
量子力学の奇妙さについては多くの人がご存知のことだろう。壁を通り抜けて歩く人間・タイムトラベル・一般不確定性など、常識を覆すその世界では一般的な計測というものがまったく無意味になる。
量子テクノロジーの計り知れぬ潜在能力を鑑みれば、それを持つ者は持たぬ者に対して政治・金融・セキュリティといった様々な分野で非常に有利な立場に立てるはずだ。だからこそ、それがもたらす意味合いを理解しておくことは大切なことである。
10. 演算速度が爆発的に上昇

しかし量子コンピューターが使う量子ビットは、事実上無限の数の状態を同時にとることができる(ざっくり言うと、n量子ビットは2n種の状態で同時に存在できる)。
通常のコンピューターに30桁の0と1の配列を与えれば、およそ10億通りの数値を扱うことができる。ただし各組み合わせを個別に扱わねばならないために、そのための時間とメモリも膨大なものとなる。
一方、量子コンピューターは10億通りの配列を同時に”見る”ことができるため、演算にかかる時間は劇的に短縮される。現在最高のスーパーコンピューターが数千年かけて行うような計算でも、ものの数秒で完了できてしまうのだ。
9. 新薬の開発

現在、大量の薬品が売られているが、その開発速度はもちろん効果も驚くほど限定的だ。コンピューターの速度と精度が上昇し続けているとはいえ、標準的なコンピューターの枠を出ることはない。
人体のような複雑な器官において、薬剤は無数の反応を示す。無数とも言える分子レベルの遺伝的多様性に加え、薬剤の対象が1つではないために、その結果はとんでもない数に上る。
薬剤の相互作用に関連するあらゆる結果を検証し、最適な治療計画を立案できるのは量子コンピューターだけである。それが個人に対する個々の薬剤の効き目まで推測できるのは、DNAシーケンスの精度を上げ、たんぱく質の折りたたみについての理解を促進してくれるおかげだ。
8. 鉄壁のセキュリティ

2つの粒子が連絡を取り合う媒体などないがゆえに、もつれた粒子を利用してコード化された信号を傍受することはできない。これが個人や国家のセキュリティにとって大きな意味を持つ。
指数関数的に増大した処理能力と量子暗号によって、最も高度なハッキングですら破れないサイバー空間のセキュリティが実現するだろう。
アルスター大学のサイバーセキュリティの専門家ケビン・クランは、「量子コンピューティングは、機械学習やクラウドコンピューティングを用いるデータ解析が利用される分野であれば、どこにでも応用可能」と説明する。データのパターンを探し、侵入を検出する量子コンピューターは、数百万手先にハッキングの”気配”を察知することができる。
7. 狡猾なハッキング

大きな数の因数分解を行うには、現代のコンピューターでは正解が出るまで1つ1つ試すしかないため、ハッカーにとっては最も厄介な問題である。
しかし量子コンピューターはあらゆる選択肢を同時に検証することが可能である。例えば、1つのRSA-768暗号(2つの素因数を持ち、768ビットの鍵を必要とするもの)を解くには数百台のコンピューターを走らせても2年はかかる。だが量子コンピューターなら1秒のさらに数分の1でそれをやってのける。
6. 精密原子時計と物体検出

量子テクノロジーを採用する原子時計なら、超精密物体検出機を利用して、素晴らしい精度を実現できる。その検出機は重力・磁場・電場・力・動き・温度といった様々な現象のごくわずかな変化を感知し、時間として反映する(空間・物体・時間は密接に絡み合っている)。
高精度の検出機は地下に埋もれた物体や水中の潜水艦を発見する際にも役立つ。また車とそれ以外のものの区別する精度が向上するため、車の自動運転機能も大幅に改善されるだろう。
5. 金融市場の進化

さらに急激に変化する市場におけるオプション価格に関連する複雑な問題も解決できない。例えば、ストックオプションの多くは経路依存型の複雑なデリバティブを必要とする――つまりオプションの支払いは究極的には元になっている資産の価格の経路によって決定されるということだ。
オプションの考えうるあらゆる”経路”をマップ化し、予測することは、現在のコンピューターでは手に余る。しかし量子コンピューターなら理論上は不適切な価格が付けられたストックオプションを判別し、市場が動く前に利益を確定することができる。
無論、この手の力は量子コンピューターを所有する者に都合のいいように市場を歪める。その代償を払うのは量子テクノロジーを手にすることができない個人投資家や企業だ。
4. 人間の心をマップ化

