火星で有機物を発見
 火星で黙々とミッションを遂行中のNASAの探査車「パーシビアランス(パーサヴィアランス)」が、古代の三角州で有機物を含んだ岩石を発見したそうだ。

 パーシビアランス計画の科学者ケン・ファーレイ氏は9月15日の記者会見で、「三角州で調査した岩石は、これまでで一番有機物質の濃度が高い」「有機分子は生命の構成要素で、生命が住める湖跡に有機物を含む岩石があったことは、非常に興味深いことです」と述べている。

 発見されたサンプルは、将来的に実施される火星からのサンプル回収ミッションによって、2030年代に地球に持ち帰られる予定だ。

古代の三角州で有機物を含む岩石を発見

 パーシビアランスが探査を行なっている「ジェゼロ・クレーター」には、火星の川と湖が合流してできたと考えられる、35億年前の三角州(デルタ)跡がある。

 合計12個のサンプルが採取されたのは、かつての湖底だったと思われる場所だ。

 この三角州に堆積した岩は、まだ火星に水があったころ、さまざまな粒子が沈殿して形成されたものだ。最初の調査では、地下深くのマグマや火山活動によってできた火成岩が発見されている。

 今行われている2度目の調査では、有機物が発見された。有機物は以前にも見つかっているが、今回の発見場所は、大昔に生命が存在できたかもしれない湖だ。

 そこでは、ジェゼロ・クレーターから離れた場所で形成された粒子や岩石のかけらを運ぶ砂岩や、有機化合物を含む泥岩といったものが見つかっている。
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サンプルが回収されたワイルドキャット・リッジの岩石(画面左下)。奥にスキナー・リッジ(右上)が見える / image credit:NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS

火星に生命が存在した痕跡か?

 数十億年前に蒸発しつつあった塩水湖に泥や細かい砂が沈殿して、幅1メートルほどの岩石が形成された。

 パーシビアランスが削り取ったのは、その「ワイルドキャット・リッジ」と呼ばれる場所の岩石だ。

 パーシビアランスに搭載されている有機化合物を検出する紫外線ラマン分光計「Sherloc」で分析した結果、硫酸塩鉱物と相関関係のある有機分子が含まれていることが判明した。

 この相関関係は、湖が蒸発していたとき、硫酸塩と有機物のどちらもこの地域に堆積して、そのまま保存されただろうことを示している。

 NASAによると、有機分子は炭素をはじめとするさまざまな化合物で構成されており、通常水素原子と酸素原子を含んでいる。また硫黄・リン・硫黄といったほかの元素を含むこともある。

 必ずしも生命がいなくても作られる分子であるが、それらの一部は生命を構成する欠かせない基本的な成分だ。また、こうした分子の存在は、「バイオシグネチャー(生命の存在を示す痕跡)とみなされることもある。
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「ワイルドキャット・リッジ」の岩石 / image credit:NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS

2030年代、地球に回収される予定

 NASAとESAは協力して、こうした火星のサンプルを地球に持ち帰るべく計画を進めている。

 「マーズ・サンプル・リターン・ミッション」では、まず小型ロケットを搭載したランダーをジェゼロ・クレーター付近に着陸させ、ロケットにサンプルを積み込む。

 火星から飛び立ったロケットは、さらに火星軌道で別の宇宙船に回収され、これで地球に持ち帰られる。地球に到着するのは2030年代になる予定だ。

References:NASA Breakthrough as Rover Finds Strong Signal of Organic Matter on Mars : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 08:53
  • ID:SC6.m2gh0 #

某宇宙生物「危なかった!地球侵略基地を移動しておいて助かったぜ」

2

2. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 09:23
  • ID:SDs65AWY0 #

何を発見してくれーたー(;^_^A

3

3. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 10:28
  • ID:sfn3Zogd0 #

宇宙での有機物はそれほど珍しいものでもないから
それだけではさほど大きな発見ではないような…

4

4. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 10:35
  • ID:wEytEO1Z0 #

マット・デイモンが火星に残したお土産だ!

5

5. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 10:40
  • ID:fdpWz.Bu0 #

>必ずしも生命がいなくても作られる分子であるが、それらの一部は生命を構成する欠かせない基本的な成分だ。また、こうした分子の存在は、「バイオシグネチャー(生命の存在を示す痕跡)とみなされることもある。

これって無茶苦茶な理論だと思うわ

生命の痕跡というのは化石のことだよ

6

6. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 12:30
  • ID:pwIwD5Ud0 #

※5
地球の始原生物の痕跡は「有機物の塊(グラファイト)」であって細胞構造とかは見つかってないと思うんだけど、これを「化石」と言っているのかな?
それなら記事が言ってることと同じことだと思うけど。

7

7. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 12:37
  • ID:WKGJu8kw0 #

有機物があれば、生物が発生するorしてた可能性が高まる
火星に生物が見つかれば地球の生物は孤独な存在じゃなかったと判明する
なにか見つかってほしいね

8

8. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 13:58
  • ID:t5weeUYd0 #

※5
化石だけが「バイオシグネチャー」ではないこと示す話として、火星のメタンがある。
見つかった際これが生命活動によるものではないかと話題になった。

化石や羽毛のように明確に形となってるのは「形態学的バイオシグネチャー」
今回のような化学物質でもって指標とされるのは「化学的バイオシグネチャー」と言われているそうな

9

9. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 14:08
  • ID:TH366J3X0 #

有機物って具体的に何だろう
メタンとかだったら生物いなくてもありそうだけど

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10. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 14:42
  • ID:fdpWz.Bu0 #

※6
例えば地球上のどこの土の中にもカルシウムが含まれている

記事が言ってることは、骨にはカルシウムがあるので、土があれば生物の痕跡だと言っているのと同こと

無茶苦茶でしょ

11

11. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 16:09
  • ID:rzC5EZZc0 #

探査機のドリルビットの写真と胎児の超音波画像を並べて

「might be life/might not be life」

って言う人が居てちょっと考えさせられた。

12

12. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 18:07
  • ID:pwIwD5Ud0 #

※10
記事中の文章、
>こうした分子の存在は、バイオシグネチャー(生命の存在を示す痕跡)とみなされる『こともある』。

だれも「すべての有機物は生命の痕跡だ」なんて言ってないんだけど、なんで「土があれば生物の痕跡」なんて話になるのかな?

ところで化石の話はどうなったの?

13

13. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 22:07
  • ID:48uA6xTg0 #

火星って砂と岩しかねえんだな
表面はもう何も無いと見ていいだろ
なんとか地下を観測してくれないかな

14

14. 匿名処理班

  • 2022年09月21日 09:04
  • ID:UX6iMI9h0 #

どれだけ滅菌しても、探査船に付着しているでしょうね。
人類こそが生命の媒介者でしょう。

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