
しかし、その窮地を救ったのがイタリアから投入されたマレンマ・シープドッグ(牧羊犬)だった。特にユーディという名の犬は、島に投入され訓練を受けて以来、10年にわたり天敵からペンギンを守り続けた。
そのユーディがこのほど天国へと旅立った。去年引退して余生を楽しんでいたが、病を患い、愛する人に看取られながら静かに息を引き取ったという。
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離島に生息するコガタペンギンが絶滅の危機に
オーストラリア・ビクトリア州ウォーナンブール近くの小さな島ミドル・アイランドは、コガタペンギンの生息地だ。しかし、1999年〜2005年の間に、天敵となるキツネがコガタペンギンを襲い続け、飛べない鳥は600羽から10羽にまで個体数が減少、絶滅寸前となった。
なんとかしてコガタペンギンを絶滅から救いたい。そう思った地元の鶏農家の男性は、町の市議会にアイデアを持ちかけた。
過去にその男性は、イタリア原産のマレンマ・シープドッグを使って家禽を保護した経験があり、コガタペンギンの保護のためにマレンマ・シープドッグを島に投入してみてはと伝えたのだ。
マレンマ・シープドッグによるペンギンの保護プログラムが始動
そこで当局は、2006年に島における初代マレンマ・シープドッグの“オッドボール”を迎え入れた。元来、マレンマ・シープドッグはイタリア中央および南部で生まれた家畜護身用の犬種だが、島ではペンギン保護のために訓練され、試験的にオッドボールという名の犬を導入した。するとオッドボールの大活躍で、コガタペンギンを絶滅から救い出した。
初代マレンマ・シープドッグ“オッドボール”の映像
Meet The Penguin Protector, Oddball
オッドボールの活躍で確信を得た当局は、個体数が増え始めたペンギンの保護活動を本格的に行うプログラム『ミドル・アイランド・ペンギン・プロジェクト』を始動させ、引き続きペンギンの個体数を増やすことに尽力した。
2010年より任務を任されたユーディと姉のトゥーラ
そして2010年に、オッドボールの後任として投入されたのは、まだ子犬だったユーディと姉のトゥーラ(2歳)だ。2匹ともペンギンを守る役目を実によく果たしてくれるようになった。同プロジェクトのトリッシュ・コルベットさんは、このように話している。
ユーディがいてくれたからこそ、このプロジェクトは拡張できて、長年にわたり実施することが可能となったのです。
オッドボールに次ぐ2匹の存在は、まさにプロジェクトの中心となってペンギンの群れを守り続けてくれました。
2匹がいたからこそ、今でもペンギンの群れが島に存在しているのです。10年にわたり活躍してくれたユーディは、まさに真のヒーローと言えるでしょう。
引退したユーディ、今年6月に天国へ
10年間、島のペンギンを天敵から守り続けたユーディは、去年の夏、人々に惜しまれながら引退し、後任の牧羊犬を育成する牧場にてトゥーラと共に余生を楽しんでいた。しかし、前脚にできた骨肉腫が原因となり、最期はトリッシュさん家族に看取られ、6月1日に静かに天国へ旅立った。
ミドル・アイランド・ペンギン・プロジェクトの公式Twitterが、12歳で旅立ったユーディの訃報をシェアした。
It is with a heavy heart that we say goodbye to beautiful Eudy. She protected Middle Island for 10 years. Eudy and her sister Tula have been the heart and soul of the project. Eudy has touched the lives of people all around the world. Rest peacefully gorgeous girl. ❤❤❤🐾🐧🐾 pic.twitter.com/32ajPDWcNE
— Middle Island Penguin Project (@WboolPenguins) June 1, 2021
美しくゴージャスなユーディに別れを告げるのは、とても辛いです。ユーディは、ミドル・アイランドで10年間にわたりペンギンの保護活動に貢献してくれました。現在、島には100羽のコガタペンギンが生息している。
ユーディとトゥーラは、このプロジェクトの中心的存在です。そのおかげで、ユーディは世界中の人々からとてもよく知られる存在になりました。
ユーディ、どうか安らかに眠ってね。
ウォーナンブール市議会では、島のアイコン的存在だったユーディのこれまでの功績を称えた記念碑を建立することを発表。そのための式典が、後日開催されるという。
なお、ユーディの遺灰は、ミドル・アイランド島に散布される予定だということだ。お疲れ様!ユーディ。今までペンギンたちを守ってくれてありがとう!
Top image:Middle Island Penguin Project/Twitter / References:abc.net.au / written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
Oddballの活躍を描いた映画を見ました!日本未公開なのかな?
