この画像を大きなサイズで見るアメリカ・インディアナ州で発見された化石が、これまで知られていなかったシルル紀のカブトガニであることが、ウェストバージニア大学の研究で明らかになった。
カブトガニの化石記録には、オルドビス紀とデボン紀の間におよそ8000万年の空白があった。
この新発見により、その時代に実際にカブトガニが生き延びていたことが裏付けられた形となる。
標本は新属・新種として記載され、「Ciurcalimulus discobolus(チョーカリムルス・ディスコボルス/キウルカリムルス・ディスコボルス)」と命名された。
この研究は『Proceedings of the Royal Society B』誌(2025年6月18日付)に掲載された。
カブトガニに残された進化の空白を埋める発見
カブトガニは、オルドビス紀(約4億8500万年前~約4億4300万年前)に起源をもつ古代の節足動物であり、その姿をほとんど変えることなく現在まで生き延びてきた「生きた化石」として知られている。
現生では4種のみが確認されており、分布も限られているが、絶滅した化石種を入れると、80種以上も存在していたとされる。
だが、カブトガニの進化の過程には大きな空白がある。
特に、オルドビス紀末の大量絶滅後からデボン紀後期(約4億1600万年前~約3億5920万年前)までの約8000万年にわたって、カブトガニの化石は一切見つかっていなかった。
今回、この空白を埋める手がかりとなる化石が、アメリカ中西部のインディアナ州で見つかった。
標本は1975年に、古生物収集家のサミュエル・J・チョーカ(キウルカ)・ジュニア(Samuel J. Ciurca Jr.)氏によって採取されたものだが、長らく分類はされていなかった。
ウェストバージニア大学の古生物学者、ジェームズ・ラムズデル博士が詳細に分析した結果、新属・新種であることがわかり、チョーカ氏の名前から「Ciurcalimulus discobolus(チョーカリムルス・ディスコボルス/キウルカリムルス・ディスコボルス)」として正式に記載された。
チョーカ氏(Samuel J. Ciurca Jr.)の名前にちなんで、「Ciurcalimulus discobolus(チョーカリムルス・ディスコボルス)」として正式に記載された。
学名のカタカナ表記については、ウィキメディア・コモンズに掲載された模式復元図の日本語解説に従い「チョーカリムルス・ディスコボルス」を採用している。
だが、“Ciurca”のカタカナ表記は「キウルカ」とする例もあり、「キウルカリムルス・ディスコボルス」とも表記できる。
現時点では、日本語での読み方は統一されていない。
この画像を大きなサイズで見る標本全体を通常光で撮影した画像と、各部位の拡大写真。拡大部は白枠で示されている。拡大写真のスケールバーは1mm、中央の全体像のスケールバーは5mm/ Image credit::James C. Lamsdell、doi: 10.1098/rspb.2025.0874
空白だったシルル紀を生きたチョーカリムルス・ディスコボルス
チョーカリムルス・ディスコボルスは、シルル紀中期(約4億2400万年前)に生息していた。
シルル紀は約4億4300万年前から約4億1900万年前にかけての時代で、オルドビス紀末の大絶滅から生態系が回復し始めた時期にあたる。
化石は、インディアナ州にあるワバシュ層ココモメンバーと呼ばれる地層から出土した。
この層は、ウミサソリ類などの化石が集中して見つかる「ウミサソリ地層」とも呼ばれ、炭化した外骨格が圧縮化石として保存されていることで知られている。
チョーカリムルス・ディスコボルスは、オルドビス紀に生息していたルナタスピス属(Lunataspis)と呼ばれる、現時点で最古とされるカブトガニの一種に形態がよく似ており、丸みのある前体や、滑らかな後体、複数の節を持つ尾剣を備えていた。
ただし、後体に軸突起や外縁の溝がないなど、明確な形態上の違いがあり、独自の種であると判断された。
この画像を大きなサイズで見る(a) 偏光下で乾燥状態の標本を撮影した画像。化石の立体的な構造が見て取れる。(b) エタノールに浸した状態で偏光下に撮影。炭化した外骨格のコントラストがより鮮明に現れている。(c) 標本の解釈図。炭化した外骨格は茶色で、損傷や不完全な部分は点線で示されている。(d) 紫外線下で撮影。炭化部分と一部の剥離部分が蛍光を発しており、特に後体軸部の体節の境界がはっきり確認できる。(e) 447ナノメートルの青色レーザーを用いて撮影。炭化部分と剥離部が蛍光を発し、化石の輪郭や心臓葉(cardiac lobe)の形が最も明瞭に見える。(f) 532ナノメートルの緑色レーザーで撮影。炭化部分が強い蛍光を示し、その位置がくっきりと浮かび上がっている。※スケールバーはすべて5mmImage credit::James C. Lamsdell、doi: 10.1098/rspb.2025.0874
