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火星との距離が縮まるか?NASAの新型イオン推進エンジンが新記録を樹立

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(著) (編集)

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 NASAの新型エンジン「X3」が最近実施された稼働試験で新記録を樹立したそうだ。このエンジンの技術は火星への有人飛行に用いられるかもしれない。

 X3はホール効果推進器の一種で、イオンストリームで船体を加速させる。NASAによれば、その推進力は化学ロケットのそれを超えるという。

 化学ロケットの限界速度は秒速5キロ程度だが、ホール効果推進器を用いれば、秒速40キロまで加速させることができる。

イオン推進エンジンの利点

 このような加速は、近い将来挑戦されるであろう火星への有人飛行のような長距離間の宇宙飛行に威力を発揮する。事実、開発チームのリーダーは、今後20年以内の火星有人飛行にイオン推進エンジンが使われることを念頭に置いている。

 イオン推進エンジンは化学ロケットより効率の点でも優れており、同じだけの宇宙飛行士と設備をずっと少ない燃料で遠くまで運ぶことができる。開発チームを率いる米ミシガン大学のアレック・ガリモア(Alec Gallimore)博士によれば、同じ量の燃料で10倍の距離を飛行できるという。

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image credit: NASA

最近の試験で最高記録を出したイオン推進器X3

 最近実施された試験運転では、X3を100kW以上の出力で稼働し、5.4ニュートンの推進力を発生させることに成功した。イオン推進器としてはこれまでの最高記録だ。また最大出力と動作電流の点でも新記録である。

 なお現時点では制限もある。化学ロケットに比べると、非常に小さな推進力しか発生できないのだ。ゆえに従来のロケットと同レベルの加速に到達するには非常に時間がかかるということで、打ち上げには向かない。

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image credit:nasa

 X3ではこの問題の緩和が図られ、複数のプラズマチャンネルが利用されている。だが難しいのはエンジンに十分なパワーを発揮させながらも本体をコンパクトに保つことだ。ほとんどのホール効果推進器は研究所内をかなり楽に持ち運びできるが、X3の場合はクレーンが必要な大きさだ。

NASA’s X3 Ion thruster engine breaks records

 2018年には宇宙空間で100時間の連続稼働実験が予定される。

 またプラズマによる推進器のダメージを防ぐシールドシステムも開発中である。これが完成すれば、耐用時間がぐっと伸びて、数年でも稼働できるようになるかもしれない。

宇宙旅行の新しい技術

 イオン推進エンジン以外にも宇宙旅行の新しい技術がいくつも提案されている。ただし化学燃料を使った装置の欠点は、宇宙に行く際に燃料を搭載しなければならないことだ。すると重量が増えることになり、一層打ち上げに必要となる燃料が増えるという悪循環に陥ってしまう。

 例えばバサードラムジェット(恒星間ラムジェット)が提唱されている。これは核融合ロケットの一種で、宇宙空間に漂う水素分子を巨大な磁場(ラムスクープ)で集め、これを燃料として使うものだ。理論上、光速にも近づけるとされる。

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image credit:バサードラムジェットエンジン- Wikipedia

 またワープのような光速を超える航法を想像する方もいるだろう。一般相対性理論は光速を超える速度は不可能だと説明する。ところが前方と後方の時空を伸び縮みさせることができれば、事実上光速を超える移動も可能になる。だが残念なことに、現時点でこれを実現できそうな技術は見当たらない。

via:nasa / interestingengineeringなど/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 44件

コメントを書く

  1. 電力を得る為には原子力が現実的やろなぁ

    • 評価
    1. ※3
      片道22日でも、それまでの化学推進で片道180日もしくはそれ以上よりは
      なんぼかマシでしょう。

      • +4
    2. ※3
      ポルトガル人は片道1年半かけて日本に来てたぞ

      • +1
    3. ※3
      19世紀の人なんか、普通にそのぐらいか、それ以上の日数でヨーロッパからアメリカへバンバン渡っていたんだが
      当然、太平洋横断とかになると、もっと日数かかってた

      • +1
    4. ※3
      片道22日とか最速の分類じゃん。

      地球上の船だって、日本からヨーロッパまで航海するのに一ヶ月以上かかるんだから。
      現時点で約22日ならもっとエンジンの出力が増せば、一週間ほどで火星に到着できるようになるのも不可能ではないはず。
      将来太陽系内なら、大航海時代感覚で宇宙船が行きかう時代が来るんじゃなかろうか。

      • 評価
  2. これは現実味を持ち始めたな
    開発がこのまま進み実用化までして欲しいね
    そういえばEMドライヴとかもあったけど
    あれはどうしたのかな?
    いずれにせよ夢と未来がある事は
    良い事だ

    • +3
  3. そういえば磁場を利用したマグセイルもあったような。

    • +3
  4. 550グラム程の推進力か
    ハヤブサのエンジンに比べれば桁違いだが

    • 評価
  5. だから、いっぺんに打ち上げようとせんと、バラで打ち上げて軌道上で組み立てる技術を早く確立せいよ
    火星なんていいうジャイアンツを墜とすなら、ここはアルパインスタイルじゃなくて極地法だぞ

    • -5
  6. それこそ宇宙空間に漂う小さなデブリが致命傷になりそうで怖い。

    • 評価
  7. 燃料が重くて大変なら、燃料を宇宙空間で載せれば良いじゃない。やっぱり月で燃料生産が実用的かな。発見された地下洞窟に関しての記事は載せないのかな?

