この画像を大きなサイズで見るイスラエルとヨルダンの国境に広がる死海は、塩分濃度が通常の海の約10倍に達し、その名の通り、生き物がほとんど生息できない過酷な湖として知られている。
さらに、その水面下では、想像を超える自然現象が今も進行している。
湖の中では塩の結晶が雪のように降り積もり、長い年月をかけて巨大な「白い塔」を築き上げているというのだから科学者たちもビックリだ。
彼らはこの現象を観測し、塩の結晶がどのように沈み、どのようにして巨大な塔を作り上げるのか、その仕組みを解き明かそうとしている。
地球で最も過酷な湖・死海
イスラエルとヨルダンの国境に横たわる死海は、地球の表面で最も低い場所にある。名前に「海」とつくが、実際は外洋とつながっていない内陸の湖だ。
かつてはヨルダン川から流れ込む淡水によって満たされていたが、出口がないため、長い年月のあいだに水分が蒸発し続け、塩分濃度が極端に高まった。
その濃度は海水の約10倍にも達し、人は簡単に浮くことができるほどだ。高濃度の塩分のために魚や植物は生きられず、「死の海」と呼ばれるようになった。これが「死海(Dead Sea)」という名の由来である。
この過酷な環境の中で、今まさに巨大な塩の構造体が形成されつつある。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のエッカート・マイブールク教授と、イスラエル地質調査所のナダブ・レンスキー博士らの研究チームは、死海の水中で起こる塩の結晶化と堆積のメカニズムを詳細に調べた。
この画像を大きなサイズで見る死海が縮み続ける中で構造に変化が生じる
死海は出口を持たない「閉じた塩湖」であるため、水が失われるのは蒸発だけだ。数千年にわたって湖は縮み続け、蒸発によって残った塩が堆積してきた。
近年ではヨルダン川上流のダム建設などで淡水の流入が減り、水位は年間およそ1mの速さで低下している。
かつての死海は、上層の温かく塩分の薄い水と、下層の冷たく濃い塩水が混ざらずに層を保つ「部分循環湖」だった。
ところが1980年代以降、流入量の減少で上層の塩分濃度が上昇し、湖全体の水が混ざる「完全循環湖」へと変化した。
現在の死海では、温暖な季節の約8か月間に成層が生じ、残りの時期に循環が起こるサイクルが続いている。
この構造の変化が、湖内の温度差と塩分濃度差をさらに複雑にし、塩の結晶が沈殿して堆積する仕組みに大きな影響を与えた。
この画像を大きなサイズで見る真夏でも水中に降り積もる塩の雪の謎
死海の内部で起きている最も不思議な現象が「塩の雪」だ。
これは空から降る雪ではなく、水中で塩の結晶が細かな粒となって舞い落ち、湖底へ沈んでいく現象である。
通常、塩の結晶は水温が低く塩分の濃い深層で起こりやすく、主に冬の季節に見られる。気温が下がることで塩の溶解度が低下し、水に溶けきれなくなった塩が結晶化するからだ。
ところが2019年、マイブールク教授とレンスキー博士の研究チームは、真夏にも塩の雪が降っていることを確認した。
蒸発が進む夏は、上層の塩分が濃くなる一方で水温が高く、塩は再び溶け込みやすくなるはずなのに、湖底では白い結晶が雪のように舞い落ちていたのである。
この画像を大きなサイズで見る研究チームの観測によると、死海の上層と下層の境界では特異な動きが起きていた。上の温かく塩分の濃い水が冷えて沈み、下の冷たい水が温まって浮かび上がる。湖の内部で二つの層の水が入れ替わるように循環していたのだ。
この現象は「二重拡散」と呼ばれ、温度と塩分の差が互いに影響し合うことで生じる。
死海ではこのプロセスが繰り返し起きるため、夏でも塩の結晶が雪のように舞い落ちていたのだ。この塩の雪は、一年中降り続いていたことになる。
マイブールク教授は「まさか真夏にも塩の雪が降っているとは思わなかった。しかも、年間を通じて絶え間なく続いている」と語っている。
科学者たちは、過酷な死海の中でこれほど精密で持続的な結晶化のサイクルが存在していることに強い衝撃を受けた。
こうして降り積もる塩の雪は、季節を問わず湖底を覆い、長い年月をかけて塔のようにそびえる白い塩の構造を作り上げていく。
死海の底に形成されたこの構造こそ、まさに自然が築いた「白い巨塔」なのだ。
この画像を大きなサイズで見る古代地中海でも起きていた「白い巨塔」
