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近年、人の手によって作物の生育環境が改良されるケースは少なくないが、やはり作物が育つには自然の恩恵が欠かせない。洪水や乾燥が続くと、作物の収穫に大きな影響が出る。気候の変化に左右されやすい繊細な作物の栽培は、より注意が必要だ。
ここ数十年、ワイン大国フランスは、地球温暖化に伴うブドウの品質の劣化が確認されているという。ブドウは気候の変化に敏感なため、気温上昇によってその風味が落ち、高品質のワイン生産レベルが落ちてしまうのだ。
今回、研究者たちは6世紀半以上にわたるブドウの収穫に関する記録を公開し、気候変動が顕著に示された事実に驚きを露わにした。
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過去664年分のブドウの収穫記録を公開
フランス・ブルゴーニュ大学のトーマス・ラベー博士とスイス・ベルン大学のクリスチャン・フィスター教授は、東部ボーヌ周辺のブドウの収穫を調査するために、1354年に始まった史上最長とされるブドウ収穫日の記録を発表した。
image credit: Archives Departementales de la Cote d’Or, 2918/24, Thomas Labbe
それは、ブドウの収穫者が直接書き留めたものや、彼らへの支払い明細記録、また評議会や新聞紙面での報告などを含む毎年の収穫のタイミングが詳細に記された、実に664年という長きにわたる記録であった。ラベー博士は、それらの収穫日を地元の気温記録と比較することで、暑く乾燥した夏のブドウは涼しく湿ったそれよりも早く収穫されることに気付いた。
博士が発表した声明文によると、600年以上の間、ブドウの平均収穫日は9月28日だった。しかし、1988年以降の平均収穫日は9月15日になっており、約2週間早くなっていた。
1980年半ば以降の温暖化の加速傾向が、ブドウの収穫記録によってこれほど明確に際立つとは予想していなかった。これらの記録を見る限り、1988年以降30年間の地球温暖化による例外的な特徴は、誰の目に見ても明らかだ。(フィスター教授)

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気温上昇はワインの質に大きな影響を与える
ワインの有名産地として地球温暖化の影響を受けているのは、もちろんフランスだけではない。西ヨーロッパ全体の気候の変化が、近年前例のないものとなっている。
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しかし特に、ワインの産地として名高いフランスでは、温暖化により気温上昇が続けば、ブドウの収穫に大きな打撃を与え、高品質のワイン生産が困難になる可能性あると懸念されている。繊細なブドウは、気温が上がると酸味が落ち、糖度が増す。すると、発酵によるアルコール度数が上がり、ワイン全体の風味に大きく影響を及ぼすことになってしまう。ブドウ栽培は、気候と密接に関連しているのだ。

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近い将来、地球温暖化への対応としては、これまでブドウ栽培を一般化していなかった場所や国での生産がなされる可能性もあるようで、ワイン好きなら気になるところだろう。
「ブドウの収穫日は気候の研究に適用できる」と研究者
今回の研究でラベー博士らは、ワインの収穫日が早まっていることが、地球温暖化が既に30年も続いているという更なる証拠になることを示唆しており、気候と降雨に非常に敏感なブドウの収穫日を、気候の研究の代用として十分使用できると述べている。一方で、気候科学者らは地球温暖化など地球全体を示す状況においては、単独の場所を例に挙げることにしばしば警告を促している。というのも、地域の栽培状況は様々な要因により変化するからだ。
だが、ラベー博士が今回発表したものは、長期にわたる気候記録の情報源として研究に使用される、年輪や氷床コア、石筍(せきじゅん)などといった間接的測定よりもはるかに正確であるとされている。
この研究論文は、8月29日に情報サイト『Climate of the Past』で発表された。
References:iflscience.comなど / written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
「ここ10年で最高の気温」
「昨年よりもさらに暑い」
「平均的な暑さだが湿度では去年に勝る」
「猛暑で知られた1988年に勝るとも劣らぬ暑さ」
2. 匿名処理班
高品質なブドウの産地が徐々に北に移動しているなんて事はないのかな?
3.
