
この研究は『PNAS』(2022年3月14日付)で発表された。
永久凍土が解けると地盤が不安定になり、道路・建物・空港といった北極圏のインフラに悪影響を与えるだろうことは、これまでも示されてきた。
それだけでも大きな経済的損失につながるが、その影響は今後ますます大きくなるものと予測されている。
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永久凍土が解け、海底に大きな陥没穴や隆起
今回、最先端の海底マッピング技術によって、永久凍土が解けて海底に劇的な変化が起きていることが明らかにされた。海底に、6階建ての建物の敷地ほどもある深い「シンクホール(陥没穴)」が形成されたり、内部に氷が詰まった丘のような地形(ピンゴ)が隆起したりしているのだ。
「北極でこうした大きな変化が生じていることは知られていましたが、最新技術で沖合の変化が観察されたのは初めてのことです」と、MBARIの地質学者チャーリー・ポール氏は話す。

image credit:2022 MBARI
原因は最後の氷河期にまでさかのぼる
北極の陸上で永久凍土が劣化する原因の1つは、温暖化による平均気温の上昇だ。しかし今回記録された海底永久凍土の変化は、最終氷河期(7万年〜1万年前)にまでさかのぼる。この時期、人類がこの地にやってきたことで、ゆっくりとした気候変動が起きた。これと似たような変化は、かつての永久凍土の海沿いでも数千年前から起きていたそうだ。
「この地域における海底温度の長期的なデータはありませんが、手元のデータは温暖化傾向を示していません。海底の地形の変化は、むしろ移動する地下水系によって運ばれた熱によるものです」と、ポール氏は説明する。
この研究は、過去10年間の国際的な協力を通じて、MBARIの自動ロボット技術やカナダ沿岸警備隊の砕氷船など、最新の海洋研究プラットフォームが利用できるようになったおかげで実現したものだ。
ここで判明したことは、地質災害の評価、固有の海洋生息域の開設、生化学的プロセスの解明などに役立つそうだ。

photo by iStock
北極圏に位置するカナダのボーフォート海は、温暖化で海上が後退したことで、最近になって近づけるようになった場所だ。2003年以来、MBARIは、カナダ地質調査所、カナダ水産海洋省、韓国局地研究所と協力してこの海の海底を調査してきた。
調査に使われた自律型水中ビークルやソナーは、1平方メートルの解像度で海底の地形をマッピングすることができる。
今夏、ポール氏らは韓国の砕氷船「R/V Araon」で北極に戻り、海底永久凍土の融解についてさらに詳細な調査を進める予定であるそうだ。
References:Mapping reveals rapid changes to the Arctic seafloor as ancient submerged permafrost thaws - MBARI / Rapid changes to the Arctic seafloor noted as submerged permafrost thaws: Using MBARI mapping technology, researchers have established a baseline for tracking future changes to the seafloor -- ScienceDaily / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
シャンバラへの扉が開きはじめたのか
2. 匿名処理班
現代でこれだと
今以上に温暖だった中世や縄文時代って
北極で何が起きてたんだろうね
3. 匿名処理班
ただの地球の長期的なサイクルじゃないの?
4. 匿名処理班
× 氷河期
〇 氷期
用語の使い方に間違いがある
大手メディアでも誤用が多いので注意
現在の地球は氷河期の中の「間氷期」
5. 匿名処理班
永久凍土の中には様々なものが封じ込められていた。
古代生物の遺骨、太古の大気、
そして、眠りを覚まされた数々の病原体。
地盤が崩れるのも大問題だけど、傍らにはこんな恐怖の種も潜んでいるかも、というヨタ話。
ヨタ話…のままであってくれますように。