この画像を大きなサイズで見る約8億年前、火星と木星の間にある小惑星帯で、大きな小惑星が、別の小惑星と激しくぶつかって砕け散った。
米国のサウスウエスト研究所の研究チームが計算したところ、衝突で飛び散った破片は次々とはじき出され、月と地球と火星に1億年以上も降り注いだ。
地球に落ちた大きな破片の数は月の20倍にのぼり、当時の地球を襲った寒冷化と、海の生き物の種類が増えはじめた変化に影響を及ぼした可能性があるという。
この研究成果は『The Planetary Science Journal』誌(2026年7月15日付)に掲載された。
参考文献:
- SwRI-led research connects asteroid collision to impact showers 800 million years ago | Southwest Research Institute
月に刻まれた8億年前の集中的な衝突の爪痕
月の表面には、大小さまざまなクレーターが刻まれている。
地球と違って月には風も雨もなく、大地が動いて作り替えられることもないため、一度できた地形はほとんど消えずに残り続ける。
科学者たちは、月のクレーターができた年代を調べれば、すぐ隣を回る地球が過去に何を受けてきたかを推測できると考えてきた。
2020年、大阪大学の寺田健太郎教授らは、日本の月周回衛星「かぐや」が撮影した画像をもとに、直径20km以上のクレーター59個の年代を推定したところ、約8億年前に集中していたことが判明した。
その代表格となるのが、直径93kmのコペルニクス・クレーターだ。
アポロ12号が持ち帰った岩石を調べたところ、クレーターができた年代は約8億年前であることが明らかとなった。
アポロ計画が採取した月の砂に含まれる小さなガラスの粒も、同じ時期に年代が集中していた。
ガラスの粒は、衝突の熱で岩石が一瞬で溶け、急に冷えて固まったもので、できた年代を測ることができる。
この時期、月には大きな小惑星が次々と落ちていたのだ。
残された謎は、それほど大量の小惑星がどこから来たのかだ。
この画像を大きなサイズで見る小惑星帯で砕け散り、木星の重力ではじき出された破片
テキサス州のサウスウエスト研究所のウィリアム・ボトキ博士らの研究チームが、月に落ちた小惑星の出どころを調べていくと、火星の公転軌道と木星の公転軌道との間に広がる小惑星帯にたどり着いた。
8億年前、小惑星帯を回っていた直径100kmを超える小惑星が、別の小惑星と激しくぶつかって砕け散ったのだ。
砕け散った巨大小惑星は、太陽系ができたころの物質をそのまま残す、炭素を多く含んだ岩でできていた。
砕けた場所は、木星の重力によって小惑星が小惑星帯からはじき出される領域のすぐ隣だった。
小惑星が太陽を3周するあいだに木星が1周する位置関係になると、小惑星は木星から同じ向きの引力を繰り返し受ける。
同じ方向に引かれ続けた小惑星は、太陽を回る軌道が細長く引き伸ばされ、やがて小惑星帯を離れて、内側を回る地球や火星の軌道を横切るようになる。
研究チームによると、砕けた破片のおよそ半分が、破壊の直後にこの領域へ入り込み、太陽に近い側へ次々と送り出され、月と地球と火星への衝突が一気に増えたという。
この画像を大きなサイズで見る小惑星の破片は1億年以上かけて降り注ぎ続けた
衝突による破片のシャワーはすぐには終わらなかった。
小惑星は太陽の光を浴びて温まり、蓄えた熱を赤外線として宇宙へ逃がしている。
熱の逃げ方が場所によって偏るため、ごくわずかな押す力が生まれ、長い年月をかけて進む道筋がずれていく。
ヤルコフスキー効果と呼ばれる現象で、力は極めて弱いものの、数千万年という時間が経てば小さな小惑星を大きく動かす。
衝突から1億〜1億5000万年のあいだに、残った破片のうちさらに25%が、木星にはじき出される領域へじわじわと滑り込んでいった。
合わせておよそ4分の3の破片が小惑星帯を離れ、長期にわたって太陽に近い側へ送り出され続けた。
降り注いだ量は、月よりも地球のほうがはるかに多い。
地球は月より的が大きいうえに重力も強く、そばを通りかかった破片を引き寄せやすいからである。
月に大きな破片が1個落ちるあいだに、地球には同じか、それ以上の大きさの破片がおよそ20個落ちた計算になる。
この画像を大きなサイズで見る破片が降り注いでいた時期、地球の気候と生命に変化
当時の地球は先カンブリア時代で、陸上に植物も動物もおらず、生き物はすべて海の中で暮らしていた。
その海の中で炭素の巡り方が大きく乱れた記録が、オーストラリア中部の地層で最初に見つかり、その後カナダなど世界各地でも確認されている。
細胞の中に核を持つ生き物が枝分かれし、海の生き物の種類が増えはじめた時期とも重なっている。
ボトキ博士は、衝突で舞い上がった塵や岩の破片が大気と海の性質を変え、寒冷化と栄養分の供給をもたらした可能性を挙げている。
火星でも、8億年前ごろに、火山の頂上が陥没してできる巨大なくぼ地が作られた回数がピークを迎えている。
研究チームは、大きな破片の衝突が火星全体を激しく揺さぶり、地下の火山活動を活発にした可能性を指摘している。
だが、地球に残された証拠は乏しい。
7億2000万年前から6億3500万年前にかけて、地球全体が氷に覆われる全球凍結が二度起き、厚い氷が大陸の表面を大きく削り取った。
8億年前にできた地球のクレーターは、ほとんどが削り落とされて消えたと考えられている。
研究チーム自身も、地球と火星への影響については推測の段階であり、今後の研究を促すための提案だと論文に明記している。
小惑星帯で起きた1回の衝突が、月と地球と火星の歴史を同時に動かしたかもしれないという筋書きは、まだ検証の途中にある。
この研究でわかったこと
- 約8億年前、火星と木星の間で直径100kmを超える小惑星が別の小惑星とぶつかって砕けた。
- 砕けた場所は木星の重力ではじき出される位置のすぐ隣で、破片の4分の3が太陽に近い側へ送り出された。
- 破片は月と地球と火星に1億年以上も降り続け、地球には月の20倍の数が落ちた。
まだわかっていないこと
- 破片が降り注いだ時期と、地球の寒冷化や生き物の変化の関連性は、今後の研究にゆだねられている
- 8億年前に地球にできたクレーターは全球凍結の氷に削られて残っておらず、地球側の証拠は見つかっていない。
References: DOI 10.3847/PSJ/ae74cc
















1億年以上も降り注いだのなら一日あたりはほんのわずか
全部大気圏で燃え尽きてるよ
一日当たりの数と大気圏で燃える大きさに因果関係はないでしょ
なぜ”設定”を自分で勝手に付け加えてしまうのか…