
自然素材だから体に優しいという神話を信じている人は、花粉症のことを考えてほしい。なんなら漆やヘデラの葉に触ってみるといい。触ったことを一生後悔するほどには皮膚にダメージを食らうのだから。
それでも植物には植物にしかない素晴らしさがある。ここでは人々の想像を掻き立てるような植物の魔法を見ていくことにしよう、そうしよう。
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10. CAM植物とC4植物

通常の植物は光合成のために二酸化炭素を取り入れる気孔があるが、CAM植物とC4植物は水分の蒸発を防ぐために日中はそれを閉じておく。
ところが、こうすると吸収した二酸化炭素が不適切なタンパク質と結合してしまい、かえってエネルギーを消費することになる。
これを光呼吸というが、CAM植物とC4植物は気孔を夜間に開き、ホエノールピルビン酸に二酸化炭素を固定して炭素 4つから成る化合物オキサロ酢酸を生成する。砂漠の植物はこのシステムを通じて、夜間に二酸化炭素を集め、昼間にそれを代謝するのである。
9. 師部と木部

師部はそれ以外の栄養を運ぶ役割を担っており、木部のように硬くはない。
木部と師部は運搬のために管状構造をしており、木部は師部によって囲まれている。隣接する細胞は必要に応じて小さな開口部を通じて水分や糖を通過させる。
8. ウツボカズラ

底には甘い香りを放つ分泌液が蓄えられ、ついでに獲物を逃さないための蓋まで備わる。ウツボカズラは高地と低地で異なるが、どちらも熱帯の高湿度の地域に自生する。一般的なのは高地の種で、よりはっきりと水差し型をしている。低地の種は幅広で、水差しの上部はより一般的な形状だ。
分泌液につられた昆虫はワックスのために最早よじ登ることができない。液内には消化タンパク質が含まれており、逃れようともがく獲物を即座に消化しにかかる。獲物となるのは普通は昆虫の類であるが、大きく成長したものの中ではときにネズミまで犠牲になってしまう!
ネズミだっておいしくいただく、食虫植物ウツボカズラの捕食映像
7. 重力屈性

しかも日光が遮断されると、ものの数時間で成長の方向を変えることができるのだ。そんな芸当ができるのも方向と重力を感知する洗練された仕組みがあるからだ。
植物の先端には分裂組織というものがある。ここには平衡細胞という細胞が含まれており、これが重力を感知し、伸びる方向を決める。細胞が光を求めて動き始めると、植物は成長の方向を変える。植物のきわめて高度な進化を示す事例である。
6. 補助色素

それが補助色素で、光の吸収を最大化するために様々な波長に適した色素である。吸収できる光の波長の範囲が広いほど、植物はより多くの糖を作れるようになる。補助色素にはどんな色でも吸収できるものがある。藻類を例に説明しよう。
例えば海藻類には大きく分けて緑藻、紅藻、褐藻の3種の仲間がいる。海中では光は急速に減衰するため光合成が難しくなる。このため生存には補助色素が不可欠で、海藻は生息する深さに応じて異なる色を利用できるよう進化した。
水の浅いところでは赤い光が多く行き届くため、陸上の植物同様、太陽光のうち赤色と青色の光を捕らえて光合成する緑藻が多く生息するようになる。
一方、緑の光は水深が深いところに行き届くため、そこには緑色の植物が吸収しづらい緑色の光を光合成できる赤色色素を多目にもつ紅藻が繁殖する。
つまり紅藻が効率の悪い赤を選んだのは、ほかの藻類との競合を避けられるというメリットがあるからだ。
5. 世界で最も豊富なタンパク質

光合成に不可欠なタンパク質で、吸収した二酸化炭素と結合し、無機物から有機物に変えてくれる。既知のものとしては、地球上で唯一これができる酵素である。
RuBisCoは二酸化炭素を固定し、3つの炭素原子を含む分子であるホスホグリセリン酸分子を2個作る。その6分の1の分子が糖の生成に使われる。
RuBisCoは、生産性が高すぎて水分を喪失させてしまうために、CAM植物やC4植物にとって危険な代物である。そのためそれらでは活性化していない。
しかしほとんどの植物では得られるエネルギーを最大化するためにきわめて活発である。非常に効率的で、1つの酸素分子につき4つの二酸化炭素分子を代謝することができる。地球の大気に含まれるO2がCO2の500倍であることを考えるとその凄さが分かる。
4. 褐虫藻(かっちゅうそう)

