メインコンテンツにスキップ

人為的な干ばつで消えたアラル海の土地が隆起し続け、地球内部に影響を及ぼしている

記事の本文にスキップ

20件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
アラル海 Photo by:iStock
Advertisement

 中央アジアの「アラル海」は、無謀な人為的灌漑事業によってほとんどの湖水が干上がったことで、周辺の生態系や経済に甚大な被害をおよぼす環境破壊が起きたことから「静かなチェルノブイリ」とも呼ばれている

 新たな研究によると、湖の激変から80年が経過した今、その元湖底が隆起していることが判明したという。

 一体何が起きているのか?

 研究者によれば、環境破壊によって地殻の下にある「マントル」の動きが変化したことと関係しているという。

 それはつまり、私たち地表で暮らしているだけの人間が、驚くべきことに地球奥深くの動きにまで影響を与えているということだ。

 この研究は『Nature Geoscience』(2025年4月7日付)に掲載された。

人為的活動によって干上がってしまったアラル海

 カザフスタンとウズベキスタンにまたがる塩湖「アラル海」は、かつて世界第4位の面積を誇った大きな湖だった。

 ところが1940年代、ソ連(現ロシア)が綿花栽培のための大規模な灌漑を実施し、ダムの建設や河川の流れを変えたことで面積が急速に縮小してしまった。

 現在はほとんどの水が干上がり、ほんの一部だけが変わり果てた姿で残るのみだ。アラル海の激変によって、湖底は砂漠化し、船の墓場となっていった。

 周辺地域への生態・経済的影響は深刻なもので、人類史上最悪の原発事故になぞらえ「静かなチェルノブイリ」と呼ばれることもある。

この画像を大きなサイズで見る
左から右へ2000年、2007年、2014年のアラル海。最後の画像からは、中央付近にあった湖の名残が完全に消失したことがわかる/Image credit: NASA Earth Observatory

80年たった今も、湖底が隆起し続けている謎

北京大学をはじめとする研究チームによれば、過去80年間でアラル海から失われた水は11億トンに達するという。

 これはギザの大ピラミッド150個分の質量に相当する膨大なものだ。それゆえにその下にあった岩盤が、重石が消えたバネのように反発するだろうとは予測されていた。

 ところが意外なことが起きている。水が蒸発して数十年経つというのに、今もなお地面が盛り上がり続けているのだ。

 しかもその範囲はアラル海の元々の範囲よりはるかに広いのである。

 北京大学をはじめとする研究チームは、こうした土地の膨張を人工衛星のリモートセンシング技術によって測定している。

 2016~2020年の測定データによると、アラル海の中心から半径500kmの範囲にわたり、毎年7mmずつ地面が隆起しているという。

この画像を大きなサイズで見る
現在のアラル海。砂漠と化した元湖底には当時の船がそのまま残されている Photo by:iStock

地球深部にまで及ぶ人間活動の影響

 その原因について、研究チームは、アラル海が干上がったことに対する「マントル」の反応だろうと考えている。

 マントルは地下30~70km(海底下では地下7km~)から続く地殻の下にある層だ。粘性を持つ岩石で構成され、ゆっくりと流動するため、地表の岩石や水の重量で物質が押し除けられると、それを補うように流れ込むことがある。

 アラル海は深くはなかったが、面積は広かった。それゆえに、最外層の強固な地殻はその重量を支えきれず、その下にあるより柔らかいマントルへとわずかに沈み込んだ。

 その重みは地下数十~数百kmの深さにまで伝わったと考えられるという。

 ところがアラル海の重量が抜けたことで、まず地殻が反発した。だが、それだけでなく、それまで押し除けられていたその下のマントルまでが流れ込んできた。

 これが今も続く地面の隆起を引き起こしていると研究チームは推測している。

 彼らによると、アラル海地域は、今後も数十年にわたり上昇を続けるだろうという。

 私たち人間は地上にへばりついて生きるちっぽけな存在だ。

 だが今回明らかになった隆起は、ちっぽけなはずの人間の活動が、ときに地球奥深くの動きすら左右しうることを示している。

References: Weak asthenosphere beneath the Eurasian interior inferred from Aral Sea desiccation / Quiet Chernobyl' changed Earth's surface so much the planet's mantle is still moving 80 years later