4. 匿名処理班
温暖化の影響で品質が良くなる産地もあるんだろうな
5. 匿名処理班
うーん。。栽培品種の作付面積の変化とかも影響するはずだよなぁ。
>1980年半ば以降の温暖化の加速傾向
って、ちょうどフランス南部で早熟系のメルローの生産が拡大してきた時期と重なっている様な気がする。
6. 匿名処理班
ちなみにワインが「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄え」だと2002年だとわかる
7. 匿名処理班
664年分だとちょうど小氷期とまるかぶりするので近年収穫が早まってるのは当然だと思う
それでも2000年代入ってから13日程度違うのはかなりの差だが
8. 匿名処理班
好きだったアイスワインがブドウ収穫不可能で飲めなくなった
代替の畑で作られたけどそこも10年近く前にアウト
9. 匿名処理班
ボンジョレヌーボーの売り文句からは、毎年良い気候が見受けられる模様
10. 匿名処理班
※1
それがホントだから、洒落になってないもんなあ
11. 匿名処理班
ボンジョレヌーボーの評価も年々悲観的になりそう。
「去年よりマシ」とか…。
12. 匿名処理班
同じ品種でも作付けされた所に適応する奴も居るんでないの?
同じ条件のデータには成り難いかも。
後、病害虫とかもあるし。
13. 匿名処理班
※2 ※4
実際、ブドウの出来栄えが変質してきたフランスに代わって
かつては 冷涼な気候で良いブドウが育ちにくいと言われていた
イギリス産ワインが近年好調と聞いたことがある。
14. 匿名処理班
アメリカとフランス合同でワインの大会やったら表彰台全部アメリカが取ってたね
地球温暖化が収まってきて飯の種に困ったと思ったら一部地域の話で続けるんだな
15. 匿名処理班
品種・栽培方法・肥料など、600年間で気温以外の変化も多いのでは。
16. 匿名処理班
アメリカは国土広いからブドウ栽培に適した場所もいっぱいあって恵まれてるよね
17.
18. 匿名処理班
>>1
実に味わい深いと私は思うよ
19. 匿名処理班
達筆だ
20. 匿名処理班
面白い事にそのまま葡萄として食べるなら逆に美味しくなっているのか…
21. ナパチャット
何より温暖化の原因は自分じゃないと思ってるところ
全人類がそう思っているということ
22. 匿名処理班
ドイツワインが以前は気候の都合で作れなかったタイプが作れるようになって多様化してると聞いた
23. 匿名処理班
気候の変動で病気も移動するからなー
24. 匿名処理班
日本でも農産物の栽培適地が全体的に北上していると聞いたことがある
近年の北海道産の米なんかいい例だな
25. 匿名処理班
だからと言って残された寒冷地の森林を切り開いて…となったら負のループだな
26. 匿名処理班
樺太あたりが北海道みたいになるんだろうな
もう本州なんて40度とかザラだし
27. 匿名処理班
※20
ワイン用品種から生食用品種に植え替えたらいいブドウが出来るんだろうけど
苗植えてから育つまでが大変そう
28. 匿名処理班
ラインガウの赤 とか、見てびっくり。
90年代ドイツにいたとき、バーデンとかの赤(シュペートブルグンダー)でも
それこそボジョレーヌーボーか?なんて色をしてたけど、今では立派な赤ワインが
出てきてる。生産技術の進化のみならずということかぁ…
アイスワイン難しいんですね……モーゼルの繊細で切れ味いい白とか好きだけど、
今後はこういうものも徐々に難しくなるのかな。まあ日本に良いの来なくなってるけど。
どんなに暑くなっても、土地と、緯度依存の日照角度と時間(まあ晴れが増えれば…)
は変わらないわけだけど、そこはどうなのかなぁ。
ワインくらいとか言って、日本では想像つかないくらい、大きな産業なんですよね。
肴のほうも影響を受けることだし、いまの間にいいできるだけ思い出を、かな??
29. じょん・すみす
古気候学だっけ、ブドウの収穫だけでは無くて
小麦の値段やある特定の場所の花が咲いた日とか、河や
湖の氷が割れた日なんかを調べて行って、昔の気候を推定するのは。