この画像を大きなサイズで見るザトウクジラのオスは、繁殖期に「歌」を歌うことで知られている。さらに面白いことに、歌には流行があり、その年のヒットソングが東のクジラから西のクジラへと広がっていくことが、オーストラリア、クイーンズランド大学の研究で明らかになっている。
そして最新の研究によると、クジラの歌には、人間の言語と驚くほど似たパターンが隠されているという。
人間の言語には「ジップの法則」と呼ばれる特有のパターンがあるのだが、クジラの歌もその法則が使用されていたのだ。ではジップの法則とは何かを含め、詳しく見ていこう。
ジップの法則とは?
人間の言語には、どの国の言葉であろうとも、普遍的なパターンがある。この法則を、発見者である言語学者ジョージ・キングズリー・ジップにちなみ、「ジップの法則」という。
これは、最も頻繁に使われる単語は、次に頻繁に使われる単語の2倍の頻度で現れ、3番目に多い単語の3倍の頻度で現れるという法則で、言語の効率的な伝達を支える重要な仕組みとなっている。
簡単に言うと、よく使う言葉ほど短く、あまり使わない言葉は長くなるということだ。
例えば、日本語の場合、「の」や「に」などの短い単語は頻繁に使われるが、「情報技術革命」、「大規模言語モデル」のような長い単語は短い単語よりあまり使われない。この法則は、人間の話し言葉だけでなく、書き言葉や手話にも当てはまる。
この法則は世界中のあらゆる言語で確認されているがこれまで、動物のコミュニケーションに適用できる例は見つかっていなかった。
この画像を大きなサイズで見る赤ちゃんの言葉の学習法を使ってクジラの歌を分析
今回、イスラエル、ヘブライ大学をはじめとする研究チームは、この人間の言語の普遍的パターンがクジラの歌にも当てはまるのかを確かめてみることにした。
だが、そもそも意味のわからないクジラの歌に含まれる単語の出現頻度を、どうやれば分析できるだろうか? 研究チームがヒントにしたのは、人間の赤ちゃんが言葉を学ぶ方法だ。
人間の赤ちゃんが、言葉を話せるようになるには単語を覚える必要がある。そのためには単語の始まりと終わりの音を学び、各単語を区別できるようにならねばならない。
だが話し言葉は連続的なもので、単語と単語の間にはっきりとした区切りがあるわけではない。ならば、赤ちゃんはどうやって単語と単語を聞き分けているのだろうか?
過去30年の研究で明らかになったことは、赤ちゃんはその文脈で意外に思える音に耳を澄ましているということだ。
じつは1つの単語を構成する音は比較的予測しやすい。ところが単語と単語間の音は予測しにくい。赤ちゃんはこの予測しにくい音を手がかりに、単語の区切りを聞き分けているらしいのだ。
この画像を大きなサイズで見るクジラの歌にジップの法則を発見!
今回研究チームは この赤ちゃんが音を聞き分ける方法を応用して、8年に渡って録音されたニューカレドニアに生息するザトウクジラの歌を分析した。
その結果、クジラの歌もジップの法則に従っていることがわかったのだ。
人間の言語と同じく、クジラの歌でも、要素(音や単語など)から要素への移り変わりで予測しやすいものは、繰り返し現れる傾向にあった。しかもその頻度はジップの法則(ジップ分布)が示す通りのものだったのだ。
クジラの歌の録音(以下の再生ボタン ▶ クリックで音声が流れます)
この発見から、とある興味深い疑問が浮かび上がってくる。
今回、人間以外の動物でジップの法則が確認されたのは初めてのことだ。
ではなぜクジラは人間と同じ法則を使用していたのか? 進化の視点から言って、人間とクジラとはかなり離れた関係にあるはずだ。
この画像を大きなサイズで見る人間とクジラの共通点は文化的な学習
研究チームの仮説によれば、この奇妙な共通点は、人間とクジラが同じ方法で言語を学んでいることが関係しているという。その方法とは「文化」だ。
文化を育む人間社会では、知識や技術などが次の世代に受け継がれ、だんだんと改善されていく。だから、学習しにくいやり方はいずれ廃れ、学習しやすい方法が生き残る。
実際に、私たち人間は、統計学的にわかりやすく、かつジップの法則に従ったものだと学習しやすいことが証明されているという。それはクジラにとってもそうなのかもしれない。
人間とクジラは文化を継承するうちに、この簡単な学習法を育んできた。その結果、両者の言葉と歌には共通点ができたと考えられるのだ。
この画像を大きなサイズで見るいつかクジラと会話できる?