人間の脳は860億もの神経細胞で構成されている。その電気的な基礎については十分よく理解されている。が、問題なのは、脳の内部で結びつけられている細胞の物理的な基質が、心・思考・記憶・感情に変わる具体的な仕組みである。
心を理解しようと努める神経科学者は、脳が感覚データと入力を比較的予測可能な出力に変換することから、コンピューターの例えをよく利用する。ならば、コンピューターの仕組みを理解するうえでコンピューターを使う以上に優れた方法などあるだろうか?
神経科学者ケン・ヘイワース博士は、マウスの脳をマップ化するには1年から2年かかるだろうが、人間の脳をマップ化するのは既存の技術では不可能だろうと話している。ただし、量子コンピューターがあれば話は別だ。
3. 惑星の発見

すでにNASAは量子コンピューター技術の一般的な原理を用いて、安全で効率的な宇宙飛行を実現しようとしている。NASAはほぼ10年前にロボットを宇宙に送り込むミッションを計画する傾向にある。その目的は量子最適化を利用して、ミッション中の出来事をきわめて正確に予測することだ。それはロボットを利用した宇宙ミッションにおいて制約となるバッテリーの効率的な利用法の考案にも役立つ。
2. 遺伝学

量子コンピューターは、遺伝子がマップ化されたのと同じように、”タンパク質のマップ化”をすることができる。また原子レベルにおける複雑な分子の相互作用をモデル化することもできるだろう。この解析ができれば、現在では治療不能とされる病気の治療法が発見されるに違いない。
量子コンピューターの速度は、”量子ドット”という数ナノメートルしかない極小半導体クリスタルの利用と解析にも役立つ。量子ドットは現在、ガンの発見と治療に関する最先端の研究で利用されているものだ。
またDNAの突然変異は、現在のところ完全にランダムに発生すると考えられているが、実は量子のゆらぎに起因している可能性も解明してくれるかもしれない。
1. 素材科学