いろんな仕事をしている犬がいるのは知っていましたが、
ペンギンの護衛をする犬がいるとは知らずへーへーへー!となりました。
天国でゆっくり休んでください。
2. 匿名処理班
賢いぬ
ペンギンって10羽まで減っても少しは増やせるんだな
3. 匿名処理班
キツネさんにはキャットフードあげといたら
鳥さん狙わないと思う
4. 匿名処理班
600羽から10羽まで激減してから対策をて遅過ぎる
せめて半減したところで気付いて保護活動をして欲しかったよ
5. 匿名処理班
🐧🐧🐧🐧🐧🐧🐧🐧🐧なに🐧なになに🐧おそうしき🐕
6. 匿名処理班
※2
キツネにはドッグフードじゃね?
タヌキがキャットフードだよな。
7. 匿名処理班
この子達の事は知らなかったけれど、今調べてみたら、とても古い犬種とか。お顔を見るとマウンテンドッグやゴールデンレトリーバの面影があります。
骨肉腫はとても辛かっただろうけど、お空でゆっくりと休んで下さい。
ありがとう。
8. 匿名処理班
>>4
半分減ったあたりには対策しようとしてたけどこういう呼びかけとか実践投入とかの手続きしてたらみるみる減って…って感じかもしれんよ?
9. 匿名処理班
※4
半減したところで対策たてて実行に移すまでに10羽になったんじゃないのか?
対策もお金や方法人手の問題など結構時間かかるからねえ
何事によらず見えはじめたときは手遅れなんだよ
日本もそうだよね、わかる人はもう判ってるよね
10. 匿名処理班
狐は在来種ではないんだろうか?
食べるものがなくてペンギンを襲っていたなら
彼らはどうやって飢えをしのいだのだろうか?
オーストラリアって基本絶滅の危機にない無価値な
動物に対して辛辣だよねっていう
ちょっと素直にイイハナシダナーって思えなかった
11. 匿名処理班
なんて優しい目をしてるんだ…お疲れ様でした(‐人‐)
12. 匿名処理班
ワンコはよく頑張った。本当にえらい。
その美談の裏で際立つ人間の身勝手さよ。
13. 🐕豆柴犬太郎
元々オーストラリアにはキツネは居ないでしょ、キツネ狩り用にヨーロッパから移入されたんだよね
人間の身勝手の結果を犬に押し付けるなんて勝手な話だ
10年間もペンギンを守ってくれてご苦労様、安らかに
14. 匿名処理班
もしその離島にしかいないキツネじゃないなら、その離島からキツネだけ絶滅させちゃえばいいじゃん
15. 匿名処理班
>>3
北海道の人?
16. 匿名処理班
※10
オーストラリアでの狐は人間が持ち込んだ外来種で在来種を食いまくる害獣
更に厄介な事に食べるため以外にもただ殺すだけの行動も多い
17. 匿名処理班
ちょっと記事を漁って見たら、陸地に近い島なんでキツネや野犬が泳いでこの島に渡ってくるそうな。外来種の捕食者を根絶するのは難しいかもしれん。
18. 匿名処理班
※4
対策をとろうと準備していた最中に何かあって一気に減ったのかもしれないし、どういった過程でこうなったか知らないのに、安全地帯にいる人間が訳知り顔で言うのは違う気がするの……
規模からしても個人が思い立った次の瞬間にできることじゃないしね。
19.
20. 匿名処理班
※8 ※9※18
すいませんでした。
ただ、記事読んで直ぐに思った事を書いただけです。
まさかこんなに非難されるとは思いもしませんでした。
21. 匿名処理班
このプロジェクトの2回目のトライアルでは11羽の幼鳥と6羽の成体の
ペンギンが1歳のマレンマが殺してしまった。
適性を見極めるのは難しいね。
22. 匿名処理班
※20
オーストリアはこの手の問題は何でも遅い。と感じた。
2,30年以上前に野生ラクダが繁殖して問題になってたけど今どうなってんだか。
野良猫問題もある。
固有種守る為には駆除しかないだろう。
オセアニアなんて、固有種無くなれば、ただの島、大陸だよ。
その辺の価値分かってるのか。
23. 匿名処理班
半分海で暮らす生き物は実際の生息数を把握するのは簡単ではないよ
このペンギンの場合ニュージーランドにも生息するらしいから
まだ大丈夫だろうとある程度楽観視されていたのが実情かも知れない
24. 匿名処理班
※10
はるか昔、地球上に哺乳類が大繁栄する前に地殻変動で他の大陸から隔離されたため、オーストラリアでは狐・ウサギ・猫・鹿などはすべて外来種です
あそこに色々な種類の有袋類がいて他の大陸にはほとんどいないのは、他の大陸なら哺乳類(有胎盤類)が占めていた生態ニッチがまるまる空いていたから
だから有袋類はそこに進出し、様々に進化できた
※ニッチは「狭い領域(での需要)」という意味で使われることがありますが、動物について言う場合には「狭い」という意味は含まず、ある動物がその土地の生態系の中で占める位置、というような意味合いになります