符だから

    • 評価
    1. ※8
      未来方向にしか行けないタイムマシンしか無いのかもしれない

      • 評価
      1. ※10
        そういうタイムマシンなら理論上実現可能らしいね。

        • +1
  8. ジョン・タイターが同じこと言ってた。

    • 評価
  9. それってタイムトラベルというよりパラレルトラベルだよね
    てかエキゾチック物質って聞くとヒロミ郷を思い浮かべてしまう・・

    • -1
  10. 実体はタイムトラベルできないなら過去に行っても何も変えることはできないだろう。ただいわゆる霊として何か奇跡的な伝達手段があれば物語として面白いね。

    • 評価
  11. タイムスリップとパラレルワールドへのトリップって別ジャンルじゃない?

    • +2
    1. ※13
      同じだよ
      タイムスリップして歴史を変えるということはパラレルワールドと同義

      • 評価
  12. 時間というものが絶対的な概念として存在すると考えるからおかしいのでは?
    もし過去に移動したならそれは自分が時間の中で過去に移動したのではなく、
    過去の世界が現在に置き換わったと考えればいいのではないだろうか
    それならば過去で親を殺したとしてもあくまでその先は現在以降の新しい未来であって
    自分という存在が変化する問題など何もないように思える
    そもそも過去に自分が飛んだ時点で自分の体も記憶もリセットされないのであれば
    自分という存在を保持することに何も問題はないわけである

    • 評価
  13. シュレディンガー博士が草葉の陰で腹抱えて大笑いしてそう

    • +1
  14. まあSF小説とかでは昔からごく当たり前にあるアイデアではあるね。

    • +2
  15. そもそも宇宙にある全ての事象を記録する術が無いと思うが

    • +1
  16. 親殺しのパラドックスって、ゼノンのパラドックスと同じような屁理屈だよ
    時間遡行が可能なら、自分の存在に関わる過去を改変したとしてもその影響は自分に追いつけない

    • 評価
  17. 藤子不二雄の名作「T・Pぼん」でも、この問題は扱いかねてる感じだったな。
    1話で秘密を見た主人公をTPが消そうとするんだけど、主人公が結果的に世界滅亡を防ぐからという理由でスカウトされてたんだが…。
    そもそも親殺しのパラドックスを回避出来ない時点で、消す事自体が不可能なんだよねぇ。
    TPの行動理念とか設定とか結構練られてただけに、余計に気にかかる。

    • 評価
  18. 要するに別の世界に行って、その世界で何やっても自分の世界では影響無いから大丈夫ってだけで、そりゃ同じ環境の似た場所に旅行して、そこで問題起こして帰って来ても、自分の家には何にもないよ?ってそりゃそうでしょとしか・・・・・
    タイムトラベルの一番の問題は、手法や物より、見るではなく行くなのだから、行った時点で変わってしまう時間が自分の世界である証明が出来ない事や、トラブル解決等の場合、そもそも、そのトラブルが起こって無いのだからトラベルする動機自体が無くなる矛盾なんじゃないかな?
    それと、エキゾチック物質とかいう具体性の無い都合の良い物を持ち出している時点で、何もかもが陳腐になってしまう。

    • +2
  19. ミライザーバンの謎の球体の正体。

    松本零士はテレビのせいで変な理想をわめく漫画家と思われているが、
    すごいSF漫画も描いているのです。

    • 評価
  20. ネトフリでやってたアダム&アダムって映画が、過去に戻ってタイムマシンテクノロジー破壊する話だったけれど、あれだとメインの時間流(タイムマシンテクノロジーが生まれた世界)があってサブの時間流(タイムマシンテクノロジー破壊後の世界)に一時的に分岐してから、時間の整合性を図るためにサブの時間流がメインの時間流に合流(タイムマシンテクノロジーの生まれた世界と同じではあるが、タイムマシンテクノロジーはない)するって理屈にしていたね。

    • 評価
  21. 無だったこの世界に宇宙はどこから来たのかって話
    別の宇宙から来たんだから多次元世界は存在するのが今の宇宙論
    無限にそれが連なるならばタイムマシンがあったとしても同じ過去や未来には行けない

    • +2
    1. ※27
      タイムマシンが作られてしまうと
      その瞬間に全宇宙とその全時間を知ったことになるよね
      タイムマシン(AI)で各時間へ移動して観測しては戻りを繰り返して共有すると
      限りなくゼロ秒で全て知ることに・・・
      タイムマシンは時間同期するならテレポーターでもある
      あとひたすら物質を同じ時間に集めるとどうなるんだろう
      これも限りなくゼロ秒で出来てしまうし
      複数のタイムマシンの異なる時間から空間座標を完全に同じにした
      同時刻帰還はどうなってしまうんだろう

      • 評価
  22. パラレルワールドは人間のような知的生命体の選択肢の幅だけ存在する 的な話ですが、たとえ約80億人いようとも宇宙全体から見れば地球は辺境のイチ惑星に過ぎないので、
    となるとパラレルワールドって、宇宙に存在する知性宇宙人全体の選択枝×経過時間 の数量分存在する事になるんでしょうか??

    • 評価
  23. 5分前に戻ってタイムマシンを壊すとしたら、タイムマシンを使う5分前にタイムマシンを壊そうとする自分に遭遇しているはず…?

    そういえば、偉い学者さんがタイムトラベラーを歓迎するパーティを開いたことを事後告知したが、誰も来なかったのでタイムマシンは完成しないって証明してたな
    もしタイムマシンが完成したら過去に戻って是非その学者さんが開いたパーティに参加してみてほしい

    • +1
    1. >>29
      全部のタイムトラベラーが社交的とは限らんのよ…
      しかもパーティーなんて、引き摺りタイムトラベラーには地獄よ…

      • -1
      1. ※30
        君が想像してるパーティとは違うかもしれない
        食事を交えてお互いの研究内容について話し合ったりする会だよ
        研究者ってのは社交的でなくても、自分の分野について説明はしたがるものなんだ

        • 評価
  24. 3次元の世界で、4次元を実現すること自体無理じゃないですか?
    不可能だと思いますよ
    過去に戻る、未来を変える、4次元の世界では可能だと思いますし
    実際あると思いますけど
    3次元でそれは無理ですよ
    3次元では過去も未来も存在してないのですからね

    • 評価
  25. 時空移動できる前に人類が滅びてるって考えるのが一番筋が通る

    • 評価
  26. 世界線とは、零次元幾何を持つ点粒子の時空上の軌跡を言う。

    • 評価
  27. 自分は物理畑じゃないから素人意見になるが、
    そもそも過去を変えたことで現在は変わるのか?

    過去の自分と現在の自分には一切物理的な繋がりがないと思うんだけど…
    過去って現在の粒子の状態から推定可能なだけで、現在につながる長い一本線を構成しているわけではないのでは? 現在という一点しかないんじゃあないか

    タイムマシンという機械でエネルギーを利用して時間を遡る 時間を遡るのに必要な代償(エネルギー)は払ったから、物理学的に何ら矛盾はない

    過去のある一点に今まで存在しなかった粒子(自分)が現れただけで、それもなんらかの物理現象と等価交換されるだけなのでは? 世界の外部(未来)からエネルギーが加えられるならエントロピーやら熱力学やらには反しないよね

    まあ、そんな可能性に気づかないはずがないから、否定された理論なんだろうね

    • 評価
  28. タイムトラベル可能な世界って、マルチバース生成世界ってことなんかな……

    • +1

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