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気候変動で生息域が重なり、野生下でアオカケスとインカサンジャクの交雑種が誕生

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(著)

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左からアオカケス、交雑種、インカサンジャク / Image credit: 左: Travis Maher/Cornell Lab of Ornithology/Macaulay Library; 中央:Brian Stokes; 右: Dan O’Brien/Cornell Lab of Ornithology/Macaulay Library
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 これまで生息域が異なり、自然界では出会うことがなかった2種の鳥が交配し、新たな命が誕生していたことが、アメリカ・テキサス州で確認された。

 発見されたのは、スズメ目カラス科のアオカケスとインカサンジャクの交雑種だ。

 その背景には気候変動による生息域の拡大があると考えられており、このような交雑種が野生下で確認されるのは非常に珍しいという。

 この研究成果は『Ecology and Evolution』誌(2025年9月10日付)に発表された。

違う生息域に住んでいた2種の鳥

 発見された交雑種(ハイブリッド)の親鳥は、アオカケス(学名:Cyanocitta cristata)とインカサンジャク(学名:Cyanocorax yncas)という2種の鳥だ。

 どちらもスズメ目カラス科に属するが、700万年も前に進化の道を分かち、それぞれまったく異なる地域に分布していたため、自然界での交配はこれまで確認されていなかった。

 アオカケスは英名ではブルージェイと呼ばれ、、北アメリカ東部に広く分布し、青い羽と黒い首輪模様が特徴だ。

 雑食性で、木の実や昆虫、小動物まで幅広く食べる。知能も高く、人の暮らしに近い環境にもよく姿を現す。

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アオカケス Photo by:iStock

 一方のインカサンジャクは英名がグリーンジェイ。中南米の熱帯地域に生息し、鮮やかな緑の羽と黒い顔が印象的な鳥である。

 果実や昆虫を好む雑食性で、小さな群れをつくって行動する。テキサス州南部ではごく限られた地域でのみ観察されていた。

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インカサンジャク Photo by:iStock

気候変動により生息域が拡大、自然交配の機会が生まれた

 1950年代当時、アオカケスの分布は東部アメリカに広がっていたが、西限はテキサス州のヒューストン付近だった。

 一方、インカサンジャクはメキシコ北部からテキサス州南端にかけて、わずかに分布していたのみで、両種が自然界で接触することはほとんどなかった。

 ところが近年、気候変動による気温の上昇や環境の変化により、アオカケスは西へ、インカサンジャクは北へと生息域を広げていった。

 その結果、現在ではサンアントニオ周辺の一部地域で、両種の分布が重なっている。

 このように両種がそれぞれの方向に自然な形で分布を拡大した結果として出会いが生じたという点が、人為的な影響ではなく気候変動が交雑をうながした例として注目されている。

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2000年から2023年にかけて、バードウォッチャーや市民科学者が観察記録を共有するアプリ「eBird」に報告された、テキサス州におけるインカサンジャクとアオカケスの出現地点。(緑の点はインカサンジャク、青の点はアオカケスの観察記録、黒の点は両種が同じ地域で確認された地点を示している) / Image credit:Brian Stokes/University of Texas at Austin

SNSで見つけた一枚の写真がきっかけ

 インカサンジャクの研究に携わっていたテキサス大学オースティン校の大学院生、ブライアン・ストークス氏は、SNSで野鳥観察者たちが投稿する写真を日常的にチェックしていた。

 ある日、サンアントニオ郊外の住宅地に住む女性が、自宅の庭に現れた見慣れない青い鳥の写真をSNSに投稿した。

 白い胸に黒い顔模様、青い羽を持つその鳥は、一見アオカケスにも見えたが、明らかに何かが違っていた。

 ストークス氏は女性のもとを訪れ、捕獲のためにミストネット(目立たない黒い糸で編まれた網)を設置した。

 初日は失敗したが、2日目にようやくその鳥が網にかかり、血液サンプルを採取して足環を装着し、野に放った。

 その後、この鳥は姿を消していたが、2025年6月、再び同じ女性の庭に戻ってきたという。

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アオカケスとインカサンジャクの交配により生まれた交雑種 / Image credit:Brian Stokes/University of Texas at Austin

遺伝子解析で交雑種と判明

 ストークス氏と、指導教官であるティム・キート教授のチームは、採取した血液から遺伝子を解析。その結果、この鳥はインカサンジャクの母親とアオカケスの父親を持つ雑種であることが明らかになった。

 なお1970年代には、飼育下で両種を交配させた例があり、そのときに生まれた鳥の剥製は現在、フォートワース科学歴史博物館に収蔵されている。

 当時の個体と今回の野生個体は、見た目も非常によく似ているという。

 だが今回は、野生下で自然に交雑が起きたという点において、非常に珍しく貴重な発見とされている。

どんな名前がつけられるのか?

