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金星に衛星がない理由。遅すぎる自転が衛星を飲み込んでしまったかもしれない

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(著)

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金星。Image credit:NASA/JPL-Caltech
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 金星は、地球と大きさや構造がよく似ているため、「地球の双子」と呼ばれている。だが地球と違い、金星には地球の月のような衛星が存在しない。

 その理由は長い間謎のままだったが、米カリフォルニア大学リバーサイド校とフランスのボルドー天体物理学研究所の研究チームが新しい説を発表した。

 自転が極端に遅い金星は、かつて衛星があったとしても、自分の重力でそれを引き寄せ、砕いて飲み込んでしまった可能性が高いという。

 この研究成果は『The Astrophysical Journal』誌(2026年9月14日付)に掲載された。

参考文献:

なぜ金星には衛星が存在しないのか

 金星は地球と大きさや質量、内部構造がよく似ているため、地球の双子と呼ばれることもある。

 しかし、地球には立派な月という衛星が存在するのに対し、金星には衛星が一つもない。

 なぜ金星には衛星がないのか。科学者たちは長い間この謎に挑んできた。

 これまでの研究では、「かつて金星に衛星は存在したが巨大な天体が衝突して粉々に吹き飛んだ」という説や、「そもそも衛星が形成されるような衝突が一度も起きなかった」という説が唱えられていた。

 2026年9月、アメリカ、カリフォルニア大学リバーサイド校とフランス、ボルドー天体物理学研究所の研究チームは、これまでのどちらの説とも異なる説を発表した。

 金星に衛星がないのは、仮にかつて衛星があったとしても、金星自身が飲み込んでしまったからだという。

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金星の南半球の活発な火山活動の様子を描いたイメージ図 Image credit:NASA/JPL-Caltech/Peter Rubin

極端に遅い自転が衛星を引き寄せる

 衛星を飲み込んだと考える理由は、金星の自転の遅さにある。

 地球の月は、毎年約4cmずつ地球から遠ざかっていることが、NASAのアポロ11号が月に設置した鏡の測定によってわかっている。

 地球は24時間で1回という比較的速いスピードで自転しており、その回転のエネルギーが月に伝わることで、月を外側へと押し出している。

 金星の状況は地球とは全く逆だ。

 金星の自転は極端に遅く、1回自転するのに地球の時間で243日もかかってしまう。

 自転がこれほど遅いと、月を遠ざけるエネルギーが生まれない。

 その結果、もし衛星があれば、金星の重力に引かれ、公転している間に徐々に距離を縮めていく。

 そして金星に近づきすぎた衛星は、強すぎる重力に耐えきれずに砕け、破片となって金星に降り注ぐというのだ。

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金星。Image credit:NASA/JPL-Caltech

シミュレーションが示した金星の衛星の最期

 この理論を検証するため、研究を主導したカリフォルニア大学リバーサイド校の天体物理学者、スティーブン・ケイン氏は、惑星と衛星の重力の相互作用を計算するコンピューターモデルを作成した。

 金星の自転の速さを変えながら、ごく小さなものから地球の月の10倍の重さのものまで、さまざまな仮想の衛星を置いてシミュレーションを行った。

 その結果、ほとんどの条件で衛星は金星の重力に引き寄せられ、砕け散って落下するという結末を迎えた。

 衛星が重ければ重いほど、金星に落下するまでの時間は短くなった。

 誕生したばかりの金星がどれだけ速く回っていたかで衛星の運命は決まる。

 金星の1日(1回の自転)が約12時間より短ければ、衛星は数十億年にわたって生き延びられるが、それより長ければ、衛星は数千万年から十数億年のうちに砕け散り、金星に落下してしまう。

 今の金星の1日は、地球の243日に相当する。誕生当初から自転は遅かったと考えられているため、衛星に生き延びる道は残されていなかったのだ。 

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金星が生まれた直後の自転が遅いほど、衛星は砕け散る運命をたどる。青は衛星が生き延びる条件、赤は衛星が失われる条件を示す。 image credit: Stephen Kane/UCR

仮に衛星を飲み込んだなら、金星の歴史を変えた可能性

 ただし今回の研究は、金星にかつて衛星があったことを証明したわけではない。衛星が本当にあったのかどうかは、今も謎のままだ。

 さらに衛星の破片が金星に落下した物理的な証拠を、現在の地表から見つけるのは非常に難しい。

 金星は約10億年前の大規模な火山活動で表面が塗り替えられたと推定されており、それ以前の地質学的な歴史が消え去っているからだ。

 しかし、地球の深部に太古の巨大衝突の痕跡が残っているように、金星の地中深くを調べれば、月を吸収した手がかりが見つかるかもしれない。

 もし本当に衛星が落ちていたとすれば、それは金星の環境を激変させるほどの莫大なエネルギーを生み出したはずだ。

 金星にかつて海があり、生命が生きられる環境があったとしても、月の落下が自転や気候を狂わせ、惑星の進化の道筋を大きく変えてしまった可能性がある。

 今回の研究結果は、宇宙の他の恒星系で生命の住める惑星を探す科学者たちにも重要な視点を与えている。

 惑星が衛星を形成できたとしても、自転が十分に速くなければ衛星を維持することはできない。

 ゆっくりと自転する惑星は自らの衛星を引きずり下ろし、破壊してしまうのだ。

References: 10.3847/1538-4357/ae9d6c

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