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あるものが同時に複数の場所に存在しうる――それが量子の世界であって、人類が知る現象としてはおそらくもっとも驚くべきものであろう。もし、それがミクロの領域やシュレーディンガーのネコにとどまらず、この宇宙自体がひとつの量子物体で、他の宇宙と相互に作用しているのだとしたら?
ちょっと何を言っているのかわからないかもしれない。だが、それがロシア、イマニュエル・カント・バルト連邦大学の研究グループが導き出した結論だ。
リビングで寝そべりながら、キッチンで餌を食べる猫
あなたのお家の猫はリビングのソファでゆったりと寝そべっている。それでいて、キッチンではボウルに盛られた餌を食べている。そんな場面を想像することができるだろうか。猫はどちらかにいるのでなく、同時にソファとボウルがあるところに存在しているのだ。
しかし、それはあなたが猫を観測する前の話だ。あなたがその姿を目撃した瞬間、猫の居場所はソファかボウルかどちらかに限定されてしまう。これが量子の世界だ。

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もちろん、猫でこのことを証明しようとしてもむずかしいかもしれない。だが、電子のようなミクロの世界では、確かにそのような振る舞いを計算から導き出すことができる。電子を観測すれば、それは1ヶ所にあり、それを記録することもできる。だが、観測していないときは、同時に複数の場所に存在する。その様子を「電子雲」という。常人の脳では容易に理解できない摩訶不思議な世界だ。
物体が瞬時に1ヶ所に崩壊、量子デコヒーレンス効果
つまりは猫は電子とは振る舞いが違う。だが、なぜなのか?猫は、電子・陽子・中性子といった素粒子で構成されている。いずれの素粒子も量子の世界では先ほど述べたような奇妙な振る舞いをする。それなのに同時に複数の場所に存在するなんて猫は、いくら探したって見つからないだろう。
もうひとつ不思議なことは、「観測」の不思議な効果だ。私たちが「観測」していないとき、物体はそこかしこに「シミ」出す。それなのに、それを見るや否や、認識不能なほど刹那の瞬間でぱっと1ヶ所に集まってしまうのだ。はたして、一体なぜそのようなことが可能になるのか?
ちなみに科学者は「集まる」などとは言わず、「波動関数の崩壊」と表現する。また、量子の非局所性などが失われてしまうことを「量子デコヒーレンス」効果という。

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この宇宙はひとつの量子物体であり、さまざま宇宙と相互作用している
これらの疑問に答えるために、アルチョーム・ユーロフ氏らが『Theoretical Physics』(9月18日付)で発表したのが、小さな1粒の素粒子と同じように、この宇宙自体もまたひとつの量子物体であるという仮説だ。それによると、私たちが暮らす宇宙は理論上、同時に複数の場所や状態で存在することができる。そして、宇宙それ自体が量子物体であるのなら、別の何かと相互に作用していなければならない。その何かとは、隣にある別の宇宙=世界かもしれないというのだ。
ユーロフ氏らによれば、先ほどのデコヒーレンスなどそもそも存在しない。あらゆる量子関数は、別の世界において物理的に顕在している。つまり、ある世界では猫がソファで寝そべっており、また別の世界では猫が餌を食べている。
この「多相互作用世界論」を用いれば、波動関数の崩壊という概念など完全に回避することができる。
どんな量子の現象も、隣り合った「世界」の位置によって決まる。ふたつの世界が十分に近ければ、量子ポテンシャルが生まれる。反対に離れれば、量子ポテンシャルは下がり、私たちが普段体感している古典的な物理の世界に戻る。

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量子コンピューターの類推
多相互作用世界では、私たちは目で見ることで波動関数を崩壊させる神秘的な観測者などではない。むしろ、宇宙という機械の単なる歯車に過ぎないのかもしれない。それは、量子コンピューターのような超最先端の機械だ。ユーロフ氏らは、彼らの宇宙モデルが、まるで量子コンピューターの量子ビットを思わせる理由を説明していない。もしや、私たちは何者かが作り出した量子コンピューターの住人なのではないだろうか? いや、どこかの世界にそのような現実があってもおかしくはない。
References:Study: Our universe may be part of a giant quantum computer/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班か
もはやなんでもありだな
2. 匿名処理班
普段はあらゆる状態で存在して
観測した時だけ固定されるって言うのは
観測という行為が何かのトリガーになってる訳じゃなくて
量子自体は無数にある平行宇宙の状態を常に持っていて
観測した時に我々の宇宙ではそうなっている
我々の宇宙での結果が見えているだけなんじゃないの?
3. 匿名処理班
多世界解釈の立場てことなんか?