褐虫藻は酸素、糖、アミノ酸をサンゴに与え、代謝によって作られる有害な物質も消化する。美しいサンゴ礁で有名な透き通るような海は栄養に乏しいことが多い。
一般的に透明度が上がるほどに、藻類やバクテリアが少なくなるために養分が少ない環境になる。ゆえにサンゴは褐虫藻を必要とする。
一方で、透明度の高さは褐虫藻が光合成をする上では光を吸収しやすく都合がいい。サンゴと褐虫藻はこの厳格な栄養サイクルを利用して、綺麗ではあるが養分に乏しい海でお互いに助け合って生きている。
この高度に進化したプロセスはサンゴ白化現象という問題に直面している。水質が汚染や酸化によって変化すると、ストレスを感じたサンゴは褐虫藻を追い出してしまう。するとサンゴは漂白されたかのようになる。こうなると、どちらも生存することは難しい。魚のような大きな種はより健全な環境へと引っ越してしまい、かつて栄えたサンゴ礁生態系の残骸だけが残される。
3. 本物の植物

最も重要な違いはきちんとした根と幹と葉がないことだ。真昆布は確かにそうしたものを備えているように見えるが、実際は違う。根ではなく、付着器だ。
これで強い波や海流でも流されないよう岩などに固定される。また葉は葉状部と呼ばれ、自立している点で植物の葉とは異なる。葉状部の各細胞は自分自身に栄養を供給し、維管束系がなくても生存できるのだ。茎はサポートのためだけのもので、葉状部が伸び上がって水面付近で日光を集められるようにする。
2. 水分の喪失を減らす

代表的なものは、ワックス状の葉、気孔の利用、孔辺細胞といったものだ。孔辺細胞は気孔の周囲にあり、開閉のタイミングをコントロールする。孔辺細胞が不活発なときは弛緩しており、気孔が閉じる。孔辺細胞が硬く屈曲すると、気孔は開く。
孔辺細胞は内部のカリウムイオンの濃度が高まったときに開口部が開かせる。この状態になると、孔辺細胞は水分を取り込もうとする。
水分が取り込まれるとカリウムイオン濃度は薄まり、細胞は再び力が抜け、気孔が閉じる。また気孔が開く際は二酸化炭素も取り込まれ、光合成が可能になる。このプロセスは相前後して機能し、夜間に気孔が閉じると、植物は昼間の間に蓄えた水とエネルギーを使用できるようになる。
1. エチレン