    • -3
    1. ※14
      宇宙でもその燃料を搭載した質量分を加減速させるだけの巨大な燃料が必要だし、
      恒星間宇宙船での燃料搭載は現実的じゃないんだよなあ。
      まあ、ラムジェットも想定より星間物質が希薄だってことがわかって
      現実的じゃなくなっちゃったんだけど。

      • 評価
  8. 秒速40kmに到達するのに1ヶ月ぐらいかな

    • 評価
  9. やはり最終的に行き着くのはワープ航法だな
    これが出来れば距離の問題が克服でき、何億光年先でも瞬時に移動できる

    1万年後なら可能になってるかも?

    • +2
  10. 着々と宇宙が近づいてくる、こういう記事を見ると安心する。
    「宇宙開発なんて儲からないし」みたいな意見は悲しくなる。

    • +4
  11. 初代はやぶさのエンジン出力はドライヤーかファンヒーターくらいって、当時聞いて驚いた。

    • 評価
  12. 地球での22日と宇宙船内での22日は閉塞感が全然違うだろ

    • 評価
  13. 地球上ではクレーンが必要だけど宇宙は無重力だから、
    それを衛星軌道より先に打ち上げる事さえ出来れば、
    それこそ日帰りで月まで、なんて事も可能性が持てますね。
    今までだったらその推進機よりも大きな補助設備が必要で、
    非常に大掛かりな装置になってたのが小型で済めばその分、
    乗員の安全に対する保安部品が付けられるし、速度が出せれば食糧や水の持参量も減らせる。

    • +2
  14. イオン推進エンジンって「はやぶさ」のエンジンの転用だよね。雨ちゃんはよその国の技術はバンバンぬす・・・いや、応用するけど、逆なことされると真っ赤になって怒るよね。いいかげんにしてくれねぇかな

    • -7
    1. ※28 
      イオンエンジンやホールスラスタ等の電気推進機って、昔から各国の衛星で使われてるぞ?はやぶさ が最初じゃない。

      • +3
  15. 燃料に対して出せる推進力が優れてるから今時の衛星の姿勢制御とかこいつ使ってんだろ

    • 評価
  16. おお、SFに有るようなエメラルドっぽい色に本当になるとはファンタジックだな

    • +1
  17. 衛星軌道まで化学燃料で持ち上げて、軌道ステーションでイオンエンジンを取り付ければええやろ。

    • 評価
  18. 化学エンジンは推力は現状で最大だけど、短時間でしか動作できないし重い
    電気イオンエンジンは微小推力でも、軽量で長期間動作できるから
    星間移動時の最終速度は化学エンジンを越えるのではないか。

    • 評価
  19. はやぶさで実証されたイオン推進がNASAで利用されるのは嬉しいですね。

    • -1
  20. 100億(キロ)なんて秒速で稼ぎますから

    • 評価
  21. イオン推進の説明で二人の女の子どっちに声かけようか迷ってるうちに間通っちゃう感じって説明が解りやすかったw

    • 評価
  22. イオンエンジン的なのは1960年代から使われてるよ、なぜかはやぶさが最初みたいな印象あるみたいだけど調べてみようね。

    • 評価
  23. そいや、ザンボット3のビアル2世はイオンエンジンだったね。リアルだと加速は静々だけど
    アニメじゃえらい加速していたようなw
    流石異星人の技術w

    • 評価
  24. 今の片道半年よりずっと早いけど、それでも22日…
    そう考えたら火星ってやっぱすごく遠いよね

    • 評価
  25. これは革新だな、いままでのSFは宇宙船の背後にロケットのノズルが付いてるのが
    主流だったけど、これからは液晶みたいな薄い板になる

    • 評価
  26. EMドライブは?
    イオンエンジンは出力は低いけど長期間吹かしっぱなしにできるのが利点で、空気抵抗が無く重力の影響も受けない宇宙空間なら弱い出力でも吹かし続ければその分加速出来るっていう事だからね

    • 評価
  27. バサードラムジェットは宇宙空間の水素の密度が少なすぎて使えないんだよね~(SF小説にはよくでてくるが)
    反物質の対消滅による推進とかいろいろ案はあるけどね~
    EMドライブって言う怪しい? 方法も出てきているが・・・生きてる間に宇宙が身近になると嬉しいな

    • 評価
  28. 加速が増しても人体は進化していないのだから、加速した途端に気絶して何処かに衝突すんじゃねーの?
    重力制御が出来なきゃ夢の中の話し

    • 評価
  29. イオンエンジンの噴射速度は化学ロケットでケロシン燃料時の10倍、液酸液水燃料時の6倍だからな。同じ重さの燃料を搭載した場合、稼働開始から稼働停止までの加速で得る最終到達速度と最終到達距離は噴射速度に比例するから長距離の宇宙空間の飛行にはすごく有効な手段だ。

    • 評価
  30. すっごく今更な訂正ですけど、化学ロケットを超える「推進力」じゃなくて「比推力」ですよ

    • 評価

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