4. 匿名処理班
自分がこの先とるであろう行動と確率を考えることがある
例えば、5分後の自分は
・変わらず怠惰にディスプレイを眺めている 70%
・溜まった食器を洗ってる 10%
・仕事の続きをする 5%
・外に飛び出して奇声をあげる 0.001%
確率に差はあるけど、同時に存在している可能性があるってこと?
5.
6. 匿名処理班
痴情のもつれは量子のもつれ
7. 匿名処理班
全ての有りうる事は存在しているが認識できるのは一つの世界線だけって事やろ。
8. 匿名処理班
つまりあらゆる状態が無限に現実として存在出来る可能性がある訳で
異世界チート転生も十分現実としてありえると
9. 匿名処理班
そもそも、宇宙に絶対的な質量や大きさって存在するんですか?
10. 匿名処理班
観測者がいなければ雲も猫も自体存在しないしないのかこの俺を観測しているのは何なのかな
11. 匿名処理班
SFなんかであるパラレルワールドかな。
平行世界。
12. 匿名処理班
波こそが時間の姿であり正体だと思う
13. 匿名処理班
なんでロシアでカント?と思ったがカントの出身地って今はロシア領なんだっけ
14. 匿名処理班
つまりパラレルワールドは実在すると
但し近ければ相互に作用・干渉はすれども
相互の行き来は出来ない
15. 匿名処理班
ミクロの領域に限らず、宇宙そのものの全体像は確率分布あるいはベクトル場のような物で、我々が観測してる「現実」は言わばパラメトリック曲線に過ぎないということだろうか。
まあ乏しい知識を元にいつもこういう妄想をしてるから、よく理解できない理論もこうして自分の考えに落とし込んで低俗化させてるに過ぎないが、案外当たらずとも遠からずかも知れない。
16. 匿名処理班
※4
パーセンテージの設定が絶妙だね。
17. 匿名処理班
量子デコヒーレンスはノエインで覚えた
18. 匿名処理班
結局のところ
「宇宙ヤバイ」の一言に凝縮されるんだよなぁ
19. 匿名処理班
宇宙は無限に広がり希薄され極めて無に近くなる
だが現宇宙の10万個分離れた距離に、また別の宇宙がある 小並感
20. 匿名処理班
全く理由に心当たりも無いのに急にゾワッとする時はもしかしたら
たまたま別の世界の俺が恐怖体験してる所に量子的に接近してるのかもしれないって事なのか
21. 匿名処理班
※8
この世界こそ異世界だと思ってる(´・ω・`)
22. 匿名処理班
>>14
相互の行き来するとしたら、マンデラ効果が起こるだろう。
23. 匿名処理班
※4
・変わらず怠惰にディスプレイを眺めている 25%
・ディスプレイから貞子が出でくるが美少女だったので一緒に暮らす 25%
・ディスプレイから「貴方はマランダーの戦士に選ばれました、
私と一緒に世界中の動物を救う戦いに参加してください」とパルモに呼ばれる 25%
・自分がディスプレイの中に吸い込まれて大冒険 25%
くらい弾けても量子の世界なら許して貰えるはず。
24. 匿名処理班
あるものが同時に複数の場所に存在しうる――人類が知る現象としてはおそらくもっとも驚くべきものであろう。
いや、画面の中の彼女が出てこない現象のほうが驚きなんだが。
これを論理的に説明できる人いる?
25. 匿名処理班
>>4
いや全て平等に重なり合ってる
26. 匿名処理班
量子もつれと量子の重なり合わせっていうのが、量子コンピュータの鍵
ちなみに量子の話を聞くときは人知を超えた世界だから自分の解釈出来る範囲(バイアス)で捉えない方が良い
めっちゃ冷やすとドアを3つ同時に入るとか
観測によって固定されたら0秒でそのもつれてるものと同じになるとか()
27. 匿名処理班
量子もつれと量子の重なり合わせっていうのが、量子コンピュータの鍵
ちなみに量子の話を聞くときは人知を超えた世界だから自分の解釈出来る範囲(バイアス)で捉えない方が良い
めっちゃ冷やすとドアを3つ同時に入るとか
観測によって固定されたら0秒でそのもつれてるものと同じになるとか()
全ての可能性は観測するまで存在しているとか
10円玉を指で弾いた回転している状態
裏表は観測した時に決まる
28. 匿名処理班
哲学的に考えられていたことが、SFという文学になり、とうとう現実の世界で本当にあり得たって感じやな。
古代の哲学者からすりゃ、人が月に行ったとか宇宙に滞在してるとか、SFだもんね。
29. 匿名処理班
ゲームで見えてるところだけレンダリングするのと同じシステム?
