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アメリカ大陸に最初に移動した現生人類は北海道を含む東アジア地域から来た可能性

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(著)

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Photo by:iStock
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アメリカ大陸に最初に到達した現生人類(ホモ・サピエンス)は、約2万年前の最終氷期に、現在の日本の北海道を含む北西太平洋地域から、太平洋沿岸を南下して移動してきた可能性が高い。

 この新たな仮説を裏付ける証拠として注目されているのが、北米各地の遺跡で出土した「両面石器(biface)」と呼ばれる狩猟用石器だ。

 形状や製作技術の分析により、これらの石器が北海道や東アジアの後期旧石器時代の道具と同じ技術的な共通点を持っていたのだ。

 本研究は、長年有力とされてきた「ベーリング地峡を経由した内陸ルート」ではなく、太平洋沿岸をたどる早期の移住ルートを強く支持するものとなっている。

人類はどのルートでアメリカ大陸へ渡ったのか?

 アメリカ大陸への人類の移動については長年、2つの説が対立してきた。

 ひとつは、約13,000年前に、シベリアとアラスカを結ぶ陸橋「ベーリング地峡」を経由して移動したという内陸ルート説。

 もうひとつが、より古い約20,000年前に、太平洋沿岸を南下して移動したという沿岸ルート説である。

 オレゴン州立大学のローレン・デイヴィス教授(人類学)らの国際研究チームは、アメリカ各地の旧石器時代の遺跡から出土した石器を精密に分析し、沿岸ルート説を強く裏付ける新たな考古学的証拠を発見した。

 対象となったのは、旧石器時代(約2万〜1万3,500年前)にあたる時期の遺跡である。

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アイダホ州で発掘された石器の一部 / Image credit:Oregon State University

北海道に起源を持つ石器をアメリカで発見

 研究チームが特に注目したのは、「両面石器(biface)」と呼ばれる投射具の一種だ。これは石の両面を剥離して薄く整形し、柄に取り付けて槍として用いる狩猟道具で、高い貫通力と耐久性を持っている。

 この石器タイプは、北海道で約2万年前に登場したことが確認されており、今回分析されたアメリカ各地の石器も、その形状や製作手法が非常によく似ていた。

 特に、バージニア州、ペンシルベニア州、テキサス州、アイダホ州の遺跡で出土した石器との間に、はっきりわかる技術的な共通点が見られた。

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アイダホ州の遺跡から出土した石器はアジアの石器と驚くほど似ている/ Image credit:Oregon State University 

アメリカに残されたアジアの石器の痕跡

 今回の研究で分析された両面石器は、アメリカ大陸にのちに登場した「パレオ・インディアン」の時代に使われていた石器よりも、小型・軽量で、製作方法も異なっていた。

 パレオ・インディアンとは、氷期の終わりごろに北米に定住していた古代の先住民族で、現在のアメリカ先住民の祖先と考えられている。

 今回見つかった両面石器は、石の中心部分から剥片(はくへん:石を打ってはがした薄いかけら)を切り出し、そこに両面加工を施すという複合的な製法が用いられており、この技術体系がアメリカ先住民の文化へとつながっていったと考えられている。

 こうした道具の共通点は、アジアからアメリカへ、石器の技術や知識が、地域を越えて受け継がれていた可能性がある。

最古の遺跡は南に集中、内陸ルート説と矛盾

 また、今回の研究では、石器が出土した遺跡の位置にも注目が集まっている。もし人々がベーリング地峡を通って陸路でアメリカ大陸に入ってきたのであれば、最も古い痕跡はアラスカやカナダの北部にあるはずだ。

 ところが実際に古い石器が出土した主な遺跡は、バージニア州、ペンシルベニア州、テキサス州、アイダホ州など、はるか南に集中していた。

 同様の石器は、オレゴン州、ウィスコンシン州、フロリダ州でも発見されているが、それらの遺跡では出土数が少なく、今回の分析には含まれていない。

 デイヴィス教授は、より多くの遺跡が太平洋沿岸の大陸棚に沈んでいる可能性が高いとも指摘している。

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(A)最終氷期の地形と氷床の分布、および北海道・本州を含む北西太平洋地域と、人類の移動ルートを示した図。
(B)アメリカ後期旧石器時代の主要な遺跡の分布図。両面石器が発見された地点も含まれる。Credit: D.B. Madsen et al. 2025

遺伝学と考古学が裏付ける沿岸ルート説

 この研究の大きな意義は、複数の北米各地の遺跡を横断的に比較・統合することで、アメリカ大陸への人類の移動ルートをより明確に示した点にある。

 さらに、近年の遺伝学の研究でも、現在のアメリカ合衆国やカナダに暮らす先住民と、東アジアや北ユーラシアの人々との間に、系統的なつながりがあることが確認されており、今回の考古学的証拠と一致している。

 「今では、アメリカ大陸の最初の人類がどこから来たのかだけでなく、どうやって移動し、どんな道具を携え、どんな知識や技術を持っていたのかまで説明できるようになりました」と、研究を主導したデイヴィス教授は語る。

 また、この研究には、ネバダ大学リノ校のデイヴィッド・B・マッドセン氏、スポーケン部族保存プログラムのトーマス・J・ウィリアムズ氏、東京都立大学の出穂雅実氏、ウィスコンシン大学と東北大学に所属する飯塚文枝氏らが研究チームの一員として加わっている。

