水銀はもともと自然界に存在するものだが、人間の活動によっても排出される。それらは様々な経路を経て川や湖、海に流れ込み、魚の体に入り込む。
更に生態系での食物連鎖を通じて、より上位の捕食者の体内に濃縮されていく。「生物濃縮」と呼ばれるものだ。その為マグロやメカジキ、サケやノーザンパイクなど、大型魚類ほど水銀が蓄積されることとなる。
厚生労働省でも、特に水銀含有量の高い魚介類を偏って多量に食べることを避けるよう促しているが、魚たちの体は思ったより適応力があるようだ。
カナダ、クイーンズ大学や米地質調査局などの研究グループは、湖に水銀を垂れ流すと魚の水銀汚染が急速に進むが、それを止めれば同じ速度で回復することを発見。その結果を『Nature』(21年12月15日付)で発表している。
魚が水銀汚染される2つ原因
魚が水銀で汚染されてしまう原因は、2つある。1つは自然由来の水銀だ。水銀はもともと自然環境の中に存在しており、火山活動やプレート境界の土壌などから流れ出る。
もう1つは人間に由来する水銀だ。こちらは、たとえば金の採掘や化石燃料の燃焼、あるいは非鉄金属の生産などによって流出する。
そうした水銀はさまざまな経路を経て海に流れ込む。すると生物の口に入り、その体内に蓄積される。さらに、それを上位捕食者が食べることで、より水銀が濃縮される。
マグロのような大型魚の汚染レベルが高いのは、このように「生体濃縮」が行われるせいだ。
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水銀汚染進行と同じ速度で汚染から回復することが判明
カナダ、オンタリオ州にある「IISD実験湖沼区域」では、そうした水銀の循環を調べるために、15年もの長期にわたって研究が行われていた。ここは人間の活動が湖などに与える影響を調べるために、人為的な”操作”が許されている世界でも数少ない場所だ。
クイーンズ大学や地質調査局をはじめとする研究グループは、最初の7年間だけ「メチル水銀」を湖に流し、その後の8年かけて生態系がどのように回復するのか観察した。
メチル水銀は水銀の中でも特に毒性が高く、特に胎児の神経の発達に悪影響を与えるとされている。
その結果、水銀の投入を止めると、汚染の進行と同じ割合でキレイになることが明らかになった。
水銀の投入停止から3年で、湖水の水銀濃度が81%低下。さらに実験の最終年までには、魚の汚染が最大76%減少していることがわかったと、『Smithonian Magazine』は伝えている。
若い魚を中心に回復が進む
ただし、個々の魚のレベルでは、汚染はそれほど変わらなかったようだ。一方、魚全体で見てみると、かなり急速に水銀が消えていった。このことは、若い魚を中心に回復が進んだことを示唆しているという。
たとえば、体長1メートルを超える淡水の大型魚、カワカマス属の「ノーザンパイク」の回復は、同じく大型魚であるサケ科の「レイクホワイトフィッシュ」の2倍も早かった。
その理由はノーザンパイクの繁殖速度が早く、また寿命も短いことが関係していると考えられている。湖の汚染レベルが低下してから生まれたノーザンパイクの場合、体にそれほど水銀が蓄積しなかったということだ。
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水銀汚染対策の有効性の裏付け
今回の研究では、メチル水銀の投入を止めてさえしまえば、汚染が進んだ速度と同じ割合で、水銀が消えていくことが確認された。これはきちんとした水銀汚染防止策を実施すれば、食卓でお馴染みの魚たちが速やかにキレイになるだろうことを示唆している。
今、世界中で水銀汚染を防ぐための取り組みが行われているが、今回の結果はその有効性の裏付けであるとのことだ。
ちなみに日本の場合、厚生労働省の調査によると、平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるようなレベルではないという。だが、水銀含有量の高い魚介類を偏って多量に食べることを避けて水銀摂取量を減らすよう促している。
References:Predicting recovery of mercury-contaminated fish populations / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
日本の環境意識が高すぎるのか海外が低すぎるのか知らんけど
海外の大真面目な研究発表に時々ずっこけそうになる。
2.
3. 匿名処理班
>今回の研究では、メチル水銀の投入を止めてさえしまえば、汚染が進んだ速度と同じ割合で、水銀が消えていくことが確認された。
では水銀はどこに行ったんだ?
消えるわけがないのだから
そこまで追求しないと意味ない研究だね
4.
5. 匿名処理班
水銀の悪影響が表面化する前に産卵して寿命を迎え世代交代するって話かな、これなら水銀汚染がひどい環境でも死に絶えずに済む。
記事見て魚は体内から水銀を排出できるのかなと思ったけど、流石にそれは難しい様だね。
6. 匿名処理班
水銀汚染の実証すら義務教育なみの時間がかかるんだねえ
そんなの当然、今更とかコメント多そうだが、「科学的な根拠がない」「自然の影響の方が大きい」と言って環境保護に反対する人は今も多いんやで
当たり前で済まさず裏付けするのも科学だ
7.
8. 匿名処理班
水銀を回収して精製することはできないのかね
9.
10. 匿名処理班
この実験何の意味があるの??
生物濃縮だから、水銀が湖全体から消えない限り水銀汚染は無くなったなんて無理なんじゃ無い?
