文字を読むことはできても、文章の内容や意味を正しく理解できない子供が増えているという。インターネットの普及により、情報量は莫大に増えた。
にもかかわらず、情報のとらえ方についての教育が追い付いていないこと。また、本のような長い文章を読む機会が減ったことが原因と考えられている。
そこで開発されたのが子供向けのアクションゲームだ。このゲームを12時間プレイした子供の読解力が大幅にアップしたことが実証されたそうだ。
デジタル薬としてのゲームの効能
読解力とは文章などを読み解く能力のことである。文章を読んでその内容を正しく理解し、文脈を読み取れる力がないと、様々な弊害が生じる。正しく文章を理解するということは、ただ読むだけではなく、ページで文字を目で追ったり、単語をつないで一貫した文章として認識するといった能力も必要だ。
既にアクションゲームは「デジタル薬」として、子供のADHD(注意欠如・多動症)の治療に使用されているが、これまでの研究によって、テレビゲームをプレイすると、そうした読書に必要な認知力が鍛えられることが明らかにされてきたのだという。
photo by Pixabay
子供が鳥と一緒に惑星を救うアクションゲームで読解力アップ
そこで、イタリア・トレント大学のアンジェラ・パスカロット氏率いる研究チームは、StudioBliquo社と協力して、読書に必要な機能を訓練できるアクションゲーム『Skies of Manawak』を開発した。ゲームの目的は、「ラク」という鳥のような生物と協力して、惑星を救うこと。各ステージは「作業記憶」「空間的注意」「分割注意」「抑制」といった認知力を養えるようデザインされている。
たとえば、流星を撃ち落とすシューティングステージでは空間的注意が鍛えられるし、主人公とラクが別々に行動するステージでは分割注意が鍛えられる。
Skies of Manawak - cognitive training trailer
12時間のプレイで読書スピードや正確さが向上
イタリアの小学生150名を対象にゲームプレイの効果を試してみたところ、Skies of Manawakをプレイしたグループは、していないグループ(こちらはScratchというプログラム学習ソフトで遊んだ)に比べて、集中力が7倍にアップしていたという。面白いことに、ゲームプレイに読書などまったく出てこない。それでも12時間のプレイで、「読書スピード」や「正確さ」にまで、はっきりと改善効果が現れたのだ。
更に研究グループは、ゲームプレイの長期的な効果を調べるため、実験から6か月・12か月・18か月後にも子供たちの読解力を検査している。
するとゲームをプレイした子供たちの読解力は、相変わらず高いままであることがわかったという。つまりゲームプレイによって培われた力は、時間が経っても維持されるということだ。
しかもこの間、子供たちのイタリア語の成績も上がっていた。どうやらゲームは学習力をもアップさせていたようなのだ。
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他の言語でも効果があるのかを検証中
現在、研究グループは、アクションゲーム「Skies of Manawak」のドイツ語・フランス語・英語バージョンを開発している。じつは読むという行為の難易度は、言語によって違う。たとえば、イタリア語は1文字1文字が発音されるため、その意味ではっきりした言語だ。
一方、フランス語や英語はかなり不明瞭な言語と言える。そうした言語を読むには、文脈が発音に与える影響やルールの例外などを覚える必要があり、それだけ暗記に頼らねばならない。
はたしてこうした不明瞭な言語にもゲームは威力を発揮するのか? その答えは今後の研究によって明らかになることだろう。
この研究は、『Nature Human Behaviour』(2022年1月17日付)に掲載された。
References:Improving reading skills through action video games - Communiques de presse - UNIGE / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ファミコン最初期に、プレイするだけで英語力や数学力があがるアクションゲームがあったよ。
2. 匿名処理班
いわゆるエデュテインメント(エデュケーション+エンタテインメント)って
実際の所はあまり効果がないように思えるんだけどな。
旧DS時代に頭がよくなると持て囃された
「脳を鍛えるDSトレーニング」だって監修担当の例の教授自身が
「効果がない。センターの運営するためには資金が大事ですね」と断定しているし。
結局は敵をライフル銃で殺害して屈伸煽りする方が楽しい。
まあもじぴったんは面白かったけどもじぴったんで頭がよくなるのかは知らない。
3. 匿名処理班
やってみたい。Switchで出ないかな。面白そう。
4. 匿名処理班
集中力がアップすれば「読書スピード」や「正確さ」にまで、はっきりと改善効果が現れるのは当然だが、短期的なものだろう
実験から6か月・12か月・18か月後にも子供たちの読解力までアップするとは信じられないな
5. 匿名処理班
好きこそものの上手なれ的な何かなのかな。読解力以外の学習への影響はどうなんだろう。良い影響があるなら知育に取り入れたりするのもいいかも?
