
サルモネラ菌が植物を汚染 / Pixabay
食中毒は毎年10人に1人がかかっているとされる私たちの身近にある脅威だ。特に卵や食肉などを介した「サルモネラ菌」は、日本では食中毒の1〜3割の原因であるとされ、世界的には4大原因疾患にも数えられている危険なヤツだ。本来は動物の消化管に常在する腸内細菌なのだが、その一部が植物に感染する能力を獲得してしまったそうだ。
そのサルモネラ菌はレタスやほうれん草の防衛メカニズムを潜り抜け、「気孔」という植物が呼吸や水分を放出するために使う孔から葉の内部に滑り込む。
そうして内部に侵入してしまえば、水洗いしても化学処理をしても除去することができないという、私たちの食の安全を脅かす由々しき事態となりつつある。
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変異したサルモネラ菌、植物の免疫反応を迂回
菌類や植物細菌なら気孔の入り口を力づくで押し通ってしまうことが知られているが、人間や動物に感染するサルモネラ菌までそんな力を身につけてしまったようだ。デラウェア大学(アメリカ)のハーシュ・バイス氏は、「新しいのは、非宿主細菌が植物の免疫反応を迂回するよう進化した方法です」と述べる。
「ただの日和見主義者だったのですが、分類学上の界を跳び越えようとしています。」
バイス氏らの研究は、細菌が植物を通じて人間に感染する新しいルートを見つける方法や、私たちがそれを防ぐ方法に関するもの。
今回の事例では、ほうれん草とレタスの気孔がサルモネラ菌・リステリア菌・大腸菌にどのように反応するのか調べたところ、どの菌も痕跡を残さずそれらに感染できることが分かった。

Pixabay
洗っても消毒してもとれない、植物サルモネラ菌の脅威
人間の病原菌が植物の病原菌と同じようなことを試みているわけで、私たちの食の安全という点でも油断ならない事態だろう。バイス氏らによると、収穫高が高まるよう繁殖されてきた作物は、その免疫系を犠牲にしているのだという。あるいはあまりにも家畜に近いところで育てられているケースもある。作物が畑から食卓に届けられる途中、人間が触れることもある。結果として、植物に細菌が感染するリスクが高まってしまう。
葉の内部に侵入してしまった細菌は、水で洗ったり、化学的な処理を施しても取り除くことはできないという。
最近では高層建築物などの高さを有効活用した「垂直農法」が研究されているが、この場合、給水システムや人間との接触を通じて、簡単に感染が広まる可能性がある。

Pixabay
消費者に渡る前の徹底した安全管理が必要
それは想像するだに恐ろしいことだが、リスクに対処するためには正しい理解が大切となる。灌漑や洗浄システムなどに徹底した安全管理を施せば、食の安全を保つことができると研究グループは言う。「食品業界は食品を安全に保つために弛まぬ努力をしています。それでも、作物は外で育てられているので、微生物を媒介する野生生物や風、ほこりや水といったものに触れてしまいます。難しい状況です」と、研究グループのカルミア・クニール氏は話す。
この研究は『Frontiers in Microbiology』に掲載された。
Frontiers | Evasion of Plant Innate Defense Response by Salmonella on Lettuce | MicrobiologyReferences:sciencealert / written by hiroching / edited by parumo
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2020.00500/full
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コメント
1. 匿名処理班
ほうれん草はゆでたり炒めたりで熱処理すること多いけどレタスは生が多いからなぁ
カキみたいに生食用と加熱用とか分けて販売する日がくるんだろうか
2. 匿名処理班
現代だと、人為的に植物に感染出来る奴を作った奴が居て、それが漏れたのがバレたって事もありそうで嫌な話だな
3. 匿名処理班
もう 終わりだね 菌が大きくみえる さよなら さよなら さよなら
4. 匿名処理班
え?これ相当ヤバくない?
5. 匿名処理班
勝てる気がしない…(T_T)
6. 匿名処理班
人工的に調整されてる畑での感染ならまだいいが、
『ONEPIECE』の”樹熱”みたいな、天然環境下でも樹木に感染していく‥‥なんてことになったら最悪だな……。
フィクションじみた国一つ滅びる悪夢が、現実になってしまう。
7. 匿名処理班
生野菜を食えない時代が来るかもしれない
8. 匿名処理班
全卵を例にとると68℃の温度で3.5分以上加熱で不活化するそうです。
加熱調理すれば大体OKってことじゃないですかね。
短時間でサッと炒めるようなのはちょっと怪しいけど
茹でて温野菜サラダに仕立てたり、煮物・鍋物にしたら問題ないかと。
9. 名無しのまとめりー
工場で栽培して徹底管理しなければダメなのかねぇ?
