今年7月10日から20日にかけ、トルコで開かれる予定だったユネスコの世界遺産の登録審議は、現地のクーデター未遂事件により16日は中断、17日には早期切り上げとなった。残りの審議は10月まで持ち越すという事態に陥ったものの、これまでに文化遺産12件、自然遺産6件、複合遺産3件、計21件の新世界遺産が登録された。
それらの新世界遺産のうち、海外サイトにて7月15日時点で決定と報じられた9件の文化遺産を見ていこう。 なお、これら海外の報道の中には一部曖昧な情報が含まれている場合もある。新たな世界遺産の公式和名などの最新情報についても流動的な側面があるので、詳細は今後の報道を参考にすることをおすすめする。
1. ピリッポイ (ギリシャ)
現在のギリシャ、かつての東マケドニア古代都市のふもとに横たわっていたピリッポイは、紀元前356年にマケドニア王ピリッポス2世が作り上げた城郭都市だった。ローマ時代には劇場、寺院や広場などが設けられ、小さなローマとして栄えた。現地では初期キリスト教時代に建設されたパウロ聖堂(バシリカ)の名残を見ることができる。
2. アニ遺跡 (トルコ)
アルメニアとの国境にほど近いトルコ北東部カルス県に位置するアニ遺跡は、かつてキリスト教やイスラム教などの宗教や文化が混じり合った都市で、10世紀と11世紀に最も繁栄した。シルクロードの一部でもあったこの場所は、地震の影響やモンゴル侵略を経て衰退したが、その魅力的な建築の名残は現在でも垣間見ることができる。
3. ゴーハム洞窟群 (イギリス、ジブラルタル)
imege credit:KJELL ESON/FLICKR
石灰岩でできた崖にある4つの洞窟で構成されたゴーハム洞窟群は、ネアンデルタール人の生活をうかがい知ることができる貴重な遺跡として、考古学や古生物学者の注目を集めている。
4. カナート水路 (イラン)
山の麓の扇状地などにある地下水を運び、乾燥地域の農業生活や集落の維持に役立つ地下の用水路システム。Just inscribed as @UNESCO #WorldHeritage Site: Persian Qanat #Iran Watch Live: https://t.co/q467UEXHuT … pic.twitter.com/S7XVSJHyva
— UNESCO (@UNESCO) 2016年7月15日
5. アンテケラのドルメン遺跡 (スペイン)
スペイン南部アンダルシアの中央にある3つの巨石遺跡群はメンガ古墳とビエラ古墳、そしてペーニャ・デ・ロス・エナモラドスとエル・トルカというつの巨大な岩山で形成されている。ユネスコは、ヨーロッパの先史時代における最も顕著な建築作品の一つであり、ヨーロッパの巨石記念物文化の重要な例の一つとしても非常に興味深い遺跡だと評価している。
6. 中世墓碑群ステチュツィ (ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア)
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4カ国にまたがる広範囲で散見される30カ所の墓石群には、12世紀から16世紀にさかのぼる墓地も含まれている。これらのステチュツィ(中世墓石)は石灰岩でできており、さまざまな装飾モチーフがや碑文が施されている。
7. 左江花山の岩絵の文化的景観 (中国 広西チワン族自治区)
中国南西部の急峻な崖に描かれた紀元前5世紀頃の人々の文化を示す画花山岩絵と、その周辺の山や川が織りなす見事な景観が登録された。Just inscribed as @UNESCO #WorldHeritage Site: Zuojiang Huashan Rock Art Cultural Landscape #China pic.twitter.com/A3c0X2P0WM
— UNESCO (@UNESCO) 2016年7月15日
8. ナーランダー・マハーヴィハーラ (インド ビハール州)
imege credit:APAP Photo/Prashant Ravi, File
3世紀頃に建てられた世界最古の大学の一つ。インドの最高位の寺院であり、かつ教育機関としての機能も果たした。仏教を中心に様々な講義が行われた。
9. ナン・マトール遺跡 (ミクロネシア)
玄武岩やサンゴ岩でできた90以上もの人工島から成る巨石構築物群で、かつては祭祀などの儀式に使われていた施設だといわれており、およそ13世紀から15世紀の寺院や墓などの痕跡が残っている。またこの遺跡は登録と同時に危機遺産リストにも追加されている。
なお、日本に関する情報としては、フランスなど6ヶ国と共同で推薦していた「ル・コルビュジエの建築作品−近代建築運動への顕著な貢献−」が認められ、それに伴い東京・上野の国立西洋美術館もリスト入りになった。
この1件が加わったことで日本における世界遺産の数は20件となった。
via:mashable・translated D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
国立西洋美術館とか戦後の建物が世界遺産?って思ったけど出来てからあまり時間が経ってない世界遺産って調べたら意外とあるのね。オペラハウスもそうなのか。
2. ナパチャット
最後は地球が世界遺産です!とか言うんやろな
3. 匿名処理班
謎の遺跡であるナン・マトールって今まで世界遺産になっていなかったのは驚いた。
4. 匿名処理班
・8の「世界最古の遺跡」、って間に「仏教」が抜けてる様な気がする
てか、まさかここでナーランダー学院の名前を見ることになるとは思いも寄らなかった、というか遺跡として残ってるとは思ってなかった、不勉強すぎる……orz
5. 匿名処理班
国立西洋美術館、選ばれたのはとてもいいことなのですが、
なんか異常に混んでしまっていますよね。
もともと上野の美術館はやたら混みすぎる傾向があるのにさらに。
実際本当に展示しているものが観たい、というひとが
見づらいんじゃないかなというのがちょっと...
騒ぎがちょっと落ち着いてくれることを祈ってます。
(美術館側や周りのショップなどは繁盛はうれしいでしょうが)
6. 匿名処理班
いつも思うけどさ、なんで日本て数カ所の大きなものをまとめて登録の複合遺産ばっかりなんだろ。もったいないというか、不公平な気がするんだけど
7. 匿名処理班
米6
複合遺産というか、シリアル・ノミネーション・サイトだね(複合遺産は文化遺産と自然遺産の評価を兼ねたもの)。
個別にはまあ力弱くても、複数の構成資産に通底する文化や歴史性に顕著な価値を見出せる遺産もあるってことで、
近年は日本に限らずシリアル・ノミネーションでの登録がことさら盛んになってるような気がする
インドのラジャスタンの城塞群とか、中国の土司遺跡群とか…
8. 匿名処理班
5の画像見てアンテケラのドルメン遺跡って何だと思ったら、日本の古墳みたいな石室(ドルメン)があるんだね。
画像自体はエル・トルカの奇岩だった。
9. 匿名処理班
世界遺産多すぎじゃね
10. 匿名処理班
国宝や重要文化財が何点あっても価値が下がらないのと同様に、世界遺産が何件あろうが構わんと思う
11. 匿名処理班
※8
結構よくあることだぞ
12. 匿名処理班
国立西洋美術館は見る価値なんかあるとは思わないな、なんで、あんな建物を‥