6. 匿名処理班
子供の頃こういうゲームは「頭が悪くなる」って絶対買ってくれなかった母ちゃんに読ませたい記事。
7.
8. 匿名処理班
じゃあ読解力のない自分もプレーしなきゃ。早く日本語版も作ってください。
9. 匿名処理班
>>2
君もそうであるように、この手の意見の多くは個人の感想レベルなんよ
その教授自身も実験してないんだし、というか当時は他の学者に批判されてから保身のための発言だしな
今回のは、ベースとなるADHD対策という実績含め、科学的に検証されたものだから説得力あると思うぜ
重要なのはこれだけで効果の有無を決めつけないことだろうな
10. 匿名処理班
>>2
ゲームだけに使う脳みその部位はないし、何を学習して何を応用するかは個人によるしゲームによるとしか言えないな。
何も考えず受け取るだけなら、ゲームは時間の無駄だろう。
11. 匿名処理班
>>8
表現方法とかテクノロジーとか、どういう意図でどう造られたのかとか
そういう考え方が広まってもいいし
ジャンル自体が盛り上がってくれても良いですよね〜
12. 匿名処理班
>>9
自己フォロー
・DSのは「脳のトレーニング」という定義すらはっきりしないもので、どうとでも言えたこと
・学力などに影響なしとされたのはそのゲーム含め個々のケースで、ゲームというジャンル自体は肯定も否定もされていない
そもそも将棋(戦争)からフライトシム(操縦)まで、ゲームの元祖は教育用でもあったわけだ
何らかの効果があるのは間違いなく、それをどうやって目的に応用していくかという個々の手法の話だわね
13. 匿名処理班
switchの脳トレに
下で最大数を探しながら上でジャンプする「二重課題」ってのがあったが
上下ともアクションでも有効なのは面白いね
14. 匿名処理班
字を読むとは字の形を捉えるということです。
視覚からものの形を捉える能力というのは空間把握能力の一部です。
また、学習とは基本的にケーススタディです。
そして文章、文節、単語、字を読むスピードというのは、どれだけ法則を学習しているかが大きく影響します。
学習している法則に従って少ない情報から補完できるようになるからです。
補完できるようになるということは、そこに書かれている一字一句を意識して視覚に捉えなくても何が書いてあるか把握できるということです。
少ない情報量で文章が読める、思考ができるようになれば脳に余裕ができ、理解力や集中力は向上します。
なので「作業記憶」「空間的注意」「分割注意」「抑制」へアプローチしたゲームによってそれまで脳の使われていなかったところが活性化して伸びたのであれば、長期的に能力が伸びていてもおかしなことではないと思います。
15. 匿名処理班
>>4
勉強でも筋トレでも、継続しなきゃそうなるで
継続もゲームで行うのか、普通の教育にするのかなどはまた別の問題だろうけど
16. 匿名処理班
>>2
結構昔からPC教育ゲームと数学の相性が良いのは分かってて、例えば院内学級通学の入院中の子どもたちの勉強を少しでも進める事に役立ってた
これは統計でも有意に差があるとデータが出てて、研究元はアメリカだったよ
実際に私も小学生時代に事故で入院した時に算数の学習をPC教育ゲームでやったけど分かりやすかったわ
それが今回は発達凹凸の子供らに対して空半認知や言語理解といった領域の発育補助となるっていう記事だから、別に違和感はないかな
あとDS脳トレはただのタイムアタック制クイズゲームでこういった領域とはあまり関係ないんじゃないかな
17.
18. 匿名処理班
>>6
その頃「ゲーム脳」なんて似非科学流行ってたからね
科学的根拠ゼロだけど、勉強させたい親御さんの思惑と一致したからもてはやされ、子供からゲーム取り上げる親が続出した
19. 匿名処理班
※1
それどころか、超能力開発トレーニングゲームを売り文句にしているゲームも有った
20. 匿名処理班
※8
原語版でついでにイタリア語の勉強もしてみるのはいかが?
21. 匿名処理班
自分が子供の頃、雨降りとか寒い日は外遊びせず家にいると、必然的に室内でひとりで遊べるものを探す訳だけど、
おもちゃなんかすぐに飽きるんで、どうしても本を読んだり絵を描いたりになる訳。自分の子供時代はテレビゲームやゲームボーイなんか無かったからね。
それが良かったのか知らんが、想像力と読解力はついたように思う。
何かが無いというのも、それはそれで悪いことじゃないのかも。
22. 匿名処理班
のんびり集中して遊べそうな横シューいいなあ
回転オプション…戦う人間発…どこか既視感あるプレイ画面でたのしそう
小リドルを解決するアドベンチャー面もインディーズにあるような良い異界
でありながらなつかしのハイパーカードゲーの香りもあり
デモは今は落とせないのね…いつか日本語版がすちむーあたりにこないかしら
inhibition面に期待する効果ってどんなことなのだろ
抑制をはらって受け入れる?
