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誕生から12億年後の初期宇宙で史上最大のブラックホールジェットを発見

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クエーサー「J1601+3102」のアーティストによるイメージ図
クエーサー「J1601+3102」のイメージ図 Image credit: NOIRLab/NSF/AURA/M. Garlick
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 ビッグバンから12億年後の宇宙で、巨大なブラックホールジェットが発見された。その長さは天の川銀河(Milky Way)の2倍に及び、初期宇宙で発見されたものとしては過去最大の規模だ。

 「J1601+3102」と呼ばれるクエーサー(超高輝度活動銀河核)は、まるで双頭の竜が両方向に火を吹くように、強力な電波ジェットを噴き出している。その長さは実に20万光年を超えるという。

 初期宇宙で、こうした巨大なブラックホールジェット(電波ジェット)はどのように形成されたのか? そして、ブラックホールジェットは宇宙のどの時期に誕生し始めたのか? 今回の発見は、これらの謎を解明する重要な手がかりとなる。

ブラックホールジェットとは何か?

 ほとんどの銀河の中心には、怪物のような巨大なブラックホールが鎮座している。たとえば、私たちが暮らす天の川銀河の中央には、「いて座A*」という超大質量ブラックホールが存在し、数年前、この怪物ブラックホールに異変が起きたことが観測されている。

 こうしたブラックホールには、その巨大な重力であらゆるものを飲み込むというイメージがある。だが、じつはそれだけではく、強力なジェットを放出してもいる。

 ブラックホールの重力によって引き寄せられたガスや塵は、その際に摩擦で激しく加熱される。

 それによって生じた膨大なエネルギーが、光速近いスピードで放出されたものが「ブラックホールジェット」である。「電波ジェット」や「宇宙ジェット」と呼ばれることもある。

 そのエネルギーは凄まじく、中心部の狭い領域の電磁波が、銀河全体を上回るようなこともある。

 こうした部分を「活動銀河核」という。また、この部分はその明るさゆえに、恒星のような1つの天体であるかのように見えることがある。これが「クエーサー」だ。

 あまりにも激しい現象だが、広大な宇宙ではそれほど珍しくない。すでに述べたように、ほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在するからだ。

 だが、それは私たちの近くの宇宙においての話だ。地球からずっと遠く離れた遠方の銀河、すなわち初期宇宙ではどうなのか? 少なくともこれまでの観測でこうしたジェットは見当たらなかった。

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複数の望遠鏡の観測データを組み合わせて作成されたクエーサー「J1601+3102」Image credit: LOFAR/DECaLS/DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE/CTIO/NOIRLab/NSF/AURAImage processing: M. Zamani (NSF NOIRLab)

12億歳の初期宇宙で発見されたクエーサー

 ところが今回報告されたクエーサー「J1601+3102」は、ビッグバンからほんの12億年後の初期宇宙で発見された。その宇宙の年齢は、現在の9%ほどでしかない。

 ジェットの長さは21万5000光年、すなわち天の川銀河の2倍もある巨大なもので、初期宇宙のものとしては観測史上最大の宇宙ジェットである。

 その一方で、質量という点では比較的小さいことに研究チームは注目している。

 クエーサーの中には、太陽の数十億倍の質量を持つものもあるが、J1601+3102の場合、4億5000万倍程度でしかないのだ。

 もしかしたら、この小さな質量に強力なジェットという特徴は、初期宇宙ならではのものかもしれない。

 米国、NSF国立光赤外線天文学研究所のポスドク研究員、アニーク・グラウデマンズ氏は、ニュースリリースで次のように推測している。

初期宇宙において、強力なジェットを作り出すために、必ずしも極端なブラックホールの質量や降着速度(物質が飲み込まれる速度)は必要ないのかもしれません(グラウデマンズ氏)

 また面白いことに、2方向に放出されるジェットは、長さも明るさも大きく異なっている。これは何らかの極端な環境が影響している可能性があるとのことだ。

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左上:チリのセロ・トロロ汎米天文台の「DECam」の近赤外線観測データ、左下:ヨーロッパのLOFAR電波望遠鏡の電波観測データ。右:その両方のデータを合成して作られたクエーサー「J1601+3102」 image credit:LOFAR/DECaLS/DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/F. Sweijen (Durham University)

各地の望遠鏡の連携でさらなる発見を期待

 遠方の宇宙とはいえ、これほど派手な存在がこれまで発見されなかったのはなぜだろう? その理由は、宇宙で遍く観測される「宇宙マイクロ波背景放射」のせいだと考えられている。

 これはビッグバンの名残である微弱な電波なのだが、これの影響で遠方の宇宙からやってくる電波が弱められてしまうのだ。だが1601+3102のジェットはきわめて強力で、ここ地球でも観測することができた。

 またこの発見は、望遠鏡を組み合わせると大きな力を発揮するという証明でもある。

 1601+3102の発見は、ヨーロッパ各地に設置された望遠鏡アレイ「LOFAR電波望遠鏡」、ジェミニ南望遠鏡の「ジェミニ近赤外線分光器」、マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡が、それぞれ持ち味を生かした結果だ。

 グラウデマンズ氏は、「観測波長の異なる望遠鏡を組み合わせることで、どのような発見が可能になるかを示したものです」と語る。

 J1601+3102のような初期宇宙のクエーサーには、どのような性質があるのか、今の時点ではたくさんの疑問が渦巻いている。

 どのような状況なら、比較的小さな質量で強力なジェットを放出するようになるのか? そして宇宙で最初の宇宙ジェットはいつ頃誕生したのか? J1601+3102はこうした謎を解明するヒントをくれることだろう。

 この研究は『The Astrophysical Journal Letters』(2025年2月6日付)に掲載された。

References: Gemini North Teams Up With LOFAR to Reveal Largest Radio Jet Ever Seen in the Early Universe | NOIRLab

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この記事へのコメント 3件

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  1. 初期宇宙は今の理論が通用するとこ・しないとこがあって面白いね。

    • +2
  2. 人間が力を合わせれば大きくて高性能な望遠鏡を組み立てられるし、その望遠鏡がいくつも力を合わせれば宇宙の深淵に挑むこともできるのだ

    • +1
  3. クエーサー凄いなー
    このクエーサーは今はもう消滅してるんだろうか

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