水銀が何かに分解されたの?
違うなら、水銀を取り込んだ個体の死骸がプランクトンによって分解され、プランクトンを取り込んでまた魚に蓄積されるってサイクルだよね?レイチェルカールソンの沈黙の春では。
この実験の意味がわからないんだけど?
それとも水銀を取り込んだ死骸を分解するプランクトンは、死骸からは水銀を取り込まないって事が分かったって事?
結論を証明するには随分と情報が少なすぎない?
11. 匿名処理班
>人為的な”操作”が許されている世界でも数少ない場所
なんかすげえな・・・
12.
13.
14. 匿名処理班
これって「汚染から回復」じゃなくて、一時的に拡散率が下がっただけじゃない?
産卵から成長の周期が早いってあるから。
しかも拡散が収まった様に見えてるだけで、実際には(拡散スピードの問題で)湖内の魚が一定の汚染率になるまでの経過が、単に(汚染時と逆だが)同等の速度で緩やかになったって状態なだけじゃないの?
15. 匿名処理班
※3
日本のガイドラインだと、工業用の廃水銀は
硫黄と混ぜて毒性の低い硫化水銀(いわゆる「辰砂」で
自然界に存在し、長期的に安定)にし、さらに固形化
⇒ 条件を満たした埋立て最終処分場へ
(砕石・コンクリート・粒状ベントナイトで囲み、
雨水侵入防止を施した上で浸透水モニタリング管も設ける等)
という処理方法になっているそうだ。
「水銀に関する水俣条約」に批准している各国も、
おそらく同様の指針なんじゃないだろうか。
16. 匿名処理班
>>3
消えないだろうけど、少なくともそのまま食物連鎖に再吸収されることにはならない、ということがわかるね。多分遺骸と一緒に湖底に蓄積していくのだろうけど。
まぁ水銀は地球誕生以来、数十億年と存在していて、それでも地球の生命に蔓延してるわけでもなく影響は限定的ということは、生態系に吸収される経路はかなり限定的だというのは自明ではあるけど。
17. 匿名処理班
ノーザンパイクかっこいい
18. 匿名処理班
これほど庶民には如何にも出来ない環境破壊ですな
頼むから工場や採掘の経営者に訴えてくれ
水銀使わずに製造できるものが流通してて従来通りの値段ならそっち使うんだから
19.
20. 匿名処理班
水銀は最終的にどこに行くんだろ?
大型魚が死んだらまた微生物やらが食べてサイクル止まらんのでは?
21. 匿名処理班
何の意味があるの?とか言ってたら研究なんて出来ないよ
22. 匿名処理班
>>3
>>10
普通に考えりゃ、流出先がないなら死海になるでしょ
否定したいなら原文ぐらい読もうや、湖だけでなくその流域も込みだ
これだけ時間と人員をかけた研究で、思いつきで否定できる程度のポカがあるほうがおかしい
23. 匿名処理班
投入した水銀は時間経過で分解無害化するでいいの?
魚が取りこんで濃縮されても卵や精子にはいかないし、取り込んだ個体がしねば分解される?でいいの?
24. 匿名処理班
※1
業者に行政指導したり規制法を制定したりするには、例え素人にだってやる前から結果が分かり切ってるような事だろうと専門家による客観的な裏付けデータが必要なんよ
25. 匿名処理班
CH3HgX(X = Cl, OH など)の分解なのかHgそのものの話なのかで全く話が変わるな。
湖水の水銀濃度が低下と知っても単純に湖底に沈んだだけなのか、いわゆる辰砂と言われる漢方薬とかにも使うHgSで固定化されるのかでまた話が変わってくるわな。
26. 匿名処理班
※23
ヘドロとして堆積してどうにも手の出しようがない
27. 匿名処理班
もともと自然界にあること、魚の寿命からすぐ水中からは消えると思う。
あとは水底に安定した状態(バクテリアの糞として)で沈んでいるだろう。
ただ実験で水銀を流すのはダメダメだろ、糞が!!
28. 匿名処理班
あとアマゾンの水銀問題の解決につながるようにしてほしい。
ほかにも報道されないだけで危険なところもあるだろう。
それらを修復できるような細菌群を発見増殖配布できるように、それもできるだけ早く。
29. 匿名処理班
>>3
水銀はとても重い、水の13.6倍の重さがあるから水中で拡散細分化されたとしても
水中を漂う時間が延びるだけでいずれ湖底にたどり着く
そして湖底にたどり着いた水銀は湖底が岩盤でない限り永い時間をかけて地中に沈んで行く事になると思う
鉄の玉を砂の上に乗せて揺すると沈んで行くのと同じ
更にその上に死骸や泥が降り積もる訳だから、かなり早いペースで生物影響圏外に離れていずれ地層になるんじゃないかな?
なので>>16が正しいと思う
これは福島の原発事故での海中でも同じだったようです
30. 匿名処理班
※22
>これだけ時間と人員をかけた研究で、思いつきで否定できる程度のポカがあるほうがおかしい
情報を鵜呑みにする人間って可哀想
チットは脳みそ使おうや
31. 匿名処理班
※10
少なくとも事実としてあなたの言っているようにはならない、ということがわかったので
この実験にも大きな意義が見いだせるのではないでしょうか