 この研究成果は『Science Advances』誌(2025年10月22日付)に発表された。

References: Science / Oregonstate.edu / Labrujulaverde

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この記事へのコメント 18件

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  1.  千島列島のあたりは当時列島だったのか、それとも陸地だったのか、はたまた海だったけど海面が凍って歩いて渡れたのか、その辺も知りたいところですね。 確かに今は当時と比較すれば海面上昇して海進しているから海辺の遺跡は沈んでいるのかも…… とするとやっぱり海中ドローン使っての海中考古学?みたいなのが発展すると新たな発見が期待されますね

    • +12
    1. 最終氷期の頃は千島列島は海峡が深いので陸続きではないけど、樺太とは地続きだったみたいですね
      ただ、島しょ部の間隔は今より狭まっていたはずなので船での移動ならば現実的かと

      • +4
    2. 列島だから船じゃない?
      北海道からアメリカに行こうとしたわけじゃなくて、隣の島へだんだんと移動していったんだと思う
      日本やロシアに干渉される前まで、千島列島にはアイヌや少数民族が住んでいたし(住むのに適さない島もある)
      カムチャツカの先からアメリカ大陸につながるアリューシャン列島にも先住民族が住んでる
      厳しい環境ながら人は住んでいたんだね

      • +1
  2. 最近読んだ本でも、アメリカ大陸にある遺跡・出土品はベーリング海峡経由で想定される旅程よりも年代が古いので別ルートで渡ったのではないかという話が書いてあった。

    • +12
  3. 最初に進出したのは船を使える漁労民だったということかな。だったら数世代でアラスカからメキシコまで移住できないこともない。

    • +3
  4. 北海道の先住民は「アイヌ」
    アラスカの先住民は「イヌイット」
    どっちも「人間」の意味なのさ。
    顔がそっくりだぉ。

    • +10
    1. 文化的なつながりは知らないけどアイヌとイヌイットは似てないよ
      アイヌは寒いとこ居るけど寒冷順応する前の古モンゴロイドだから瞼も薄く顔も体も立体的 またそれは特に東北…から関東も てか伝統的に機内以外に普通に多い
      日本人とインディオもよく似てる人いるね

      • +5
  5. つまり、かつて今よりずっと海面が低かった頃に、海岸線伝いに東アジアから今のベーリング海峡を通過して北米に移ったグループがいて、今の北米先住民の直接の祖先とは別の集団っぽい(もう少し古い)ということかな
    あの石器としてはわりとポピュラーな、めっちゃ尖らせた破片のパイオニアが北海道にいたかもしれないと思うと、色んな味がするな
    各集落から「アレの作り方を教えて!」とか言って弟子が集まってたんだろうか

    • +10
  6. 縄文人が使っていた丸木舟で沿岸航行を続けていったら、
    そこがアメリカ大陸だった、というだけのことだろう。

    • +1
    1. 北米南米の先住民てあれ縄文人混ざってるよね。
      ていうか、環太平洋まんべんなく縄文人が足跡つけてるのは間違いない。
      ロシア・北欧にも縄文人の成れの果てがいるっぽい、サーミ人がそう。
      南は台湾の少数民族にも、アイヌの民族衣装っぽいひとたちがいるし、
      アイヌの民族衣装、北欧・台湾・北米先住民に共通点を感じる

      • -2
  7. ネイティブアメリカンの伝承で言われてることの検証か
    あれはかなり正確に伝承されてるっぽいもんな

    • +10
  8. 北海道には、アイヌより前に縄文人が住んでるよ

    • -2
  9. たしかに
    北米にいるインディアンの人たちの顔って
    アジアっぽい顔つきだよな

    • +8
  10. 南米アンデスの高地に暮らす先住民族の遺伝子には、日本人と同一の特徴が数多く見られる。
    HTLV-1型ウイルスやHLA遺伝子の一致、古代ミイラからのDNA解析結果は、古代日本列島の人々が太平洋を渡り、アンデスに定着したことを示唆。

    神話にも跡あり。

    ヴィラコチャ、アンデスの創造神。
    チチカカ湖(父・母)のほとりに現れ、人々に言葉と文明を授けたのち、
    「東の海」から現れ「西の海」へと去ったと伝えられる。

    ティワナクの来訪者神(太陽を背負う神)
    ボリビア高原の古代都市ティワナクには、
    海を越えて来た賢者たちが文明をもたらしたという伝承が残る。
    その造形は東方的――アジア的な意匠を思わせる。

    ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)
    マヤ・アステカ世界の「羽毛ある蛇の神」太陽神
    東の海から現れ、人々に知識・農耕・暦を教えたのち
    「いつの日か戻る」と言い残して海へと去った

    • -1
    1. もしかしてぷまぷんくも縄文人の足跡なのか?
      鳥肌立ってきた

      • 評価
  11. どちらのルートでも大差なくないか?と思ったら、ネイティブアメリカンの民族的なルーツにまで影響するのか。
    「日本列島は各地から流れてきた民族の終着点」みたいに長年思い込んでたから、日本の先住民がどこかの民族の祖先にあたるかもしれないと考えると妙な違和感を覚える。

    • +1
  12. 20年くらい前にこんな説を書いた本を読んだ記憶がある
    アメリカの研究者が著者
    石器に類似性があるとかでまさに記事のようなルートでアメリカ大陸に渡ったというような事が書いてあった
    小学生だったから詳しく覚えてないけどロマンがあって楽しかったな
    まあ今言えるのは少なくともアメリカ大陸は盗人の白人が俺らに近いアジア人から盗んだ土地だってことだ

    • +1

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