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AIが命をつなぐ時代に。世界初、遠隔操作の全自動体外受精で赤ちゃんが誕生

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(著)

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Credit: Conceivable Life Sciences
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 2025年4月、アメリカの先端医療開発企業「コンシーバブル・ライフ・サイエンシズ」社が、遠隔操作によって、メキシコ・グアダラハラにある不妊治療専門施設で、世界初となる完全自動かつ遠隔操作による顕微授精を行い、健康な赤ちゃんを誕生させることに成功した。

 顕微授精(ICSI)とは、卵細胞質内精子注入法のことで、これまで熟練した人間の手で行われてきた高度な不妊治療が、AIとロボット技術により完全自動化されたことで、生殖医療の未来に大きな一歩を刻んだ。

 この革新的な技術は、特に不妊に悩むカップルにとって新たな希望となる可能性がある。

手作業から、AIとロボットの精密操作へ

 1990年代に誕生し、今では一般的な不妊治療として広く使われているICSI(Intracytoplasmic Sperm Injection=卵細胞質内精子注入法)は、1つの精子を顕微針で卵子に直接注入する技術だ。

 これまでは、高度な技術を持つ胚培養士が顕微操作装置を使って手作業で行っていた。

 しかし、その作業には高い集中力と技術が求められ、成功率は操作者によってばらつきがあった。

 こうした課題を解決するべく、アメリカ・ニューヨークに本社を置く先端医療開発企業「コンシーバブル・ライフ・サイエンシズ」社が、メキシコ・グアダラハラの関連施設と共同で研究を行い、「完全自動ICSIシステム」を開発した。

 このプロジェクトを主導したのは、胚培養士のジャック・コーエン博士、医師のアレハンドロ・チャベス=バディオラ博士、工学専門家であるヘラルド・メンディサバル=ルイス教授で、慎重な倫理審査のもと進められた。

 完全自動ICSIシステムでは、23の工程すべてをAIやロボットが正確に実行できるように設計されている。

 卵子を固定する、精子を選ぶ、注入する、といった一連の作業が、メキシコにある装置で行われたが、操作指示は約3700km離れたアメリカ・ニューヨークから送られていた。

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遠隔操作による卵細胞質内精子注入(ICSI)の実験用システム標準的な顕微操作ワークステーションを基に設計されており、すべての操作を遠隔で行えるように、電動化およびデジタル制御の部品が組み込まれている。Credit: Conceivable Life Sciences

世界初のAIロボットによる遠隔操作で赤ちゃん誕生

 この技術で使われたAIは、注入する精子を自動で選び、動きを止める処理まで行う。ピペットと呼ばれる細い管を使って精子を吸い込み、レーザーで正確な位置に固定する。その後、卵子の中心に精子を注入するという作業も自動で行われた。

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遠隔操作で自動ICSIを行うときの映像。2本のマイクロツールと成熟卵子に加えて、すべてのICSI工程を遠隔で実行するためのデジタル操作画面が表示されている。画面下部には自動化された手順を実行するためのボタンが並び、左右には自動操作が失敗したときに手動で切り替えるためのデジタル操作パネルがある。胚培養士は、実験室内で1mほど離れたコンピュータからでも、自宅のパソコンから数千km離れていても操作できる。Credit: Conceivable Life Sciences

 実験では、5つの卵子に自動ICSIを行い、そのうち4つが正常に受精した。

 手作業で行われた3つの卵子もすべて受精したが、自動ICSIで受精した胚のひとつが最も成長し、凍結保存された後、女性の子宮に戻されて妊娠が成立。健康な男の子が無事に生まれた。

 この治療を受けたのは、体外受精がうまくいかないめ、提供卵子を使う方法をすすめられた40歳の女性だった。

 彼女は以前、たった1つの成熟卵子しか採れず、受精卵もできなかったが、今回は自動ICSIによって妊娠・出産に成功した。

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遠隔操作による顕微授精(ICSI)で作られた良好な胚盤胞(はいばんほう)を新鮮なまま子宮に移植したが(A)、妊娠には至らなかった。一方、同じく遠隔ICSIで作られた胚盤胞を凍結保存し、解凍から4時間後に再びふくらんだもの(B)は、補助ふ化と胚移植(C)を行った結果、臨床的な妊娠が確認された。

不妊治療の未来

 今回の成功は、今後の不妊治療にとって大きな可能性を示している。

 特に経験や手先の技術に頼らなくても、安定した体外受精の結果が出せるため、誰でも同じように治療を受けられるという点で、多くの注目を集めている。

 すでに体外受精の現場では、AIを使った受精卵の観察、精子や卵子の凍結保存、状態のチェックなど、さまざまな場面で自動化が進んでいる。今回の技術は、そのさらに先を行く「完全自動・遠隔操作」のステージに入ったことを意味している。

 しかし、科学の進歩と同時に、倫理の問題にも目を向けなければならない。どこまでを機械に任せるべきか、命の始まりに関わる技術をどう使っていくのか?

 社会全体で考え、必要なルールや法律を整えていくことが、これからの課題になるだろう。新しい命が安全に、そして正しく迎えられる未来のために、科学と社会のバランスがますます問われる時代が始まろうとしている。

 この研究は『Reproductive BioMedicine Online』誌(2025年4月9日付)に掲載された。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

遠隔操作で高精度な体外受精が可能になれば、不妊に悩む夫婦や、少子化に悩む国にとっても大いなる恩恵がもたらされることだろう。その一方で悪用された場合のこともしっかり考えていかなければならないね。自分のDNAを持った子が突然現れて困惑しないためにも。今回の研究は、慎重な倫理審査のもと進められていたので大丈夫だけれど、命を扱う研究は危険をはらんでいるので、きちんといた国際的第三者機関が常にチェックする体制を整えていくべきだと思うんだ。

References: Rbmojournal / Eurekalert

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この記事へのコメント 8件

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  1. 成功率が上がるのは素直にいい事だと思う

    • +11
  2. この技術でデザイナーズベビー作れば超優良児が出来そう

    • +1
  3. AIという2文字をひたすら連呼する記事だが内容はAIではない不思議な記事

    • +1
  4.  遠隔の手技というか手術ではダヴィンチが有名ですが、今回のはどういう相性になるのかな。  Full Auto ICSI でフェイクシ?……くしゃみじゃないよって自分ツッコミしました orz

    • 評価
  5. AIがどう活かされてるのかよくわからないな。

    遠隔操作で、人間の入力と機械の出力の間を取り持って丁度いい感じに調整してるとかそういうこと?

    • +1
  6. これで、人間の仕事がまた一つなくなるな

    • 評価

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