メインコンテンツにスキップ

ゾンビ人工衛星を燃料にするプラズマ推進器が開発される。宇宙ゴミ対策にも最適

記事の本文にスキップ

22件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
credit:Hypernova
Advertisement

 地球の軌道上には無数のスペースデブリ(宇宙ゴミ)が漂っている。その数は年々増え続け、スペースデブリ同士の衝突や、地球上に墜落する事故も起きており、いち早い対策が迫られている。

 この問題を解決するため、南アフリカの企業は、「プラズマ推進器」という新しいテクノロジーに注目している。

 この技術は、ゾンビ化して使用不能となった金属でできた人工衛星などのスペースデブリの金属を燃料として、小型の人工衛星を操縦し、位置を変えたり、危険なスペースデブリを避けたりできるようになる。宇宙ゴミの掃除までしてくれるのだからありがたい。

 これが実用化されれば、太陽系内にすでに豊富に存在する宇宙ゴミという資源を活用して、ミッションを遂行できるようになる。

制御不能の人工衛星の軌道修正を行うプラズマ推進器

 「イオンエンジン」や「ソーラーセイル」など、いくつかの実証実験を除けば、今のところ宇宙空間の移動には化学燃料が使われている。

 そのためほとんどの人工衛星は、宇宙空間にただ放り投げられるだけで、操縦はおろか、わずかに軌道修正することすらできない。

 南アフリカに拠点を置く「Hypernova Space Technologies(ハイパーノヴァ社)」と、創業者のジョナサン・ルン氏は、金属を燃料にする電気推進方式で、この状況に変革を起こそうとしている。

 同社が開発する「プラズマ推進器」は、電気反応で固体金属からプラズマジェットを発生させ、推進力にする。かつてNASAが開発を試み、結局完成させられなかった技術だ。

 これが実現できれば、10キロ以下の小型衛星を操縦して、位置を変えたり、危険なスペースデブリを避けたりできるようになる。

 約10年前に着想してから現在まで、ハイパーノヴァ社はさまざまな実験を繰り返し、2017年にはルクセンブルク政府が主催する「LuxIMPULSE賞」で見事に最優秀賞を受賞した。

この画像を大きなサイズで見る
credit:Hypernova

ゾンビ化した人工衛星やスペースデブリを燃料にできる

 固体金属を燃料として利用することには、いくつかの利点がある

 まず「安全性が高い」ことだ。無害で、加圧されることもなく、漏れる心配もないため、打ち上げ前に爆発する危険性がほとんどない。

 さらに人工衛星の「製造中に燃料を積める」。現在の可燃性液体燃料とは違い、完成ギリギリまで待つ必要がないのだ。

 だが最大の利点は、「スペースデブリや金属を含んだ小惑星を利用できる」ことだ。つまり宇宙で燃料を補給できる。これは高価な人工衛星の寿命を延ばすことにもつながる。

 これについて、ハイパーノヴァ社のサイトでは次のように説明されている。

今日の地球、明日の月、そして私たちが生きている時代の小惑星。ハイパーノヴァの推進器が使うのは、そこにある燃料です

小型人工衛星に最適

 宇宙はますます混雑するだろうことが予測されている。今後10年で、「キューブサット」と呼ばれる10センチ程度の小型人工衛星が、何万機と打ち上げられるだろうからだ。

 プラズマ推進器は、こうした小型人工衛星に最適であるそうだ。位置の維持や衝突の回避など、軌道上での操作をサポートしてくれるという。

キューブサット

2022年に初号機打ち上げ予定

 現在スーパーノヴァ社は、ブルガリアの「EnduroSat(エンデューロサット社)」と手を組み、22年初めにプラズマ推進器を搭載した人工衛星の打ち上げを計画している。

 見事成功すれば、機能停止したゾンビ人工衛星を燃料にするというコンセプトは、もっと大きな宇宙船の開発者たちをも震撼させるだろうと、ルン氏は自信を覗かせる。

希少で高価な液体燃料や気体燃料から、宇宙に捨てられた安価な鉄などへの切り替えに成功すれば、ゲームは完全に変わることでしょう

References:Hypernova / thedebrief / written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 22件

コメントを書く

  1. ゴミを燃料に出来るなんてまるで「Mr.フュージョン」じゃないですか。

    • +1
  2. 素晴らしいけど『相対速度』の問題はそうするんだろう。
    食べた衛星をエネルギーにして推力にするしても大丈夫かな?

