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蚊のいない国がゼロに。最後の砦だったアイスランドで蚊を初めて確認

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(著)

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Photo by:Tetiana Lazunova Jon Flobrant
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 地球上でもっとも広く分布する蚊。2億年以上の進化の歴史を経て、あらゆる大陸や島へと拡がっていった。だが、これまで野生の蚊が一度も確認されていなかった唯一の国があった。特殊な環境に守られた極寒地域、アイスランドだ。

 南極は今も蚊のいない場所ではあるが、そこに暮らしているのは一部の研究者だけで、国ではない。

 しかし2025年10月、アイスランド国内で初めて野生の蚊が確認された。昆虫愛好家が、自宅の庭でオス1匹とメス2匹の蚊を発見してしまったのだ。

最後の砦、アイスランドに現れた蚊

 蚊が発見されたのは、アイスランドの首都レイキャビクから約45km北にあるキョースで、山と氷河の渓谷に囲まれた小さな農村地区だ。

 昆虫愛好家のビョルン・ヒャルタソン氏は、2025年10月中旬のある夜、自宅の庭で赤ワインを染み込ませたリボン状の布地を吊るし、夜間に蛾の観察をしていたところ、見慣れない小さな虫に気づいた。

 「赤ワインのリボンに、奇妙なハエのような虫が止まっていた。すぐに何かが違うと感じた」と、ヒャルタソン氏はFacebookグループ「Skordýr á Íslandi(アイスランドの昆虫)」に投稿したところ蚊であることが判明。

 ヒャルタソン氏はその後、数日かけてオス1匹・メス2匹の計3匹を採集し、標本をアイスランド自然史研究所へ送付した。

  この発見は、アイスランドの新聞『モルグンブラーズ(Morgunblaðið)』にも取り上げられ、「最後の砦が崩れた」と注目を集めた。 

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アイスランドで発見された蚊のオス  / Image credit:Björn Hjaltason

調査によって明らかになった蚊の正体

 アイスランド自然史研究所の昆虫学者、マッティアス・アルフレズソン博士が送られてきた標本を調査した結果、この個体はカ科、キュリセタ属(Culiseta)の蚊の一種、「キュリセタ・アンヌラータ(Culiseta annulata)」であると同定した。

 この種はヨーロッパや北アフリカ、シベリア北部などに広く分布しており、比較的寒冷な地域にも適応している。

 成虫は洞窟や倉庫など、風雨をしのげる場所で冬を越すことができる数少ない種のひとつである。

 体長は約8〜10mmと、一般的な蚊よりひとまわり大きく、ややずんぐりした印象を与える。メスは繁殖のために哺乳類や鳥類から血を吸い、人間が刺されることもある。飛び方は比較的ゆっくりで、羽音も低く重たい。

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アイスランドに上陸した蚊の一種、キュリセタ・アンヌラータ(Culiseta annulata) / Image credit:Janet Graham / WIKI commons / CC BY 2.0

アイスランドが「蚊のいない国」でいられた理由

 アイスランドがこれまで蚊のいない国として知られていた背景には、自然環境の特殊性がある。気温が低く、夏でも蚊の成長と繁殖に必要な時間が確保しづらい。また、蚊が産卵するのに適した「よどんだ水場」も極めて少ない。

 過去には、同国ケプラヴィーク国際空港に到着した航空機内で蚊が確認されたこともあるが、それは一時的な侵入にすぎず、自然環境下での生息・繁殖は一度も報告されていなかった。

 今回のように、アイスランドの自然環境下で野生の蚊が発見されたのは史上初である。

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2025年10月18日にアイスランドで発見されたメスの蚊 Image credit:Björn Hjaltason

気候変動が「最後の砦」に影響を及ぼした可能性

 アイスランドで蚊が確認された背景には、近年の異常気象があると考えられている。2025年の春から秋にかけて、アイスランドは記録的な高温に見舞われた。

 5月には気温が20℃を超える日が10日以上続き、東部のエイイルススタジル空港では26.6℃という、5月としては史上最高の気温が観測された。

 このような高温傾向が、蚊の生育に一時的に適した環境を作り出した可能性がある。

 2024年は、世界全体で観測史上最も暑い年として記録されており、世界気象機関(WMO)はその年の平均気温が産業革命以前(1850〜1900年)と比べて約1.5℃高かったと報告している。

 さらに2025年についても、上半期の時点で異常高温が続いており、2024年の記録を上回る可能性が高いと専門家は予測している。

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アイスランドの首都レイキャビク Photo by:iStock

蚊はアイスランドに定着するのか?

 アルフレズソン博士は、今回の蚊が本当に定着したのかどうかについては慎重な姿勢を示している。

 「今後、春になって再び観察が行われ、越冬した個体が確認されれば、定着した可能性が高まるだろう」と話している。

 ヒャルタソン氏は、自宅の近くにある港湾施設「グルンダルタンギ」が侵入経路ではないかと推測している。

 この港には定期的に大型船やコンテナが到着するため、蚊が物資と一緒に運ばれてきた可能性もあるという。「もし庭で3匹見つかったのなら、他にももっといるはずだ」とも語っている。

 たとえ定着が確認されていなくても、自然下で「活動する蚊」が確認されたという事実そのものが、大きな意味を持つ。

 これで、蚊はついに世界中すべての国へと到達したことになる。残されたのは、人の国ではないが、南極だけだ。

 このまま気候変動が進んで、南極で蚊に刺された、なんて自体が起きないといいんだけれど。

References: Icelandmonitor.mbl.is / KOHA

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この記事へのコメント 17件

コメントを書く

  1. 南極は国じゃないから(先に書いておく)
    この蚊が越冬して繁殖できるカ
    だな
    人の営みで凍らない水が有れば来年も

    • +11
  2. 蚊が存在しなかった国と蚊を見た事がない、刺された事もない人間が存在したのがびっくり
    刺されたあの痒みを人生で初めて経験したらどう感じるんだろう?

    • +25
  3. アイスランドにキンチョールとムヒを売り込もう

    • +17
  4. なぜ人が惜しむ生きものたちはどんどん絶滅していくのに
    蚊とかGとかはどれだけ退治されても繁栄していくのか…

    • +16
  5. 日本でも今の時期どころか十一月でも刺されるからな…
    00年代頃まではそんな記憶なかったのに

    • +12
    1. その分真夏にはあまりいない気がする、50年代になればガボンから蚊絶滅のニュースが流れたり

      • +2
    2. 本州だと昔からそのくらいの時期まで蚊が潜んでたでよ?
      気温16度もあれば飛ぶので

      • -1
  6. もうすぐ11月になりかなり寒くなってきているのにこの日本でもまだプンプン飛んでたりするとこあるからな~、なので12月までは蚊取り線香などは切らさないように気をつけてる。

    • +5
    1. 札幌の歓楽街あたりは建物の中温かいから大分前に上陸してたはず

      • 評価
  7.  ということはどこにいっても夜中にプゥ~ンっていうあの音が聞こえる可能性がでてきたのか!

    • 評価
    1. 人間的にはスゲー嫌だし、正直消え失せて欲しいんだが
      数が多い分、蚊を食料にしている小動物が結構いるのよね…
      淡水魚はボウフラ食べてるし、カエルとかの爬虫類以外にも
      ツバメとか夏の夜に飛んでる小さいコウモリも蚊を食べてるので
      蚊が消滅すると彼らのご飯もなくなってしまう

      • +3

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