
そんな生と死を司るかのようなヘビ毒だが、手に入れるのはそれなりに手間だ。現時点で、ヘビ毒はその牙から搾り取られている。ヘビに特殊な容器を噛ませ、そこから分泌される毒を回収するのだ。
これは面倒で危険な作業であるし、おそらくヘビにも負担がかかる。しかも得られる毒の量だってそれほど安定していない。
そこでオランダ、ユトレヒト大学の研究グループが考案したのは、もっと楽で安全な方法だ。毒を分泌する毒腺のミニチュア版を培養し、ここから毒を手に入れるのである。
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細胞を培養して作られた毒腺オルガノイド
培養毒腺の元になったのは、南アフリカの固有種であるサンゴコブラの受精卵だ。卵が孵化する前に胎児を取り出し、その毒腺の組織を採取。これを成長因子を混ぜた培地に埋め込む。しばらくすれば、組織内の幹細胞が毒腺のオルガノイド(試験管で育てられるミニチュア臓器)に成長してくれる。
その成長は非常に速く、1週間もあれば、1つの毒腺オルガノイドを分裂させて、複数のオルガノイドを作成できる。実際、この研究では、2ヶ月のうちに数百のオルガノイドを作成することに成功している。

Ravian van Ineveld, Princess Maxima Center
生身のヘビと同じ神経毒性を発揮
毒腺オルガノイドには、本物の毒腺と同じく、毒をためる小嚢のような構造がある。ここで産生されるペプチドは生物学的に活性で、生身のヘビの毒とそっくりな構成をしている。筋肉に使用すれば、筋細胞の神経発火プロセスを阻害し、本物と同じように神経毒として作用する。
面白いのは、毒腺オルガノイドを培養するときの成長因子を調整することで、その性質を変化させられるという点だ。目的とする血清の用途に合わせて、最適な形にカスタマイズできるということだ。
Snake Venom Gland Organoids
毎年10万人にのぼる毒ヘビの犠牲者を救えるか
「多くは途上国の人たちですが、毎年10万人がヘビに噛まれて亡くなっています。なのに血清の作り方は相変わらず19世紀のままです」と研究グループの分子生物学者ハンス・クレヴァー氏は語る。現代ならではの安全かつ効率的な血清生産法が大いに求められているのだ。
この研究は『Cell』(1月23日付)に掲載された。
References:hubrecht./ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
これは確かに血清の作り方にも好影響を与えそうな技術革新話題だけど、毒の研究が進めば薬の研究もまた進む事になると思う(全ての薬は適量を超えると毒になる)なので、こういう研究は医学の進歩に必要不可欠だと思う。
2. 匿名処理班
アフリカとオーストラリア辺りで需要があるかな
3. 匿名処理班
なるほど、、、その手があったか。蛇の胎児が犠牲になるというのは少々複雑な気持ちもあるが、実験動物とあまりかわらない扱いと考えるとしたら妥当か?
4. 匿名処理班
>>3
畜産と比較すればマシそうだし
こっちはダイレクトに命にかかわるし
ヘビのベビーには申し訳ないが必要な犠牲じゃないかな
5. 匿名処理班
自分は蛇🐍とか怖いから触れないので
こういう仕事してる人は本当に凄いと思う
6. 匿名処理班
※5
噛まれなければ、どうということもない