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米アラスカのそり犬たちが存亡の危機に。政府からの資金援助が大幅削減

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(著)・ (著)

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 アメリカ・アラスカ州のデナリ国立公園には、人間のレンジャーといっしょに働く、ちょっと「特別な」職員たちがいる。冬の雪原を駆け抜ける「そり犬」たちだ。

 彼らはレンジャーと共に広大な原野を巡回し、調査の支援や資材の運搬など、機械には任せられない重要な仕事を担っている。

 ところが2026年8月、100年を超える歴史を持つデナリの犬ぞり隊の行く末に、突然暗雲が垂れ込めた。

 トランプ政権下の米内務省が、犬ぞり隊の運営を支えるスタッフを雇用するための協定を承認せず、政府からの資金援助が大幅に削減されることになったのだ。 

100年以上続くデナリの犬ぞり隊

 アラスカ州中央部に広がるデナリ国立公園には、アメリカの国立公園で唯一の、現役の犬ぞりの犬舎がある。

 その歴史は、デナリ国立公園の前身であるマッキンリー山国立公園が設立された1917年までさかのぼる。

 当時この地域では、ドールシープ(野生の羊)やカリブー、ヘラジカなどを狙った狩猟が行われており、乱獲により野生動物の減少を招いていた。

 1921年に、ハリー・カーステンズが公園の初代管理責任者となった。彼が最初に取り組んだ重要な任務のひとつが、この乱獲を取り締まることだったのだ。

 カーステンズは犬ぞりを操る「マッシャー」として、豊富な経験を持つ人物だった。1922年、カーステンズは公園の境界を巡回するために、最初の犬7頭を購入した。

 以来デナリ国立公園では100年以上にわたり、「そり犬」のチームが維持されてきたのである。

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今も現役で働いている犬ぞり隊

 現在では密猟者を取り締まるために犬ぞりが走ることはなくなったものの、そり犬としての仕事がなくなったわけではない。

 デナリ国立公園の犬ぞり隊は、夏になると業務の一環として、大勢の観光客の前で犬ぞりの実演を披露している。

 そのため、「歴史ある犬ぞり文化を再現するプログラム」のためだけに存在する、観光客向けの犬ぞり隊だと思っている人も多いようだ。

 だが彼らは、今も冬の公園内をレンジャーとともに巡回し、調査を行う研究者や機材の運搬、歴史的な山小屋の点検、建築・補修資材の輸送などを担っている。

 2001年から2012年まで、デナリ国立公園の管理責任者を務めたポール・アンダーソン氏は、この点を次のように強調している。

(デナリの犬ぞり隊は)作り物でも、昔を再現しているわけでもありません。本物なんです

 彼自身も現役だったころ、ワンダー湖から公園本部までの約145kmを犬ぞりで移動し、犬たちに装備の大部分を運んでもらっていたのだそうだ。

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スノーモービルがある時代になぜ犬ぞりなのか?

 昔はともかく、現代ならスノーモービルを使えばいいのでは?と思うかもしれない。だが、デナリで犬ぞりが使われ続けているのには理由がある。

 デナリ国立公園内には、8,687平方kmもの広大な連邦指定の自然保護地区(Denali Wilderness)が存在する。

 自然環境を人間の影響からできる限り守るため、こうした区域では自動車をはじめとする動力を使った移動手段や機器の使用が、原則として禁止されている。

 そのため、雪に覆われた広大な原野を移動する際、動力を必要としない犬ぞりが、今も活躍しているのだ。

Exploring Denali National Park With Real American Sled Dogs

 また、気温がマイナス40度ほどまで下がると、スノーモービルのエンジンがかからなくなることもある。

 万一故障した場合、身動きが取れずに立ち往生する可能性も否定できない。だがそんな環境でも、そり犬たちは食事と休息をとれば、また走り出すことができる。

 たとえ1頭が体調を崩したり負傷したりしても、その犬をそりに乗せ、残りの犬たちで移動を続けられる。

 さらに、吹雪によるホワイトアウトの中でも、そり犬たちは正しい道を見つけたり、雪の下に隠れた危険な氷を察知して避けたりできるともいわれている。

 道路や機械に頼っての移動が難しい環境だからこそ、100年前から続く犬ぞりが、今も実際の仕事に使われているのである。

そり犬たちは観光客にも大人気

 現在、デナリの犬ぞり犬舎では、28頭以上のアラスカン・ハスキーが飼育されており、来園者にも公開されている。

 そして毎年夏になると、レンジャーと犬たちによる約30分間の犬ぞり実演プログラムが行われている。

 来園者は犬舎で犬たちと触れ合い、レンジャーから犬ぞりの歴史やその役割について説明を受けた後、犬たちがチームを組んで走る姿を見ることができる。

 ピーク時には1日に3回開催され、専用の無料シャトルバスも運行される人気プログラムで、混雑する日には1回の実演に最大400人が集まることもあるという。

Up close with sled dogs at Denali National Park—pure joy on four paws 🐕❄️

 夏は犬たちにとって、厳しい冬の仕事を終え、体を休める季節でもある。その一方で、来園者と触れ合う「公園の顔」としての役割も担っているのである。

 また、次世代のそり犬候補として育てられている子犬たちも人気者だ。2026年は5頭の子犬が誕生し、次世代の「犬レンジャー」候補として、大切に育てられている。

 子犬たちの様子は公式の「パピーカム」でライブ配信されており、世界中から多くの人が見守っている。

全米の国立公園にかかわる協定が不承認に

 そんなデナリの犬ぞり隊をめぐり、2026年8月、青天の霹靂とも言うべきニュースが飛び込んできた。

 アメリカ内務省は、国立公園局(NPS)が外部団体と結ぶ予定だった130件以上、総額で2,500万ドル(約39億5,000万円)の協定を承認しなかったのだ。

 不承認となった協定には、カリフォルニア州の山火事対策、アイオワ州の先住民の墳丘の保全、絶滅危惧種の保護など、全米各地の国立公園や保護地域にかかわる事業が含まれていた。