死海で進行しているこの現象は、かつて地中海でも起きたと考えられている。
今からおよそ596万〜533万年前、地殻変動によってジブラルタル海峡が閉ざされ、北大西洋からの水が流れ込まなくなった。
水の補給を失った地中海では蒸発が進み、水位が3〜5kmも低下した。内部は現在の死海とよく似た高塩分環境となり、膨大な量の塩が析出して分厚い塩の地層を作った。
これが「メッシニアン塩分危機」と呼ばれる出来事である。
その後、再び海峡が開いて大西洋の水が流れ込み、地中海は再び満たされた。当時形成された塩の層は、今も地中深くに眠っている。
この画像を大きなサイズで見る白い巨塔が語る地球の記録
マイブールク教授は、現在の死海を「古代の地球を再現する天然の実験場」と位置づけている。
死海の湖底では、塩水泉が湧き出す場所もあり、そこから「塩のドーム」や「塩の煙突」と呼ばれる構造も形成されている。
こうした観測は、塩湖で起きる流体の動きや堆積の仕組みを理解するだけでなく、乾燥地帯の海岸侵食や資源形成、さらに気候変動による海面変化を考えるうえでも重要な手がかりとなる。
水中で降り積もる塩の雪が、数千年、数万年という時間をかけて塔のような構造を築いていく。その過程は、地球の過去と未来を映す自然の記録そのものである。
この研究成果は『Annual Review of Fluid Mechanics』誌(2025年)に掲載された。
References: Annualreviews / Sciencedaily / News.ucsb.edu
















自然の脅威に興味津々!
なのだが読みながら何故かヨダレがダバダバと笑笑
メカニズム、知るだけでも面白い!
そしてそのメカニズムが作った自然の造形美に乾杯。
地球ってほんとに大科学場、なんだねと思わざるを得ない。
高濃度塩水と聞いて綺麗な立方体の巨大な塩の結晶できてるのかと妄想したがそんなことはなかったか。
話が長い
もっと簡潔にまとめて下さい
財前教授の巡回のお時間です
せや! 梅に鶯 松に鶴 清次兄いに朝吉親分でんがな
もうそれしか浮かばなくて理解が半分しか追いつかないよね・・
塩の雪が降り積もってもこんな形の塔はできないと思う。滑らかに繋がってるし、どちらかと言えば鍾乳石のように結晶が成長していったものでは。
そると何ですか
総回診です
鵜飼教授の総回診です
👴「患者の皆さん、うがい 手洗いが肝心です」
財前君、君には期待しているんだからね。
善哉君は甘い!
夫婦善哉
1980年代前半に死海に水浴びにいったことがあるが 体に擦り傷があることを忘れてて入った瞬間 傷口に塩を擦りこむという文字通りの激痛を味わいました。
シルベスター・スタローンがランボーの撮影で訪れたときに マッチョ自慢なのか海中で目を開けて大変なことになったらしい。
メッシニアン塩分危機のころはまだヒト種は現生人類とは違っただろうけど、その塩の柱を見た当時の人たちがロトの妻の話の元をつくったのかもとか妄想したり。 まぁ、死海やガラリヤ湖が紅海とつながるまでは現在の傾向は続くだろうから、研究し放題かな。 死海、あるいはガラリヤ湖はいっぺん行ってみたいんですがあの付近はいつもキナ臭くて一生いけないのかも。 死海の雪は面白い表現と感心しました。 また研究を古代地中海と結びつけるってのも思いもつかない視点で、言われてみれば似た環境のはずだと気づいて面白かったです。 今後の調査・研究に期待!
このままイスラエルが地下水を無限に汲み上げたら
死海は干上がり塩害で農業出来ない土地になるだろうね
ソ連にもなんかそういう湖あったね
農業灌漑しすぎて農業を壊滅させた湖
アラル海ですね
30年くらい前の富山の地獄谷も昔、硫黄の塔あったけどあれ崩れたんかな?
今あんのめっちゃ小さい盛り上がりみたいな感じじゃん。
塩のやつも、まぁまぁできるまで時間かかるんだろうな。
だから振り返っちゃダメだとあれほど……
塩柱は妻である
名前は知らない
わが友李徴子ではないか?
ソドムとゴモラの伝説の元になった隕石衝突事件の時は
塩湖が干上がって塩の柱が露出したのを見て
「逃げ遅れた人々が塩の柱になったんだ」と誤認したのかもしれんな
その辺の塩水の一滴が急速に干からびても
顕微鏡でみるとこんな風になってたりするんだろうか
逆にゆっくり何億年もかけることになれば巨大な立方体になるのかな・・・