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 20件

コメントを書く

  1. アラル海は過去にも何度か干上がっているから経済的利益が得られなくなったり環境がさらに悪化して周辺地域から人がいなくなればそのうち復活するんだろうね。今困っている人にとってはなんの希望にもならないけれども。

    • +9
    1. アラル海に注ぎ込む河川を灌漑用水に使ってしまっているのが原因だから
      農地がある間は復活は無理だと思うな

      • +4
      1. ZmQxさんの「経済的利益が得られなくなったり環境がさらに悪化して周辺地域から人がいなくなれば」に「農地がなくなる事」も含まれるのでは

        • +3
  2. 乙嫁語りのライラとレイリが魚獲ってた湖が地図から消えた…

    • +15
  3. ウズベキスタンの郊外、絶対砂漠でしかないはずの平坦な土地に
    綿花畑が延々と続く様子は気味悪く恐ろしくなった。
    あそこはシルクロードでコットンロードではないはず。

    • +13
  4. この程度のことは自然でも充分起きることだよね、地表の現象が地下深くマントルに影響を及ぼすって案外相互作用なんだね

    • -4
    1.  南極とかグリーンランドとかで氷が融けて乗っかっている重さが減ると隆起する話がありましたが、湖でも発生するのですね。 まぁ、考えて見れば液体だって重みがあって押さえつけていたのだから当たり前といっちゃぁ当たり前ですけどね。

       大きな湖がなくなると周りの年較差や日較差(気温の高い時と低い時の差)も大きくなって人が住めなくなっちゃうので大陸の内側は大変ですよね。 ある意味日本は島なので内陸(有名なのは熊谷とか北海道の中心方面とか)以外は周りが海なのでたとえばオイミヤコン村みたいに極端に年較差が大きくなくて幸せですね。

      • +2
  5. 浅い池や湖でも水は地中深くまで染み込んでるから
    全体では結構な重さになる。水面と底だけが全てではない。

    • +10
  6. これも海面上昇の一因なんよなまあワイが今思いついただけやが

    • -8
  7. 地球規模でも11億トンの重しは大きいのか?
    そして「中国の調査チーム」で思い出して調べてみたけど三峡ダムの水量が約380億トンらしいので
    逆に三峡ダム周辺の地形は沈降している…のか?

    • +6
    1. 実際にその水圧で地盤がズレてしばしば地震を起こしてるらしいですよー

      • +8
  8. 言われてみれば納得するけど、押された分へこむなんてそんなシンプルな理屈が地球にも適用されるもんなんだな

    • +4
  9. ちなみにやらかした張本人のソ連は崩壊する直前に反省して再生しようとはしたみたい(その前に崩壊して内戦だので有耶無耶になったけども…)
    カザフスタン側は一応堤防作ってある程度持ち直したけどウズベキスタンは回復させるどころか石油掘るつもりでやる気ないっぽい

    • +4
  10. 何がヤバイって干上がって濃縮された塩分が風で散って周辺の土地がどんどん死んでいくんじゃなかったっけ
    まさにチェルノブイリだね

    • +8
  11. また何かしらのきっかけで元に戻るんじゃない?
    騒ぎすぎ

    • -10
  12. 昔はまんまるな一つのみずうみだったのにね

    • +2
  13. 中学校で使っていた「中学総合理科表」のはじかみに「地球を手の平に乗せることが出来る巨人がいたら、地球は薄皮まんじゅうのように表面は柔らかく薄い」みたいに書いてあったのを思い出した。

    • +4
  14. 13から14世紀にも干上がりかけてるからなあ
    まあソビエト時代に、大躍進とばかりに農地拡大して、アラル海はむしろ静かに死ぬべきであるとまで言われてたくらいだからね。農地が広がってどうだ西側め!をやりたかったから、環境改造したがった

    • -1
  15. そのうち地面が裂けて火を噴く…なんてことにはならないでくれよ…

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。