
道路を真っ赤に埋め尽くすのは、カニなのだ。クリスマス島名物、「クリスマスアカガニ」である。
カニの群れに地面が覆い尽くされる様は壮観ではあるが、そこで暮らす人々にとっては、また困ったことでもある。文字通り「足の踏み場もない」のだから。ましてや車で通り抜けることは不可能だ。
しかし「不可能だ」と言って終わらせるわけにはいかない。そこで、現地では様々な工夫がされているのである。
道路を埋め尽くすカニを轢かないための工夫
普段は熱帯雨林の中に巣穴を掘って暮らしているアカガニだが、産卵期に限っては海辺に出てくるのである。卵を海中に産み出すためだ。しかし、森から海に到達するためには道路を何カ所か横切らなくてはならない。人間の方も工夫して、カニ用の歩道橋や地下道を設置したり、一部の道路は車での通行を禁止したりしている。
だがそれでも、道路上にカニが満ち溢れているのだ。そして、カニ相手に交通事故を起こしてしまうと、その硬い甲羅でタイヤがパンクする恐れもある。
そんな困った状況を知恵と工夫で乗り切ったのが、クリス・ブレイさんだ。クリスさんと妻のジェスさんは、島内にロッジを2件所有しており、食料や日用品を運び込むために車は必須。
そこでクリスさんが工夫したのが、この「カニ除け」だ。人間相手の交通事故と違って、カニが車体にぶつかる恐れはない。そこで、だ。要はカニがタイヤの下に入らなければいいのである。
この動画の通り、「カニ除け」を装着して徐行することで、交通事故を起こさずにカニの群れの中を通過できるという訳なのである。
クリスマスアカガニの一生
クリスマス島はオーストラリアの北西、インドネシアのジャワ島のすぐ南に位置する。インド洋に浮かぶこの島は、人口約2,000人、面積の60%以上が国立公園に指定されている。クリスマスアカガニは、クリスマス島と、その西南西にあたるココス諸島にしか生息していない固有種だ。個体数は数千万匹と多く、現在のところ絶滅等の恐れはない。また、雑食性であるため人間の食用には向かないそうだ。
11〜12月の産卵期に無事に道路を横断して海岸に到着したカニは、そこで交尾をし、メスは海中に産卵する。交尾と産卵の後には、親ガニは森の巣穴へと戻っていく。
海中で孵化した幼生は、3〜4週間を海で過ごし、脱皮を繰り返して成長する。その後は陸に上がって森を目指し、4〜5歳になると、親ガニとして交尾と産卵のために海へ向かうようになるのだ。
環境に配慮したロッジ
クリスマス島でクリスさんとジェスさんが営んでいるのは、"Swell Lodge" という名のリゾートロッジである。バスルームからは熱帯雨林が見え、海に向って開かれたデッキでは、海鳥が風に乗って舞うのを目の高さで眺めることができるのだ。このロッジは、オーストラリアにおける最高レベルの環境配慮型ツーリズムを証明する "Advanced Ecotourism" を獲得、また、環境持続性が高く、同時に確実な自然体験が保証される "Climate Action Business" にも指定されている。
そんなロッジであるからには、カニとの交通事故予防以外にも、様々なエコ設備が用意されている。太陽光発電はもちろんのこと、例えば、水を全く使わないトイレ、自然環境で分解可能なシャンプーやティーバッグ、ココナッツの殻からつくられた下水フィルターなどだ。
また、クリスマス島で我々を出迎えてくれるのは人間とカニだけではない。海中、空中、そして陸上にも、個性豊かな生き物が暮らしている。いつの日か実際に訪ねてみたい島だ。
References: Boing Boing / Swell Lodge / Wikipedia など / written by K.Y.K. / edited by parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
道路の横にカニ除けの段差付けて道路に数十メートル置きにカニの通り道の溝を設置すればいいだけな気がする、日本の電車などはカメなどが線路に入り込まないようにそういうの設置してるよ
2. 匿名処理班
ロッジ楽しそうだけど、虫嫌いには辛いんだろうなあ
爬虫類両生類は大好きなんだけど昆虫は克服できてない
3. 匿名処理班
タイヤの工夫、動画見るまで思い浮かばなかった。自分の頭が少しやわらかくなれたようだ。カニもタイヤも守れてよかった。
4. 匿名処理班
伊藤潤二の漫画であった、椅子のローラーで猫を踏まないガムテープガード思い出しました。
5.
6. 匿名処理班
クロダイ釣りやハタ釣りの餌に事欠かないね。
日本のアカテガニと同じように、満月の大潮の夜に磯場で産卵して陸地に戻るんだろうね。
7. 匿名処理班
※1
人口2000人、人口密度は11人/km²。
全部の道路にその設備付けるの?
島中が土建屋になりそうだな
8. 匿名処理班
上が平らな厚さ50cmのテトラポットを隙間を開けて敷いて道路にすればいいのに
9. 匿名処理班
大き目の側溝を道路に埋め込んではダメなのか?
30m間隔ぐらいに。
陸橋型のほうが蟹には良いの?
というか、この時期だけ設置名の陸橋は。
10. 我思うはDNA?
多分カニさんは自分の存在意義を考えたりしないかな。
「これまでずっと,人は人を支配し,人に害を及ぼしてきた。」
ダビデの息子ソロモンの言葉
11. 匿名処理班
ジャイナ教のホウキと同じやり方ね
12. 匿名処理班
「雑食性であるため人間の食用には向かないそうだ」美味しかったらこんなにいっぱい生息してないだろう。
13. 匿名処理班
※9
フリーアクセスフロア的な構造と上部床板を組み合わせるといいかもしれませんね。
対象がカニなので超低いピア的な発想も出来ると思いますけど、多点支持の方が床板構造体をスリムに出来るしメンテナンスもやり易そうです。
14. 匿名処理班
うちも海辺なので道路や車庫にカニが出るw(アカテガニとかいうやつ)
こんなに大挙して来るわけじゃなくてポツポツだけど
できるだけ轢かないように万全の注意を払ってるから気持ちはわかる
初夏から秋は車庫のカニ追い出すのに毎回ひと手間かけてます
15. 匿名処理班
自動車が通過した後よくみれば、、、
気のせいであってほしい。
16. 匿名処理班
性成熟まで4〜5年って結構な長生きなんだな。その間にタコなら5回、ハムスターなら2回死んでる。
17. 匿名処理班
>>4
「よん&むー」ですね♪
18. 匿名処理班
こういう共生のために工夫を凝らす優しい記事すき。
19. 匿名処理班
>>1
日本と事情が全然違うよ。一度に移動する数がめちゃくちゃ多いから、仮にカニが溝を通ってくれたとしても、あっという間に溢れるよ。
20. 匿名処理班
「要はカニがタイヤの下に入らなければいいのである」これすき
21. 匿名処理班
>>2
昆虫ってロボット感があって何考えてるのかわからないから自分も気色悪く感じる。
爬虫類も両生類も腹減ったーとかそういうことは感じてそうだから自分に似てるってなんとなく思える
22. 匿名処理班
ホバークラフト売れるかも!
23.