メインコンテンツにスキップ

5億年前の奇妙な節足動物の100年にわたる謎を解明、脚があって脱皮をしていた

記事の本文にスキップ

7件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
5億年前に生きた初期の節足動物ヘルメティアのイメージ/Credit: Marianne Collins
Advertisement

 100年以上前に発見されながらも、これまで研究が進んでおらず正式な記載が行われていなかったカンブリア紀の節足動物「ヘルメティア・エクスパンサ」の謎が明らかになった。

 ハーバード大学を中心とする古生物学者チームによる新たな研究によると、三葉虫にも似たヘルメティア・エクスパンサ(Helmetia expansa)には、これまでないとされていた脚があり、しかも脱皮をすることまで明らかになっている。

発見されてから100年以上未記載だった謎の節足動物

 この謎めいた節足動物が、カナダ、ロッキー山脈のバージェス頁岩で初めて発見されたのは1917年のことだ。

 その翌年、発見者である古生物学者チャールズ・ウォルコットは、近くにあるヘルメット山にちなみ「ヘルメティア・エクスパンサ(Helmetia expansa)」と命名。当初は甲殻類であるとされた。

 だが現在では、より厳密に「コンシリテルガ類(Conciliterga)」と呼ばれるすでに絶滅した初期節足動物の仲間であるとされている。

 よく知られた三葉虫と近い関係にあるが、コンシリテルガ類には三葉虫のような石灰化した硬い外骨格がない。

 だから5億年前のバージェス頁岩のような特殊な条件がなければ、そう簡単には化石にならない。

 その結果、ヘルメティア・エクスパンサの標本は、ホロタイプ(種を定義する基準となる標本のこと)が1つあるだけで、なかなか研究が進まず、正式に記載されることもなかった。

 ハーバード大学のポスドク研究員サラ・ロッソ氏は、「形態や保存状態のバリエーションを把握するには、1つだけ標本を調べたのではダメなのです」と、ニュースリリースで述べている。

 だがそれももう過去の話だ。今ではロイヤルオンタリオ博物館(カナダ)と国立自然史博物館(アメリカ)に36点の標本が所蔵されている。

この画像を大きなサイズで見る
最初に発見されたヘルメティアのホロタイプ/Credit: Jean-Bernard Caron and Sarah Losso

ヘルメティアには脚があった

 ロッソ氏らはこれらの標本を調べたうえで、さらに「澄江生物群」(中国)と「シリウス・パセット動物群」(グリーンランド)の類似種と比較。

 発見から108年にして、ついにヘルメティア・エクスパンサを正式に記載した。

 この調査で判明した驚きの事実は、ヘルメティアにも歩くための脚(あし)がきちんとあったことだ。

 一般に初期節足動物の脚には、移動やエサの捕獲に使う歩脚と、呼吸のためのエラがある。だがヘルメティアのホロタイプではエラしか確認できないため、じつは脚がなく、水中を泳いで生きていたのではないかと疑われていた。

 しかし実際には幅の広いエラと歩脚があり、三葉虫のように歩行していた可能性が高いのだ。

ヘルメティアは脱皮をして大きくなった

 もう1つの驚きの発見は、彼らが脱皮することだ。調査対象となった標本の中に、ちょうど脱皮をしている真っ最中のものが2点見つかったのだ。

 ロッソ氏によれば、これはコンシリテルガ類が脱皮をすることを裏付ける初の証拠であるという。

コンシリテルガ類で脱皮が確認されたのは初めてです

どんな節足動物も成長のために硬い外骨格を脱ぎますが、それを観察するには脱皮中の標本を見つけねばならないので、これまで知られていませんでした

 脱皮するヘルメティアは、新しい外骨格が頭部の近くに見えていた。このことは彼らが前方から抜けていくだろうことを意味している。

 一般的なカニ類は体の後ろから抜けていくので、これとは逆でむしろカブトガニに近いという。

 また成体の大きさに、かなりのバラツキがあることも判明した。一番小さい標本が全長92mmなのに対し、最大のものは180mm以上あった。

 「こうしたパターンから、5億800万年前に生きた彼らが、どのように成長し、どれほど大きくなり得たかがわかります」

この画像を大きなサイズで見る
コンシリテルガ類の多様性と系統関係
A:Arthroaspis bergstroemi(カンブリア紀前期/グリーンランド、シリウス・パセット動物群)
B:Helmetia expansa(カンブリア紀中期/カナダ、バージェス頁岩動物群)
C:Kuamaia lata(カンブリア紀前期/中国・澄江生物群)
D:Tegopelte gigas(カンブリア紀中期/カナダ、バージェス頁岩動物群)
E:今回の研究における系統解析の結果に基づき簡略化された系統。コンシリテルガ類の中でも初期に分岐した系統とされる Credit: Jean-Bernard Caron and Sarah Losso

2種類のヘルメティア

 こうした調査の結果、ヘルメティア科には2つのグループがあることが明らかになっている。

 1つは、節がはっきり分かれており、体の側面にトゲがある「ヘルメティア属」。ヘルメティア・エクスパンサはこちらの仲間だ。

 もう一方は「テゴペルテ属」。こちらは節がくっついており、トゲがないのが特徴だ。

 「今回の発見により、ヘルメティアの外観・生活様式・コンシリテルガ類の仲間の関係性がよりはっきりしました。コンシリテルガ類をはじめとする初期節足動物の今後の研究にとって、とても重要なことです」とロッソ氏は評価する。

 この研究は『Journal of Systematic Palaeontology』(2025年4月4日付)に掲載された。

References: Helmetia expansa Walcott, 1918 revisited – new insights into the internal anatomy, moulting and phylogeny of Conciliterga / Ancient fossil sheds big light on evolution mystery: solving a 100-year arthropod mystery

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 7件

コメントを書く

  1. けっこう大きいし、カブトガニに近いって言われると想像しやすい
    (こないだ足立区生物園で会ってきた)

    カブトとちがって、被るヘルメットは関係ないんだね
    ヘルメット山が由来だった

    • +5
  2. あまり意識してこなかったけれどアノマロカリスだの三葉虫だのも脱皮したり卵を生んだりしていたんだろうな 
    おぉぅ 生々しくなってきたぞ よしよし

    • +3
  3. 古くはナラオイア属が殻を被った三葉虫としてしられている。これも化石をドリルで削るまで足の構造がわかっていなかった。薄片みたいな化石に立体構造が残されているというのも発見だった。

    • +1
  4. 何も知らずに見たら葉っぱかな?で終わりそうな見た目

    • 評価
  5. 海の動物の研究に、一回の現地調査で登山往復10時間

    初代発見者すごいな

    • +2
  6. この手の生き物の脱皮ってすごいんだよ。
    カニとか足3本しかないやつに栄養十分与えたら脱皮後に足生えそろってるもんね。そんで体も大きくなってる。すごい再生能力だと思う。

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

絶滅・絶滅危惧種生物

絶滅・絶滅危惧種生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。