この画像を大きなサイズで見る地球から約1万光年の距離にある「や座V星(Vサギタエ)」は、ふたつの星が極端に近い距離で互いを回り合う「近接連星」と呼ばれる天体だ。
一方は、進化の終末期にある恒星の残骸で、死にかけの星「白色矮星」。もう一方は、今も燃え続ける元気な恒星である。
この白色矮星が相棒からガスを激しく吸い取り、自分の表面にため込むことで、異常な明るさで輝いている。
だが、死にかけの星が他の星の命を吸って光るその姿は、まさに最期の輝きだ。
研究者たちは、数年以内に「新星爆発」が起き、その後「超新星爆発(スーパーノバ)」に至る可能性があると警告している。
もしそれが現実になれば、星は昼間でも肉眼で見えるほどの光を放ち、宇宙にひとつの壮絶な終焉を刻むことになるかもしれない。
この研究成果は学術誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2025年8月13日付)に掲載された。
元気な恒星と死にかけの恒星のペア、近接連星や座V星」
や座V星(Vサギタエ:V Sagittae)は、1902年に発見されて以来、天文学者たちを悩ませてきた謎の天体だ。
地球から約1万光年離れた場所にあり、夏の星座「こと座」の方向に見える。
や座V星は、「近接連星」と呼ばれ、ふたつの恒星が異常に近い距離で互いのまわりを回っている。周期はわずか12.3時間。地球の半日で1周してしまうほど密着している。
このうち一方は「白色矮星」と呼ばれる高密度の小さな星だ。白色矮星は、かつて太陽のように輝いていた恒星が核融合を終え、重力で押し縮められた“終末期の姿”である。
もう一方は、今もエネルギーを燃やし続ける若い恒星。このふたつの星の間には、命のバランスが崩れた、危うい関係が成立している。
この画像を大きなサイズで見るなぜこれほど明るく輝いているのか?123年越しの謎が解明
や座V星がこれほどまでに明るく輝いている理由は、長らく謎のままだった。
なぜ寿命を迎えたはずの星が、ここまで強い光を放っているのか?何がその内部で起きているのか?1902年の発見以来、123年もの間、天文学者たちは頭を悩ませ続けてきた。
この謎をついに明らかにしたのが、フィンランド・トゥルク大学のパシ・ハカラ博士を中心とする、イギリス・サウサンプトン大学、スペイン・カナリア天体物理学研究所の国際研究チームだ。
最新の観測データを分析した結果、 この異常な明るさの正体は死にかけの白色矮星が相棒の恒星からガスを吸い取って、燃え上がっていることが判明した。
死にかけの白色矮星が相棒のガスを吸い取り明るく輝く
白色矮星は、すぐ隣を回る恒星からガスを吸い取っている。これは、白色矮星の重力が非常に強く、相棒の恒星の外側のガスを引き寄せてしまうからだ。
だが、ガスはすぐに白色矮星へ吸収されるわけではない。ふたつの星は互いの重力に引かれつつ、高速で回転しているため、白色矮星まで届かないのだ。
そのかわりに、ガスは白色矮星のまわりを渦巻くように回転しながら、「降着円盤」と呼ばれるドーナツ型の円盤を形成する。
この円盤の中でガスは少しずつ内側に移動し、時間をかけて白色矮星の表面に落ちていくのだ。
このとき、回転による摩擦や圧縮によってガスの温度は非常に高くなり、光やX線として莫大なエネルギーが放出される。
それによって、や座V星全体が異常な明るさで輝いているように見える。
さらに、チリ・アタカマ砂漠にあるヨーロッパ南天天文台の「ベリー・ラージ・テレスコープ」による観測では、この活動によって星の周囲に巨大なガスのリング(ハロー)が形成されていることも明らかになった。
この画像を大きなサイズで見る新星爆発が数年以内に訪れる
白色矮星の表面にガスがたまり続けると、ある臨界点を超えたところで突如、核融合反応が暴走する。このとき起きるのが「新星爆発(ノバ)」だ。
新星爆発では白色矮星そのものは破壊されないが、その表面が一時的に激しく吹き飛び、星は何倍にも明るく輝く。
天文学者たちは、や座V星でこの爆発が数年以内に起きる可能性が高いと予測している。
もしそうなれば、や座V星は夜空に突然現れる“新しい星”のように輝き、地球からも肉眼ではっきりと観測できるようになるという。