10. 匿名処理班
空想のなかだったけど、自分が生きてるあいだに地球の人工調整がはじまってしまうかな。藤子不二雄さんの虚無SFみたいなのが現実に見えてきた感覚するは、こーゆうの知ると。
11.
12. 匿名処理班
これがマジなら、野菜にしろ果実にしろ、ハイテク工場で生産するしかなくなるぞ。
13. 匿名処理班
中世以降〜明治まで日本は人糞を野菜の肥料に使っていたので感染症リスクを抑えるために、野菜は煮るか、塩漬けにずるか、乾燥させるかの3択だけだったけれど、西洋ではどうだったんだろう? 昔からある料理では生で野菜を食べるものが少ないことを考えると、「生野菜」というのはサルモネラ菌に限らず、リスクが多い食べ方なのかもしれない。
14. 匿名処理班
おいおい…サラダ食べらんなくなるのかよ
こうなったら人間の方がサルモネラに負けない体に成るしかないな
きっともう人間は遺伝子操作で進化してくしか生き残れないんだ
生命サイクルが長い人間が生き延びるには人為的に遺伝子弄ってリスク負ってくしかないのかもな
15. 匿名処理班
サルモネラで会社の前例作った俺には興味深い内容
16. 匿名処理班
たいへんじゃ、生野菜が食えなくなる
17. 匿名処理班
>>13
白血病などで、一時的に無菌室に入る時には、生サラダも電子レンジでチンするルールがあるそうで、これが地味に精神にくると、聞いてます。 やはり生サラダはリスク有り
18. 匿名処理班
コロナ騒ぎも含めて、強靭な肉体を持つ者だけが生き残る世界に近付いているのかもね。
闇雲に繁殖を目指してきた近代社会がそもそも間違っていたのかもしれない。
弱肉強食は地球の根源的な掟だよ。
19. 匿名処理班
生野菜食えなくなるとか地獄でしかない
この進化したサルモネラ菌だけ絶滅できないものなのか…!
20. 匿名処理班
サルモネラ「うーん、なんか最近人間に感染したと聞かないなぁ…せや!」
21.
22. 匿名処理班
※13
ラクスマンが来た時にぶつ切り生キューに塩を添えて出したら喜んでことのほか多く食べたと記録されている。キュウリはぶら下がってなるから土から汚れが移るリスクは低いかもしれないが。
23. 匿名処理班
※4
家畜の餌にもできなくなる。サルモネラパニックがやって来る
24. 匿名処理班
逆に人間の体内で善玉として働く菌を感染させて乳酸菌青汁的生サラダを作れるのでは
25. 匿名処理班
※5
勝つともうな 思わば負けよ
26. 匿名処理班
>>6
なあ、それ何言ってるのかさっぱりわからんな
漫画と現実の区別がついてないことだけはよくわかった
漫画と現実の区別くらいつけようぜ
27.
28. 匿名処理班
まさか「フライドポテトは野菜」という時代がやってくるのか。
胸が熱くなるな(胸やけで)。
29. 匿名処理班
サルモネラ菌にも色々おるやろ。この種類の毒性次第やん。
30. 匿名処理班
アマゾンの大規模森林火災…例のウィルス…アフリカの大規模な蝗害…来たる南海トラフ…中共の核保有による冷戦の再来…拡散する核兵器…そしてこれ、食べられなくなる野菜。
どんどん世界が破滅に近づいてきてる…
31. 匿名処理班
人間だけ退化してる?
耐性が欲しい。
32. 匿名処理班
※26
御忠告どうもありがとう。
これからは宇宙人とのコンタクトはありえないと断定するし、空飛ぶ車の技術は金の無駄だと嘲笑するし、核戦争への警鐘を込めた作品は現実を見ていないモノだと批判することにするよ。
33. 匿名処理班
そのうち植物全てを工場プラントで管理栽培するディストピア来そう
34. 匿名処理班
サルモネラ菌的にはレタスの内部に入ることにメリットはあるのかな?
人間の体内にいるのと同じくらい栄養がえられる?