クジラの歌が人間の言語と似た構造を持っていることがわかったが、それは「クジラと会話できる」という意味ではない。
今回の研究では、クジラの歌の「意味」についてはまったく分析していない。そもそも、クジラの歌が意味を持つものなのか、それとも楽器の演奏のように単なるリズムやメロディなのかも不明だ。
音楽を例にすると、同じメロディが繰り返され、多くの人に広まることはあるが、それ自体に明確な「意味」があるわけではない。クジラの歌も同じようなものかもしれない。
次のターゲットは鳥の歌
研究チームは、人間やクジラと同じように、複雑なコミュニケーションを通じて文化を受け継ぐ動物ならば、ジップの法則があるだろうと予測している。
耳で聞いた音を真似て学習する「音声学習」は、さまざまな動物が行っている。
とりわけ注目すべきなのが「鳥の歌」だ。さまざまな鳥がその歌を文化的に学習しているからだ。しかも幸いなことに、クジラと違い、そうした鳥が歌を学ぶ方法についてはかなり研究が進んでいる。
クジラの歌と同じように、鳥のさえずりを分析することで、さらに興味深い発見があるかもしれない。
その一方、複雑なコミュニケーションで学習しない動物では、ジップの法則は見当たらないだろうとも予測される。
こうしたことを調べていけば、人間の言語とクジラの歌とで見られる奇妙な共通点が本当に文化によるものなのか解明につながるだろうとのことだ。
この研究は『Science』(2025年2月6日付)に掲載された。
References: Whalesong patterns follow a universal law of human language, new research finds / Whale Songs Follow the Same Mathematical Rule as Human Language














故郷への長い道
くじリンガルとか、鳥のさえずリンガルとかちょっとワクワク
鈴木 俊貴著「僕には鳥の言葉がわかる」って本のおすすめ
実際に研究の末鳥の言語が理解できるようになった人の話だから面白いよ
クジラはともかく鳥とは会話できるようになるかもしれないね
データが膨大だし、どういうシチュエーションでどういう歌を歌っているか確認するのもずっと簡単だから
ヨウムには人語を理解してある程度会話ができる個体もいるよう
生成AIでこの辺の動物とは会話ができるようになりそう
推しとかあるんかね
いずれデイビッド・ブリンの知性化シリーズのようにクジラやイルカを知的種族にする未来が来るかも知れないが彼等はそれを受け入れるか拒絶するか。知性化シリーズではクジラが俳句を詠んだり知性化されたチンパンジーが博士号とって人間を指導してたりするので、そんな世界を見てみたくはある。
なんともオーストラリアらしい話だ。
>じつは1つの単語を構成する音は比較的予測しやすい。ところが単語と単語間の音は予測しにくい。赤ちゃんはこの予測しにくい音を手がかりに、単語の区切りを聞き分けているらしいのだ
クジラの話に入る前に脱落した
予測しやすいってどういうことだろう
個別の単語に含まれる音は話の内容に関わらず決まっている。対して、ある単語の次に何の単語が続くかは話の内容によって変わる。なので、話の音を聞いていて「決まり切った音」でない音が聞こえたらそれが次の単語の最初の音である蓋然性が高い、ということだと思われる。
例えば、「アイ メット ヒム(I met him.)」と「アイ メット ハー(I met her.)」という文を考えて、「メット」という一単語を発生している間は文の内容に関わらずどちらも決まりきった音が続いている。そして次に「ヒ」または「ハ」のどちらの音が発されるのかは文の内容によって変わっている。つまりより予測しにくい音が聞こえて、そしてそれが次の単語の最初の音になっている。
なるほどわかりやすい
でもそれを言うなら単語と単語間の音じゃなくて、(2番目以降の)単語の始まりの音だよね
>>「ジップの法則」~これは、最も頻繁に使われる単語は、次に頻繁に使われる単語の2倍の頻度で現れ、3番目に多い単語の3倍の頻度で現れるという法則で、言語の効率的な伝達を支える重要な仕組みとなっている。
>>簡単に言うと、よく使う言葉ほど短く、あまり使わない言葉は長くなるということ
ジップの法則は、あくまで単語の被使用頻度についての法則で、被使用頻度の高い単語は短いというのはまた別の話(こちらはこちらでザトウクジラでも確認された)のようだが……
>>複雑なコミュニケーションで学習しない動物では、ジップの法則は見当たらないだろうとも予測される
被使用頻度の高い「単語」が短いことについては、早く伝える・被使用頻度高い「単語」に他の「単語」と被るパターンが含まれる可能性を下げて誤認を生じにくくするといったメリットから、複雑なコミュニケーションで学習しない動物でもあり得るかも知れないと思う。
>ジップの法則は、あくまで単語の被使用頻度についての法則で、被使用頻度の高い単語は短いというのはまた別の話(こちらはこちらでザトウクジラでも確認された)のようだが……
そうだね
ジップの法則は出現頻度の話ぽい
けど、「単語の出現頻度」と「単語の長さ」と「単語と単語間の音の予測しにくさ」にどうつながりがあるのかはよくわからなかった
(そもそも「単語と単語間の音」すらわからん)
何を歌ってるんだろうな
ヒットソングの正体が詩的なラブソングじゃなくて
歌専用の圧縮言語で作られた最新ニュースの詰め合わせだったりしたら面白いなとか思ったり
それで上手く歌えたらモテるから実質ラブソングになってるとか
言語として成立してるってことは普段からいっぱい喋ってるってことだよな
鯨の日常会話ってどんな感じなんだろう
ヒレをパタパタさせながら小声で喋りまくってたりするのかな
人間が会話するときは鳴き声装置が必要だね
水族館にあったりするのかな?
この音を出す機械が!