30. 匿名処理班
>>22
むしろマンデラ効果がそれなのでは
31. 匿名処理班
多分、それが普通の事なんだ
何も特別なことはない、たとえそれがこの宇宙であっても
全ては無数にあるモノの1つなだけだ
それは宇宙と呼んでいるものを含む無限に続く入れ子細工のようなものかもしれない
32. 匿名処理班
頭がメンタイコになりそう
33. 匿名処理班
数十年前からあるヒュー・エヴェレットの多世界解釈とどう違うわけ
34. 匿名処理班
気づいてしまったか、もちろん今の君たちもモニタリングされている。
もちろん、俺自身も・・・
貴様!見ているな!
35. 匿名処理班
凄く興味深いのだけど、頭が悪くてさっぱり
理解不能なので、
取り敢えず
「神様が何かやったし、今もやってる」と思っておくよ、うん。
36. 匿名処理班
>>33
エヴェレットは1つの世界が波動関数的可能性で分岐し続ける
この解釈は複数の世界に波動関数的可能性が跨がっていてそれぞれ別の道を行く(分岐しない)
37. 匿名処理班
ジョジョでいうとキングクリムゾンがコペンハーゲン(唯一世界)解釈
GERが多世界解釈
38. 匿名処理班
うーむ、これは平行宇宙論とも、また違う理論なのか?
素粒子の世界を、そのまま現実空間に当てはめて考えるのは
普通はかなり無理が有ると思うのだが、
他の場所に有る宇宙との相互作用を考えると、素粒子の世界が
そのまま当てはまる…という事なのか?(良く分からん)
39. 匿名処理班
※6
この場合の読みは「りょうこ」でしょうか?
40. 匿名処理班
今年の5月1日の天気を考えてみよう。
この日は降っていた雨がいきなり止んで虹が出たり、とある空港でいきなり突風が吹いて、ある人物を襲ったりしていて、この一連の出来事があるアイテムによって引き起こされた、超常現象ではないかとかいうことが、言われている
しかし、これらの出来事はひょっとすると、その日ある役職を引き継いだ方が、「別の世界」から出現させたものかもしれない。
ひょっとすると、そのお方は星野之宣さんの言う「レインマン」かもしれない。
このレインマンでは、今回の記事で書かれている出来事が、いろいろと網羅されてるよ。
パラレルワールドや量子のもつれなどなどね。
41. 匿名処理班
つまり、普通に生活していればいいわけね
42. 匿名処理班
メンインブラックのラスト思い出す。
43. 匿名処理班
>>24
よく考えると、その彼女は光子としてちゃんと画面から出て来てる。ただお互いの体の相互作用が弱すぎるだけだ。
44. 答えは42
なるほど、これまでに何度か経験したことの謎が解けた。
家で寝てるはずなのに、学校で授業を受けているとか、職場で仕事もしているとかは、つまり寝ている世界と仕事をしている世界に同時に存在しているということだな?
45. 匿名処理班
※26
ここのコメントを「りょうこ」のことだと考えると、色々と面白い。
46. 匿名処理班
※3
ただ、推測としてこの宇宙の力の中で重力だけが半端なく弱い力なのは他の宇宙との相互作用で漏れ出しているからだって言うのもあるね。
多世界解釈自体は「解釈」に過ぎないけれど、「この宇宙にIDがあってルートがある程度決定されている」とかだったら時折IDをまたぐこともあるのかも知れない。
47. 匿名処理班
観測機の影響を受けて結果が違う説が
あったと思いますが。
電気や光等の電磁波を使わず、
音などの振動も出さない観測機で
量子を観測しないと真実は…。
48. 匿名処理班
これは、地動説が証明された時みたいに、目の前に、ただ存在している純然たる事実に、初めて人間が気づいただけってことだな。
49. 匿名処理班
※17
面白かったよね、ノエイン。
量子力学絡みのパラレルワールドと少年少女の成長を描いた
ジュブナイルSFの良作。
50. 匿名処理班
グレッグ・イーガンの(二度読んでもわかったようなわからんような)SFにこんなのなかったっけ。
51. 匿名処理班
物事というか出来事は、本来ひとつの世界線を描くようなものではなくて、例えば球体の様なもので、自分の意識が観測するとは、球の表面を切り取るような事で、その切断面を観測しているのじゃないか。人間の意識は、自分が行った切断によって、その切断面を出来事と受け取ってしまう、しかし本当は、出来事は高次元の中で起こっていて、可能なあらゆる経路の全体として存在していて、その3次元の断面を現実と受け取っているのではないか。無限の泡を絶えず切り取りながら、3次元の現象の世界を意識が作り出しているような、そんな感じがする。
52. いつもの長文の人
AIと量子コンピュータは対義。(形而上形而下)
AIの基幹はディープラーニング(中間層化=入力と回答の間を多層化)…これは内象↓
ならば、量子コンピュータの基幹は→「未名称」ラーニング