35. 匿名処理班
品種改良された植物は便利でありがたいけど
自然のモノじゃないんだよな
36. 匿名処理班
※18 「ウイルスは高等生物の遺伝子の一部が外部に飛び出したものである。ウイルスは遺伝情報を水平方向に、場合によっては種を超えて伝達し進化を加速させてきた。」(福岡伸一)
37. 匿名処理班
近いうちのサラダ禁止令が出るな。野菜は煮るか焼くかしろと言われる。
38. 匿名処理班
※34
人間の体に入る機会が増える。魚や鳥に代わる新しい中間宿主ってことだと思う。
レタスも過熱だなこりゃ。
39. 匿名処理班
※26
創作と現実を区別しているからこそ、漫画を引き合いに出しただけでは?
40. 匿名処理班
※8 レタスを芯まで68℃になるよう3.5分以上加熱したら、もう食べるものではないのでは?
41. 匿名処理班
清潔に育て過ぎなんじゃないかな。
できるだけ長く新鮮に保つためそういう"商品"を作ろうとしすぎたあまり、レタスを腐らせたり枯らす菌(枯草菌や乳酸菌や他の酵母類)が減ってしまって、本来いないはずの菌(サルモネラとか)が入り込んで気孔と接触して変異を誘発したりする余地が生まれてるんじゃないかな。
消費者サイドも、見た目がキレイで"長く鮮度を保つ野菜"ばかりを求め過ぎたんだと思うよ。レタスを枯らしたり腐らせたりする"悪者"の菌が、実はもっと怖い細菌からヒトを守っていたのかもしれないと思うんだ。
記事にも少し触れられているけど、元論文には本来植物に共存している枯草菌などで前処理した場合との比較実験も出ていて、サルモネラの侵入は劇的に抑えられているみたいだよ。
元論文雑誌のタイトルにFrontierとあるように、この方面の研究はまだ始まったばかりのようだし、野菜育成における菌類のミクロな生態系や、その意外な役割みたいなものがこれからもっと明らかになっていくような気がするよ。
42. 匿名処理班
レタスはこれからはチャーハンの具限定で。
43. 匿名処理班
※26
何度読んでも漫画と現実の区別ついた上でのコメントに見えるけど?
もしかして小学生?
44. 匿名処理班
ぶっちゃけレバーが生禁止になった時点で野菜なんぞ生じゃなくてもどうでもいい。
45.
46. 匿名処理班
※41 いくらか希望をもらえました!
47. 匿名処理班
※41
なんか納得した
最近特に思うけど、文章って全部読まないと趣旨が伝わらなくて、センセーショナルな部分だけが独り歩きしがちだな
48. 匿名処理班
※32
自分のコメント否定されたからって
拗ねるなよ・・・
49. 匿名処理班
※1
私はもともとほとんどの野菜は生で食べないのであまり困らないけれども、 SPF豚のようにサルモネラフリーなレタスという売り方ができるかもしれませんね。
反対にサルモネラ菌を含め、細菌の生存戦略として動物だけでなく植物に感染するというのも進化の一つですから、人間が耐性をつけるか、植物と動物に害のない抗生物質を作るか、葉野菜も加熱が普通に戻るか、無菌野菜生産(おそらく農場は工場のような感じ?)などにするかなどいろいろな方向があって、興味深く見ていきたいです。
なお、レタスのシャキシャキ感は減りますが、炒め物やみそ汁などに入れてもおいしいですよ。自分の調理で生で食べるのは、ネギとパセリ(生を食べるのがうまい)くらいかな。外食するときは出されたものは全部たいらげる主義なので生野菜も食べますが、基本的に加熱済の野菜のほうが好き。
50. 匿名処理班
※40
フニャンフニャンの水吸ったティッシュみたいになるなw
51. 匿名処理班
※40
湯引きレタスはおいしいよ。
52. 匿名処理班 ※8です。
※40
レタス入りのスープとか食べたことないの?
味噌汁に入れることもあるけど。
53. 匿名処理班
そのうちカキみたいに「加熱用野菜」「生食用野菜」に分かれて売られたりして
54.
55.
56. 匿名処理班
食文化史的にはサラダって新しい食べ方なんだよな
57. 匿名処理班
※12
逆なんだよ
高効率生産で出会う可能性を指摘してあるよ
元々あった脆弱性(出会う事のなかった)と書いてあるんだよ