    • +6
    1. 既に※2が触れてるけど超スピードで飛んでる人工衛星を捕まえるのがまず無理ゲーよね。

      • 評価
    2. 高度が同じなら速度も同じになる。衛星の高度は重力と遠心力が釣り合うところになるから。

      • 評価
  3. 燃料として使えるなら、「使用料を払え」ってとこも出てくる?

    • +1
  4. 回収して資源としてリサイクルできるのがベストだけど、
    打ち上げと帰還でかかるコストが大変

    • +1
  5. デブリ処理衛星とか作るならよさそうだけど、そのスペースデブリを拾いに行くのに使う燃料はどうなんでしょうね。

    • +2
  6. 立派なキラー衛星

    非公式の軍事衛星いっぱいあるのだから、破壊して良い衛星だけを把握することなんて不可能だろ

    軍事衛星破壊して第3次世界大戦勃発しそう

    • +8
    1. ※6
      能天気に「掃除してくれればありがたい」と思ったけど よく考えたらそういうことだね

      • +3
  7. ゾンビ化して使用不能ってどういう事や?
    ゾンビって死んでい居るけど生きているって例えだろ?
    それに当てはめるなら、使われていないけど使われているって事になるが…?

    • 評価
    1. ※8
      人工衛星にも墓場(墓場軌道)があるので、それのことかも?

      • 評価
    2. ※8
      おそらくだけど、太陽電池やいろんな観測機器は使える状態だけど、姿勢制御には噴射剤が必要なのでそれが枯渇していて、事実上使えない衛星のことなんじゃないかな。

      • +1
  8. すごいけどどうやって宇宙ゴミを捕まえるんだろう

    • +5
  9. 地上のプラスチックだの何だののゴミ問題もコレで解決じゃね?
    ゴミをプラズマ化すれば有害な物質も温暖化ガスも出て来ない
    そいつでお湯沸かして発電してやれば良い

    • 評価
    1. ※10
      燃やした時に発生する炎、あれがプラズマです

      • 評価
  10. 金属を燃料に変換する原理が不明です
    宇宙空間に打ち上げ可能な質量制限の中で夢物語のようなエネルギー機関が製作可能ならば
    どうして地表で行わないのですか?世界中のエネルギー問題解決に繋がると思うのですが…

    • +3
    1. ※11
      「燃料」という表現が誤解を招いていますが、
      正しくは「推進剤」とか「噴射剤」と表現すべきものでしょう。
      つまり電気的な方法でプラズマ化させて噴射し、作用反作用で推進力を得る方法です。
      推進力の源は電力で、化学反応による燃焼では無い、ということです。

      • +1
  11. 誰も片づけないから汚星になっちゃう

    • 評価
  12. 1グラムの重量を打ち上げるのにトンデモないコストとトンデモない量の燃料を使うロケット事業
    既に打ちあがったモノを再利用するなら・・・だが過程が理解できぬ
    プラズマってそんなものだったかいな?と

    • 評価
  13. ゾンビがくるりと輪を描いた~ ホ~~イのホイ♪

    • 評価
  14. 問題は金属を宇宙空間でイオン化させる方法だ
    デブリの金属イオンを推進剤として再利用する方式なら開発中の衛星には高速移動するデブリに取り付いて
    衛星軌道上の強い宇宙線でも原型を保つ程に強固な衛星の外殻をイオン化(融かす)する装置が試験されるはずだが、どうやるのか全く分からない
    宇宙の電気炉だろうか?

    • 評価
    1. デブリに高エネルギーの電子線を照射してスパッタリングするんじゃないかな?

      • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。