メインコンテンツにスキップ

火星の生命の痕跡を裏付ける最大の有機分子をキュリオシティが発見

記事の本文にスキップ

12件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
火星でがんばるキュリオシティ NASA Goddard/Youtube
Advertisement

 2012年8月に火星に到着して以来、黙々と地表を掘ってはサンプルを集めるお仕事をしているNASAの火星探査車「キュリオシティ」が、驚くべき発見をした。

 火星の古代湖跡と考えられている、ゲール・クレーターで過去最大の有機分子を発見したのだ。

 これらの分子は約37億年前に形成されたと考えられており、地球上の生物には不可欠な「脂肪酸」を構成するものだ。

 生命の存在を示す直接的な証拠ではないが、古代の火星では、生命の誕生に不可欠な複雑な有機化学反応が起きていたことを示している。

 この発見から、火星の過去の環境や、生命の痕跡についての新たな手がかりが得られるかもしれない。

火星で脂肪酸を構成する史上最大の有機分子を発見

 かつて湖があったとされる火星のゲール・クレーターで調査を行っている、NASAの探査機「キュリオシティ」だ。

 過酷な環境にある火星で、車輪に大穴が開きながらも、痛みに耐えながらひとり黙々と調査を続けている。

 キュリオシティはこれまで、塩素化有機化合物や硫黄含有有機化合物など、生命の存在を期待させる痕跡を発見してきた。

 だが今回、キュリオシティがゲール・クレーター内の「カンバーランド」と名付けられた岩石に穴をあけ、内部の粉末状の物質サンプルから発見したのは、火星探査史上最大の有機分子だ。

 それは「デカン」「ウンデカン」「ドデカン」と呼ばれる分子で、それぞれ10個・11個・12個の炭素で構成されている。

この画像を大きなサイズで見る
「デカン」「ウンデカン」「ドデカン」は、これまで火星で発見されたものとしては最大の有機分子で、生命の痕跡である可能性がある。2013年に採取されたカンバーランド試料から検出された/Credit: NASA/Dan Gallagher

 これらの分子は、地球の生命の基本的な要素の1つである「脂肪酸」を構成する。

 地球の生物は、細胞膜を作ったりと、脂肪酸をさまざまなことに活用しているため、古代、あるいは現在の火星の生命の存在を大いに期待させてくれる。

 念のため言っておくと、脂肪酸は生命がいなくても作られる。

 海底の熱水噴出口で起きる熱水と鉱物の相互作用をはじめ、自然に起きる化学反応で生成されることがあるのだ。

火星で生命誕生に不可欠な有機化学反応が起きていた可能性

 では、今回発見された3種の有機化合物は、何によって作られたのか?

 現時点でそれを知る手立てはないが、それでも火星で生命誕生に不可欠な複雑な有機化学反応が起きていたことを示している。

 また、この発見は、生命の存在を裏付ける証拠(バイオシグネチャー)が、現在の火星にきちんと保存されるだろうことを告げてもいる。

 火星のような激しい放射線が降り注ぎ、酸化もしやすい環境では、生命の痕跡は壊れてしまうのではないかと懸念されているが、そうした環境でしっかりと残されている可能性があるのだ。

この画像を大きなサイズで見る
キュリオシティによってカンバーランド岩石に開けられた直径1.5cm、深さ6.6cmの穴。この岩石はかつて湖の底にあったと考えられる/Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS

火星の湖はかつて生命のオアシスだった?

 12年前、キュリオシティは、火星のゲール・クレーターにある「イエローナイフ湾」でカンバーランド岩石の試料を採取した。2013年5月のことだ。

 この地域は古代の湖の底のように見えたため、科学者たちは強い関心を持ち、当初の目的地とは反対方向にもかかわらず、探査車を先にイエローナイフ湾へ向かわせたのだ。

 この寄り道は大きな成果をもたらした。

 カンバーランド岩石のサンプルには、約37億年前のゲール・クレーターの過去を示す興味深い化学的手がかりが数多く含まれていた。

 以前の分析では、このサンプルが液体の水が存在したことで形成される粘土鉱物を豊富に含んでいることが判明している。また、有機分子を保存する役割を果たす硫黄や、硝酸塩が多く含まれていることもわかった。