23. 匿名処理班
>「読書スピード」や「正確さ」にまで、はっきりと改善効果
>イタリア語は1文字1文字が発音される
>一方、フランス語や英語はかなり不明瞭
>文脈が発音に与える影響やルールの例外などを覚える必要
>はたしてこうした不明瞭な言語にもゲームは威力を発揮するのか?
それって、「読解力」(文章の意図を噛み砕く)というより、
「識字能力」(文字が示す単語を正しく読み取る)
の問題ではないの…? もっと言えば、
「速読」とか「指示に対する反射力」の訓練みたいな。
例えば、手旗運動の「赤上げて」「白上げないで 赤下げて」
といった言語指示に瞬時に正確に反応できるようにはなるが、
「テセウスは、無事帰還の暁には白旗を掲げるという約束を忘れ
出港時の黒旗のままだった。岸でそれを見た父王は身投げした。
何故か?(⇒ 息子が死んだと思い、悲観したから。)」
みたいな“間接描写から内容を読み解く理解力”とは別物の気が。
24. 匿名処理班
>>6
これはゲームを治療に活用できるという話よ
親御さんの指すゲームとは確実に別物やで
この手の話では、ゲーム単体とジャンルとしてのゲームがごっちゃに扱われてしまうのが定番なので仕方ないけど
25. 匿名処理班
進研ゼミの漫画思い出した
26.
27. 匿名処理班
音読大事
28. 匿名処理班
他者への理解力がどうのとか言われるが
理解したとしても意味があるのか
理解した相手が同じようにこちらを理解して汲んでくれることはなく逆に便利屋都合のいいヤツにされるのでは?
29. 匿名処理班
※1
販売戦略じゃん
30. 匿名処理班
>>28
まずこの記事を理解することをオススメ
マジレスするなら、相手をそれなりに理解できなきゃまともな会話もできん
ズレたことしか喋れんと、相手にされず孤立してくぞ
それも自覚できないレベルだとヤバい人になってしまう
31. 匿名処理班
直ぐ信用して飛びつかない方がいいと思うよ
キャッチコピーなんてどうとでも書けるんだし
ぶっちゃけ、ゲームやってる時間を読書に費やした方がよっぽど身につくだろうし
フェイクニュースの投稿者も、『世間は驚くほどフェイクに釣れる!』って言ってるぐらいですから
少し頭を冷やして、冷静になって考えるべきだと思います
32. 匿名処理班
>>28
他者への理解力は必ずしも、相手の気持ちを汲んで相手の都合良いように動く事ばかりではなく、
相手の性格を汲んで、どう対処すればこちらの都合良いように相手を動かせるかも理解力。
33. 匿名処理班
昔は「漫画で勉強」ってのが流行ったけど、今は「ゲームで勉強」の時代なんだな。
34. 匿名処理班
意味履き違えるわ行間も読むことが出来ないっつーか…読解力だけじゃなくて会話にしても理解力ヤバいっつーか…敢えてこの言葉を使ってる意味っての分かってくれない人多いね。
小学生でも誰でもネット使える時代になったからそういうのが目立つだけかなって思ってた。
35. 匿名処理班
>>2
某弁護士曰くTCGの効果処理や裁定を覚えるのは法律の勉強に役に立つとかっても話もあってだな…
36. 匿名処理班
アラフォーでも効果ありますか?
37. 匿名処理班
>>23
気になって出典を読んでみたらliteracy(識字能力)を上げると書いてあったわ。
38. 匿名処理班
※21 ※31
二昔前には「本ばっか読んでるとバカになる」って言われてたし、
芸術なんかする奴はロクデナシって認識だったんだよ
いつの時代でも新しいモノ・馴染みのないモノは不信と軽蔑の対象になりがち
本とゲームとでは単に「種類が違う」んであって、どっちが優れてるとかいうものではない
本から得られる経験もあれば、ゲームから得られる経験もある
39. 匿名処理班
もともとゲームが好きな子とゲームなんかやりたくも無いって子のグループで実験してもらいたいな
40. 匿名処理班
SFCのアウターワールド思い出したわ。文字情報なし、ヒントなし、アクションシビア。ストーリーも解らんから終わりも見えず、遂に力尽きて投げ出したステージの次が最終ステージだったらしいが、再び挑戦して物語の完結を知りたいとも思わんかった。