(直接回答を出した後の右側か垂直面に、決められた条件や相関などからの事後処理を作り、それにより回答を後から自在に変更する(元々回答が確定値じゃなく浮動値)。=事後層、周辺層化)…外象
事後・周辺層により回答が変更→未確定性→量子効果
事後や周辺層次第で影響される回答→量子もつれ、量子相関
事後・周辺で回答が変わる→観測効果
素粒子は応答性が高い=外象に即応答=状態や確率の重ね合わせに見える。→が収束する(波動関数の崩壊)…即応性によって絶えず変化する状態が周辺などの影響もあり1つに定まる。
AI=内象=ソース=フォアグラウンド
量子コンピュータ=外象=リソース=バックグラウンド
という説を提起。世界には、
・世界線や歴史改変や予定調和の概念がある
・回答(現在の瞬間)が時間経過で発生当時本来の様相や状態から物理的に考え難いほど変わっていくことが多々ある→回答の変化。=外象
・中に住む人間や社会、物質の運動によって世界が変わる。=内象
もし上の(量子の)説が正しければ、
世界は内象外象両方の性質を持ったもの。→世界が量子物体という説は一面的に正しい
53. 匿名処理班
真ん中3つ書いてること変わってなかったわ
内象=内論
外象=外論
(微小論全体論的に)でもOk
54. 匿名処理班
量子レベルの確固たる世界って高次元にあると思う
2次元の人が3次元の物体を目撃すると奇妙に見えるように、3次元の視覚しか持たない我々には量子の世界が奇妙に見えるのでは?
55. いつもの長文
>>53 あと余談
・量子コンピュータもAIみたいにプログラムだけで作れるだろうとか
・AIも量子コンピュータのような装着で作れるかもとか
・量子コンピュータを動かすプログラムを既存の(古典コンピュータの)内論プログラムじゃなく外論プログラムにしなきゃ、まともに動かないだろう(エラーも多いみたいだし)とか
・内論外論、両者を合わせたコンピュータはさらに上の次元にいくだろうとか(装置・プログラム)
・量子学のシミュレーションを外論プログラムでとか
を補足。
────
・量子コンピュータプログラム=浮動値未確定性プログラム
・装置AI=再帰や反芻、情報変遷などを実現する回路で作れるか
───
まとめ
内論=ディープ・中間層(入力と回答の間、回答の左側に層)
外論=事後層・周辺層(回答の右側に層)
量子効果「未確定性(事後改変)・量子もつれ(相関)・観測効果(周辺影響)」、素粒子の即応性によるミクロ時間変化「重ね合わせ(に見える)→波動関数の崩壊(ミクロ時間の1意状態)」=外論
という一応仮説。
56. 匿名処理班
手塚治虫の火の鳥に出てきたな。
宇宙そのものが素粒子の一つ。極小も極大も、フラクタル。
57. 匿名処理班
>>55
名称暫定
内論=deep(深い)deeper
外論=farth(遠い)farther
ディープラーニングとファースラーニング
深層学習と距層学習
これからのシンギュラリティの前に新たな分野も同時に開拓を始めよ。
58. 匿名処理班
パラレルワールドを科学的に検証するってことかな?
59.
60. 匿名処理班
※54
二次元が無限にかさなったものが三次元とかいう理論あったような
それなら二次元とか低次元の存在が、三次元と高次元の存在を観測しようとしても
その一部しか観測できないのでは
エヴァンゲリオンというアニメのラミエルだっけ
唐突になんか異常に現実離れした変形してるように見えたけど
それは低次元な存在である我々からみたからそうみえるだけで
ラミエルが存在している次元から見た視点では言うほど変な事してないのかも
61. 匿名処理班
ドロー!俺は手札から「オッカムの剃刀」を発動するぜ★
62. 匿名処理班
オッカムの剃刀を発動するならますますもって多世界解釈の方が現実的だと言う物理学者が居るな。観測によって波動関数が崩壊するということはシュレーディンガー方程式では証明出来ないし、観測者を外側に設定して論じてるコペンハーゲン解釈は非科学的、当然観測している者も含めて考えれば人が観測しようがすまいがそれぞれ別々の確率が相変わらず漂っているだけだという
63. 匿名処理班
自分は、夢が関係してると思ってる。
デジャヴとか、妙にリアルだったり
なんか不思議な夢は
実は無限に存在している世界を行き来しているんじゃないと想像しては、ワクワクしている。
64. 匿名処理班
夢は現実であり、現実は夢である。好きな言葉
65. 匿名処理班
神はバラバラになった
の先のドアだな
66. 匿名処理班
真空から素粒子が突然発生するらしいですし、ブラックホールは時間や空間が歪む
67. 匿名処理班
つまりは、宇宙の終わりが熱的死である場合には、ボース・アインシュタイン凝縮が起きるってことじゃね?
わくわくしそう。