エチレンを放つのは梨や林檎のような果物で、ベリーのような小さな果実の場合、そうした果実のようには熟れる必要がないため放たない。
ガスは加齢との関連が指摘されているが、ゆえに熟成を促進する。果実がエチレンを放出し始めると、それは他の果実にも広まり、ガスの放出を促す。このため家庭で果物をまとめて保管しておくと、熟れる速度を早めることができる。
エチレンは作物の収穫高を増やすためにも利用される。特にこれが利用されるのはトマトだ。しかし使用しすぎると果実を腐らせてしまったり、葉や花が黄色くなって落ちるなど植物にもダメージがある。
乱用は禁物だが、自然界の植物が美味しい果実を結ぶために身につけた素晴らしい適応だ。
via:Top 10 Fascinating Facts About Plants/ translated hiroching / edited by parumo
訂正(2017/7/24 11:47) 本文の一部を訂正いたしました。
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コメント
1. 匿名処理班
ヘデラ(アイビー)は触っても平気ですよ!そこら中にありますし
2. 匿名処理班
な なんだかすごい! 気がする
パルモさんに言いくるめられた! 気もする
3. 匿名処理班
へー、なんでたまに赤い植物が生えてるのかと思ったら、緑が吸収できなかった残りを光合成してるのか
4. edy
藍藻のところで眼から鱗
アクアリストのヒントがあった
パルモさんの記事は面白い
5. 匿名処理班
ウツボカズラの壺は花じゃなくて葉っぱだよ。
6. 匿名処理班
植物って成長するスピード物凄いよね。ピーマン見てて思った。
7. 匿名処理班
一応全部高校の生物課程の内容だね、興味ある人は高校生物の教科書買ってみると色々面白いこと分かって楽しいよ。
8. 匿名処理班
ヘデラは観葉植物的な感じで公道とかに植えられてるよな
※1さんが言うようにヘデラは無害のハズや!
トベラは臭いけどな。
9. 匿名処理班
「地球の大気に含まれるO2がCO2の5倍」って何?
元記事でも5倍
そのまた引用先ではちゃんと500倍になってた
10. 匿名処理班
大半が高校生物で習う
11. 匿名処理班
家午前しか陽が当たらないからプランターの植物も生長で傾いてきたりすると、
修正修正また修正で蔓のようにそれでも真上目指して日に当たろうとしてるわw
それはそれで見てると結構可愛いw
12. 匿名処理班
種の意思は感じても個の意志は感じない
感じさせられないことが動物との差なんだと思う
13. 匿名処理班
5. 世界で最も豊富なタンパク質 の記事の大気中の二酸化炭素と酸素の割合との関連性が、化学に弱いオイラには理解できんかった。。誰か説明してくれ〜
14. 匿名処理班
花粉症はアレルギーで免疫が異常な反応をしてしまうってものなんだから
植物は無害?花粉症があるでしょ!って間違ってるやろ
15.
16. 匿名処理班
はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。どうしても気になったのでコメントします。
原文から間違っていましたが、ホスホエノールピルビン酸やオキサロ酢酸はタンパク質ではないです。
オキサロ酢酸のくだりの4という数字は、オキサロ酢酸一分子に含まれる炭素原子の数のことでしょう。
私は植物の代謝の専門家ではないので恐縮ですが、文章の意味が全く違っているのでコメントさせていただきました。
17. 匿名処理班
先ほど訂正のコメントをした者です。たびたび申し訳ありません。
最初の内容にとらわれてしまって、すぐコメントしたのですが、それ以降にも誤記があると思います。
6色素の話→クロロフィルが緑なのは、赤い波長を吸収しているため、その補色が見えるからです。むしろ赤い波長は、拡散せずに深部まで届きます(オーブントースターの説明で、遠゛赤゛外線と言いますよね。青色に見える波長の光は拡散しやすく、空の色として私たちは見ています。)。つまり、浅い領域にいる紅藻類は、むしろ波長が赤色よりも短く、拡散しやすい緑色の波長を吸収しています。藍藻類が黒く見えるのは、異なる波長を吸収できる色素を、複数種有するためです。
原文の説明では、真逆のメカニズムを言っています。
9師部、木部→師部と木部はそれぞれ組織の名称であって、細胞名ではありません。それぞれ、多数の細胞から構成されます。
5タンパク質→「RuBisCoと結合した二酸化炭素は、不安定な6個の元素からなる分子に分解され、これはさらに2つの3-ホスホグリセリン酸に分解され、糖の作成に使われる。」この文章が最も誤っています。そもそも、二酸化炭素は、二種の元素、3つの原子からなる分子で、分解されたのに6個の原子からなる分子になることはできません。