 これにより、デナリ国立公園でも、既に予定されていた事業に資金を充てることができなくなってしまったのである。

 内務省は一部の協定を不承認にしたことを認め、対象となった団体が「アメリカ国民の利益や現政権の優先事項に反する活動を行っている」と説明している。

 ただし、個々の協定について具体的に何が問題と判断されたのについては、今のところ明らかにしていない。

犬たちの世話をする3人の雇用も認められず

 その不承認となった中に含まれていたのが、デナリの犬ぞり犬舎を支える3人のスタッフを雇用するための協定だった。

 この3人は、単に犬に餌を与えるだけの「お世話係」ではない。子犬を育て、若い犬を訓練して、次の世代へつないでいく、重要な仕事をしているスタッフたちだ。

 犬ぞり隊の運営には、犬たちの毎日の世話や訓練だけでなく、冬のパトロールに向けた準備や、夏に行われる犬ぞりの実演など来園者への対応も含まれる。

 さらに、犬たちは通常8~9歳で現役を引退するため、その後の「第二の犬生」を過ごす新しい家庭を探すことも、スタッフの大切な仕事である。

 3人のスタッフがいなくなった場合、犬ぞり隊そのものの維持と存続に、深刻な影響が出る可能性が懸念されているのである。

 アラスカ北部のブルックス山脈で、20年以上にわたり犬ぞりチームを扱ってきたジョン・ゲーデケ氏は、そり犬の世話には専門的な経験が必要だと指摘する。

経験のない人を連れてきて、すぐにこの犬たちの世話を任せるというわけにはいきません。奥地では、ときに自分の命を預けるような状況で、移動手段としてこの犬たちを頼ることになるからです

 また、資金が不足したからといって犬舎の運営を一時休止して、資金が戻ったら再開すればいいというものでもない。

 その間に現役の犬たちは年を取っていく。子犬の訓練は続けなければならず、犬を扱うスタッフの専門的な知識や経験も、維持・蓄積していく必要がある。

3人を失えば、このプログラムそのものが完全に立ち行かなくなる可能性は十分にあります。

スイッチを切ったり入れたりするように、簡単に止めて再開できるものではありません。一度崩れてしまえば、もう一度軌道に乗せるのは非常に難しいのです

Inside Denali’s Sled Dog Program – Wildlife & Surprises We Didn’t Expect

犬ぞりを廃止を訴える愛護団体も

 犬ぞり犬舎のスタッフを雇用する協定が承認されなかったことを受け、強硬派の動物愛護団体として知られるPETAが動いた。

 9月23日、PETAはデナリ国立公園のブルック・メレル管理責任者に書簡を送り、次のような申し出を行ったのだ。

100年以上続く犬ぞりを廃止するのであれば、動力車両を使用できる場所では電動スノーモービルを、使用できない場所ではクロスカントリースキーと人力で引く荷物用のそりを、無償で提供する

 PETAは、厳しい寒さの中で人間や重い荷物を運ばせることは犬の健康を害するおそれがあるとして、100年以上の伝統を持つ犬ぞりを、現代の移動手段へ置き換えるよう求めている。

 もっとも今のところ、デナリ国立公園側が、PETAの提案を受け入れたという事実はないようだ。

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 このニュースを知った人たちからは、さまざまな意見が寄せられている。

  • この犬たちは、冬の公園運営には欠かせない存在なんだよ。壊れやすい生態系を守りながら冬に移動するための、唯一の交通手段なんだ
  • 本当に胸が痛む。犬たちにとっても、犬たちを愛しているレンジャーたちにとっても、大きな損失だ
  • この政権の目的って、この国から「いいもの」を何もかもなくすことなんじゃないかと思えてくる。全部ぶっ壊さないと気が済まないんだろう
    • 公園から楽しいものが全部なくなったら、観光だって一気に衰退するだろうね。「景色はきれいだけど、ほとんどバスに乗っていて、ときどき降りて歩くだけ。他の観光地の方がいろいろ楽しめた。8/10」って感じ
  • 正確には、犬舎の年間予算そのものが削減されたわけではないよ。内務省が承認しなかったのは、犬舎の運営を支えるスタッフの人件費を賄う青少年雇用の協定だ。まあ結果的な影響は同じだけどね
    • なるほど。つまり、トランプが任命した内務省のトップが審査制度を導入して、政府の事業としてちゃんと機能していそうなものを、事実上潰しているってことか
      • その方がもっとひどいじゃないか
  • この政権には何もかも腹が立つ。デナリに行ったとき、犬舎を見学したことは、うちの子供たちにとって一番楽しかった思い出のひとつだった
  • たぶん跡地をデータセンターにでもするんだろ
  • お互いを必要としているレンジャーと犬たちにとって、本当に悲しいことだよね

 NPSは犬たちの存在を、「公園の活動に不可欠」としているが、トランプ政権は予算の削減を続けている。

 だがまだ、今回の協定不承認によって、実際にどこまで犬舎の活動が縮小されるのかはまだわかっていない。

 アンダーソン氏もゲーデケ氏と同様、犬舎プログラムへの支援削減は、この事業の優先順位が下げられたことを示しており、最終的には廃止につながるのではないかと懸念している。

References: Trump moves to end care for Denali's working sled dogs

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