 さらに、地球では生物活動と関連のある種類の炭素を含むメタンも確認されており、生命の発見が大いに期待されるのだ。

 ゴダード宇宙飛行センターのダニエル・グラヴィン氏は、NASAのブログでこう説明する。

ゲール・クレーターには何百万年かそれ以上の間、液体の水が存在していた証拠があります。つまりこの湖には、生命誕生へいたる化学反応が起こるのに十分なだけの時間があったということです(ダニエル・グラヴィン氏)

 なお火星の生命に関する議論に決着をつけるには、現在そこに送ることができる検査機器では限界があるとのこと。

 地球の科学者たちの次なるステップは、火星のサンプルをどうにか地球に持ち帰り、地上で詳細に分析することになるだろう。

 この研究は『PNAS』(2025年2月3日付)に掲載された。

References: NASA’s Curiosity Rover Detects Largest Organic Molecules Found on Mars | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 12件

コメントを書く

  1. 巨大生物が現れて探査機に襲い掛かる映像が
    送られてきて「通信はココで途絶えた…。」みたいな
    展開を夢見てるんだけどな。

    • +8
  2. 化石っけなものがひとつもないあたり仮に生命がいたとしても細菌レベルまでしか到達できなかったんだろうな
    宇宙は厳しい

    • +7
  3. 「デカン」デカそう
    「ウンデカン」うんとデカそう
    「ドデカン」どデカそう
    は、ともかくこういう状況証拠的な物質の積み重ねの先に、生命そのものが見つかるといいなぁ(生きてるうちに

    • +12
  4. 火星に生物が過去にいたか今もいるとしても後期重爆撃期に吹き飛ばされた地球産生物に由来する可能性もあるよね

    • +4
    1. その逆の可能性もあるし、後期重爆撃期ならば、もっと奥の惑星から
      氷を多く含んだ隕石に乗ってやってきた可能性もある
      あと恒星の形成モデルを考えると、太陽の兄弟星がもっと近くにあったはずだから
      兄弟恒星ともっと干渉していた可能性とかのロマンも考えられる

      • +5
      1. 火星の他に木星や土星の衛星でも核酸を遺伝情報の記録に使っている生物が見つかったら地球生命の起源はいよいよわからなくなるね

        • +5
        1. その場合は単純に生命の発生確率は思った以上に高いけど
          生命が大型、且つ、複雑に進化する環境はピーキーって話になるだけ

          それも将来的に、木星の大気層を悠々と飛び回る謎生物だとか
          エウロパなど、外惑星の分厚い氷の下の水の層に変てこな生命が溢れているとか
          そういうのが見つかればまた話が変わってくるだけ

          • +2
        2. アミノ酸の左右の偏りは太陽創生期の円偏光の右巻き左巻きが影響した名残りって説があり実際隕石から検出されるアミノ酸の偏りが裏付けているので、物質レベルでは宇宙起源説は有力な説ですらある
          それが生命として形を成したのはどこかというとやはりそれぞれの惑星でとなると思うけど、どうかは分からないね

          • 評価
  5. 火星って大気が有った時代は液体の水と言うか海や川や湖などの跡は写真見ても有ったであろう事は誰でも想像できるし、もしかしたら今でも地下に生命が生存していてもおかしくはない気がする。だだその生命がウィルスやバクテリアや単細胞生物では無く、もう少し大きな生物で有ればロマンはあるよね。(ただ、人間のように科学技術を習得するまで生存できたのかは謎なんだけどね)

    • +6
  6. ちょっと歩いちゃ写真撮っちゃしてるのが健気でかわいすぎる

    • +6
  7. キュリちゃんにはいつもワクワクさせられる。
    でもさ、火星に生命の痕跡があったとしても、生き残れなかった(少なくとも見える範囲では)んだから、地球から行ってテラフォームして移住しようとしてもうまく行かないんじゃないかなぁ。
    火星への好奇心は尽きないけど、移住は非現実的で、もし生態系が発見されたとしたら、それを保護こそすれ、人類の都合よく使うのはちょっとイヤだな。

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動画

動画についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。