出典が確かで分かりやすい解説は、URL欄に入れておきました。
18. 匿名処理班
昆布って植物じゃないんだ
メカブ美味いからべつにいいけど
19. 匿名処理班
紅藻と藍藻の説明が逆ですね。紅藻がより深海に、藍藻が浅瀬に適応しています。
赤い光は海中を深くは進めず、青や緑は海中深くまで到達するという説明はあってますが、藻が赤く見えるということはその藻が赤い光を反射してる、つまり吸収してない、光合成に使ってないということなので、青や緑を光合成に使っているとなります。
従って紅藻は青や緑の光しか到達できない深い水深に適応している、となります。
20.
21. 匿名処理班
クロロフィルってきったない看板あるよな
22. 匿名処理班
海や泉が青く見えるのは、青や緑の光が水中を深く浸透し水底や水中の微粒子に反射され戻ってくる一方で、赤い光は直ぐに水自体に吸収され消えてしまうからです。底物の魚や深海魚に赤い魚が多いのも、青や緑の光を吸収する色素の方が赤い光の少ない世界では目立たないからです。
23. 匿名処理班
※14
まずその手の「自称ナチュラリスト」はおおよそそういった自己免疫疾患(アトピー・アレルギー・喘息など)を
化学製品による毒()の為にそれらの疾患が悪化しているといった理論を展開する奴が非常に多いんだよ
けれど自然界には花粉を筆頭にアレルゲンはたくさん存在する。それは疾患を持つ人間にとっては毒物といっても過言ではない
まして毒性を持つ植物だって沢山あるのに、自称ナチュラリストはそれらをまったく無視しているわけ
そう言った人らの「植物無害神話」に「植物が毒になる人間も沢山いる」と言う反論のどこがどう間違っているのか教えて欲しい
まさか「毒ではない植物に負けるお前の体が悪い」なんて言わないよな?
24. 匿名処理班
※14
悪い影響をもたらす要因を毒と定義しているに過ぎないのだから別に間違ってなかろう?
人間にとっては無毒なアボカドも犬や猫に食わせたら即死級の毒物やぞ。
25. 匿名処理班
分類の学問って変、昆布が植物じゃないっておかしい、PLANTという概念なら立ってないからだけど、根茎葉の明確な区分けが無い植物も多いはず(海藻は根も茎も不要な環境にあるだけ)。
26. 匿名処理班
ウツボカズラの中の液体は多少の消化酵素(※)を含んだ単なる水(分泌液)で
蜜では無いです。
獲物はツボの縁や蓋の裏側辺りから出てる少量の蜜(中に溜まる程は出ない)+匂いに
釣られてるのであって、中の水は単に落とし穴の底で溺れされるのが主目的の代物。
※正確には消化酵素が確認されてない種もあり、また中の水に巣食ってるバクテリアや
特有の昆虫の幼虫が獲物を分解してる場合もあって、
種により獲物の吸収過程は異なるのですが。
27. 匿名処理班
なるほど いろいろあって俺たちはおいしくいただけてる訳か
28. 匿名処理班
ゴミみてえな知識でくっさい記事書いてんじゃねえよ潰すぞ
29. 匿名処理班
※28
ここははじめてか?
まあ落ち着けよ
30. 匿名処理班
この時期気になるのはやっぱアサガオだな〜
利き巻きとかあるのかな〜?
ヘデラは垂れるけどアサガオは垂れないんだよね〜
がんばれば交配させて垂れアサガオ作れるかな〜?
31.
32. 匿名処理班
※25
分類の学問=分類学が変なんじゃない。分類学に謝れ。
「植物」とはどのような生物なのか、という定義は学問的には(ある程度)しっかりなされているが、その定義も学問の進歩によって変わったり、学者によって違ったり、専門分野によって違ったりする。
非専門家が「植物」ってこういうもんだろう、という思い込みをもって学術的な記述を読むと混乱するであろう。
33.
34. 匿名処理班
翻訳スタッフの頑張りもすごいけど、ここの※ンテーターはすごい人たちが揃ってる。
自分の専攻はクラシック・ピアノであまり出番がない。
しかも理系の記事はほとんど理解できず、読むのも苦しくてたいてい放置。(=バカ)
そこでいろんな専門分野の人が意見を交わしているのを目の当たりにすると、
生オケみたいに感動する。いつまで続いてほしい大切な場所。
35. 匿名処理班
食虫植物を10年以上育ててるけど、食虫植物って偏見や思い込みで本来の生態を理解されない不遇な植物だと思う
36. 匿名処理班
昆布やワカメなどの褐藻は、よく見る植物や青のりなどの緑藻よりも、ミズカビやカエルツボカビの方に系統的に近いと知った時はびっくりした
中学生ぐらいの時に海藻→コケ→シダ→植物というように習ったけど、かなりちがう部分があるんだよね