エンジニアがダムや飛行機を設計する際、まず最初に手がけるのが構造だ。しかし、それが分子や原子レベルになると直感に反する組み方をすることが多く、とてつもなく困難になる。新素材を探す化学者や物理学者の試みは、まるで信頼できる地図がないまま冒険の旅に出るようなものなのだ。
その信頼できる地図を与えてくれるのが、原子の相互作用を超高精度でシミュレートし、解析を行う量子コンピューターだ。これがやがてより効率的な新素材の開発につながる。すなわち、さらに優れた超伝導体・強力な磁石・エネルギー源などの開発が可能になるということだ。
via:10 Incredible Implications Of Quantum Technology/ translated hiroching / edited by parumo
▼あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
そしてカーツワイル氏は人間の脳を飛躍的に進化させるって言っている。だからコンピュータも進化するけど人間の脳もコンピュータと共に飛躍的に進化していくということだろう。今天才と言われている人も少したてば天才じゃなくなるっていうのは胸熱だな。アインシュタインが田舎のたるいおっさんとたいして変わらなくなるというのは凄いね。えそれにしても量子ってすげぇな。俺は目に見える物体が全てだと思っていたが、目に見える物体だけじゃなくて、その先の小さい物体というのがあって、それは摩訶不思議な動き方をする。そしてその摩訶不思議な動き方をもとにしてコンピュータを作るだなんてすごすぎるw
パスワードは一瞬で特定されるようになるしということを考えていくと、人間がどういうことを考えているのか、どういうものになりたいのか、どういう感じ方をしているのかというのも全て丸裸にされるんだろうなー。例えばあのひとに嫉妬しているとか、あのひとが嫌いだとか、とにかく量子コンピュータが文章を見たら一瞬でこの人は何を目的にしているのかを心理学、精神医学、脳機能学、生理学・・・などとにかくあらゆる学問と照らし合わせて判断されるって事態が到来すると思う。その時論理的に行える仕事というより、とにかくコンピュータにはわかりにくい創造的な仕事はやっぱり皆求めるようになるんじゃないかな。そうなっていくと、医者とかもなくなっていくんかな、芸術家も機械で芸術できるかなとか、会計士も不要かなとか、弁護士だって無限の法律を照らし合わせて、そしてその中から回答を見出して、それがあっているかどうかを判断する人は必要だろうけど、なくなるんかなって思っている。こういう未来を考えるとどういう仕事についたら良いのかも同時に考えることになって、かなり摩訶不思議。まだ学生なんだけどね
2. 匿名処理班
夢のある話だ
3. 匿名処理班
銃夢のノヴァ教授の業子力学かと思った
4. 匿名処理班
実用化されて民間でも当たり前になったとき、
テクノロジーに取り残されないように注意しなきゃな・・・
5. 匿名処理班
まさに神の技術だね!
6. 匿名処理班
北朝鮮が謎技術で量子コンピューターをつくる予感
7. 匿名処理班
ここ20年で技術は大きく進歩したけど、量子コンピュータが実用化されればそれとは比べ物にならない劇的な飛躍が起こるのだろう
正直想像も出来ないな
8. 匿名処理班
夢のまま終わっちゃいそう
9. 匿名処理班
禅問答が出来ない人は量子コンピュータ使えないかもとか
アホなことを考えてしまうな。。。
10. 匿名処理班
夢のある話だけど、同じように50年前に手塚治ら空想家が思い描いた未来図の1/5も実現してないし10年じゃさすが無理でしょ。すでに9割9分ほど理論が完成していて、残りのパーツが何なのか、どんな問題が解消されればそのパーツが揃うのかわかってる状態なら、全世界の天才たちがそれを競って追う事で軌跡が起きて、願いが叶う可能性もなくはないだろうけど。
11.
12. 対抗意識感
計算がめっちゃ速いやつが誕生するのか!
しかも、今まで必死に一個一個コンピュータが計算してたのを、手抜き感覚でまとめて1発で計算しちゃうコンピュータの天才なんだね
すごーい!
13. 匿名処理班
アイザックアシモフの世界のロボットは量子脳だったっけ。いやさっき調べたら陽電子頭脳だったけど似たようなものらしい。量子コンピューターなら自我を持つロボットもできるのかな?
14. 匿名処理班
ふーむなるほど全くわからん
15. 匿名処理班
これからの十年間で、その後の世界がユートピアになるかディストピアになるか、はたまた今までとそう変わらないのか決まる訳か
例えばディストピアの世界が訪れたら自殺志願者が増えるだろうけど、量子コンピュータが瞬時に自殺を食い止めるシステムを完成させる。なんてこともできるのかも
怖くもあるけど、今のところは楽しみだな
16. 匿名処理班
量子コンピュータがものすごい速さで解析し、ディープラーニングで学習する
コンピュータが人間を超える日は2045年を待たずにすぐ来るんじゃ・・・
17. 匿名処理班
少なくとも、「万全のセキュリティ」と「恐ろしいレベルのハッキング」は
同時には存在しえないよなあ。
民衆が量子コンピューターを操作する段階になると、またイタチゴッコになる。
金融市場への有利さも同様だし。
記事読んでて、「え?」ってなったw
18. 匿名処理班
※6
