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ギリシャ洞窟で発見された30万年前の頭蓋骨、現生人類でもネアンデルタール人でもなかった

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ギリシャの洞窟で発見された30万年前の頭蓋骨この画像を大きなサイズで見る
洞窟で発見された謎の頭蓋骨/ Image credit:Nadina, WIKI commons CC BY-SA 3.0
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 1960年、ギリシャ北部の洞窟で発見された頭蓋骨に、長年科学者たちは頭を悩ませてきた。その化石には鍾乳石が突き出し、まるで洞窟の一部と化していた。

 いったい誰のものなのか、いつのものなのか。ついにその正体が明らかになりつつある。

 イギリス・ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンガー博士らによる最新の研究により、この頭蓋骨は約30万年前のものであり、現生人類でもネアンデルタール人でもないことが判明した。

 別のヒト属の一種「ホモ・ハイデルベルゲンシス」に属する可能性が高いというのだ。

 この研究は『Journal of Human Evolution』誌(2025年8月14日付)に掲載された。

洞窟の壁に埋まっていたペトラロナ人の頭蓋骨

 1960年、ギリシャ北部ペトラロナ村に暮らす地元の石工職人、クリストス・サリキディスは、ハルキディキ半島にあるペトラロナ洞窟で、偶然この頭蓋骨を発見した。

 ペトラロナ洞窟で発見されたことから、この頭蓋骨は「ペトラロナ人」と名付けられた。

 発見時にはすでに、頭蓋骨は洞窟の壁に張り付いた状態で鍾乳石に覆われており、まるで洞窟と一体化しているかのようだったという。

 その後、ギリシャの人類学者アリスティディス・プリアノス博士(Aris Poulianos)が調査を行ったが、化石の年代や分類については長年意見が分かれていた。

 これまでの年代推定では、17万年から70万年と大きくばらついていたが、最新の研究によりその年代が明らかとなった。

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ペトラロナ人が発見されたハルキディキ半島、ペトラロナ洞窟 / Image credit:© Stringer et al., 2025, Journal of Human Evolution, Volume 206, Elsevier

ウラン系列年代測定法で30万年前のものであることが明らかに

 今回、ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンガー博士(Chris Stringer)らによる最新の研究では、頭蓋骨に付着していた方解石(カルサイト)に含まれるウランとトリウムの比率を測定する「ウラン系列年代測定法」が用いられた。

 これは、方解石が形成された時期を高精度で割り出せる手法で、洞窟内での成長速度も考慮された。

 その結果、方解石は少なくとも27万7000年前に形成されたことが明らかになった。方解石の成長が比較的早く進んでいたことから、頭蓋骨自体はそれより古い可能性が高く、およそ30万年前のものであると推定された。

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Image credit:© Stringer et al., 2025, Journal of Human Evolution, Volume 206, Elsevier

現生人類でもネアンデルタール人でもない

 ストリンガー博士は、この化石について「現生人類(ホモ・サピエンス)でも、ネアンデルタール人でもない」という。

 その特徴はどちらにも属さず、より古い祖先に近いものだという。

 そこで比較したのは、アフリカ・ザンビアで見つかった「カブウェ頭蓋骨(Kabwe skull)」だ。

 この頭蓋骨は29万9000年前のもので、ホモ・ハイデルベルゲンシスのものとされている。

 カブウェ頭蓋骨と、ペトラロナ頭蓋骨の特徴がよく似ていることから、博士は「ホモ・ハイデルベルゲンシス」に分類できると結論づけている。

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カブウェの頭蓋骨、ホモ・ハイデルベルゲンシスのものとされている Gerbil / WIKI commons / CC BY-SA 3.0

ホモ・ハイデルベルゲンシスとは?

 ホモ・ハイデルベルゲンシスとは、今から約70万~20万年前にアフリカ、ヨーロッパ、西アジアに広がっていたヒト属の一種でハイデルベルク人とも呼ばれる。

 ドイツ・ハイデルベルク近郊で1907年に発見された下顎の化石にちなみ命名された。

 現生人類やネアンデルタール人の共通祖先である可能性があるとされており、人類進化の系統図において非常に重要な存在だ。

 彼らは石器を使い、動物を狩り、火を扱っていたと考えられている。

 脳容量は平均的に1100〜1400ccと、現代人と大差ないレベルに達していた。

 ヨーロッパにおいては、やがてネアンデルタール人へと進化していったと見られているが、地域によっては別系統として独立していた可能性もある。

ペトラロナ人が語る、進化の多様性

 ペトラロナ人は、化石の頑丈さやサイズから若い成人男性だったと考えられている。歯の摩耗も中程度で、まさにこれから成熟していく時期の人物だったのかもしれない。

 今回の成果は、「ヨーロッパにおける人類の進化が単一系統ではなかった」ことを裏付けるものである。

 30万年前のヨーロッパには、ネアンデルタール人の祖先系統と並行して、別の人類グループが存在していたことになる。

 ペトラロナ人は人類の進化の多様性を示す重要な証拠のひとつであり、人類史の新たなパズルの一片を提供したといえるだろう。

References: Sciencedirect / Livescience

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この記事へのコメント 12件

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  1. 角が生えてるのかと思った
    鍾乳石なんだな

    • +22
  2. 現代人もよく観察すると同じ先祖とは思えない系統がいくつか存在すると思っていたから、30万年前はもっと単に白人や黒人や黄色人種というだけではなくもっと複雑な人類の先祖がいた気がする。
    (東南アジアとか極東は酸性質の土壌が多いから骨や化石も残りずらいからね)

    • +16
    1. いわば純粋種の黒人の遺伝的多様性はその他人種すべてに匹敵するレベルだったりする
      アフリカから将来人種に分化する小規模集団が脱出した時点でボトルネックのように多様性が失われてるからね
      ネアンデルタール人のような他ヒト族と混血しても元々あった多様性を回復するには到底至らなかった
      各地に居た多様な他ヒト族との混血が今の見た目上の差異を生んだ可能性は否定しないけど、それでも依然として現生のヒトは1族1種であり祖地はアフリカただ一つだよ

      • +6
  3. 💀「せめてお礼にお寝間のお伽に・・」

    • +4
    1. あちらだとヘレナとヘラクレス辺りかな

      • +3
    2. 野ざらしの人骨にブドウ酒を注ぐんですね

      • +4
  4. 全部ホモサピが駆逐したから今私たちが残ってるんだよ

    • +2
  5. 洞窟の奥に眠ってる過去の遺物ってめちゃワクワクするね

    • +1
  6. これは凄いね、ホモサピエンスとネアンデルタールの共通祖先とは・・・
    ギリシャは人類の母と呼ぶべきだろう

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