地球上からでも、暗い場所であれば星座のように簡単に見つけられる明るさになる可能性がある。
新星爆発は白色矮星の「表面だけが爆発」し、星自体は生き残るため、爆発後も再びガスを吸収すれば、何度でも繰り返される可能性がある。
この画像を大きなサイズで見るその先には超新星爆発が待っている
だが本当のクライマックスは、そのさらに先にある。
白色矮星がガスを吸い込み続けると、やがてその質量は「チャンドラセカール限界」に近づいていく。
チャンドラセカール限界とは、白色矮星が自分自身の重さに耐えられる限界点のことで、太陽の1.46倍程度の質量に達すると、星を内側から支えていた力が耐えきれなくなり、自分の重力で押しつぶされてしまうのだ。
その結果、星は一気に重力崩壊を起こし、壮大な爆発を迎える。
これが「超新星爆発(スーパーノバ)」だ。新星爆発とは異なり、超新星では星そのものが完全に破壊され、消滅する。
爆発時には満月に匹敵するほどの明るさとなり、地球上から昼間でも肉眼で見える可能性があるとされている。
これは、私たちが一生のうちに目にするかもしれない、最も劇的な天文現象のひとつだ。
スーパーノバとは文字どおり「星の死」を意味する現象であり、一度起きればその星は完全に消えてしまう。ノバとは異なり、同じ星で何度も起きることはない。
観測では、や座V星の白色矮星はすでにこの限界に近づきつつあり、天文学的には近い将来、超新星爆発を引き起こす可能性があると考えられている。
超新星爆発は近い将来と言われているが、新星爆発は数年以内とされている。もしかしたら私たちも生きているうちにみることができるかもしれない。
追記(2025/09/21) 連星系の名称をVサギタエとしていましたが、「や座V星」として再送します。
編集長パルモのコメント

超新星爆発が期待されていたといえば、オリオン座の恒星ベテルギウスだが、結局まだ起こっていない。その期待は今、Vサギタエに注がれる感じになったのかな?生きているうちに見てみたいもんだよ。
References: Academic.oup.com / Southampton.ac.uk
















超新星爆発は死ぬまでに見てみたいことの一つなので是非1万年前に爆発していていただきたい。
ベテルギウスはどうも生きてる間には期待できなさそうだし。
ちょっと混乱してきた 一万光年先にある恒星が10000年マイナス5年くらい前に爆発して今観測されたっていうことだよね?
……えらいこっちゃ(まったり)
連星の片方が超新星爆発したときって、伴星の方は吹き飛んじゃうのかな?
距離やサイズにもよるとは思うけど、表層だけ剥離して中身は残ったりするんだろうか
遊離星(浮遊星)として宇宙空間を爆進する恒星ってステキ!
調べたら「Ia型超新星」と分類される爆発の仕方で、
質量がそこそこ少ない場合でも爆発するらしいので
双方ともに核は残る可能性があるっぽい
ただ、仕組み的に爆発するとめっちゃ明るくなるらしい
天文学の近い将来って数百年みたいなレベルだからなあ…
AIへローマ時代に現在の文化があったらと計算させたらなんと紀元前には
銀河系に宇宙船を飛ばしてるというぶっ飛んだ未来になってたw
その時代の人なら超新星爆発見ようという旅行ツアーが発売され
多くの観光客が宇宙船に乗り集まってるかもな
つまりはいまから2000年後の人たちからしたら、
現代文明は今の感覚でいう古代ローマ人ぐらいの文明レベルと…
天文学的には近い将来(数万年後)
一万光年離れてるってことは、一万年前の星の姿をみているわけで、近々爆発がみられるってことは、学者の皆さんはもうすでにVサギタエは爆発しちゃってると考えてるってこと?
間違いじゃないけど、V Sagittae はふつうは「や座V星」と訳す方がよいのでは
ガンマ線バースト ウェスト ヒップがやって来るのか
ビートルジュース公爵夫人は、死を待ちわびつつも、子猫とワルツを踊っていた
降着円盤が明るく輝いているのね。 ブラックホールの降着円盤が輝いているみたいなのかな。
かんむり座T星もコレと新星爆発が去年あたりから予想されてるけど、まだ起きてないしなぁ。天文学的スケールは誤差が大きくて人間の感覚と合わなさすぎる。
自分の寿命も、1万年とかになれば良いのに。色々な天体ショーが見れそうだ…