 この交雑種にはまだ正式な名前は与えられていないが、動物界には自然発生した交雑種に学名まではいかないが、名前が付けられることも多い。

 たとえば、ホッキョクグマとヒグマの交配種は「ピズリー(Pizzly)」、コヨーテとオオカミの混血は「コイウルフ(Coywolf)」、イッカクとシロイルカの雑種は「ナールーガ(Narluga)」などがある。

 今回のケースでも、ブルージェイの青(Blue)とグリーンジェイの緑(Green)を掛け合わせて「グルージェイ(Grue Jay)」の名が非公式に提案されている。

 ストークス氏は、「こうした野生下での自然な交雑は実際にはもっと多く起きているかもしれない。ただ単に報告されていないだけで、気候変動などで生息域が変われば、本来出会うことのなかった種同士の交配も現実になる」と話している。

References: Onlinelibrary.wiley.com / Eurekalert

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この記事へのコメント 28件

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  1. みんな綺麗
    翼を広げたらどんな感じなのかしら

    • +32
  2. 日本近海で有毒のフグと無毒のフグが
    交雑して、無毒なはずのフグも食べれなく
    なったと聞いたな。

    • +18
  3. 人間は一種類しか居ないから気候変動で絶望してるけど、自然界にはあまり関係ないのだろうな。

    この交雑種に繁殖能力が備わっているのなら、百年もすれば確立した種とし繁栄するんじゃない?

    • +6
  4. カナダみたいな北の方なら交雑種が誕生する事はまずないだろうからトロント・ブルージェイズの球団名が変わる事はなさそうだな

    • +4
    1. ブルージェイってどこかで聞いたことあるような気がしてたけどそれか!
      スッキリしましたありがとう!

      • +3
  5. ストークスさんの行動力すごい。オハイオ州の野鳥観察カメラでアオカケスさんをよく見かけるけど、次から違う視点で見れそう

    • +5
    1. ライガーとタイゴンみたいに、
      父・母の種が逆になれば、また違った顕れ方をする可能性もある気がする。

      • +5
  6. 在来種よりも生存率が高ければコレを【進化】と呼ぶのでしょうね

    • +16
  7. 羽がステンドグラスみたい
    滅茶苦茶きれい

    • +25
  8. どの子も綺麗
    バードウォッチャーの間で、この交雑種を見つけるのが流行してそう!
    それが基礎研究にも役立つかもしれない

    • +6
  9. これが人間にとって良いことなのか悪いことなのかは分からないが、少なくともこうやって新たな種が生まれた事は地球史上でもいっぱいあったんだろうな

    • +8
  10. 現生人類だって色々な古代人種の交雑だしなぁ

    • +13
  11. 交雑種はイマイチ地味だな。
    交雑種同士の交配ができるかどうかで今後広がっていくかどうかが決まるかも。

    • +6
  12. 明らかに見た目も模様も違うのに交雑するのは、サイズや鳴き声とか習性とかがほとんど同じなのかな?

    • +6
  13. >ブルージェイの青(Blue)とグリーンジェイの緑(Green)を掛け合わせて「グルージェイ(Grue Jay)」の名が非公式に提案されている。

    え~?
    せっかく青と緑なのに、そんな文字の切り貼りじゃなくて
    ティール・ジェイとかターコイズ・ジェイにしないの?

    • +2
    1. ブリーンかと思ったらグルーか。ドラゴンボールみたいだな。

      • 評価
  14. 色素は受け継がれたけど構造色は無理だった感じかこれ?
    Jrちゃんにお相手できるのかしら?

    • 評価
  15. どうなんだろう?これは、鳥的にはいいことなのかな?
    交配種と交配種の交配もこれからあったりするのかな?
    仮にそれがどんどん進んだらそれまでの純血種が絶滅したりするのかな?そうなったら生態系にもなんか影響が出たりしないんだろうか??

    • 評価
    1. 鳥って派手なほうがモテる傾向があるけど
      これ地味になってるよね?淘汰されちゃうんかなと思うんだけどどうだろ

      • +1

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