
それによると、今後10年以内に農業(農作物)に大きな影響がでるという。
『Nature Food』(21年11月1日付)に掲載された研究によると、トウモロコシの生産高が2割以上減少する一方
それによると、トウモロコシの収穫量は24%減少するという。ただし小麦は生産地域が拡大され、約17%の成長が見込まれる可能性があるそうだ。
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温暖化と農業の複雑な関係
温暖化と農業の関係はとても複雑だ。作物の成長はさまざまな要因に左右されるため、単純に気温だけの話ではないのだ。大気に含まれる二酸化炭素が増えれば、光合成と保水力にプラスの影響を与え、収穫量は増える(ただし、栄養が犠牲になることはある)。
気温が上昇すれば、降水パターンが変わる。すると熱波や干ばつが増え、またその期間も長くなる。当然、これは作物にとってマイナスだ。
気温の上昇はまた、作物が成長する期間にも影響し、その成熟を早める。成熟の早さは一見好ましいことに思えるが、作物が日光のエネルギーを十分に蓄えられないために、かえって収穫が減る。

photo by Pixabay
NASAが作物ごとに信頼性の高いシミュレーションを実施
NASAゴダード宇宙科学研究所のジョナス・ヤーゲルメル博士らのグループは、2つのコンピューター・モデルで温暖化が農業に与える複雑な影響を予測した。その1つは、「結合モデル相互比較プロジェクト」で開発された5つの気候モデルだ。これらのモデルで、さまざまな温室効果ガス排出シナリオに対して、地球の大気がどのように反応するのかシミュレートする。
もう1つは、「農業モデル相互比較・改良プロジェクト」の最新12モデル。こちらでは、気候シミュレーションで予測された「気温」「降水量」「大気中の二酸化炭素濃度」などに対して、作物がどのように反応するのかシミュレートする。
これらを組み合わせることで、各作物につき240の気候・作物シミュレーションを行い、信頼性の高い結果が導き出された。
その結果、「トウモロコシ」と「小麦」については、はっきりとした温暖化の影響が予測されたという。
Climate Change Could Affect Global Agriculture Within 10 Years
・トウモロコシは2割以上減
たとえば、トウモロコシの生産高は24%減少すると予測されている。赤道付近で栽培が盛んな作物だが、今後熱帯での生産は難しくなるかもしれない。
北・中央アメリカ、西アフリカ、中央アジア、ブラジル、中国といったトウモロコシの穀倉地帯は、気温の上昇がストレスになるため、今後数年で生産高の減少に直面する恐れがある。
小麦は生産地域が拡大
暖かい地域でよく育つ小麦の場合、かえって生産地域が拡大するかもしれない。その結果として、世界の生産高は17%増加すると予測されている。
たとえば、北部アメリカやカナダ、中国の華北平原、中央アジア、南部オーストラリア、東アフリカといった地域に、小麦栽培が広まる可能性がある。
ただし、それもいずれピークに達し、今世紀半ばまでには横ばいになる。
大豆と米は不明瞭
一方、大豆と米については結果が不明瞭だ。
いくつかの地域では、生産高の減少が予測されている。ただし世界全体では、一貫したシミュレーション結果が得られなかったことだ。

photo by Pixabay
経済・農法・品種改良の影響も重要
なお今回の研究は、主に温暖化の影響をテーマにしたものだ。経済的インセンティブ、農法の変化、品種改良といったことは扱われていない。温暖化が進んだ未来では、こうしたことも収穫高を左右するきわめて重要な要素だ。
これは現在盛んに議論がかわされている分野で、今回の研究グループも今後はこうした視点から研究を進める予定であるそうだ。
References:Climate impacts on global agriculture emerge earlier in new generation of climate and crop models | Nature Food / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
トウモロコシって世界で最も栽培されている穀物。
直接食用にするよりも、加工食品に使われているブドウ糖とかデンプンとか、果ては段ボールの原料にも使われている。豚や鶏やの餌もトウモロコシが主。
それが24%減って、かなりやばい。
2. 匿名処理班
米が一番
3.
4.