あそこは太陽に降り立って黒点を採取してくる国だからな……
19. 匿名処理班
セキュリティとハッキングの話は矛盾してね
どっちも量子コンピュータ使うのなら今と変わらんいたちごっこになるんじゃないのか
20. 匿名処理班
量子コンピューターはコンピューターではない
旧約聖書に予言された宇宙のヘキサグラム
いわば宇宙を二分しての対抗する勢力
“犬”及び“猫”によって生まれるコズミックパワーである
我々人類は彼等に対する尊敬の念を忘れることなく
マクドナルドで100円バーガーを複数個頼むのであれば
利益率の高いポテトも一緒に注文する必要があるのだ
21. 匿名処理班
開発に成功したらまずその国の政府が独占的に使うよ。
最悪を想定すれば核よりも恐ろしい事がおきるかもね。
22. 匿名処理班
つまり今までのコンピュータは本のページをめくるスピードを競っていたけど
量子コンピュータは本の全ページを一度に、一瞬で読むって感じかな
23. 匿名処理班
※17
全ての人が量子コンピューターの恩恵を受けられるわけじゃないからね。
常に金持ちと大企業が先んじてその恩恵を受け、貧乏人や後進国は搾取され続けるという構造はいつまで経っても変わることがないと思われる。
24. 匿名処理班
※21
素早い判断で、即動ける国はそうするだろうね。
政治家としてあぐらをかいてる年寄りばかりがダラダラやってるような国とか、公然と他国のスパイがその国の政治家になって国の運営を妨げるような反国活動している国だとそうでもない。
25. 匿名処理班
人間はすでにコンピュータに負けたが、、
す、、寿司屋にお寿司を食べに来る客ってやつはコンピュータにはなることができないやい!
26. 匿名処理班
で、佐野量子がなんだって?
27. 匿名処理班
量子コンピュータってのがすごい高性能なのはわかるけど、
その上で走らせるOSやアプリの開発がかなり大変そう。
28. 匿名処理班
???「無人化すべきである」
29. 匿名処理班
すごいということはわかった!
30. 匿名処理班
レプリケーター作ってください
全ての貧困が解決できます
31. 匿名処理班
※22
記事を読むとそんな感じですね。
いわゆる霊の次元が、ついにコンピュータで実現出来るって事です。霊の世界も時間が無いと表現するので、本を1ページ1ページめくりながら読み進むのではなく、バっと一瞬で読み終わる感じ。読み終わった瞬間がそこに存在する。実際に量子コンピュータが実現したら、気とか霊、神様の次元まで目視出来る様になりそう。その様な技術なら早く実現してほしい。
32. 匿名処理班
なんとなくだけど、ものすごい単純な大きな問題にぶつかって開発は断念せざるを得ないってことになりそう
33. 匿名処理班
家畜を大勢で飼わなくとも自然界が消えようとも、原子分子が大量に手元に揃えば、量子コンピューターを使用して、どんな食材も研究資材も薬品も衣服も作り放題使い放題売買し放題研究し放題って訳か・・・・。
いやはや、凄まじいな・・・・成功、すればね?
34. 匿名処理班
何を使うにしろ、使う人の心次第で天国にも地獄にもなるだろう
35. 匿名処理班
量子コンピューターってそれを作るまでに何か技術的な問題とか無いの?
36. 匿名処理班
洗脳とか、人間の行動を操作する技術も飛躍的に進歩しそうだな
量子コンピュータの恩恵を得るものとそうでない者との間に、かつての奴隷制以上の絶対的な身分の差が生まれてしまわないだろうか
淘汰されたくない(汗
37. 匿名処理班
オカルティックな話で直接量子と関係無いのだが、
昨今の技術の進化スピードを見ていると
デジタルって人間が手を出してはいけない領域だったのではないかと感じる
38. 匿名処理班
こういうものが当たり前になったときに、人間は何を空想しているのかを考えるとロマンがあるな。
39. 匿名処理班
一般家庭に普及するのは何十年後か
40. 匿名処理班
浪漫はあるけど実現はしないだろうなあ。言うだけなら簡単だし、それに量子コンピューターで技術の発展とか狙ったりしても成功はしないだろうな。 鉄壁のセキュリティ、金融市場の進化はある程度は実現するんじゃないかな・・・100年後とかもっと先になって完成するだろうな、一般家庭で普及されるようになるなら1000年後だ(一般的に量子コンピューターを所持していると言うことで)。
41. 匿名処理班
4が興味深い。
心の改良技術を早く……!
そして苦しみから解放されたい!
実現しないだろう、ではなく、実現させるのだ。
不可能は可能になる、というが文明そして宇宙の流れだ。
42. 匿名処理班
量子コンピューターと人工知能を組み合わせて、SNSのデータ解析をして、恋愛の出会いを作ってほしい。
43. 匿名処理班
確実に言えそうなことは、人は考えなくなるということかなぁ。
44. 匿名処理班
記事の紹介は過去に何度も同じような希望が繰り返されたような・・・
〇〇ができれば世界はこんな素晴らしいことになる・・・と
そんな摩訶不思議なものが10年後にできるわけ無いだろう?と思うが
とはいえライト兄弟が初飛行の日の10年前の世界の一般人はそんなものは夢物語と思っていたし、科学者さえ機械で人間が空を飛ぶことは不可能と断言していたもんなぁ 飛行機はやはり2つの利用があったね、爆弾投下で大量の人間を抹殺したことと移動時間を飛躍的に短縮した面と
45. 匿名処理班
まだ早い