オルドビス紀末の大量絶滅からの復活
今回の発見は、オルドビス紀末の大量絶滅がカブトガニに与えた影響が限定的だった可能性を示している。
チョーカリムルス・ディスコボルスがその後のシルル紀にも生存していたことから、古代型のカブトガニが過酷な環境変化を乗り越えて進化を続けていた事実が明らかになった。
また、化石が発見されたインディアナ州は、当時のローレンシア大陸の一部であり、初期カブトガニの進化における重要な拠点だった可能性がある。
ラムズデル博士は、ローレンシアを中心とした発見の多さは調査地域の偏りによるものであり、アフリカや南アメリカなどの旧ゴンドワナ大陸での今後の発掘が、さらなる発見につながると述べている。
この画像を大きなサイズで見るカブトガニとはどんな生き物か
カブトガニは、一見するとエビやカニの仲間のように見えるが、実はクモやサソリに近い「鋏角類(きょうかくるい)」と呼ばれる節足動物に属する。
英語では「horseshoe crab(ホースシュークラブ)」と呼ばれ、馬の蹄のような背中の形がその名の由来となっている。
この画像を大きなサイズで見る現生のカブトガニは、1種がアメリカ東海岸からメキシコ湾にかけて分布し、残りの3種はアジアの沿岸部、主に日本、東南アジア、インドなどに生息している。
日本では主に西日本の干潟に「カブトガニ(Tachypleus tridentatus:タキプレウス・トリデンタトゥス)」が生息しており、国の天然記念物にも指定されている。
体は、前体、後体、尾剣の3つの部分に分かれており、尾剣を含めた成体の全長は、生息種によって異なるが、60cmから70cmに達することもある。
浅い海の砂泥地に生息する底生動物であり、ミミズ、小型の貝類、藻類などを捕食している。
寿命は20年近くにおよび、春から夏にかけて大潮の夜に浜辺へ上陸し、産卵・交尾を行う。
また、カブトガニの青い血液は医療分野でも重要な役割を果たしている。血液中に含まれる「アメブロサイト」と呼ばれる細胞には、細菌の毒素(エンドトキシン)を検出する働きがあり、ワクチンや注射器の安全性試験に広く利用されている。
References: Royalsocietypublishing / Paleontologist Discovers First Known Silurian Horseshoe Crab














カブトガニと聞くと「がんばれカブトガニ」という歌を思い出す
化石になって残り、現代人に発見されるのは大変な幸運が必要だけど
いまはプレート理論から、過去の地層がどこに分布しているかの大まかな推測が可能になってきているので
今後はこういった「穴埋め」も進んでいくのだろうなって
> アメリカ東海岸からメキシコ湾
この地域のカブトガニなんて例の隕石で全滅してそうですが、生き残るものですねぇ。
シーラカンスとカブトガニを対面させたら何か面白いリアクションがあるだろうか。
その隕石6500万年前だからじゃない。
今回の記事の内容は、オルドビス紀末の大量絶滅後からデボン紀後期(約4億1600万年前~約3億5920万年前)までの話だから年代が違う
さすがにCiurcalimulusを「チョーカリムルス」とは読まないのでは?
少なくとも、S.J.Ciurca Jr.氏を「キウルカ」さんと読むなら、Ciurcalimulusも「キウルカリムス」でないとおかしいでしょ。命名の元になってるんだから。
ぶっちゃけ今のカブトガニって結構進化して姿変えてるよね。
よくこれが化石だと気が付くもんだなあ。
尻尾以外、岩の模様と見分けが付かん。
化石だと思わなかったら、何か黒いのがへばりついてるとしか見えない。
どうしてもカブトガニとカブトエビがごっちゃになります、、
カブトガニは天然記念物ではなく、繁殖地が天然記念物。
ホタルイカが天然記念物ではなく、ホタルイカで光る「海面」が天然記念物なのと一緒。
小さなカブトガニの標本売ってる
のはそういう理由が、、
見出し画像がドラクエ6のデススタッフかと思った
水量、水温、塩分濃度、清濁等、目まぐるしく変化する干潟に適応しているからこそ環境変動にも強いんだろうね。干潟そのものが破壊されると駄目だけれども⋯
三葉虫の甲羅がちょっと頑丈になったら進化完了かなくらいに考えてましたが
カブトガニなりに大変な進化を続けてここに至ったんですね