5. 匿名処理班
今よりもさらにもっと温暖だった「中世温暖期」、グリーンランドには牧場があり、グレートブリテン島にはブドウ園があった。のちの小氷期でグリーンランドに植民していたヴァイキングたちは全滅したとされている。地球温暖化は人類にとって「良いこと」の方が多い。根拠のない恐怖感に煽られてはいけません。地球が温暖化したら何が起こるのか、寒冷化したら何が起こるのか、歴史の記録が残されています。歴史の勉強をしましょう。
6. 匿名処理班
プラーナエネルギーを体内に取り込んで不食になろう。
自分には絶対無理だけど。
7. 匿名処理班
虫害とかもあるからなぁ。
8. 匿名処理班
コメは品種改良で冷夏に強いようになってるから、今の猛暑は予想外で実がぎっしりつまったりしなくて農家の人が苦労してるみたい。
ブドウも糖度が上がってワインのアルコール度数が高めになったりここ数年で影響あるから10年後なんてもっとひどくなってるかも。
9. 匿名処理班
遺伝子組み換え作物を食べられない自然派人間から滅んでいくな…
10. 匿名処理班
※7
それだよね
気温に影響受けるのは植物だけじゃない
植物食べる奴が増えたり受粉してくれる奴が減ったりしたら更に収穫下回る
11. 匿名処理班
海水温なんて真っ先に影響受けるから既に漁業なんて壊滅しかけてるところもあるからな
12. 匿名処理班
「生産地域が拡大」って言うけど、作付けをそんなにすぐ変えられるか?
政府が主導したってそんなに簡単には変えないだろ
13. 匿名処理班
インターステラーのディストピアが現実になるのか。
14. 匿名処理班
柑橘農家だけど、かなり影響出てるね。害虫や病気はともかく、雨が多い、逆に雨が降らない。この気象によって、今までの経験や技術が役に立たない。
それなりに対策してるけど、経費がかかる一方で、収穫量も減っている。
ちなみに、日照不足や雨による光合成不足、逆に干ばつの時は激しくてエネルギーを使いすぎ、結果果実の酸が低くて糖度も上がらない。表皮が弱くて腐りやすくもなっている。
野菜農家さんも似たような悩みがあるんじゃないかな。
15. 匿名処理班
>>1
他の地域が適するようになるのでは
16. 匿名処理班
>>5
そのおかげで平安時代は飢饉が少なかったのよね。
戦国時代あたりで寒冷化して飢餓が増え、一揆も増えていく。
17. 匿名処理班
>>11
寒冷レジームに移行している現在はスケトウダラやマイワシが漁獲量増の傾向。
90年代以降は温暖レジームだったのでカタクチイワシやスルメイカが漁獲量増だった。近年は逆。
要するに違う種類が増減する。
18. 匿名処理班
※15
他の地域が適するようになったので其処で作るとして、その地域でそれまで作っていた物はどこで作る?
19. 匿名処理班
※5
その話が本当なら凄いんだけど、評価が低いのは何故なんでしょう?
Wikipediaを読んだら「最新の報告ではそれほど温暖ではなかった」と書かれていました。
20. 匿名処理班
※13
ディストピア警察だ!
あれはポストアポカリプスといいます。
21. 匿名処理班
※5
見えない幽霊を恐れているかのような言い方ですが、現実に起こっていることに対して警戒しているのです。過去に温暖傾向による恩恵があったからといって、現在も同様に恩恵のみをもたらすわけではない。
むしろ中世とは世界人口が比較にならないほど増えた現在、その人口を下支えする農業に、大規模な修正が加えられることは、非常に大きな混乱をもたらすと思われます。
実際に上で農家の方の不安が書き込まれていますが、長年続けた作物を転換するということが、大変な困難を伴うことは容易に想像できます。当然そのコストは我々消費者も負うわけです。
慣れ親しんだ食べ物が消える・・・食い意地の張った自分には耐えがたい「恐怖」ですがね。
22. 匿名処理班
耕作可能地域が増えるだけ。
23. 匿名処理班
「彼ら」が助けてくれるから大丈夫